星の白金(ひかり)で断つ運命   作:クルセイダース

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異なる、もう一人のヒーロー(主人公)

 

後日。

俺は少年の中から指示して轟家に赴いた。

一度様子見のためにひとりで赴いたことはあったが、改善しつつある様子から連れてきても大丈夫だと判断した。

 

「こ、ここであってるよね」

 

合ってるぞ少年、と伝える。

少年の中にいる間は意識が繋げられるらしく、一種の念話が出来る。

これはスタンド使いがスタンドに指示を出すように似たような現象が可能なのだろう。

俺が委ねれば少年は俺を操作することも出来る。

――まぁ今のところ操作されても攻撃力皆無の速度も皆無のただの案山子にしかならないので分離して動いてた方がいいのだが。

ただ一緒に居ることは悪いことばかりではなく、満たされる感覚がある。

恐らく精神エネルギーの補給的な感じ。今のところ少年はただのタンクだ、もっと強くなってくれ。

ヒーローを目指す以上は今の少年は弱すぎる。

しかし他の誰も居ない時や会話をする必要がない時は筆談よりも直接脳に声を届けられる方が楽なのでこうしてるわけだ。

あの時、フリップボードをくれた少女には感謝せねば。消せるタイプだから使い回し出来るし。

ただずっと使ってきたからボロボロになりつつある。

申し訳ないが、ご婦人にお願いして持ち歩き出来るホワイトボードでも買ってもらうべきだろうか。

フリップボードは大切な品なので少年の部屋に保管させてもらおう。

 

「君が緑谷出久くん……だな」

「ほ、ほほほほほ本物のエンデヴァー!? ゆ、夢……ッ!」

「お、おい!?」

 

少年が死んだ。

すぐにキャッチするが、完全に気絶している。

やはり5歳児のメンタルでは厳しかったらしい。

オールマイトと会ったら死にそうだ、会わせないようにしよう。少なくともある程度耐性が出来るまでは。

あの世に逝かれては俺が困る。

 

「お、俺はそんなに怖いのか……」

 

ガーン、と周りに文字が浮かんでそうなくらい落ち込むエンデヴァー。

 

『5歳の少年には刺激が強かっただけだ。気にするな』

「そうなのか……? 愛想良くしたつもりだったのだが……」

「そう言いますけど……炎司さん少々怒ってるように見えてましたよ」

「な、何!? む、難しいな……」

「とにかく休ませましょう。目を覚ましたら……焦凍と遊んでもらった方がいいでしょうから」

「……」

 

そう言って視線を向ける白髪の女性を追うと、そこにはツートンカラーの少年がこっちを見ていた。

あれから少し経つが、関係性は少しずつ戻ってきているらしい。

家族――好いていた末とは違い、長男は嫉妬をしていたのもあってぎこちないが向き合えているし対抗心を燃やしている。次男と次女に関しては仲は元々悪くなかったみたいだが、今は家族らしくなっている。

そして大男ことエンデヴァーは家族との時間を作り、奥方とガーデニングを始めて歩み始めているらしい。

――付き合いたてのカップルみたいな初々しさを見せられて何を見てるんだろうとは思ったな。

 

俺はゆっくりと歩み、ツートンカラーの少年に背を合わせるようにしゃがむと手を差し伸べた。

俺の顔と手を往復して、恐る恐る手を取る。

そんなツートンカラーの少年を俺はそっと抱えると、持ち上げながらゆっくりと回転した。

スタープラチナの速度だと吹き飛ばしてしまうからな。

次第に楽しくなってきたのか笑顔に変わったツートンカラーの少年を見て、俺とプラチナは満足気に頷いた。

やはり人間、それも子供は笑顔の方がいい。

 

 

 

 

 

 

 

遊んだことに奥方には感謝されてしまったが、その影響か懐かれてしまったらしい。

長男と末が俺を取り合い、代わりに遊ぼうとしたエンデヴァーが二人から拒否されて落ち込む姿があったが奥方に持って行ってもらったあと、少年が目覚めたので彼らは一緒に遊んでいた。

縁側では少年と家族が遊ぶ姿を微笑ましそうに眺めている。最初に会った時と違い、今は幸せそうだった。

それを見てから、俺とエンデヴァーは改めて対峙する。

 

「スタープラチナ。お前には感謝してもしきれない。何度だって言うが、本当に感謝する」

『一度失えば二度と返って来ない。その辛さを知ってるから自分勝手に動いただけ』

「……そうだな。その通りだ。今になってよく分かる。俺は大事なものを失うところだった。お前は……その経験があるのだな」

 

何も書けず、無言を貫く。

――忘れたことはない。

この記憶だけは俺もプラチナも忘れることは絶対にない。

本体を守れなかった、あの時のことを。

忘れてはならないのだ。

これは俺とプラチナの、動力源でもあるのだから。

 

「妻とも少しずつ、上手くやれてると思う。まだまだこれからだが、俺がやってきたことにも向き合い、過去を忘れさせてやれるように幸せにしていくつもりだ」

『過去は変えられない。だが不確定の未来ならばまだ変えられる』

「ああ、必ず変えてみせるとも。燈矢の体質も……今はサポート会社に問い合わせている最中だ。訓練は個性より肉体や対人戦闘を重点的にしている。個性の方もひとまずは火力を下げて適応させる方面で行っているところだ」

『末は?』

「焦凍か? 焦凍は……燈矢がやるなら自分もって志願してきてな。無理はさせない程度に鍛えている。無理をさせてお前に殴られたくはないからな。だが燈矢も焦凍もいずれは俺を超えるヒーローになれるだろう」

『それはよかった』

 

何かに囚われた目ではなく、エンデヴァーの目は子を思いやる父の目だ。

というか親バカ。

自分を超えるヒーローになれることを誇らしそうにしている。

吹き出しに『すごいだろう』と見える。

残念だが俺の本体の娘の方が凄い。

 

「だが……俺はお前に聞かねばならん。スタープラチナ、お前は何者だ? 俺もヒーローだ。頂点に位置するオールマイトを見てきたから分かる。そのパワーは数いるヒーローの中でも最もオールマイトに近い。速度に関してはやつより少し劣る程度だろう。しかしそれほどの強さを持っているのであれば、今頃No.2の地位はお前のものになっていたはずだ。だというのに姿を今まで見たこともなければスタープラチナというヒーローは存在しない」

 

尤もな疑問だろう。

聞きたかったことはこれか。

No.2という地位。その力量。

ひとりで抱えるのではいずれ限界が来るかもしれない。

今のこいつなら話しても問題ない……か。

 

『俺は――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンデヴァーに話したことは簡単だ。

ひとつ。俺自身もよくわからず、40年前くらいからこの世界に気付けば居たこと。

突然変異かと言われたが恐らく、としか答えられなかった。

人間ではなく、精神のエネルギー。つまり幽霊みたいな存在であり俺自身は異形型というわけでもなければ個性でもないこと。今は使えないだけで(正確には違うが)本来の能力が個性だということ。

そのため人の世では暮らせず戸籍もないため、ヒーローにはなれないこと。

少年は取り憑いた霊の個性を使えるもので、霊を引き寄せる個性に適応したことで、今は彼の個性代わりになっていること。ただ元は普通に存在していたため、分離が出来ること。

俺自身が幽波紋(スタンド)ということは話さず、あくまで守護霊ということは話してある。

 

「個性でもそうだが……突如出現し、ひとり歩きする存在、か……聞いたこともないな。それもこうして人と変わらず生活する力を持ち、知能もあれば人間社会に適応している。筆談とはいえ人と話すことも出来るとは。それにそれほど前ってことはオールマイト以前から居るということではないか」

『途中で日本から出た。世界制覇したあと、帰ってきたのは数年前。だから俺の存在は日本では当時しか知られてないと思う』

『だが、昔は幽鬼として名は知れ渡っていたらしい』

「幽鬼……そういえば幼い頃、そんな名前を聞いたことがあるような……数多くのヴィランを拳だけで退治していた凄いヒーローがいると」

『それは多分俺。悪人を殴りまくってたせい』

「そ、そうなのか。しかし……このままではマズイかもしれん」

『?』

 

あの時の治安はそれはもう酷かった。

すぐにいざこざが起きるしオラオラする機会なんてどれだけあったか。

お陰で白髪男にバレてひたすら体を狙われる日々。

なんか告白して来たし。

だがマズイとは何がマズイのか。

 

「事情は分かった。納得も出来るが、それはあくまで()()()()()俺だからだ。緑谷と離れてヴィランと戦うとなれば世間一般から見ればスタープラチナは法を破り、ヴィランを退治する非合法(イリーガル)ヒーローと扱われるだろう。その外見では異形型の個性を持つ人間が免許もなしに戦ってるようにしか見えん」

 

ふむ、それは確かにそうだ。

ヒーローというのは面倒なことに免許が必要であり、自己防衛においての個性こそ許可されているがヴィランと戦う際にはヒーロー免許というのが必要になっている。

スタープラチナは人間じゃないので気にしてなかったが。

 

「スタープラチナだけならば問題なくても緑谷の個性として居ることにしているなら戦う度に緑谷が個性を使ってると思われるだろう? 人を救うために力を使うことは悪いことでは無い。俺も救われた身だ。だが法が存在してるのは秩序を守るためだ。秩序が乱れればまた混沌が訪れる。故に守らねばならない。その結果、いずれ緑谷の将来に影響を及ぼすかもしれん」

『だが戸籍がない以上は免許は取れないだろう。何もしないでいることは不可能だ。この世には存在する悪が多すぎる』

「でなければヴィランなど存在していないからな。そこで提案だ。スタープラチナには仮免許を取って貰いたい。いきなりプロヒーローの資格は取ることは出来ないが、仮免なら取れる。時期的にも9月の仮免には参加可能だ。いずれプロの資格も取ってもらうが、それがあればスタープラチナが活動したって文句は出ないだろう」

 

ヒーロー公安委員会が運営する試験だったか。

仮免というのは緊急時に限りプロヒーローと同等の権利を持ち、ヴィランと戦ったり事件や事故において救助活動が出来るというものだ。

それは……ヤバいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、何ィイイイイイ!? あの事件はスタープラチナが起こしただとォ!?」

『ヒーローコスチュームの女性が困ってた。話を聞いたら悪人だった。裁いた。反省も後悔もしていない』

「スタープラチナらしい理由だが……!! その女性のことは分かるか?」

 

そんな感じの名前だった気がするので話したら正解だったようだ。

かいちょーとやらを思わずオラオラしてしまった件のこと。

だが俺は殺してはないはずだが、いつの間にか殺されていたらしい。

なんでも病院に搬送中に殺害されたらしく、ヴィランの犯行になっているようだ。

俺が置いてあった()()()()()()が見つかってないということはやつが見つけ出して殺したのだろう。世間では殺し損ねたヴィランが殺したということになったらしい。

チッ、どうやって俺のことを知ったか分からないが上手く証拠を消したらしいな。

 

『確か、筒美火伊那……レディ・ナガンというヒーロー』

 

割と遭遇するというか俺のことを見つけ出してきた結果、名前を向こうから言ってきた記憶がある。

自由の身になれてヒーローの活動も出来てるらしいが、忘れたらいいのにその時のことを未だに感謝しているらしい。

散歩してたら度々会いに来る。発信機でもつけられてるのだろうかと錯覚してしまう。

俺がいくら気にしなくていいように伝えても全く伝わらないのだ。

 

「レディ・ナガン……? あのスナイパーライフル使いのヒーローか。であれば……むしろ好都合か。少なくともスタープラチナは殺していないのだろう?」

『全治数ヶ月くらいの怪我にはさせた。だが俺は幽霊だ。指紋がない上に証拠は存在しない。目撃者も居ない』

「ヴィランの仕業ということにしたことから公安も隠したい事件なのだろう。それに殺害したのは間違いなくヴィランだ。

――殴って全治数ヶ月は十分問題ではあるが、証拠もない上にスタープラチナのせいだとは誰も思わない。大丈夫なはずだ。それにいい情報を聞けた。俺の推薦だけで通せると思うが、レディ・ナガンからの推薦もあればスタープラチナに仮免を受けさせることが必ず出来る。すぐにプロヒーローの資格も取れるはず」

『そういうものか』

「俺はこれでもNo.2だぞ? そしてレディ・ナガンもヒーローボードチャートの6()()に位置するヒーローだ。当然それは信頼が厚いと言える。俺とレディ・ナガンの推薦で通せねば、オールマイトでない限り絶対に不可能ということになる。問題は協力してくれるかだが……連絡は俺から取って見よう」

 

エンデヴァーは少年から聞いていたが、あの女性はそこまで活躍するほどにヒーローとして頑張っていたのか。

彼女からそれは聞いてなかった。

確かに上位に位置するヒーロー二人からの推薦であれば可能、か。

 

『一応知り合いだ。名前を出せば俺のことは知ってると思う』

「分かった。話が通れば緑谷の家に電話しよう。それまでに仮免の対策……と言いたいが……スタープラチナの実力なら落ちることはないだろう。むしろ落ちたら誰も仮免を取れん。いつも通りに過ごしてくれて構わない」

『そうしよう。何から何まで悪いな』

「そう言うな。これでもまだまだ借りは返せそうにない。これからは何かあれば俺が必ず力になる。何でも言ってくれ」

 

よほど何かしたいらしい。

俺もプラチナも望むものはない。俺たちは本体の元へ戻れるならなんだっていいのだ。

しかし……そうだな。ひとつお願いしてみよう。

 

『そうか。じゃあ帰る前に少年にサインを書いてあげてくれ。あの少年はヒーローオタクなんだ。No.1に最も近い男からのサインなんて喜ぶに決まってるだろう?』

「――フッ、そうか。そうだな、約束しよう。やはりスタープラチナ……お前はお人好しなのだな」

 

真剣だった、硬い空気が俺の文字で和らぐ。

凝り固まった空気よりも弛緩した空気感の方がいいだろう。

それは外にも漏れ出ていたのか襖が勢いよく開かれる。

 

「スタープラチナ! 俺と組手しろー!」

「燈矢。まだ炎司さんとスタープラチナさんがお話中で……ごめんなさい。この子ったら」

『気にするな、奥方』

「燈矢!! まだお父さんたちは話が終わって……」

「おとーさん。もう遊べる?」

「ぬぐ……っ!」

『末と遊んでやれ。このバカは俺が面倒見る』

「……頼む」

「誰がバカだーッ!」

 

飛びかかってきた白髪の少年をデコピンすると少年の真横を突っ切って吹っ飛んで行った。

ワンパンKOである。加減はしてあるので問題ないだろう。

頭上でひよこが回り、少年があわあわと慌てていた。

少年も少年で落ち着きがないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから月日が経ち、レディ・ナガンに推薦をお願いする話は即答でやると返ってきたらしい。

お陰様で俺は仮免試験に書類系統をスキップして参加することができ、無事に取得した。トップヒーロー二人からの推薦となると怪しむ必要すらないからだろう。事情があると察してくれたらしい。

試験に関しては昔からやってきたことを今更やったって難しいはずがない。

本体も一般人を極力巻き込まないようにしてきた。その経験もあるからな。

轟家とも仲が深まり、奥方とご婦人同士も仲良くなったり少年とツートンカラーの少年も仲良くなったり家族仲も無事に良くなったり、白髪の少年は少しずつ成長しているようだ。遊びに行く度に俺を引っ張ってくるのは変わらないが、その度にエンデヴァーが落ち込んでるのでもう少し父親と関わってあげて欲しい。

あの絶望したような顔は俺の心に効く。

しかし未だに少年は年長だ。

鍛えることは出来ない。

そして俺は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暇だったので東京に来ていたッ!

 

ドドン!

 

どんよりとしたような雨が降りそうな天気。止んだあとなのか水たまりがそこら中にある。

既に2月。

冬なのもあって寒い時期だ。スタープラチナにはそんな寒さは問題ないので特に何も感じないが、そこはどうだっていい。

俺はここで少年とは違う“黄金の精神”を持つ人間を見て驚いた。

あの男、俺から見ても凄い存在だ。

川に溺れたピンク髪の少女を助けるべく飛び出した男が居たのだ。

いくら気づいたのが遅かったとはいえ、()()()()()

まず気づいたとして行動に移せる人間がどれほどいる?

何より川に飛び込む際に服を着ていると危険だ。それを理解してか服を脱ぎ捨てて飛び込んでいた。

見た感じまだ中学生だろうに。魂の成長から考えれば3年だろうか。

その男の身長ならば足が着くくらいの川だったが、子供からすれば流される水量。

俺は二人を引き上げたが、近くにいた市民の人が暖める個性を持っていたようで暖めていた。

申し訳程度だが。ドライヤーと多分ヒーターみたいな個性。

パンツ一丁の少年にとっては冬というのもあって寒いだろう。

残念ながらスタープラチナに温もりを与える力は無い。街中でなければ摩擦による火は起こせるのだが。

 

「あっ、あの! すみません! 誰かっ! 俺のパーカー!」

「ああ、これね! はい!」

 

そのためかパーカーがないか聞いた少年が周囲に呼び掛ける。

すると拾ってくれた人が居たのだろう。差し出された赤いパーカー……オールマイトのパーカー?

それを受け取ると。

 

「いや……俺じゃなくて! この子に!」

 

自分ではなく溺れていた少女に被せていた。

――凄いな。

もし少年と出会ってなければ、俺はこの男に取り憑くことを決めていただろう。

しかも感じられる“魂”の潜在能力は半端ない。下手したら少年以上だ。成長すればとんでもないヒーローになるかもしれない。それこそオールマイトに匹敵するような。

それから服を着た少年は四つん這いのような妙な体勢で試験、遅刻だの言って何も求めず去っていく姿を見送った俺は、彼がヒーローになれることを願った。

ああいうヒーローらしいやつは嫌いじゃない。言葉と日数から察するに高校受験の大事な時期。今遅刻したら受験に間に合わないというのにそれを棒に振る可能性がありながら少女を助けた。

報われるべきだろう。

プラチナもあの少年には良い印象を抱いている。

受験となると自分の力で乗り越えなければならないため、俺は手を貸してやれないが、せめて願うだけは願おう。

いつかこの少年がヒーローとなることを。

その時は俺もあの少年を影からサポートしよう。いずれ成長し、一人前になれるまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いい体験が出来た。

出来たのだが、路地裏でカツアゲをしている現場を目撃してしまった。

行くぞプラチナ! 悪は裁く! 任せた!

 

『オラァ!!』

 

プラチナのパワーに掛かれば余裕。

――やりすぎじゃない?

壁貫通して飛んでいってしまった。凄いキリモミ大回転。

生きてる? あれ死んでない?

え、本来よりパワーが上がってる影響? 軽く殴ったつもり? 確かにスタンドパワーが全開ではない、普段の状態でも俺が殴る時は全盛期に近いパワーは出てるはずだが、俺より威力が高い気がする。プラチナの場合は超えてるんじゃないか?

うーむ、スタープラチナそのものに変化が生じているのか。そもそも俺たちの存在って本体も居ない。魂がふたつ存在している。意識もふたつあるという本来のスタンドとはかけ離れた存在だ。

元々本体が居たスタンドとなると、銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)・レクイエムだろう。

あれは本体の死後動いていたという。正確には魂が入れ替わった状態だったらしいが。

だが俺たちは()()()()()には至っていない。

最終手段のひとつとして持っておこうかと思ったけど、スタンドの矢そのものが見つからなかったしな。

あれは勝手に突き刺しにいく代物でもある。

俺が見つけられなかっただけで誰かが持っているという線は薄い。なぜならスタンド使いを見たことがないからだ。矢が存在してたら6本あると思うし、詳しい年数こそ分からないが、おおよそ40年くらい探して1本も見つからないのはおかしい。

それも人間ではなくスタープラチナの俺が、だ。

どちらにせよこの異常な事態がスタープラチナそのものを変質してるのだろう。

もうちょっと軽く殴って。

 

『オラオラオラオラオラァ!』

 

プラチナが力を抑えた状態で全身を石に変質したチンピラを殴ると、今度は人がぴょーんとギャグのように飛んでった。

やっぱスペック上がってるな……。

プラチナも困惑している。基本俺が動かしていたし、殴ったのは木だけだったしな。

俺とプラチナで差でもあるのだろうか。

とにかく俺たちはその場で跳躍し、建物の屋根を跳んで逃げていく。

カツアゲされた人にあとは託した。

俺の存在がバレて白髪男に狙われてはたまったもんじゃない。今の俺たちが見つかれば少年に被害が行ってしまう。

時止めが発動出来ない以上、やつの相手はもうしたくないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿主のところに向かう前に俺がオラオラして、その後にプラチナがオラオラした。

スタープラチナの目の良さならば把握出来ると思ったのだが、ビンゴだ。

俺の場合はプラチナよりパワーは劣るがスピードが速い。一方でプラチナは俺よりスピードこそないがパワーに優れ、安定したスピードを持っている。

スタープラチナの性能が分割した……わけではないだろう。

だとしたら普通スピードの俺。パワーのプラチナになるはずなのだ。

やはり魂の影響だろうか。

もしかしたら時止めの能力もまた変化してるかもしれない。

試せないので分からないのだが、この状態から考えるなら基本スペックのプラチナ。特殊能力の俺とも言える……か?

分からないものは仕方ない。

そろそろ少年も帰ってきてることだろう。俺たちも帰ろう。

ご婦人の手伝いをせねば。

少年の父親は海外に居るらしいが、子と妻を置いて何をしてるのか。

真面目にオラオラしてやろうか。

こんな多感な時期に仕事の都合だろうと子供を置いて海外に行くのは親としてはどうかと思う。

まだ少年一人だからマシだが、子供が二人居た場合、ご婦人のメンタルがやられかねないだろうに……。

んんー。確かに。

そういえば本体に関しても娘に対する接し方は決して褒められたものじゃなかったな……。

本体に関してはまあ、色々あったし有名なスタンド使いってのもあって仕方がない部分は多々あったが……。DIOの残党やら矢とスタンドやら事件ばかりだったし。

家族を守るためだった。ただ本体は仲間たちが真意を汲み取ってくれる人たちばかりだったので言葉足らずだったのだ。

少年の母親は一歩間違えたら本体の、離婚した妻のようになってた可能性もあったわけだ。

……いや、本当に何してんの。別に命を狙われてるとかそういうわけじゃないだろうし。

個性を聞いた感じでも大したことないしな。

まったく、この世界の父親はどいつもこいつも似たようなものしかいないのか?

俺たちが負担を減らすしかないか。

“やれやれ”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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