Re東方葬想録   作:KUS

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再会と狂気

???視点

 

抑えられない………

私の狂気が……溢れる……。

どうしよう……このままじゃ……

 

またお姉様達に迷惑をかけちゃう。

抑えなきゃ。

 

………駄目だ、抑え切れない……

お姉様、パチェ、美鈴、咲夜……みんな……ごめんなさい、また迷惑かけちゃう。

………この気配、は………

あの人なら……止めて……くれる……かな……?

あ……もう……だ……め……

 

誠斗視点

 

俺は美鈴から借りたハンカチで涙を拭いて、レミリア様と向き合っていた。

最初の真剣な顔は何処へやら、今は完全にOFFモードだ。

その証拠に、さっきまでのキリッとした表情から、見た目相応の少女の表情になっていた。

 

「さて誠斗、貴方の部屋はそのまま残してあるからそこを使って。

 あと、咲夜が屋形を拡張してるから迷わないようにね?」

「私が案内しますよ」

「ああ、後でな」

 

レミリアの言葉に美鈴が案内を買って出た。

俺はそれを了承しておく。

その後に、レミリア様はさらに付け加えた。

 

「あと、そんな堅くなくて良いわよ。

 貴方がパチェに接するくらいの感覚で良いから」

「………良いんですか?」

「大丈夫よ。主従関係と言っても、私達は家族なんだから」

 

レミリア様がそう言った。

俺としては堅すぎると窮屈なので、少し軽い感じが良かったので丁度良かった。

 

「レミィ、話は終わった?」

「パチェ、今終わったわよ。あとは咲夜の帰りを待つだけだから」

「そう。改めて久しぶりね誠斗。元気だったかしら」

「はい、元気でしたよパチュリーさん」

「初めに言っとくわ。本当はレミィが言うべきなんだろうけど忘れてたから」

 

それを聞いてレミリア様が「あっ」と声を上げた。

まじで忘れてたらしい。

 

「誠斗、貴方がこの6年間何をしていたのか私達は知らないわ。

 

 でも、何か悩みがあるなら私達に話して。

 それくらい、いつでも相談に乗って上げるから」

 

そう言ってパチュリーさんは笑みを浮かべた。

横でコアと美鈴も首をブンブンと縦に振ってる。

霊夢も同じ意思なのか、うんうんと頷いていた。

 

話が纏まり、自室に向かおうと考えていると、静かな空間にバンっと大きな音が響いた。

音的に扉が勢いよく開かれたのだろう。

 

扉の方を見ると、銀髪のメイドが息を切らせながら立っていた。

 

咲夜視点

 

買い出しを終えた私は紅魔館に戻ってきていた。

何故か門の前に美鈴がいなかった。

美鈴は居眠りはするが、仕事はサボらない。

お嬢様に呼ばれているんだろうか?

 

「ただいま帰りました」

「あ、メイド長。おかえりなさい」

 

私が屋敷内に入ると、丁度妖精メイドが掃除をしていた。

私は彼女に美鈴の事を聞く事にした。

 

「ねえ、美鈴は何処に行ったの?」

「美鈴さんですか?あの人ならお嬢様所に人を連れて行ってましたよ」

「そう……誰かわかる?」

 

私は妖精メイドにそう聞いた。

誰が来たかは把握しておきたいからだ。

 

「1人は霊夢さんでしたね」

「霊夢が来てたの………待って、霊夢なら案内は必要ない筈……」

「ああいえ、本題はもう1人の方でして」

 

霊夢がもう1人連れてきていたらしい。

その説明からして、お嬢様はそちらに用事があったみたいね。

 

「その人は誰?」

「昔紅魔館にいた人です。私も一度だけ見た事があって……」

 

かつて紅魔館にいた人……

美鈴から聞いた、私が来る前にいた4人内1人だろう。

確か生きている事が分かっているのは1人だった筈。

 

「メイド長?どうかなされました?」

「ああ、ちょっと考え事をね。

 それで、その人の名前は?」

「ああ、確か名前は…………誠斗さんでしたっけ」

 

その名前を聞き、私は頭を殴られたかのような衝撃に襲われた。

 

「ねえその人は今何処!」

「わ!?お、大広間の方に向かいました」

「そう、ありがとう」

 

私は大広間の方へ何も考えずに走った。

そのせいか自分の能力の事を忘れていた。

 

私は大広間の扉を思いっきり開けた。

はしたないが、今はそれどころじゃなかった。

広間には私と妹様、妖精メイド以外のこの館の面々と霊夢、

そして………私と似た髪色の男性が立っていた。

彼がこちらを向いていたため、顔を見る事が出来た。

 

記憶よりかなり大人びている。

顔付きもかなり鋭く、私の記憶にある弱々しい印象とは全く違う。

でも………その気配は間違いなく………

 

「お兄ちゃん!」

 

私は彼に抱き着いた。

その気配は間違いなく……10年前に生き別れた兄のものだったから。

 

誠斗視点

 

俺は、抱き着いてきた咲夜を自然と抱き返しかけたが、直ぐに手を下ろした。

 

今俺に抱き着いているのは、

紛れもなく俺の妹である咲夜だった。

最初霊夢から聞いた時は、偶々名前が同じ別人だと思ってた。

 

………いや、本当は薄々思っていたのかもしれない。

その人が自分の大切な血の繋がった家族だと。

でも、心の中で会う事を望んでいなかった自分もいる。

血で真っ赤に汚れた手で、咲夜を汚したくなかった。

手を下ろしたのもそれが理由だ。

 

俺はどうしようかと思いながら、霊夢に助けを求める視線を送る。

レミリア様達が助けてくれる見込みはゼロだからだ。

だが、霊夢は俺に抱き返せとでも言いたげな視線を送り返してきた。

まるで俺の悩みを見抜いたように、それがどうしたとでも言いたげだ。

 

俺は恐る恐る咲夜を抱き返す。

 

咲夜の体温は高かった。

興奮しているからだろう。

髪を触ると、フワリとした感触がした。

 

しばらく抱き合ってから、咲夜の顔を見る為に離してみる。

顔は泣き腫らしたのか赤くなっていて、未だに目から涙が出ていた。

その顔は記憶に残る妹の顔だった。

 

「ほら、そろそろ泣き止め」

「グスン、だって……」

「昔何度も言っただろ、泣いてちゃ可愛い顔が台無しだって」

 

それを聞いて咲夜の目からまた涙が出てきた。

言葉を間違えたか?

 

「違うか……ほら、泣いてちゃ綺麗な顔が台無しだって」

「違う、言い方の問題じゃないもん……」

「じゃあ何だよ」

 

思わず素で聞いてしまった。

霊夢が「そうじゃない」とツッコミを入れそうな顔をしている。

レミリア様達もギャグのようにすっ転んでいた。

パチュリーさんは天を仰いでいた。あれは呆れているな。

 

「だって、死んじゃったって……ずっと思ってた」

「………ごめん。連絡入れなくて」

 

紅魔館にいた時はしょうがないと言い訳できるが……

紅魔館から出た後は言い訳不可だった。

 

咲夜は目を擦りながら、精一杯の笑顔を向けてくれた。

 

「お兄ちゃん……久しぶり。また会えて……とっても嬉しい!」

「……俺もだよ、咲夜」

「また一緒に暮らせる?」

「暮らせるさ、ここが……俺の家だから」

 

咲夜はそれを聞くと、嬉しそうに俺にもう一回抱き着いた。

 

その瞬間、エントランスの方から爆発音が響いた。

 

霊夢視点

 

「っ……!?何!?」

 

急に鳴った爆発音は、感動の余韻を見事なまでにぶち壊していた。

私も少し懐かしい気分になっていた所にこれだ。

なので、私は今結構キレていた。

紅魔館でこんな騒ぎを起こすのは2人だ。

1人は親友の魔理沙。

だけど紅魔館の主要メンバーはここに揃っていて、他は妖精メイドくらいしかいない筈。

あいつが妖精相手にこんな派手な事をする?

………しそうね。常日頃から弾幕はパワーなんて言ってる奴だ。

 

……もう1人はレミリアの妹、フラン。

でも、初めて会った頃は兎も角、今はある程度制御できるようになっていた筈……。

私が思考していると、誠斗が部屋の外に駆け出していた。

 

「お兄ちゃん!?」

「待って誠斗!」

 

私は咲夜とすぐに誠斗を追う。

レミリア達もそれに続いた。

 

エントランスで暴れていたのはフランだった。

だが、その目は完全に狂気に飲まれていた。

ここ最近は暴走なんてしてなかったのに。

 

……よく見ると、フランの側に妖精メイドが1人腰を抜かしていた。

当然、フランは妖精メイドの方を見る。

かなり流暢に顔を向けるフラン。

妖精メイドから見たらホラー映像だろう。

 

その時、フランがレーヴァテインを生成する。

まずいと思った私は、懐からお札を取り出す。

いくら妖精が時間経過で復活するといっても、目の前で死なれては気分が悪い。

でも間に合わない。

咲夜も動揺してるのか能力を使ってない。

妖精メイドが死を覚悟したのか目を瞑った。

 

三人称視点

 

妖精メイドは死を覚悟して目を瞑った。

だが……いつまで経っても痛みも、衝撃も来なかった。

彼女は恐る恐る目を開いた。

彼女の目に映っていたのは、フランのレーヴァテインを刀で受け止める誠斗の姿だった。

誠斗はレーヴァテインを弾き、フランとの距離を離す。

「あっ、誠斗、さん」

「逃げろ」

「は、はいいい」

 

妖精メイドはダッシュでその場から逃げる。

それを見届けた誠斗はフランに向き直る。

 

上で見ていた霊夢と咲夜は、加勢しようとするが、それをレミリアが静止した。

 

「2人とも待って」

「レミリア!?」

「お嬢様、何故ですか!?」

 

2人は大変ご立腹のようだった。

だが、レミリアには狙いがあった。

 

「2人とも、止めるのはちゃんと理由があるわ。

 まず1つ、多分フランを助けられるのは誠斗だから」

「多分じゃ駄目じゃない」

「ええ、でもちゃんと根拠はあるわ。

 初めてフランが壊さずに一緒に遊べたのが、誠斗だったの」

「それって……」

「ええ。だから、あの子ならフランを止められる筈。

 2つ目、知りたくない?誠斗の実力」

 

それを聞いた霊夢は黙った。

咲夜はまだ不満そうだったが。

実際、霊夢は誠斗の実力について気になっていたのは事実だった。

レミリア達は、再び誠斗に視線を向ける。

 

誠斗はフランに言葉を掛けていた。

 

「フラン?」

「んぅ?なあにお兄ちゃん?」

「1つだけ、戻ってこい。

 狂気に飲まれるな。それ以上は本当に自分を見失うぞ」

「あはは、そんな事どうでも良いよ。

 ねえお兄ちゃん、アソぼ」

 

フランはそう言ってレーヴァテインを構えた。

誠斗はそれを見て説得を諦めた。

もう物理的に黙らすしかないと。

 

誠斗が警戒しているのは、フランの能力だ。

フランの能力、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力は、かなり危険な能力だ。

この能力は、「目」と呼ばれる対象の一番弱い箇所を使用者の手の中に移動させ、握り潰すことで破壊する。

はっきり言って、数多ある能力の中でもトップクラスの強さを誇る。

彼女相手に距離は意味をなさない。

どのような距離でも破壊されて終わりだからだ。

だから誠斗は短期決戦を選択した。

 

「じゃあ」

「………」

「行っくよお!」

 

フランが誠斗に向かって突撃した瞬間、誠斗の姿が消えた。

 

「!?」

 

フランは誠斗の姿が消えた事で動揺する。

 

「駄目じゃないか……俺相手に正面突撃は……」

 

その声が聞こえた瞬間、フランは咄嗟に後ろを振り向いた。

そこには誠斗の姿があった。

フランは攻撃すべくレーヴァテインを振るう。

その時、フランは自分の体を仄かに温かいものが辿っているのを感じた。

何だと思ってそこを見た。

そこにあったのは……

 

斜めに斬られた自分の体と、そこから流れる血だった。

 

その瞬間、フランは痛みを感じながら倒れた。

 

「悪いなフラン。吸血鬼を黙らせるには、峰打ちじゃ不足だからな」

 

誠斗は刀に着いた血を払いながらそう呟いた。

吸血鬼という妖怪の中でもトップクラスの強さを誇る種族を殺さずに無力化する。

誠斗が取ったのは、死なない程度に斬るだった。

あの傷では、人間なら死んでいるだろう。

しかし、吸血鬼の生命力なら死ぬ事はない。

誠斗はそう判断して、この手を打った。

 

誠斗とフランの戦いは、誠斗の勝利で呆気なく幕を閉じた。




キャラ紹介
十六夜咲夜
種族:人間
年齢:18歳
能力:時を操る程度の能力
紅魔館のメイド長で誠斗の実妹。
普段はどちらかと言うとクールな印象を受ける。
だが兄である誠斗の前だと普段の印象は何処へやら、年相応な少女の一面を見せる。
誠斗と一緒にいると然り気なく近くを陣取ったり、他の女性を威嚇したりとかなりのブラコン気質。
能力は時間停止の他、空間拡張や時間の流れを遅くしたり、流れを速めて存在を変化させる芸当も可能。
ただ誠斗曰く、昔は時間停止しか出来なかったらしい。
能力が成長したと考えられるが、咲夜曰く、突然出来るようになったとのこと。

フランドール・スカーレット
種族:吸血鬼
年齢:495歳
能力:ありとあらゆるものを破壊する程度の能力
レミリアの妹の吸血鬼。
自分の狂気を制御しようと努力しており、姉やパチュリーに手伝ってもらっている。
これまで遊んでくれた妖精メイドは大体壊してしまい(殺してしまい)まともな遊び相手がおらず、
地下に引き篭りっきりだった。
誠斗は初めて壊さずに一緒に遊べた人物。
それ以来、彼の事を兄のように慕っている。
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