星の白金(ひかり)で断つ運命   作:クルセイダース

1 / 9
星の白金(スタープラチナ)になった男

――街のガラスに映るのは、一体何者なのか。

紫色の筋肉質な肉体。拳闘士のような外見。2m近くはある体格。

表情筋が死んでるのかイマイチ表情に変化はない。いや表情が変わった。

少し怖い。無表情を貫いた方が良さそうだ。

そうこうしてると、知識のようなものが頭の中に流れてきて、ようやく理解する。

 

――どうやら俺は気が付けばスタープラチナになっていた。

何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起きてるのか全く分からなかった。今も分からない。

催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わっている最中だ。

少なくとも自分という存在が何なのかだけはこの体が教えてくれる。

この体の記憶は最期に本体の()()()()()()()()で途切れてしまっているようだが、その後果たして娘が生き残ったのかすら分からない。

そして俺は空条承太郎という人間の精神が具現化した存在。姿・形はあるが目には見えない(パワー)。名付けて『幽波紋(スタンド)』。

だが不思議なことにこの世界は俺という存在が、スタンドの存在が見えるらしい。

今も突き刺さる視線が痛い。

やはりこの体格が原因だろうか。

 

「ォ……れは……」

 

口は開くし喋ることも出来る。

だがなんだか口を開いて喋るのはあまり宜しくない気がした。

とりあえずスケッチブックか何かで話そう。

本来なら俺という存在は2m程しか射程距離がないはずだが、本体がいないということは自立型と似たような状態になってしまったというべきか。

移動を開始すると色んな人間がいることが分かる。

髪が伸びたり指が伸びたり、はたまた炎のようなものを発してたり人間じゃない見た目のやつがいたり、顔がボールになってたり猫だったりと。

ここは魔境か……?

お陰で注目も少ないが、ある程度俺に対しての声も聞こえてる。

 

「でっか……」

「めっちゃムキムキじゃん……」

「筋肉の塊みたいな筋肉してる……」

「あんなプロヒーロー居たかな?」

「なんだかかっこいいかも」

 

この体のスペックはとんでもない。目が滅茶苦茶良いだけでなく、耳や嗅覚など全てにおいてかなり高水準らしい。

プロヒーローというものが何なのかはよく分からない。

人の気配がないところに辿り着いて、試したいことを試して理解する。

俺は――パワーがない。

本来のこの体は鉄格子をひん曲げるほどのパワーを秘めているが、廃棄された車を持ち上げることが出来ないほどパワーが落ちてしまっている。

成人男性よりかはパワーはあるが、それだけだ。B-くらいのパワーだろうか。

俺という存在が異物としてスタープラチナの強さを下げてしまった……とか?

顎に手をやりながら自分自身の身体について考えながら歩いていると、また街並みに出てきてしまった。

自分という存在がスタープラチナというスタンドというのは分かる。ならば……俺は誰なんだ?

“解る”が“分からない”。俺はスタープラチナ。しかしスタープラチナではない。

だがスタープラチナだ。これはスタープラチナの人格? それとも俺という別の存在が自覚を持った存在?

まずこの世界がなんだ? ()()()()()()は俺という存在に似たものは多数居たが、それとは違うように感じる。

――違う。これはスタープラチナの記憶だ。

茨のスタンド。炎を操るスタンド。液体状のスタンド。剣使いのスタンド。砂のスタンド。

自分以外を修復するスタンド。空間を削るスタンド。重くするスタンド。本にするスタンド。

生命を与えるスタンド。

それから――娘の糸を操るスタンド。

切っても切れない、自分という存在に似た同じタイプのスタンド――時を止めるスタンド。

本体を殺した、DISCに変え、重力を反転させて裏返す能力に変化し、最終的には時の加速に変質したスタンド。

数多くの味方や敵、出会いの数々がこの肉体に刻まれている。

いや、魂というべきか。

 

「ハッハー! これは貰っとくぜ!」

「私のカバン!? ひったくり! 誰か止めてーッ!!」

 

人が考えている時に面倒なことを引き起こす。

どの世界でも人間の醜さというものは変わらないらしい。

 

「退け! 死んでも知らねぇぞォ!?」

 

降り掛かる火の粉は振り払うに限る。

かつての本体がそうだったように。

思い出が、本体の意思が俺に力を与える。

もう居なくても、『悪』を裁くのは星の白金(スタープラチナ)に与えられた役目なのだから。

 

『オラァ!!』

「ぶべらぁ!」

 

弱体化した俺でも拳の打ち方が分かり、体を棘に変えた中年男性を俺の拳は棘を粉砕しながら錐揉み回転で吹っ飛ばした。

血を吐き出していたが生きているだろう。

“やれやれだぜ……”。

無意識にか、本体の口癖が頭の中に浮かんで発せられてしまった。

――俺がもっと強ければ娘を、本体を助けることが出来たのだろうか。時間を加速させる能力(メイド・イン・ヘヴン)に対抗出来たのだろうか。

かつての奴のように、俺が同じタイプであったなら。

5秒と言わず――世界(ザ・ワールド)のように9秒の時間を止められたのだろうか。その4秒の差さえあれば……。

スタープラチナの心、かもしれない。

無念。悔しさ。怒り。心配。

今更ながら様々な感情が浮かび上がる。

宿主のことを本当に大好きだったのだろう、この肉体は。

 

「あ、ありがとうございます! 本当にありがとうございました!!」

 

感謝を述べてくる女性に手を挙げ、その場を去っていく。

だがもう、本体は居ない。空条承太郎との繋がりは何一つない。

残っている記憶だけが唯一の繋がり。

ならば――俺という存在は、スタンドには何の価値がある?

スタンドというのは持ち主を守るために名付けられた名前。『守護霊』という意味でもある。

本体が居るはずのスタンドに本体が居なければなんの価値もない。

俺という存在はこの世界に留まる理由があるのだろうか。ないのであれば、生きてなくてもどこかの世界に転生したと信じて本体の所へ向かいたいとすら思う。

それが俺の思いであり、スタープラチナの想いでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彷徨う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彷徨う。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、彷徨う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分という存在が分からないまま。

 

役目もないまま。

 

ただ彷徨い、彷徨い続ける。

 

空腹がない。

不思議なことに自分が人間であったという感覚はある。スタープラチナだったという感覚がある。

でも喉も渇かなければ眠気もなく、お腹が空くということすらない。

 

『オラオラオラオラオラァ!!』

 

たまに、誰かが襲ってくる。

確かに俺の体にある装飾は売れば高く売れそうだが、俺だって死にたいなんて思っていない。

これは俺という人間の意志。

だから返り討ちにする。

 

寂しい。

これはどっちだろう。

俺だろうかスタープラチナだろうか。

人の肌が恋しい。

本体の声が聞きたい。

 

会いたい。

誰に会いたいのだろう。

 

もう一度。

何に?

考えるまでもない。

 

今度は、今度こそは。

 

本体(承太郎)を護ってみせる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何日経過しただろう。

目的もなく歩くだけ。

その間に得られた情報はこの世界は何割かは何の力もないらしいが、世界全体で何らかの特異体質となった、いわゆる超能力者の集まりらしい。それが個性と呼ばれるもの。

ヒーローというのは個性を悪用する人間、ヴィランを捕まえる存在。災害や事件などを解決する職業的存在らしい。

スタープラチナを認識出来るのは個性の影響だろう。

だが俺は守護霊という立場ではあるが、どうやら個性持ちとは相性最悪なのか取り憑くことが出来ない。

無論悪人にしかやってないが、人体実験はさせてもらった。

体調を少し悪くしただけで命に別状こそはないが、()()()()ように入れなかった。

正確には入ることは出来て、その後に弾かれてしまったということ。

多分個性というやつが人間の器を埋めてるせいでスタンドという能力が入り込める隙がないのだろう。

それっぽいのがあったし。

 

――軟弱過ぎる。

このスタープラチナを発現させた本体を見習って欲しいものだ。この世界の人間は本体に比べて軟弱過ぎる。

個性に耐えるためか肉体の強度はある。だが超能力に頼るだけ。知能もない。技術すらない。

ヒーローという名だけで大した力を持っていない。

俺の本体は生身でも戦えたしピンチを覆す機転や知能の高さ、記憶力や注意力、洞察力に冷静さ。何より行動に移せる胆力があった。

これならば昔に戦ったことのある灰の塔(タワーオブグレー)の方が厄介だろう。それどころか、ヤツだけで大半のヒーローを殲滅出来るかもしれない。

俺ならば戦闘経験の差で勝てるが、今の俺の精密さや速度、パワーでは戦っても接戦を強いられる。と言っても意識が芽生えてからというものの、成長はしているのだが。

スタープラチナのスペックをフルで扱えればもっと話は変わってくると思う。

無論、時止めの能力も失ってしまっている。

というよりは“発動出来る”という認識はあるが、“発動出来ない”状態なのだ。

スタンドというのは精神のパワー。つまり、本体が居ない俺では精神エネルギーが不足して能力の発動までには至らないということ。

本来のスペックならば5秒止めることが出来るが……まぁ困ることは無い。いつまで俺がこの世界に具現してられるかなんて分からないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1か月ほど彷徨ったか。

落ちていたフードを被って少しでも注目を減らす対策をしたのだが、俺の情報が出回っているらしい。

襲ってくる奴らを叩きのめしてたら自警団(ヴィジランテ)なのではと。

何でも個性というのは許可制らしく、緊急時以外に自衛以外では使ってはならないのだと。それらを無視してヒーロー活動するものたちを非合法、イリーガルと呼ぶんだとか。

前提として俺は個性ではない。

個性というのは遺伝子を持つモノが発現する。

それは動物しかり人間しかり。

俺はあくまで精神エネルギーの塊であり、全くの無関係である。

何より返り討ちにしただけなのだから無罪だろう。

もうひとつの収穫もあった。

果たしていい事なのか悪いことなのか。

俺からしたらいいこと。

スタープラチナからしたら悪いこと。もしくは俺にとってもスタープラチナにとっても悪いことか。

それは俺という存在に制限がなかったということだ。

制限時間がない。

消えることがない。

――本体の元へは、ずっと行けない。

 

 

 

 

 

 

 

変な男が来た。

 

『初めまして。君が彷徨い続ける幽鬼、だね』

『どうやら最近、僕の友達が少しずつ減ってきててね、その情報を探ってたところ、君に行き着いたんだ』

 

俺の噂をどこかで知ったのだろうか。

友達というのは誰だろう。多くの奴らをオラオラしてきたから全く覚えがない。襲いかかってくるほうが悪いだろう。俺は悪人しかやっていない。

善人を殴ったなら申し訳ないが。

他にも何か色々言ってるが、つまるところ俺の強さを知って勧誘しに来たというところか。

 

『言わずともわかっているさ。生きにくいだろう? 苦しいだろう? でも大丈夫――。君の世界は僕が用意してあげよう。多くの人間に思い知らせてやろう。君に誰も手を差し伸べなかった人間たちに。後悔させてやるんだ。見せつけてやろう、君が来た!んだと。さあ、僕の手を取るんだ』

 

そう言って手を差し伸べてくる。

俺を勧誘するように。

甘い言葉だ。

俺が手を伸ばすと、白髪の男が笑みを濃くする。

しかし俺の手は途中で止まったからか、胡散臭い笑みを浮かべながら口を開く。

 

『不安かい? なに、心配ないさ、これからは僕がい――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オラァ!!』

 

伸ばした手を握りしめて頬を殴ると血を吐き出しながら吹き飛んだ。

理由なんてひとつしかない。

この世のものとは思えない“邪悪な気配”がしていたからだ。悪の帝王、悪の救世主、悪のカリスマ、邪悪の化身。

まるでかつて戦った宿敵、DIOを思わせる。

こいつは間違いなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

なんで俺が手を取ると思ったのだろうか。

本体が居たら殴るだろう。

俺も殴る。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!!』

 

なんだかバリアを貼ったり、空気を押し出す+筋骨発条化+筋肉肥大化+瞬発力×5+膂力増強×5と他にもなんか言ってたが筋肉を大きくしたり衝撃波を放ってきたり空気の膜を貼ったり電撃を放ってきたりと、ビーム撃ってきたり。

個性は1人1つという聞いていた話とは違ったがひたすらフィジカルにものを言わせて避けては殴打した。

だが俺のスペックじゃ押し切れない。息を吸って引き寄せて殴ったら対策してきたし。

チッ、スタープラチナの本来のスペックならば殺れただろうに。

仕方がなく一時撤退。このままでは街が滅びる。というかほぼ壊れた。

大人しく逃げた。

 

『フ、フフフ……! 志村奈々やオールマイトより遥かに強いパワーにスピード。あの時に君が居たら危なかったかもしれないな……この僕に何度もダメージを通すなんて初めて見る力だ。奪うつもりが奪えなかった! “視る”限り個性ではないようだ……。 奪えないな……まるでOFAのような力……ますます君が欲しくなってきた……!』

 

本体以外の男にそんな気持ち悪いことは言われたくない。

心からそう思った。

なんだ、あの白髪男。

無駄に強いし、個性って人は複数持てるものなのか? 嘘情報で俺を惑わすのはやめて欲しいものだ。お陰で何度か被弾してかなり肉体が痛い。あのまま戦ったら負ける。

やつを倒すなら能力解放のために器を探さねばならない。スペックをあげても裁くのは厳しそうだ。

だが俺を受け入れられる器はこの世界にいるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君を僕のものにするために個性を見つけてきたんだ。時間が掛かったが、これで君は僕のものになる……!』

「……?」

『……? おかしいな、僕の個性が発動しない。いや、効かない? 洗脳を跳ね除けているのか? まさかそれほどまでに強固な精神を持っているのか……?』

 

バカか?

本体の精神力を無礼ないで欲しい。

俺はあの人の精神体だ、洗脳やら催眠やらその程度の力で俺の精神力を超えられるわけがないだろう。

それらを無視してくるものだったら話は変わっていたが。

俺を操れるのは“黄金の精神”を宿すものだけだ。

邪悪な精神しかないお前に操れるわけがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全く操れないとなると困ったんだぜ。考えてきたが、やはり思いつかなかった。あまり手荒な真似はしたくないんだ。僕は君を傷つけたいと思ってないのはわかってくれるかな?』

『オラァ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕と一緒に来れば君は自由になれる! こうして隠れて動く必要はないんだぜ? 別に君は人助けが好きってわけじゃあ、ないだろ?』

『オラァオラァオラオラ! オラオラオラオラオラオラオラァ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふ、フフフフ。弟以外に僕がこんな気持ちを持つなんてね。ようやく理解したんだ。どうして君をこんなに欲しいと感じるのか。なぜ諦めることができないのか。これほどまでに欲しくて堪らないのか。

何度も戦って解った。いずれ魔王となる僕には必ず孤独というものが訪れる。僕と同等の力を持つ存在。決して居なくならず傍にいる存在。なるほど、僕には無縁なものだと思っていたんだがな――』

 

 

 

 

『僕は君が大好きになってしまったようだ。君が欲しい!』

 

 

『お……オオオ……オラァ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『心に従えばいい! 本当にやりたいことはなんだ? 本当に叶えたい願いはなんだ!? 本能に従うといい! 僕の物となるなら君の願いは僕が叶えよう!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当に興味深い存在だ。その力も君の在り方も! 一体何が不満だ? 話してくれたっていいだろう? 僕と君の仲じゃないか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕なら君が欲しいものを全て用意出来る! 地位や名声、お金。人。ありとあらゆるものを君に与えられるのはこの僕だけだぜ?』

 

何回も来られるとさすがにウザイ。ストーカーだろうか。成人してるなら働くことをおすすめする。人間はそういうもんだ。

そう思いながらまたしても殴ってお引き取り願った。

しかしこいつと戦うと街が壊れる。素直に引くときは引いてくれるのだが。しつこい男は嫌われるぞ。

だが、やはり勝つことはできないので逃げるしかない。

非力な人間や関係のない人間が酷い目に遭うことは本体は望んじゃいないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変装する羽目になった。

お陰で勧誘は無くなったが、あまりにしつこくてパワーがまた上がった気がする。

そろそろスタープラチナの全盛期超えるかもしれない。認めたくないが、白髪男のせいで。

真面目に誰か、あいつを戦闘不能(リタイア)にして欲しい。期待するだけ無駄か、この世界のヒーローじゃやつには勝てないだろう。

やはり非力、弱すぎる。

ただ以前にヒーローは大したことないやつらと言ったが、一人だけ修正せねばならない奴が出てきた。

それはオールマイトとかいう人間だ。いや、俺が何度も逃げ回ってた時に大災害が起きたらしく、そこでのデビューらしいのだが多分俺と白髪男の戦闘が原因かも知れない。

もしそうだったら申し訳ないとは思う。

何はともあれ、その時に遠くから目視出来たのだが人間か怪しいところではあった。

しかしあいつは今の俺に近いパワー。あの白髪男に近い人物だ。

やつだけは認めてもいいだろう。本体には及ばないがな。

だが、もし会えたらヤツに取り憑いて見るべきか。あの精神力ならば個性があろうと俺が入る器があるかもしれない。

しかしソイツだけ。

本体が居た世界の人間の方が強いのではないだろうか。主に精神力。

あの白髪男に関してはいつか時を止めてオラオララッシュを決めなければ気が済まない。必ずやろうと誓った。

そういえば“天国へと到達”する俺も居たらしい。いっそのことそれを発現する方法を考えようかと思ったが、恐らく出来ないので諦めた。

元の能力を取り戻すことが先決か……出来たならばヤツの個性を封じられたはずだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心が擦り減っていく。

 

流石に人と関わることなくいると人格というものがおかしくなりそうだ。暴れてるやつをひたすら殴ってバレないうちに逃げるしかやってない。

正気を保っていられるのはスタープラチナのお陰か。

本体の心を、思い出を常に伝えてくれる。

それが無ければ、きっとあの邪悪の塊に乗せられてしまっていただろう。

この世界に来て何年だろう。

白髪男から逃れるため、記事にならないように高速で場から逃げてるからか俺の噂はめっきり無くなった。

なんか何処から嗅ぎつけてきたのか公安とかいうやつはいたが、オラァ!した。

変装も必要なくなったようで、ローブで身を包む程度で十分なまでに戻ってきた。

だが、やることが無い。

精神エネルギーの塊がヒーローというものはできないし戸籍もない。食べる必要もないし休む必要もない。

ひたすら歩くだけ。

俺自身が悪に染まることは本体が望んだことではない。

どちらかと言うとぶちのめす方である。

 

俺にやれることはない。

 

 

だから彷徨う。

今日もまた、孤独に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタープラチナとは何かと友達というか親友みたいなものになりつつある。

いや言ってる意味が分からないというか、俺も良く分かってない。

スタープラチナであってスタープラチナでなくて、俺であってスタープラチナでもある。

人格がふたつあるようでひとつで、ひとつのようでふたつ。

そんな妙な、変な状態なのが俺という存在なのだ。

スタープラチナの意思もあり、俺の意思もある。共存している、というべきか。

寂しいと思う気持ちは俺もスタープラチナにもあって、互いになければならなかった存在。

俺は必要とし、スタープラチナも俺を必要とする。

生命維持のためでもあり、精神が壊れないためでもある。

――精神エネルギーの塊が精神を壊せば、どうなるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

危うい思考に行きかけた。

壊してはならない。

これは、俺は、あの人(承太郎)が残した精神の塊。

俺が壊れるということは本体を汚すということになる。スタープラチナは最強であり無敵でなくてはならない。

それは実力も精神面でも。

しかし寂しいという感情ばかりはどうすればいいだろうか。

本体に会いたいのに会えなくて。

俺が歩き回る理由は――本体を探すため?

そもそも俺はなんで生きたいんだっけ。

自由が欲しい? 名誉が欲しい? お金? 人肌?

分からない。

なんでスペックを取り戻す必要がある?

白髪男以外には負けない。

俺自身の心の持ち方でもパワーの差があることはわかったが、だいたいやってくるやつは雑魚のクズばかりだ。スタープラチナのスペックを考えたなら弱体化してても余裕すぎる。

白髪男の時だけはスペック以上のパワーが出ているのを知った。

恐らくかつての本体の思い、邪悪を討つという指示が俺にパワーを与えているのだろう。でなければ平常時のパワーがA-くらいのパワーの俺ではヤツと渡り合うことは出来ない。

他に関しては強化がなくても返り討ちになんて出来る。

探す必要なんてないんじゃないだろうか。

 

――そうだ、世界を見て回ろう。

大丈夫だ、スタープラチナには俺がついている。俺にはスタープラチナがついている。

一緒に見て回ろう、本体が仲間たちと苦楽を共にし、記憶に刻まれた物語を。

かつて彼らが旅したように俺たちも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香港に行った。

シンガポールに行った。

インドに入国後、カルカッタに行った。

聖地ベナレスに行った。

インドからパキスタンの国境、ワーガに行った。

パキスタン、カラチに行った。

アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビにも行った。

サウジアラビアに行った。

エジプトに入国した。

カイロに行った。

DIOは存在していたら今のうちにぶちのめそうと思ったがまず存在してなかった。吸血鬼になるような石仮面もないし、本体のようなやつら(スタンド使い)は居ないのだろう。もちろんスタンドの矢もなかった。

不正入国になってしまったが、スタンドらしく他の人からは透明になれることを知ったのでそれを使わせてもらった。戸籍がない以上はどうしようもなく手段すらないので許して欲しい。

というか人間じゃなくてスタンドだから問題ないだろう。

透明に関しては本体が居ないからか一時的にしか使えないような微妙に役に立たないものだったが。

どれにせよ、思い出した。

かつて本体が仲間たちと旅をしたことを。

様々な経験を。

ああ、本当に……とっても懐かしい。

心が暖かくなる。

スタープラチナの心も、俺の心も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに日本へと戻ってきた。

全世界制覇をして悪人をオラオラしまくってたが、何気に俺の夢が叶ってしまった。

……俺の夢ってなんだ? プラチナではないらしい。

プラチナというのはややこしいので姿はスタープラチナ、意思の方は“プラチナ”と呼ぶことにしたからだ。俺のことは“スター”となっている。

俺たちはスタープラチナ。安直だが、星と白金で分けてこそ俺たちなんじゃないかというわけでこうなった。基本操作してる俺が前の方の名前をプラチナからの提案で貰ったのだ。

ぶっちゃけ長年旅したらややこしくなってきたのが大きい。

しかしプラチナが違うとしたら俺か。俺はいつか世界を見て周りたいと夢を持ってたのかもしれない。

もう少し、頑張れそう。

頑張ろう、俺たちは無敵の、最強のスタンドと称されたスタープラチナなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本は変わらなかった。

海外も日本も治安の悪さは似たようなものだ。

日本は知らん間にオールマイトが“平和の象徴”となっていたらしい。

犯罪率が低下したとか。

確かに少なくなった気がする。

昔と違って俺がオラオラする必要もなくなってきたかもしれない。

オールマイト以外も世代が変わった影響か個性も強まっているみたいで、俺が最初に居た時よりはまともなヒーローは増えている。

それでもまだまだ、弱いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか子供が握手を求めたら逃げた女がいた。

流石に子供に俺が近づいたら怖がらせてしまうが、なにか面倒な気配がする。いや悪の気配。

放ってはおくな、と本体の血筋が言ってくるような気がする。ならば従おう。

スタープラチナは本体の指示で動く存在だ。

子供には話しかけず、路地裏に逃げた女の手を掴む。

 

「お前、一体……!?」

 

事情を聞いた。

なんか手が汚れてるらしい。

洗えばいいと思う。

……意味が違ったようだ。手を血で汚しすぎたのだと。

俺も拳は血に染まっているから言ってる意味は分からなくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――ォオオオオオオラァ!!』

 

場所を聞いたあと、公安に乗り込んでかいちょーとやらを殴り飛ばした。

悪を裁くのはスタンドの役目だ。

自分の手を汚さず他人にやらせ、そいつの心を蝕む。十分悪人だ。

人が来たので証拠だけ消して逃げた。

嫌がらせに何か使えるかなと持ってた白髪男の髪を置いとこう。一本だけだが、見つけてくれたら万々歳かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――女が俺を探し出して見つけてきた。

レディナガンというらしい。一度汚れた手でもヒーローをやれるか聞いてきた。

ヒーローでない俺に聞かれても困るが、喋れない*1のでサムズアップしといた。

プラチナの姿が見えたなら、間違いなく両腕を組んで頷いてた気がする。

よくやったと言わんばかりに。

本体なら必ず裁いてたもんな、分かる。

俺とプラチナは同じ考えで、久しぶりに役目を果たせて喜んでいた。

 

「ま、待って! 待ってくれ!」

 

さっさと去ろうとしたら、手を掴まれた。

俺のパワーならば外せるが、危ないだろう。

本体も別に女が嫌いってわけではなかったし、殴る理由にはならない。

 

「名前を聞かせてくれないか……?」

 

星の白金(スタープラチナ)

 

おじちゃん喋れないの?と言って親切な子供がくれたフリップボードに滅茶苦茶綺麗な字を書いて見せた。

超自信作。思わずドヤ顔。

精密さも上がってきたかも。

興味なくなったのか離してくれたのですぐに去る。

 

「スタープラチナ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個性が溢れすぎている。

昔に比べて随分と増えたようだ。

何やら世界総人口の約8割が特異体質となってしまったらしい。

結局オールマイトとやらは一度も会えなかった。

“黄金の精神”を持つ者、果たしてこの世界にそんな人間はいるのだろうか。

もう何十年もこの世界を彷徨っているが、世界を旅したしやることが無くなってきた。

真面目に器を探して白髪男をオラオラして消えよう。

あの悪を裁くのが俺と、そしてプラチナに与えられた最後の仕事なのだろう。

他にも裁いて欲しいやつが居るならやるが、とっとと終わらせて本体の元に戻して欲しい。

え? 俺はどうなる?

さあ、消滅するんじゃないかな。俺は結局スタープラチナじゃないし、プラチナは元に戻ると思う。一緒に行こうと言われても行ける保証はないし、俺はプラチナが本体の元に戻れるならそれだけで嬉しいしな。

……プラチナが黙ってしまった。元々寡黙だし、珍しくはない。

実際俺はどうなるのだろう。プラチナと一体化するならそれはそれでいいし、消えるなら俺だけ消えるのならいいだろう。

世界を旅できたし、未練はない。

プラチナを一人残すことになるなら話は変わってしまうが、そうでないなら問題はないはずだ。長年付き添ってくれた親友、報われて欲しいと思うのは人間として当然の思考なのだから。

ああ、あるとすればやはり、あの時本体を護れなかったことか。

――まぁこれも俺じゃなくてプラチナの思いだから俺の未練と言っていいか分からないんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彷徨う。

 

彷徨う。

 

彷徨い続ける。

 

目的もなく、器があればいいなと。

 

だが結局、器なんて見つからないものだ。

精神は世界を旅して本体のことを思い出したお陰で安定したが、今思えば俺とプラチナの心が衝突しあって歪みつつあったのかもしれない。

やはり旅に出たのは正解だった。

今では孤独でも精神を蝕まれることはない。

スタープラチナとして完成してきたのかもしれないな。成長性Aなだけある。

このまま全て測定不能まで行こう。俺とプラチナは一度護れなかった。

本体の元に戻ったら次こそは護れるように。

 

 

 

また何年か経って。

あれから白髪男は一切見ないし俺を諦めたのか、それともオールマイトの存在がやつを防いでいるのか。

女はたまに追ってくる。一体どうやって俺の存在を見つけ出しているのだろうか。スタンドになってからか、人間の感情はよく分からない。

ヴィランは変わらずヴィランだった。オラオラしといた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日。

昼下がり、季節は夏、ジジジとアブラゼミが鳴いている中で住宅街にある公園をたまたま過ぎった。

何かの感覚。

まるで()()()()使()()()()()()()()ような感覚と共に、俺はそこへ足を踏み入れていた。

別にスタンド使いがいたわけではない。

そう、これは――()()なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の視界に映るのはしゃがみこみ泣いている少年とその少年の前で庇う緑髪の少年――

 

「ひどいよ、かっちゃん……! 泣いてるだろ……!? これ以上は僕が許さゃなへぞ!」

 

そして対峙する三人組

リーダー。

いやガキ大将だろう黄色髪の少年が前に進む。

 

「“無個性”のくせにヒーロー気取りかデク!!」

 

爆破らしき個性を発生させて、一人は翼を生やし、一人は指を伸ばす個性。

だがそこはどうだっていい。

――会えた。

 

見つけた。

 

 

 

 

器を。

 

 

 

俺を受け入れられる可能性を秘めた子供を。

 

 

 

あのもじゃもじゃの緑髪はまだまだ未熟ではあるが、“可能性”を感じられる。

 

 

目の前の恐怖に屈しない勇気。

 

 

弱者を思いやる優しさ。

 

 

悪質・卑劣・無責任な言動や思想を真っ向から批判・糾弾する誇り高い意志。

 

 

 

すなわち――()()()()()

いかなる困難をも跳ね除ける精神力。自身の矜持と責任に殉じようとする覚悟。己の宿命をありのままに受け入れる潔さ。まだ足りない部分こそあるが、器たり得る。

何よりその精神性に、“個性なし”。“無個性”となればもはや運命。

ヒーローになりたいのだろう。

白髪男をオラオラするまでだが――力を貸してやろう。

“黄金の精神”を持つ可能性を秘めた子供!

 

『オラァ!!』

 

「はっ!?」

「ぎゃっ!」

「ぐえ!」

 

「え……?」

 

高速デコピン。

綺麗なワンパンKOをした。

軟弱なのは時代が変わっても同じようだな。

 

「お、おじちゃんは……だれ……?」

 

星の白金(スタープラチナ)

 

「え……?」

『……!』

 

通じなかった。

そうだ、目の前にいるのは幼子か。

ならば。

 

『すたーぷらちな』

 

読みやすくしてあげた。

 

「すたー……ぷらちな……」

『少年。ヒーローになりたい?』

「う、うん! でも僕、“無個性”だから……ヒーローには……」

 

ヒーローというのは面倒なものだ。

元々ヒーローってのは与えられるものだろう。

支持を得てそうなるからヒーローなのであって、職業のヒーローとはまた異なるもの。

この少年が人を助けたら助けられた人にとってはもうヒーローだろうに。

後ろの子供みたいにな。

 

『少年はヒーローになれる』

「う、そ……ほん、とうに……ぼくも……なれるかな……。おーるまいとみたいに……おーるまいとみたいなヒーローに……なれるかなぁ……!?」

『なれる。身体を鍛えさえすれば、いずれ。だから俺が少年の力になろう』

「う、うう……ぁあああああああ――!!」

 

目の前で泣きじゃくる緑髪の少年に膝を着いた俺は頭をそっと撫でてやった。

本体にも及ばない。仲間たちにも及ばない。

まだまだ未熟でひよっこで泣き虫で、弱く脆い人間。

だが俺の目が節穴でなければこの少年はいずれヒーローへと至り、皆に希望を与えるだろう。

“黄金の精神”を鍛えあげよう。

そうして必ず帰す――プラチナを本体の元に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言い忘れていたが。

 

 

 

 

これは俺が少年をヒーローにして、プラチナを本体(承太郎)の元へ帰すための、帰すまでの――物語。

 

 

 

 

 

*1
喋れることを忘れた。





こういう設定でこんな話もあっていいんじゃないかというフィーリングで書いた1発ネタ。
スタープラチナが出現したのは志村奈々現役時代。
AFOのお友達をひたすらボコボコにしてたら存在がバレた。
その間に噂が広がった結果、志村奈々、グラントリノ、オールマイトはAFO討伐のためにスタープラチナを探そうとなったが見つからずに原作通りへ。
IFとなるが、もし合流してたら志村奈々は生存。
オールマイトに取り憑いて1秒だけ可能になった時止めオラオラで大ダメージを与えることに成功するが、隙を見て志村奈々に放ったAFOの一撃をスタープラチナが庇って深い眠りにつく。
トドメは完全に刺せずAFOは逃走。スタープラチナは仮死状態となり、オールマイトは原作以上に滅茶苦茶曇る。
もしくはAFOに奪われ、オールマイトにとっての恩人と神野の際に戦うことになったりする。原作より曇る。

本作の設定はスタープラチナは人間になったわけでも個性になったわけでもなく、精神の塊がうろうろしてるので個性の有無程度なら魂で判別してる感じ。黄金の精神はなんかそういうオーラが見える。今回なら緑色。オールマイトなら金色。かっちゃんはスターくん視点だとカスだったのでガン無視。
スタープラチナは器があれば能力の発動が可能になり、なければ基本スペックで押すしかない。
ちなみに取り憑くことが出来るのはスタープラチナの意思によるもの。それが無ければ殴り弾かれるため、無理矢理宿すことは出来ない。
スペックはスターくんのお陰でなんか限界突破した。Aが最高だけど既にSくらい行ってそう。
実はスターくんはパワーが低くスピードが最速。プラチナはパワーとスピードを兼ね備えているが、スピードはスターくんより低いって差もあったりする。

声が多かったら続けるかも。
特にそういうのがなかったら1ヵ月くらいで消す。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。