星の白金(ひかり)で断つ運命   作:クルセイダース

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幼馴染

 

さて泣き止んだ少年は俺がデコピンしたガキをわざわざベンチで休ませたいとか言ってきたので、仕方がなく適当に放り投げてベンチに寝そべらせた。

人間の感性もある俺からすれば苛めなんてクソくらえなのだが、この優しさもまた“黄金の精神”がある証だろう。

 

「あ、あの……すたーぷらちなさん」

 

首を傾げる。

相手は子供だからわかりやすくしてやらねばなるまい。

 

「ぼく、ほんとうに無個性で……だから、なんの力もなくて……」

『手をだすといい』

「……?」

 

俺の書いた通りに手を出す少年の手を掴むと、俺の身体は少年の中へと入り込んだ。

――力が滅茶苦茶抜けた。

この宿主、軟弱どころか弱すぎる。さっきまでの精神力なら時止めを発動出来ると思ったのだが、今は発動すら出来ない。

なんなら俺のスペックが一気に下がってパワー、スピード、射程距離においてD……下手したらE近くまで下がってしまっている。間くらいだろうか。

だがまあ、まだ喋れるようになった程度の子供。

こうなることは許容範囲だ。これからは死ぬ気で鍛えてもらおう。

いずれは俺が分離せずとも俺のスペックを引き出せるだろうしな。

プラチナもちょっと渋い顔をしてそうな反応だった。うーん、まあ俺たちの本体は子供の頃から強かったからね。

セト神の能力で身体を7歳に戻されたとはいえ返り討ちにしたし。

この少年はエネルギーのムラが激しいな……爆発力はあるが安定感がない。

ふむ……本体のひいひいおじいちゃん*1に近いかもしれない。

 

「す、すたーぷらちな!? どこ!? どどどどどうしよう!?」

 

俺が死んだと思ったのか慌てる少年を内側から感じ取り、俺は身体の中から出てくる。

視覚は共有出来るらしい。

 

『ここにいる』

「よ、よかったぁ……ど、どこから?」

『少年のたいない。今は少年の個性に俺がなった、とにんしきすればいい』

 

詳しい説明は少年が大きくなってからでいいだろう。

今伝えたところで少年は理解できない。

 

「ぼくの、個性……」

『これでヒーローになれるだろう?』

『なみだをふけ』

『ほんもののヒーローになりたいなら、ないているひまはない』

 

書いては消してと高速でやることで通常の会話と変わらない速度で筆談出来る。

分離してたらスペックが元に戻るのは俺が少年と完全にひとつになったわけではないからだ。

憑依に近い形だろうな。やろうと思えば人格を乗っ取れるけど、やる必要ないし本体はそれを望まない。

繋がったままだとまだ戦闘は出来ないから度々分離する必要はありそうだ。

俺はあくまで本体(承太郎)のもので誰のものになるつもりもないのもあるが。

 

「うん……うんっ……!!」

 

涙ぐんでこそいるが泣き止んだ少年に俺は満足そうに頷いた。

さて、小学生になったら鍛えるとしようか。

少年の両親にはどう説明したものか……個性と言ったらいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかあさん! ぼくにも個性出来たよ!」

「!! 出久……」

 

家に帰ったあとは少年は嬉しそうにすぐに母親に報告していた。

名前は“緑谷”という苗字らしい。

少年の言葉に酷く辛そうな表情を浮かべていて、やはり無個性で産んでしまったことが重くのしかかっているのだろう。

世界総人口の約8割が特異体質となった状態だ。俺がこの世界に出現した時にはそこまでは居なかったが。

どちらにせよ個性が全てになりつつある今、無個性ってのはディスアドバンテージが大きすぎる。

サポートアイテムの開発などに行くならば知恵さえあれば問題ないだろうが……。

ふむ、どちらにせよこれからお世話になる人だ。俺としても辛いままで居て欲しくないしプラチナの想いも同じだ。

 

「ほんとうだって! みてみて、すたーぷらちなさん!」

 

呼ばれたので出現する。

バーン!と両腕を組んで出現すると、少年の母親は驚きで顎を開いて手に持っていた皿を落とした。

おっと危ない。スタープラチナの速度を以てすれば余裕である。

分離してキャッチすると母親に渡す。

 

「あ、ありがとうございます――って、ぇええええ!?」

 

スーッと少年の元に戻ると、背後に立つ。

ゴゴゴ……と文字が浮かんでいた。

あっ、これ見えるのか……。本体の時も見えていた? プラチナもよく分からないのか……。

 

「こ、個性!? 本当に!? でも私の個性とは全く違うしあの人の個性でもないし……こんなこと有り得るの……?」

 

少年から母親の個性は既に聞いてある。

相性が良くて助かったとも言えるだろう。

信じられない様子の母親をツンツン、と指で突くと俺はフリップボードに書いた。

 

『少年は奥方の個性を受け継ぎ、“引き寄せる体質”を持っていて、俺は霊として取り憑いている状態。故に少年は相性の良い霊の個性を使う個性を持っている。悪霊は俺が祓ってあるから心配ない』

 

ズバリこれである。

俺、いや俺たちは所謂幽霊と分類出来る存在。

そして母親は引き寄せる個性を持っているらしい。なら派生した個性として霊を引き寄せるようにすればいい。ただそうなると他の霊も……となるわけで、相性のいいという言葉を付け足してある。

時止めの能力とかを誤魔化すのならばこれが一番いいと判断した。これならば霊である俺の能力と認識されるだろう。

中には個性を貸したりコピーしたり譲渡するものだって世界を探せばあるだろうしな。

矛盾はない、はず。

 

「うそ……病院じゃ個性がないって言われたのに……でも実際にここにいるし……夢……?」

「おかあさん。ぼく、ヒーローになれるかな……!?」

「出久……」

 

母親が俺に目を向けてくる。

どういう意図か分からないが、信じてもらうしかない。

俺は頷くと、母親は駆け出して少年を抱きしめていた。

 

「うん……うん! なれるわ、きっと……! よかった……よかっだねえ……いずぐぅうううううう!」

「う……うんっ……うああぁぁぁ!!」

 

二人して泣き出してしまったが、涙とは思えない量に俺は驚いた。

これ、個性なんじゃないのか? と思ったのは俺だけだろうか。

どちらにせよこれで解決だろう、多分。

……似てる? そうだな、ホリィさんに似てるかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというものの。

 

「おれとしょーぶしろ! デク! おれのほうがすごいんだ!」

「か、かっちゃん……で、でも……」

「うるせー!」

『オラァ!』

「があああ!?」

 

絡んできたいじめの主犯格を俺が加減して殴り飛ばした結果、少年に個性が芽生えたということが認知された。

 

「次こそはおれがかつ!」

『オラァ!!』

「うぎゃっ! み、みとめねぇ……みとめねぇからな!!」

 

なんでか知らないが勝負を挑んでくることが増えた。

あまりにしつこくて軽くオラオラしたが、このままでは埒があかない。

それどころか全く改善しないことからいずれこのクソガキは取り返しのつかないことをするだろう。

本来ならば俺がどうこうする必要もなければ義理もない。

しかし――少年と共にいるならば関係性は大切、か。

“個性”が勝ったって意味はない。それは結局俺が勝ってるだけなんだ。

予定より早いが――少年の出番だ。自分たちの関係は自分たちで修復すべきだろう。

何故ここまで目の仇にしてるのかは分からないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

1年の月日が経った。

まず貧弱な体を強くすべく、腕立て伏せや腹筋、背筋、スクワット、走り込み、それらを倒れるまでやらせた。

例え動けなくなろうとも俺が運べる。

ご婦人には俺が考えた栄養バランスの整った飯を用意してもらった。俺が干渉出来ることも受け入れてくれたので手伝い程度はする。

ただ飯は用意されても食べられないので断ったが。エネルギーの塊が摂取出来るはずがない。

無論鍛えると言ってもずっと鍛えてるわけではない。

休むこともさせた。

人間が強くなるに手っ取り早いのは超回復に頼ることである。

たったの一年だが、もやしからちょびっともやしには変わった。

本当はムキムキにさせたいが、幼少の頃に筋肉を付けすぎると成長後にどんな影響があるか分からない。

我慢我慢。目指せ本体(承太郎)並だぞ、少年。

動ける程度に筋肉をつけさせたらあとはひたすら俺と実戦。軽く拳の打ち方や体の使い方を教え込む。

あとはタイミング次第で訪れる日を待ち、今日がその時らしい。

完全に分離し、俺は手を出さないと両腕を組んで遠くから見守った。

奇しくも同じ現場だ。

初めて少年と会った時と同じく、誰かを守ろうとする少年と攻撃を加えようとするガキンチョ。

翼が生えたガキを投げてもう一人にぶつけて撃破した少年に、爆破のガキが襲いかかる。

 

「おれがすごいんだ! 木偶の坊(むこせー)だったやつが! おれを見下すな!!」

 

右の大振り。

()()()()()かのように少年は弾くと、腹パンしていた。

攻撃を止めず左手で右頬を殴り飛ばしている。

驚いてか頬を抑えたまま動揺していたが、2人はもつれ合いながら互いに殴っては蹴ってを何度も何度も繰り返している。

 

「かっちゃんは……かっちゃんは!!

どんな時も諦めなくて。どんな時も勝とうとしてた。どんな相手にだって逃げようとしなかった!! そんな君は画面の向こう側の英雄(オールマイト)より身近な、すごいひとなんだ! なのに、どうして、なんでこんなことをするんだよっ!!」

 

「こんなことをしなくたって、君なら絶対に“凄いヒーローになれる”じゃないか!! ヒーローは人を救うものだろ!! 今のかっちゃんはどうなんだよ!!」

「……!! お、れは……」

 

そして、完全に勝負があった。

拮抗していた力の差は、精神という形で少年に分があった。

実力差うんぬんかんぬんではなく、迸る黄金の精神を見ていればどちらかの方が優れているのか俺には分かる。

今の少年を相手にすれば、爆破のガキは勝つことなど絶対に出来やしない。

揺らいだ精神で勝てるほど甘くは無い。

確かにこの歳ならば実力はある方なのだろう。

しかしながら爆破のガキには精神力があまりに足りてなかった。

こいつは隠してるだけで少年を“恐れている”んだと。

――予めそれを知っていたからこそ、鍛えてぶつけたのだが。

 

「デク……いや()()。そこのやつも……わるかった……俺が、間違えてた……」

「……へ?」

「本当は恐かったんだ。むこせーのお前が個性を得て、本当は俺は凄くないんじゃないかって……認めたくなかったんだ。手を伸ばされたあの日からずっとお前に負けてたってこと……俺じゃ勝てないんだって……。認めたら自分が自分でなくなるんじゃないかって。許されることじゃねえのはわかってる。わかってっけど……」

「ゆるさなくていい。恨んでくれてていい。だけどお前に追いつくために……今度は勝つために……お前より強くなるために……もっともっと強くなる。だから……ごめん」

「かっちゃん……顔を上げてよ。許すとか許さないとか、そんなんじゃないんだ。そんなのどうだっていい。僕にとって必要なのは……僕だって負けない。すごい君に追いつくために……僕を諦めさせないでくれたあの人のために絶対にヒーローになる」

「……あぁ」

「だから今日から、ここから始めよう。今度は一緒に」

「……そうだな」

「「ここから――」」

 

 

 

 

 

「「最高(最強)英雄(ヒーロー)になる」」

 

「「約束だ!!」」

 

拳と拳を合わせて、笑いあっていた。

将来を、未来を見据えて誓い合うように。

完全勝利とはいかない。

互いにボロボロだ。泥臭いバトルだったし、お世辞にもかっこいいとは全く言えない。

だがまあ、その泥臭さこそいいのだろう。

自分たちの力で解決したことだし、この約束はいずれ彼らに力を与えるかもしれない。

 

「そ、それと!!」

 

仲良きことは美しきかな。

肝胆相照らすとはこのことなのだろう。

などと考えていたら爆破のガキが俺の元に来て、俺とプラチナは完全にシンクロした。

疑問符を浮かべる。

 

「あ、あの……サイン、ください……」

『オラ……オラァ!?』

 

――何故か爆破のガキ――いや、爆破の少年にサインをせがまれた。

照れくさそうに、というか恥ずかしそうに。

個性にサインを求めるってなんだ……? いや、もしかして俺が個性でないということがバレている……!?

俺とプラチナはめちゃくちゃ汗を搔いた。

一応サインはないから適当に名前を書いてやったけど、胸元で抱きしめながら見たことがない満面な笑みを浮かべていた。

やはり人間、よく分からん。俺も人間だったはずなのにな……。

……後悔してる? いやいや後悔はしてないよ。プラチナとこうして居なきゃ俺の心は潰れてたし。プラチナと一緒にこうして生きてるのが今一番楽しいんだ。

俺の最終目的も決まったしな。

とにかく一件落着、か。

“やれやれだぜ……”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★

 

 

――怖かった。

怖かったんだ。

ずっと後ろを歩いていたはずの、“無個性”のはずなのに。

個性が芽生えた。

人型の、幽霊みたいなやつ。

かっけえ見た目をした存在感が半端ない人。

どうやらデクは霊を引き寄せる個性で、それを宿せる力に芽生えたのだと。

個性由来ものだからか誰にでも見えて、普段は大人しくデクの中に引っ込んでいるらしい。

 

たまたまだった。

街で見た。

デクの母親に頼まれたのか買い物袋を片手に歩いていたソイツを追って。

偶然目にした。

巨大なヴィランに出久の個性という人が真正面からワンパンしていたところを。

凄まじい風を起こして、たったの一撃で。

――重なった。

憧れに。

勝利の象徴(オールマイト)に。

羨ましかった。

そんな憧れの人みたいな力を持つ存在を宿すデクが。

俺より前に居るんじゃないかと。

俺は本当は強くなんかなくて、弱いんじゃないかって。

許せなかった。

だから――実力を知らしめようとした。

なのに。

 

『こんなことをしなくたって、君なら絶対に“凄いヒーローになれる”じゃないか!! ヒーローは人を救うものだろ!! 今のかっちゃんはどうなんだよ!!』

 

冷水を浴びせられたかのように冷静となって、ようやく理解した。

殴られて、殴り飛ばされて。

個性を使わず負けて。

違ったんだ。

俺は勝っていたんじゃない。

()()()()負けてたんだ。

心で。ずっと負けてた。

眩しかった。

緑色の、眩い光が見えた。

俺はオールマイト(ヒーロー)じゃなくて、俺は(ヴィラン)だった。

でも、それでも。

輝きを見た。

その輝きを追い越したくなった。

認められて――嬉しくなっちまった。

きっとあのままならば俺は、これ以上の、もっと大きな取り返しのつかないことをしていた。

デク……いや“出久”が変化したのはあの人が一緒に居るようになってからだ。

体も鍛えられて、実力も伸びて、そうして俺も、変えられた。

あの人に何度も負けたから。あの人の強さをこの目で見たから。

――増えたんだ、憧れが。

あんたには恥ずかしくて言えねえけど……出久との関係性が変わったのは間違いなくあんたのお陰だ。

あんたが居なきゃ出久は変わらなかった。

俺もまた、自分を認められなかった。

この罪は忘れない。ずっと背負って、背負い続けて生きていく。出久が許そうとも俺が自分を許さない。墓まで必ず、背負い続けて見せる。

だからもし、もし俺がもっともっと強くなったなら、出久より強くなったら、並んだら、その時は……俺とも一緒に戦ってくれるかな。

白金(プラチナ)()

俺のもうひとつの、憧れ。

最も身近で。最も近くで照らしてくれる、俺の行くべき道を導いてくれた星の輝き。

今度はもう、二度と間違えねぇ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ジョナサン・ジョースター。





とりあえず要望と評価がある程度あったので1話の半分くらいの短さだけど一度続きを書いてみました。
こんな感じになるんじゃないですかね、という例。
つまり原作キャラ救済ルートになるのかな。
このまま続けば燈矢のためにエンデヴァーオラオラしてしまうかもしれない。
こんな感じでもいいと言うんですか皆さん。
私は1話を書き殴ったあと何も考えていなかったのだ……ッ!! ドドン!!


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