Re東方葬想録   作:KUS

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外の世界の管理者

霊夢視点

 

「誠斗が、その紅魔四天王ってやつだと思ってるの?」

「はい。勿論根拠はあります」

 

阿求が真剣な表情でそう言った。

そして、根拠を一つ一つ話始めた。

 

「まず、死の旋風の容姿です。

 旋風は、色が抜け落ちたかのような白い髪と蒼い目を持ち、

 そして、常に死の気配を漂わせていたそうです」

 

誠斗の髪の色は銀だ。

でも、遠目から見れば白に見えなくない。

それ程、あいつの髪の色は薄い。

目に関しては……よく見てなかったから分からない。

でも、咲夜の目の色は青系だ。

血が繋がっているあいつも、青系でもおかしくない。

最後の死の気配……確かに、僅かに感じてた。

元は殺し屋って聞いたから、特に気に留めなかったけど。

 

………阿求の言った特徴に、誠斗は見事に当て嵌まっていた。

それに、死の旋風という二つ名。

二つ名というのは、大抵そいつの特徴を表すものだ。

例えば目の前にいる阿求、彼女の二つ名は「幻想郷の記憶」だ。

阿求は転生を繰り返している。

歴代の御阿礼の子は、幻想郷縁起を編纂してきたとされている。

だから幻想郷の記憶。

 

死の旋風は阿求の二つ名と同じ比喩系だろう。

名前からしてどんなやつかは想像出来た。

風が吹いた瞬間、命が消える死を運ぶ風。

 

驚く事に、誠斗はそれを実行出来る。

誠斗の能力は「時間の流れを遅くする程度の能力」

その力は、昨日のフランとの戦いで目にした。

 

誠斗は、まるで風のようにフランの後ろにいつの間にか立っており、フランは斬られていた。

暴走していたとはいえ、フランでさえ認識出来ないスピード。

それを並の妖怪が認識出来る筈がない。

 

私は、一つ気になった事を阿求に聞いた。

 

「ねえ阿求。それを私に聞かせたのはどういう意図があるの?」

「………別に私は誠斗さんを退治してほしいなんて思ってませんからね。

 あの人が悪人ではない事は、短いやり取りで感じれました。

 それに、霊夢さんが特に警戒していないなら問題ないと思いました。

 私はあくまで、霊夢さんに知ってもらっておきたかっただけです」

 

阿求はそう答えた。

確かに、私は誠斗の事を知ろうと思ってる。

紫の頼み事の事もあるし。

何より、なんか放って置けなかった。

 

「霊夢さん。気をつけて下さいね。人里で誠斗さんは襲われないでしょうが、

 里の外には、報復の機会を願っている妖怪もいるかもしれません」

 

阿求は最後にそう言い、鈴奈庵に戻って行った。

報復の機会………

どうせそんなのを考えているのは、人間にズタボロにされたのが気に食わない連中だろう。

……把握してるかもだけど紫に言っておくか。

 

誠斗視点

 

「…………」

 

俺は幻想郷縁起の紅魔館関連のページを読んでいた。

最初は順に読もうとしていたのだが、咲夜の押しが強かった。

咲夜のページを読むついでに、紅魔館のメンバーのページも見る事にした。

 

本自体はかなり読みやすかった。

それぞれわかりやすく、さらに短く纏められている。

総合資料集などはこれくらいが読みやすい。

あくまで個人の感想だが。

 

「ねえ誠斗さん。私外の世界について聞いてみたいです!」

 

小鈴が急にそんな事を言い出した。

 

「外について知りたいのか?」

「はい、外がどんな感じなのか知りたいんです!」

「早苗や菫子に教えて貰えばいいじゃない」

「2人とも文化しか教えてくれないんですよー」

 

小鈴がそんな愚痴を言う。

その早苗と菫子という2人は、話からして同郷だろう。

 

俺がどうしたもんかと考えていると、後ろから声をかけられた。

 

「誠斗さん、幻想郷縁起はどうですか?」

「んぅ?ああ、読みやすいと思うぞ」

「ありがとうございます」

 

声の主は、いつのまにか来ていた阿求だった。

感想を求められたので、俺は思っていた事を正直に伝える。

ただ……

 

「ボリュームがない気がするんだが……」

「ああ、それは大結界異変の時のものですね。載ってない方もいると思います」

「なるほど、最新じゃないって事か」

「よければ持ってきましょうか?」

「いや……そっちは買うよ。帰ってゆっくり読むことにする。

 ………なあ咲夜、こっちで円って使えるのか?」

 

俺は咲夜に質問する。

俺が持ってるのは、当然日本円だ。

だが、人里の街並みは現代とはかけ離れている。

流石に両じゃないと無理とかはないと思いたい。

 

「円は使えるけど……明治初期の価値なんだよね……」

「………マジか」

「因みに、おいくら持ってるんですか」

「………ざっと一万。残りは紅魔館に置いてきた」

「………買ってあげようか」

「……………すまない」

 

この年になって妹にお金を出して貰う事になるとは………

ここに両替所あるかな………

 

その後、小鈴が幻想郷縁起を持ってきて、咲夜が支払いをした。

正直恥ずかしかった。

 

「それで誠斗さん。外の世界の事教えて下さい」

「まだ言ってる。文化で充分じゃないのか?」

「充分じゃないから言ってるんです」

「そうですね。私も興味があります」

 

阿求も小鈴の話に乗かった。

………話さなきゃいけない流れになってきたな。

 

「教えてもいいんじゃない?」

「………そうか?」

「別に減るもんじゃないでしょ」

 

確かに話しても何か損がある訳じゃないが。

俺は考え抜いた末に、

 

「はぁ……わかった話すよ」

「よし!」

 

折れた。

 

「それで、何を聞きたいんだ」

「外の世界って、具体的に言えばどんな感じなんですか?

 幻想郷と似たような感じなんでしょうか?」

「………つまり、何を聞きたい?」

「幻想郷みたいに管理者的な人はいるんですか?」

 

なるほど、そういう事か。

幻想郷は妖怪達によって管理されている。

紫も管理者の1人だ。

外の世界も同じように管理されてると予想してるのだろう。

 

「……いないですか?

 やっぱり幻想郷よりも広いから一個人で管理は無理g「いるぞ」……へっ?」

「いるぞ。外の世界にも管理者が」

 

それを聞いて小鈴が呆けた。

阿求も少し驚いているようだ。

 

「どうした。思ってたのと違ったか?」

「……いえ。前に外の世界を観測して、自ら妖怪になる事を選んだ里の易者がいたんです」

「………何があったんだよ」

「何でも、妖怪に管理される惨めな人間の生活から逃げ出したかったそうです」

「管理されるのが嫌だったのか……」

「外も管理されてるんですか〜」

「自由は保証されてるけどな……

 でも、管理社会というのは否定出来ない」

 

俺がそう話していると霊夢が来た。

 

「遅かったじゃないか」

「少し考え事をね………何を話してたの?」

「小鈴が外の事を知りたいっていうもんだから」

「ああね。ついでに私も聞きたいわね」

「全くもう。早苗と菫子とやらに聞かないのかよ」

 

俺はそう言いながらも説明を続けた。

 

「外の世界を管理してるのは、地球連っていう組織だ」

「地球……」

「連邦?」

「随分と仰々しい名前ね」

「仰々しくはない。世界中を管理している人類による巨大組織だ」

「マジですか?」

「俺が嘘をつく理由があるか?」

 

小鈴は少し現実的ではないと思っているのだろう。

まあ、幻想郷の何十倍の世界を管理している組織なんて、

知らなければ世迷言と切って捨てられるだろう。

 

「咲夜、誠斗の言ってる事は本当?」

「霊夢、お兄ちゃんが嘘をつく理由はないわよ。

 地球連邦、正式名称は地球連邦管理調停政府。外の世界を実質的に支配している国際機関。

 それが、連邦よ」

「やってる事は多岐にわたる。

 治安維持、インフラ整備、環境問題の対処、経済の監視、貧困者の支援………」

「ちょっと待って、また悪癖が出かけてるわよ。

 それに、それ全部連邦がやってるの?」

「やってるんだ。世界中でそれが可能な権力を、連中は持ってる」

「………スケールがかなり大きいですね」

 

阿求がそう呟いた。

実際、俺が知っている歴史上の世界規模の組織で、連邦以上の組織は知らない。

近いのは大英帝国やモンゴル帝国だろうか?

阿求が言ったスケールが大きい、これが連邦を端的に表していた。

 

「幻想郷の管理は妖怪が行なっています。

 ………連邦は人間が運営してるんですよね?」

「ああ」

「信じられません。寿命の短い人間の手でそれだけ大きな組織を維持するなんて」

「一応、まだ出来て百年も経ってないけどな。

 でも……そろそろ世代交代の時期かな」

「ねえ、反発する奴はいないの?幻想郷にもいるわよ」

「当然いるさ。圧政者を打倒するだの管理がどうのこうの言って無差別に人を巻き込む馬鹿(テロリスト)が」

「そう言った人たちは軍隊によって対処・鎮圧される」

「補足ありがとう咲夜。そして同じ連中を生まない為に思想弾圧をする」

「それって結局……」

「ああ、同じ事を言う奴が結局また出てくる悪循環だ」

 

まあ、弾圧しなくても、結局御託を並べて事を起こす馬鹿はいそうだが。

 

「……なんか、思ってたのと違いました。

 早苗さんや菫子さんからはそんな様子感じられないかったのに」

「一般市民は管理されてるっていっても、日常生活まで侵食はされていないからな。

 普通に生きてれば、普通に自由は保証される。

 ようは、弾圧されてるのは馬鹿が原因で、当の本人達が反省しないで叫んでるだけだ。

 少なくとも俺はそう思ってる………

 まあ、これは俺が見てきた範囲の話だ。

 俺も細部まで知ってる訳じゃない。

 それに、組織を運営しているのが人間である以上、清廉潔白は絶対にないし、内部にだって悪人はいるだろう。

 でも、それを俺が知らない以上、語れるのは数十年間戦争を起こさずに維持してきたっていう事実だけだ」

 

俺はそう言って締めた。

しばらく沈黙が流れる。

後半に至っては咲夜も、というか一般人は知らない情報だ。

俺も、殺し屋なんてやったてなかったら知らなかったろうし、知ろうともしなかっただろう。

 

しばらくして阿求が口を開いた。

 

「誠斗さん、ありがとうございました。

 外の支配体制を知れて良かったと思ってます」

「わ、私も。誠斗さん、教えてくれてありがとう」

「どういたしまして。霊夢、次は何処に行くんだ?」

 

2人の感謝に対して返事をした後、霊夢に次の行き先を聞いた。

 

「次は永遠亭にでも行こうと思ってるわ」

「永遠亭……本にも載ってたな。病院だと」

「幻想郷じゃ数少ない医療施設だよ」

「咲夜の言う通り。永遠亭は数少ない病院なの。

 里の人間も利用するけど、主に使ってるのは妖怪達ね」

 

霊夢はそう言って締めた。

 

その後、阿求と小鈴に別れを言って俺達は里を出た。

そこまで遠くないらしく、また歩く事になった。




キャラ・用語集
早苗、菫子
外の世界出身の住人。東風谷早苗と宇佐見菫子の事。
2人とも今後登場予定。

地球連邦管理調停政府
正式名称が長いので基本は地球連邦、連邦と略される。
世界全体の管理・統治を行う国際機関。実質的に世界を支配している。
戦争を起こさない為には強権的な組織が必要と考えた各国が、国連の後継組織として設立した。
国連とは違い、実際に政府としての機能を持ち、常備軍も存在している。
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