星の白金(ひかり)で断つ運命   作:クルセイダース

6 / 9
知らない間に伸びてたけど、そろそろ7部始まるな。こっそり投稿したらバレない説。
果たして2ヶ月前に投稿したものを覚えてる人はいるのか。その間に私のより面白いヒロアカの小説も出てましたし。
前書きはこんなもんで、あぁ〜イイッすかねェェェェェ〜




普通ではない(異常者)とされた少女

 

エンデヴァー、轟家とはすっかりと仲良しだ。

大半は末のツートンカラーの少年と少年を遊ばせるために少年を同行させて来ることが多く、今は長男、次男含めて遊んでいる。

そして残りの赤毛の混じった白髪の少女――轟冬美という長女だが、彼女は参加することなく俺の膝上に何故か乗っている。

スタープラチナのスペックで重たいと感じることはないが。

 

「ごめんね、スターくん」

『気にするな、奥方』

 

奥方は困った様子で頬に手をやっているが、その瞳は優しかった。

……こうして子供を抱くことなんて記憶に全くないな。

本体の娘は本体の記憶で知ってるが、抱っこしてやったことはない。

こうして受肉した、とも言ったらいいのだろうか。

それ故に感じられるのもあるのかもしれない。

あくまで本体の意思で触れるか触れられないか選択出来るだけだったしな。

物質同化型など一部は例外として。

 

『だが何故俺の膝上に……?』

「だって……スターさん、全然私の相手してくれないもん」

 

少女は既に小学6年生だ。

思春期真っ只中なのは分かるが、確かに彼女の相手はあまりしたことはない。

拗ねたような態度を取る彼女に俺は困惑しながら、とりあえず頭を撫でた。

 

「……もっとしてください」

「あらあら……うふふ」

『奥方?』

 

微笑ましそうに見てくる奥方に思わず目を向けると、いつの間にか反転してきた少女が正面から抱きついてきた。

俺とプラチナ、超困惑。

二人して考えてみる。

なぜこんな甘えてくる?

俺は轟家にとってどういう立場?

仲を改善した? そうだな。

白髪の少年を連れてきた。

エンデヴァーがあまり構ってやれなかった? そうかも。

 

なるほど。

俺とプラチナは、合点がいった。

彼女は――父性に飢えているッ!!

 

バァーン!!

 

「絶対違いますからね?」

『!?』

 

な、なにィ!?

まさか俺の心を読む個性を持っているのか!?

ま、まずい。だとしたら俺の存在が諸々バレるのでは……!!

流石に秘密を知られると困る。彼女が狙われてはエンデヴァーも俺も困るのだ。

特にようやく家族仲も良くなったというのに。

 

「スターさん。スターさん」

『どうした?』

「その……こ、今度の花火大会、一緒にどうかなー……と」

『そういえば少年がそう言っていたな。エンデヴァーにも相談して少年と少年の幼馴染、轟家と全員で行くとしよう』

「……むぅ」

「前途多難ね、冬美」

「お母さん分かって言ってるでしょ! いいもん、胃袋掴むから!」

 

残念ながらスタープラチナにご飯を食う機能は備わっていない

同化していたら味は感じるが。食えても金銭的な意味で世話になりたくもない。

正直何を言いたいのかは俺もプラチナもやはり分からないが……まあ、まだ小学生だ。甘え足りないのだろうな。

奥方も以前は憔悴していたし。

 

「と、とにかくっ。燈矢兄や焦凍ばかりでずるいです……私にももっと構ってくれませんか……?」

『善処しよう』

 

上目遣いで見つめてくる少女に、俺は大人しく頷いた。

関係性を俺が悪くする訳にはいかない。

エンデヴァーは秘密を共有した仲でもあるしな、後ろ盾としても便利だ。

少年やご婦人のことを考えるならばこれからも関係を保ちたいとも思っている。

 

「やった……えへへ」

 

子供が喜んでいる姿は悪くない。

絵面としては少々心配だが、そもそもスタンドには年齢という概念は存在しないだろう。

存在するとしたら、俺の年齢は発現時からだから……あれ、この世界で最低でも40年以上。本体の世界で30年以上だから70以上生きてる計算?

 

「ど、どうして落ち込んでるんですか!? よ、よしよし……」

 

そうか、俺はもうおじいちゃんだったのか……。

なんかショック。ああ、うん。子供に慰められるのもやばい。

だがすまないプラチナ、これはきっと俺の人間の部分のせいだ。

プラチナには分からないよな……うん。

とにかく慰められるのはどうかと思ったので、心配させないように手を掴むと顔を真っ赤にした少女を撫で返した。

なんだか目が温かくなった気がするが、同時に寒気を覚える。

これは――殺気?

方角は、背後ッ!!

 

「いくら貴様でも冬美はやらんぞ! スタープラチナァァァ!!」

「お、お父さんっ!? わ、私、まだそんなんじゃっ!?」

「あら……大変ねぇ。孫は見れるのかしら。そもそもスターさんって子供作れるのかしら?」

「お母さんー!?」

 

正直何が言いたいのか理解出来ず、状況もよく分からなかったが攻撃を避けることに集中していた俺は、収まりそうにないので少女を抱っこして走って逃走を試みた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年も成長し、未だ少年ではあるが小学生になったので鍛えることにした。

こういうのは早い方がいい。ヒーローになるならば体作りは基本中の基本だ。

俺は外付けの個性という立場ではあるが、憑依した状態だと戦闘可能な射程距離はどうやっても2mしか確保出来ない。

俺自身が常に分離すれば別だが、それだと少年は個性がない状態になる。俺自身も特殊能力は使えないしな。

なにより今はともかくヒーローになった場合、俺は自分だけで動くなんて出来なくなる。なぜなら知名度が出てしまうからだ。

もし外付けの個性ということが世論に広まればどうなる?

エンデヴァー曰く、トップヒーロー並の力を持つらしい俺という存在を誰かが取り込もうとする可能性が出てきてしまうだろう。

個性因子によって弾かれはするが、逆に言えばその方法さえ解決出来てしまえば俺の力そのものがヴィランに落ちるかもしれない。

1番最悪なのはそのパターンである。故に、少年には強くなってもらわねばならない。

プラチナも本体レベルとまではいかなくても、近づいて欲しいとは願っているようだ。

爆破の少年も一緒に鍛えて欲しいとか言ってきたため、互いに切磋琢磨出来る点は大きいだろう。

まだ少年の方がしょぼいが、ライバルという存在がいるだけでだいぶ違う。

実際に組み手をさせたりしているが、互いに動きは良くなっている。

まぁ、少年がボコボコにされることの方が多いため、既に顔面やら腕やら絆創膏を貼る必要が出てきているわけだが、ご婦人は俺が見てると知ってるからか不安にはなっていないらしい。

託されてる分、ちゃんと面倒は見るつもりだ。

それとやはり、エンデヴァーと関係を保っているのも大きいだろう。お陰で爆破の少年は個性を扱う特訓は出来るしツートンカラーの少年も負けじと頑張っている。

白髪の少年は、まあ徐々に炎の制御も可能になってサポートアイテムで体質の問題とも向き合っているようだし心配はないだろう。

最近自信がついてきたみたいで俺を見るなり喧嘩売ってくるので調子に乗らないように矯正しているが。

問題は無個性である少年だ。

とにかく他と違い、肉体を集中的に鍛えさせる。

 

『全力で走れ、少年! ヒーローを目指すならば体力は必要だ!』

「ひぃ……! も、もう、むりぃっ……!」

 

今日は一人で走っている少年を鼓舞していたが、体幹周りが弱くなってきたのかフォームが不安定になり、フラフラしながら次第に両膝に手を着いていた。

少年ははっきり言って、分析型の人間だ。

逆に言えば先読みする力を鍛え、動ける体さえ鍛えれば少年は無個性状態でもある程度戦えるレベルまではいけるようになる。

そして成長すれば俺自身を使うことも出来るため、パワーに関しても解決出来る……が。

俺とプラチナは二人して肩を竦めた。完全一致。肉体と心が完全に1つになって同じことを思った。

 

まだまだ小さいとはいえ、小学高学年くらいの相手とは殴り勝てるようになって欲しいものだ。

しかし倒れられても困る。

ひとまず水分補給のために公園へ覚束無い足取りで入っていき、飲み水で顔を洗いつつ水分補給する少年を見守った後に、タオルを被せてやった。

ガシガシと水滴を拭う。

ちょうど真夏だ。

そうすると汗を流せるし気持ちいいのは分かるが、夏風邪を引かれては修行も出来なくなる。その分ロスしてしまうと取り返すのが難しい上、ヒーローは体調管理も必要だ。

エンデヴァーにも体調には気を遣ってやれ、と言われている。言われなくても分かってると言ったら、何故か落ち込んでいたが。

ん? ブーメラン?

 

ああ、なるほど。確かに以前のエンデヴァーはツートンカラーの少年の状態とか気にせず無理矢理やってたみたいだしな。奥方からそう聞いた。

今はやり過ぎないように気を遣って過保護になってるしやりすぎたら奥方が叱ってるらしい。

覚悟が決まったのか、儚げな見た目をしてる割には強かになっているようだ。尻に敷かれるとはあのことだろう。

ヒーローの嫁になるのであれば、あれほど強くなくてはいけないのかもしれない。

 

ひとまず少年が走れそうにないため、俺は自販機で塩分を摂らせるためスポーツドリンクを購入する。

設置されている水は水分補給は出来るが、塩分は含まれていない。

水を飲んだから大丈夫なのではなく、水だけ飲んでも血液が薄まった状態なのだ。“水中毒”のようになると頭がモヤがかかったようになったり、倦怠感が強くなる他、筋肉・神経の信号が乱れたり集中力やモチベーションが低下したり熱中症や血液中のナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することで低ナトリウム血症になる危険性もある。

とにかく万全の状態に戻れるようにするのが1番なのだ。

 

ということでベンチに戻った――居ない。

周囲を見渡すと、もじゃもじゃ髪が見えた。

誰かに話しかけているようだ。

 

「どうしたの?」

「え……な、なんでもないのです!」

「ほんと? そうは見えないけどなぁ。僕でいいなら、ちからになるよ! 言ってみて!」

「でも……きっと怖がるのです。嫌になると思うのです……」

「なにを?」

 

スポーツドリンクを置いて少年の中に入り込む。

視線の先には金髪の少女が居た。

どこか、()()()()な顔をしている。

なるほど、少年はそれを見て動いたのか。

 

「……ち」

「ち?」

「わたし、変だから。“普通”にならなくちゃいけないの」

「うーん……? なんで?」

「わたし、我慢できないの。血まみれでボロボロな姿を見るとね、カァイイって思うの。チウチウしたいです。血、吸いたい。その人そのものになりたい。でも、両親はそれが嫌みたいで……だから我慢して……」

「個性のえいきょ?」

「そうなのです……たぶん……。ご、ごめんね。怖いよね、いやだよね。だからもう――」

 

俯いてスカートの裾を握る少女は、何処か恐れているようにも見えた。

 

ふむ……精神疾患と言うべきか。個性の影響は嗜好にも及ぼすのか。恐らく血に関連する個性。変身、といったところか。

彼女にとっては今発言したことが全てのはずだ。だが、両親がそれを許していない。親が彼女に、他と変わらない人間にしようと矯正しようとしているのだろう。

それは……どうなんだ?

俺やプラチナが居た世界とは違い、この世界は個性に溢れている。

血が好きで何が悪い? 彼女は恐らくヘマトフィリア(血液嗜好症)を患っている。なおかつ、同化願望か。

だがそれこそ――絶対会いたくないが吸血鬼の個性持ちが居た場合、その人物にとっては血を啜るのが普通だろう。他にも同化の個性とかいるかもしれない。

ならば血に関連した個性を持つ少女の場合、血に関連するのが好きになるのは仕方がないことなのではないか。

エンデヴァーの、白髪の少年と同じだ。

彼はヒーローであることを否定された。目の前の少女は“自我”を否定された。

それが増長すれば、ヴィランに転じてしまうのではないか? 個性社会は歪だ。こういったものたちを受け入れる基盤が出来上がっていない。無個性も虐められ、異形型も虐げられているという。

普通でない者を受け入れられない。オールマイトが居ても平和は訪れない。必要なのは一人一人が手を伸ばせるような、そんな世界じゃないだろうか。

ならば俺に出来るのはなんだろうか。

後でこの子の両親を裁くくらいしか出来ない。

いや、だとしても今彼女の心を救わねば危うそうだ。

どうするべきだ? スタンドである俺の血を与えるわけにはいかないだろう。俺という存在はかなり謎の存在だ。

 

スタンドは基本傷付けられると本体と連動するが、本体が居ない今、遠隔自動操縦型のような存在でスタンドの俺のみが傷つく状態になっている。

無論少年が操った状態ならダメージは連動するが、離れてしまえば流す血は俺だけのものになってしまう。

俺の血を摂取させるのはどんな危険があるか分からない。

しかし少年の体を使わせる訳にも行かない。なら輸血?

入手するにしてもすぐには無理だ。通行人に血液を貰う訳にもいかない。

何か別の方法で――

 

「じゃあ、僕の血でいいなら吸う?」

「……え」

 

俺が思考してる間に、少年は既に行動していた。

巻いていた包帯が外して腕を差し出している。修行の影響で擦り剥いて、治っていない傷が顕になった。

少女が愕然とした様子で見ていた。

 

「い、いの……? なん、で……」

「だって君が……助けを求める顔してたから」

「……ありがとう」

 

そのまま少女が血を舐め、歯を突き立てていた。

少年が顔を上に向けて痛いということを隠すように耐えてると。

 

「おいしいです……おいしいね……」

 

少女は頬を紅潮させながら、泣き笑いしていた。

その姿を少年の中で見ていた俺は、静かに視界をシャットダウンした。

 

――やれば出来るじゃないか、少年。

やはり“誰かを救う”。この一点に関して俺が見てきた中で誰よりもヒーローらしい精神性を持ち合わせている。“職業”のヒーローではなく、“本物”のヒーローである要素。

誰かに手を伸ばす。

言うだけならば簡単だが、行動に移すのは難しい。

俺に頼ることなく、自分の手でやってみせた。

同時に思うのが、何故この社会はこのようなヒーローらしい少年にすら夢を見せてやれないんだ、ということだ。

神様ってのがいるならば残酷すぎるものだ。一発殴ってやりたい。

本体の、ジョースター家の“運命力”もそうだが、あまりに困難が待ち受けすぎている。

少年にとっても、この少女にとっても、白髪の少年にとっても。

 

――分かっているよ、プラチナ。

だからこそ、()()()()。いや、俺たちが……だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

分離した俺は少年の腕に包帯を巻き直した。

突然出てきた俺に驚く少女に俺は背を合わせる。

 

「あ! えっとね、この人はすたーぷらちなさんって言って、僕の個性というか、なんというか……」

星の白金(スタープラチナ)だ。少年の中で話は聞いていた。事情を聞かせてくれないか?』

「スタープラチナ……さん……。はい、分かったのです」

 

警戒心を与えないように接すると、彼女はぽつぽつと話し始めた。

子供なので少々分かりづらく、想いを告げるだけだったが要約するとこうだ。

彼女の名前は渡我被身子。

個性は血を吸って対象に変身するというもの。

血まみれのスズメの血を啜った姿を見られた時に両親に否定され、認められず、彼女にとっての“好き”は好きな人になりたい、好きな人の血を吸いたいという純粋すぎる想いらしい。

異常者として扱われたため、個性カウンセリング――社会適応を促す制度、簡単に言えば人格矯正プログラムだが、それが始まって数年。

普通であることを押し付けられることに不満を抱き、生きにくいと感じ始めているようだ。

個性で変身出来るからこそ、その他者になれる力の源である血への執着を持っているのだろう。

他の人間は手を繋いだりキスしたりするが、彼女にとって何よりも満たされるのはそちらの方面なのだと思う。

確かに歪だろう。矯正しようとする両親の気持ちも分からくはない。でなければ将来、彼女は取り返しのつかないことをするかもしれない。

だが同時に間違っている。

だからこそ真摯になって向き合って、“擦り合わせ”をしなくちゃならないのではないか?

押し付けるのではなく、ちゃんと相談して説明して、受け入れた上で別の方法を探す。

そうしなくては壊れるのはこの少女だろう。

 

「すごいね!!」

「へ?」

 

話を聞いた少年は、目を輝かせて少女に向かって身を乗り出している。

距離が近いからか頬を紅潮させる少女。

女子相手に免疫がない少年にしては珍しい行動だ。いや、興奮して自覚してないだけか。

 

「変身ってことはもしかしたらその人の個性も扱えるかもしれないでしょ!? どこまで変わるか分からないけど、服とか所有してる物とかそういった小物にも作用するなら相手の情報を得られるかもしれないし血を飲むことが条件ならヴィランの敵地に乗り込んでスパイとして活動することが出来るかも。そうなったら立て篭りや組織化したヴィランの情報を得るには他にはないであろう個性だろうし、相手を惑わせることや混乱に陥らせることも出来るよね。というかやっぱり潜入に凄い向いてる個性だなぁ、血を飲むなんて忌避する行為だと思うけど、逆にトガちゃんの場合そういう意識がないわけで、それって悪いことじゃなくて良いことだと思うんだよね――」

 

また少年の悪い癖が始まった。

少女も突然の早口に呆然としているが、少年は止まることを知らず俯きがちにブツブツと言い続けては、ふと顔を上げた。

 

「あっ、血とかはどうなんだろ? 変わったりするのかな?」

「……多分? 調べてないので分からないのです」

「そっかあ。でも血液型も変化するならそれって凄い個性だよ! だって病院や現場において血液型が全員一致するなんて起きることないでしょ? 病院だって献血が無限にあるわけじゃないもん。でもキミがいればどんな血液だろうと、もしかしたら発見されていない血液型だろうと、稀有な血液でも分け与えることが出来る! それって言い換えると――」

 

 

 

 

たくさんの人を救えるような、人の役に立てる立派な個性じゃないかな!?」

 

 

僕にはとっても優しい個性におもえるよ

 

 

 

 

書こうとしていたホワイトボードを降ろして、俺は目を細めた。

“黄金の精神”が見える。

体中を纏うような、巨大な緑色の(オーラ)

 

「あ、れ……わた、し。な、んで……」

「え、あ……どどどどどうしよう!? な、なにか酷いこといっちゃったかな!? す、すたーぷらちなさん!!」

『やれやれだ……』

 

涙を流す少女に対して、さっきまでの姿もオーラも嘘のように霧散した。

慌てる少年に締まらないなと思いつつ、俺はハンカチを渡す。

すると意図を理解したのか、少年はハッとした。

 

「よ、よかったらこれ、使って?」

「……名前」

「え?」

「名前、聞いてないのです」

「あ、そっか! 僕は緑谷出久! いつかオールマイトのようなヒーローになりたいってそう思ってるんだ。今はすたーぷらちなさんに鍛えられてる最中なんだけどね! えへへ」

「……覚えたのです、出久君」

 

貰ったハンカチで涙を拭った少女は、さっきよりも違う、心からの笑顔を浮かべてるように見えた。

そんな少女に――少年は顔を真っ赤にした。

 

――免疫力も鍛えないとダメか? いや、そうだよな。少年の人生は少年のものだ。その一面は将来に直結する可能性もある。恋愛観を変えてしまうかもしれないし、この辺りは俺が言うべきではないな。

 

「出久君?」

「ひゃ、ひゃい。な、なななんでもないデスヨ!?」

「……ぷっ、ふふふ、出久君面白いのです。ありがとう」

「そ、そんな、僕なんて……」

「スタープラチナさん、出久君のこと、どうかよろしくお願いします」

『君はどうするつもりだ?』

「やりたいことが見つかりました。だからそのために頑張っていきたいと思ってます」

『そうか。ならば頑張るといい、応援しておこう』

「はい!」

 

どうやら俺が介入する必要は、ないようだ。

彼女は既に“覚悟”を決めている。

これから待つであろう困難な道を歩むと決めた“凄み”を彼女は持っている。

運命に立ち向かう“意志”を持っている。

こういう人間を俺は知っている。干渉するのは野暮ってものだろう。

だからこそ、俺は“任せろ”というように頷いた。

もとより少年を導くつもりだ。最高のヒーローにするまで、俺は少年を導かねばならない。

一度決めたことは必ずやり遂げねば、俺は本体に会わせる顔がなくなってしまうからな。

 

「出久君。このハンカチは必ず返します。この時のことを思い出すために、それまで。だからいつかまた会うとき――私を見つけてください。もしかしたら次に会う時は知らない誰かになってる状態かもしれない、けど」

「……よく、わかんないけど。みつけるよ、絶対! だって迷子の人を見つけて探してあげるのもヒーローだもん! もう大丈夫、僕がきた!ってね!」

「――」

 

憧れの、オールマイトの言葉を借りながら笑顔でそう告げる少年に、少女は目を見開いてゆっくりと閉じると、優しい笑顔を浮かべていた。

 

「はいっ。待ってますね、()()()()()()

 

少年は聴こえなかったようだが、スタープラチナの俺には無事聴こえている。

俺の力に頼ることなく、自分の力だけで人の心を救った、か。暗い靄を消し去って見せた。

やはり俺の目に狂いはなかったのだろう。

どうやらヒーローにさせねばならない理由がひとつ、増えてしまったらしいが。

 

少女はきっと、もう大丈夫だろう。

次に会える保証なんてない。

ないからこそ、少女は少年の一言で次に会うための動機を作った。

しかしこの出会いが少女にとって大きな影響を与えることになったのであれば、少年を忘れないのであれば、正しい道へといけると信じたい。

俺にやれることはないが、次に会うようになった時にヴィランとヒーローという構図にはならないことを願いたいものだな。

もしそうなった場合は――俺たちが背負うとしよう。

悲しい運命を背負うのは、俺たちだけで十分なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★

 

すごい人と、かっこいい人でした。

 

前者はスタープラチナさん。

出久君の個性らしいけど、とっても人間らしい個性。オールマイトにも負けないんじゃないかってくらいムキムキで、イケメン。

ただ珍しいけど明確な自我と知性を持っている個性も中にはあるらしいのです。

他の大人たちと違う、懐の大きさ。器の大きさって言うのかな。

不思議と安心出来るような、そんな個性。

私がこれからどう進むのかを、あの人は理解したんだと思う。そんな様子だった。

そのうえで私の背中を押してくれた。

私が助けを求めたらきっと、あの人は動いてくれた。そんな優しさと思いやりを、あの時の私でも理解していた。

あの人が居るなら出久君はきっと大丈夫。

 

そして後者は、緑谷出久君。

 

『たくさんの人を救えるような、人の役に立てる立派な個性じゃないかな!? 僕にはとっても優しい個性におもえるよ!』

 

なんてことのない一言だったのかもしれません。君にとっては“普通”だったのかもしれない。でも私にとってそれは、“普通”じゃなくて。気味が悪られるだけだった私に血を分け与えてくれて、肯定してくれて。

私にとってその言葉は、出会いは、青天の霹靂とも言えた。

絶望や息苦しさ。

私の虚無感は、疎外感は、消え去った。

否定しか無かった世界で、初めて私の“普通”を受け入れてくれた。

私の“好き”を認めてくれた。

もしあの時、出会わなかったら……私は普通を演じ続けていつか壊れていたと思います。

 

真夏の太陽のように、燦燦と煌めく光が曇天の空に差すように。

私の心は救われました。

その日から、私は頑張れた。頑張ると決めた。

あの日の言葉が、あの日の思いが、出会いが。分け与えられた血からも。

嘘ではなく本当のことを言ってるのだと分かって。

純粋な、水晶のような透き通った心。

君はそのままのまま、その心のまま、悪意に染まることなく成長していることを願ってるのです。あの人が居るので問題ないと思いますが。

 

カウンセリングにも通った。色んな人に話を聞いて、色んな個性の使い方を学んだ。“普通”であることを押し付けられることに不満を覚えることはなかった。

なぜなら決めたのです。

 

あの日のあの子に見合うような人になれるように。相応しい子になれるようになると。

私のヒーローに、近づけるように。“いつかの明日”にハンカチを返す、なんてちょっとベタな約束したけど、それを果たす日を夢見て。

 

私の心を救ってくれた男の子。

だから、だから私は、今度は私が誰かを救う立場になる。そんな最高のヒーローになる。

 

その日から色々頑張りました。努力を怠ったことはありませんでした。

いっぱい勉強して、いっぱい鍛えて。

より強く、より美しくなれるようにめざしました。カァイイと思って貰えるように、自分を磨いて。

 

だからまた会えた時には、貴方に見合うようなヒーローになっています。

ちゃんとした『人間』になって、あなたと笑い合えるようになりますから。

今度会う時は、ちょっと血が好きなだけの、“普通の女の子”として。

 

きっと貴方は、ここに来ると思います。

だから私は、先に待つことにしたのです。

 

 

――雄英高校で。

オールマイトに憧れてる貴方なら必ず来ますよね、出久君。

スタープラチナさんのような個性――いいえ、人がいるのであれば大丈夫なのです。

あの優しい眼も、私は忘れたことがありませんから。

ですから次に会う時は二人とも無事に、笑顔で再会できると、私は願ってます。

 

――あと入学したら担任の先生には気をつけてください。

相澤先生――イレイザーヘッドはとんでもない人なのです。私以外除籍になって復籍になりました。

特に真綿ちゃんは入試で一緒になって、受け入れてくれた初めての、大事なお友達だったので、彼女が泣いたことに私はぶちギレました。

意図は理解出来るのですが……感情はそうはいきません。

それに他に、もし一人で体育祭だったら私も泣いてましたので。

あれほどボロボロになって努力をしていた出久君と、なんだかとっても、そう……まるで誰もが空想するような、理想のお父さんみたいな偉大さを感じるスタープラチナさんなら心配ないと思います。

早く会いたいな、私のヒーロー。

 

 

 

 

 

 





ちなみに普通に考えてトガヒミコと会うのは無理だと思いますが、可能としてるのは取り憑いているスタープラチナの運命力です。
ジョースターの血統から生まれた幽波紋+スタープラチナになるほどの謎多き元人間が合体してるんだからそりゃ誰よりも運命力は高いです。
運命を操る神様に『しゅき♡しゅき♡愛してる♡』とされてるレベルで。特にスターくん。
心がすり減ってた時も『かわいい♡例え心が壊れても私が面倒見てあげるね♡』みたいな感じ。

冬美=サンはパパと結婚する!みたいな子供特有の思考をスタープラチナに向けてるだけです、エンデヴァーは泣いていい。親より父性が強いもので……。あと異形型との恋愛がある世界観だからスタープラチナって滅茶苦茶イケメンだしね。承太郎がモテるんだからモテないはずない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。