星の白金(ひかり)で断つ運命 作:クルセイダース
あれから年月は流れ――中学三年生。
少年の身長は184cmまで伸び、もやしだった体はすっかりと筋肉質な肉体へと変化を遂げていた。肩幅もかなりある。
これには俺もプラチナも表情が表に出るレベルでニッコリ。
流石に本体ほどは体質的な問題もあってか無理だったが、まあ向こうは“ジョースターの血統”という、とても素晴らしいものをお持ちなので仕方がないだろう。
白髪の少年は青年になり、『荼毘』としてプロヒーロー活動中。俺が免許を持ってることをいいことに何度も一緒にやろうと誘ってくるが、少年の個性という役目があるので何度も断っている。
ただ難事件が起きた際には手伝ってはいるが、プロヒーロー活動する際には変装しなくてはならないのが面倒だ。
ちなみに一部では俺はエンデヴァーの
ヒーローといえばレディ・ナガンとも共に活動することもあった。彼女は彼女で立派にヒーローをやれているらしい。
ちなみにヒーローネームは“
ヒーローであるなら
つまり変装用。
変装用のため耐久性をとにかく重視してるため、機能は全くない。なくても負けることなど余程相性最悪か変人変態白髪男並の凶悪ヴィランでも出現しない限りないので問題ないだろう。
俺のパワーで勝てなくてもプラチナのパワーで勝てるしな。
ちなみにツートンカラーの少年は推薦入試を受けるつもりらしい。
残念ながら少年と爆破の少年の中学校、折寺中学校には推薦は来ないので一般入試確定だ。
轟家とは仲も変わらず良好。
次男は家を出て一人暮らしをしているらしいが、彼女も出来ているようで大学生活を充実しているようだ。
しかし長期休暇や特に予定もなければ普通に実家に帰ってるらしいので、別に仲が悪くなったというわけでもない。
なんだかんだ、唯一普通に話す相手ではあるというか、彼は俺をもうひとりの兄として見てる節がある。
例えば彼女に渡すプレゼント。
どうしたらいいかなんて聞かれた時はスタンドなのでそういう気持ちがよくわからない俺とプラチナは頑張って悩んで頑張って答えた結果、『俺の答えよりも自分が選んだプレゼントの方がいい。言葉をしっかり添えてな』とアドバイスして誤魔化したら、後日感謝されたりとか。
なんというか、勉学に関してもそうなのだが割と相談してくる。勉学でも教えられるのでいいのだが。
長女はあまりよく分からないが、現在は21歳で成人を迎え、小学校の教師を目指してるらしい。
相変わらず俺に対しては甘えてくるが、親離れしてないのだろうか。まだ大学生とはいえ研修で経験するため、小学生の相手はストレスが溜まるだろうからストレス発散に付き合うのは全然構わない。家族に話したくないこともあるだろう。
だがエンデヴァーには特にしないらしいので、俺とプラチナはもしかして親として見られている……?
確かに成人した時には、プレゼントを強請られたので似合いそうなペンダントをプレゼントとして贈ったが。
スタープラチナの瞳ならば目利きだけは利く。そもそも本体がお金持ちだし見慣れている。
奥方も変わらず元気で、エンデヴァーとの仲も問題なさそうだった。
今では普通に夫婦として胸を張って過ごせてるようだが、時間を埋めるようにイチャイチャするのはどうかと思う。
割といたたまれないので、度々離れることが多い。
エンデヴァーが忙しいのはNo.2なので仕方がないが、帰れない時は連絡してるらしいので大丈夫だろう。
それはそうと基本的に分離する機会はかなり減ってはいる。
轟家に行く時や買い物行く時は離れるが、だいたいは少年の中だ。
少年自身の趣味の時は邪魔するのもどうかと思って轟家に居座ったり少年の家に戻ってご婦人のお手伝したりしてるだけだし。
プライベート0は嫌だろう。
「だいたい、ヒーロー科志望だよね!」
今は少年の中で学校生活を見守ってると、担任が進路希望の書類を投げ捨ていた。
クラスメイトが個性を使う中、軽い注意で済ませる担任だが、何かあったら自分の首が危ないことは自覚しているのだろうか。
「そういや、爆豪と緑谷は雄英志望だったな」
「マジ!?」
「おう」
「爆豪はともかく緑谷もか……」
担任が普通に個人情報を漏らした。
周囲が驚いていたが、爆破の少年ではなく少年に視線が集まる。
少年は無個性のままだ。
別に俺のことは明かしてくれてもよかったのだが、中学になってるのもあって俺の存在が特殊なのを自覚して隠しておきたいらしい。
一応誤魔化す設定は作ってはいるが、少年がそれでいいなら俺は何も言うつもりは無い。
「いくら緑谷が鍛えてるとはいえ、“無個性”だろ?」
「“無個性”だと無理じゃないか?」
「でも、緑谷優しいし頭いいでしょ」
「ねー。あんたらとは大違いよね」
「差別するのは良くないと思いまーす」
「急に刺してくるのやめてくんない!?」
肉体作りはいい方面にいってるらしい。
お陰で少年はバカにはされなかったようだ。
叩き込んだ甲斐があるな。
(スターさんの投球とか死ぬかと思ったなぁ……)
そんなことを思っていたら、少年が遠い目をしていた。
普通に思考が流れてくるから分かるのだが。
あれでも加減はしている。俺が全力で投球したら少年は避けることも出来ずに
“太陽”の暗示を持つスタンド、『サン』の幽波紋使いのようにな。
動体視力を鍛えるなら速いボールを見て慣れた方が良い。
無個性である以上、最終的に頼れるのは自分の肉体だ。
「別にどこを目指すかなんてそいつ次第なんだからいいだろ。つか、無個性だからって入試を受けてはならねえなんてねーしな」
爆破の少年もすっかりと丸くなったものだな。
やはりよく分からん。
俺が生きていた時代とは違うのもあるだろう。個性なんて聞いたことないし。元々記憶がないから分からないんだけどね。
波紋とか幽波紋は? って?
それもないと思うよ、こういった特別な力も何もない、普通の世界だった……と思う。だって個性や幽波紋の記憶を得ても一切思い出さないし。
まぁ、なんでもいいんじゃない? 俺は今はスターで、もう一人のスタープラチナなんだし。
うーん、複雑そうな感じだ。
プラチナは自分のことを知ってるが、俺は自分を知らない状態だからな。元人間なのは覚えてるけど。
ある意味家族みたいな存在なので気にかけてくれるのは嬉しいのだが、例え思い出したとしても目的は変わらない。
必ず本体の元へ戻る。
それが俺たちの願いなのだから。
少年が帰り道を歩いている。
今日はこのまま帰宅するようだ。変わらずヒーローノートという名の分析ノートを書いてるため、それをまとめるんだと言っていた。
その辺は好きにしたらいいだろう。
トンネルに入ったところで、俺とプラチナは妙な感覚に襲われた。
ゴゴゴゴ……。
マンホールだ。
不気味な気配。
恐らく、ヴィラン。
そして次の瞬間。
「隠れ蓑、見ィつけた」
「ッ!」
背後を見ていなかった少年は襲いかかってきたヴィランを避けて距離を離した。
あえて気づいてないフリをすることで誘導させたのだ。
暗緑色のナニカ。
異形型だろうか。
「あれは……ヘドロ? スライム? どっちか分からないけど液体! 流動的なら触れることは出来ない――」
「その通り! 運良く避けたみたいだけど、次はそうはいかない。大丈夫、ちょっと身体を借りるだけだからさ!」
「
再び飛びかかってきたヴィランに対し、少年は臆することなく光のある眼光で睨みつけた。
距離にして5m。
4m。
3m。
そして――
「射程距離内に入ったッ!!
距離、2m。
少年の体内から少年とヴィランの間に俺の肉体が出現する。
突然現れた俺に動揺したようだが、狙いを俺に定めてきた。
伸ばされた腕を腕で受け止め、纏わりつく。
――なるほど、ヘドロだな。
しかしこれならば
運すら味方に付けるのがジョースター家の運命力だが、それがなければ勝てたか怪しいだろう。
つまり何が言いたいのかと言うと。
『ォォォオオラァッ!!』
昔と違い、パワーは上昇している。
故に俺の拳が振り上げられると拳ではなく、拳圧がヘドロを引き剥がす。
「なっ、なにぃー!?」
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!』
さらに
拳で殴るよりかは威力は減るものの、この程度のヴィランならば十分らしい。
完全に飛び散った。
流体なので生きている。問題ないだろう。
全盛期にはまだまだ劣るが、少年操作でも戦えるレベルにはなっているな。
ワンパン出来なかった時点で少年はまだまだだ。
「私が――アレッ!?」
「ぉ、おおおおおおオールマイトぉぉおお!?」
気配を感じて慌てて体内に戻ったのはよかったが、少年にとって憧れのヒーローであるオールマイトがマンホールから出てきた。
先のヴィランを追ってきたのだろうが少年は驚いたようで、物凄いスピードで後退りしていた。
「これは君がやったのかな? すまない! ヴィラン退治に巻き込んでしまったようだ! 先にヴィランを詰めるから待っててくれ!」
「は、はいぃ!」
格好つかないな、少年。
コーラの早飲みをしたオールマイトは空になったボトルでヴィランを詰めていく。
少年はその手伝いをしていた。
少々時間が掛かったが、無事に回収を終えたようだ。
「いやぁ、本当にすまなかったね! いつもならこんなミスはしないのだが、オフなのと慣れない土地でウカれちゃってたかな!? だがっ! 君のおかげさ! ありがとう! 無事っ! 詰められたっ!」
歯を見せながらヴィランが詰められたペットボトルを突き出す姿に、少年は興奮して思考がうるさいので一時的に切った。
本来個性の使用は良くないのだが、緊急時においては許可されている。
じゃないと襲われた場合、ただやられるだけになってしまうからだ。
なので少年が咎められることはないだろう。
あと、そろそろ戻れ少年。サインを貰わなくていいのか?
「そっ、そうだっ! サインっ! サインっ! あのノートに!」
俺の言葉が聞こえたようで、少年はカバンから慌ててノートを取り出した。
緊張しながらオールマイトに渡していたが、オールマイトはNo.1なだけあって慣れているようだ。
嫌な顔一つせずにテキパキと書いていた。
「わああああっ! ありがとうございますーっ! 家宝に! 家の宝にいいっ!」
「OK!」
サイン入りノートを返したあとに、ビシッとOKサインを出す。
しかしなんだろうか。
こうしてオールマイトを見るのは俺も初めてなのだが、妙な感じだ。
――何故オールマイトから
これは個性なのか?
それにオールマイトから感じられるエネルギー、生命エネルギーと言うべきか。それが減っている気がする。
薪についた炎の勢いが徐々に減っているような、そんな感じだろうか。
オーラが確かに弱まっているのだ。
「じゃあ私はこいつを警察に届けるので!」
「えっ!? も、もう……!?」
「プロは常に時間との戦いさ。液晶越しにまた会おう!」
「ぼ、僕っ! 貴方に聞きたいこと――」
「今後とも応援よろしくッ!!」
屈んだオールマイトが一瞬で空に向かって飛翔した。
少年が伸ばした手は空を切っている。
確かに時間は大切だろう。しかしそれだけではなさそうだが……少年はあからさまに影を落としている。
――全く、中学生になっても少年は世話が焼けるな。仕方がない。
すぐに跳べ。
必ず掴めよ、少年。
「えっ!? は、はいっ!!」
短な言葉で理解したのだろう。
少年がジャンプする。
跳び切る前に動きに合わせ、足のみを具現化させた俺は地面を蹴る。
すると俺の脚力によって少年の体が一気に跳んでいき、スタープラチナの腕を伸ばして届かない距離でも届かせた。
今は少年に取り憑いてるため、宿主から離れれば離れるほどパワーは落ちる。しかしこの程度ならば問題ない。
オールマイトの足を利用して高さを確保すると少年が足に抱きつく。
その事に気づいたオールマイトが顔を向けている。
「なっ、少年!? どうやって!? と、とにかく放しなさい! いくらなんでも熱狂がすぎるんじゃあないか!?」
「い、いいいま離したら死んじゃいますっ!!」
「確かにッ!!」
俺がいる時点で少年が落下で死ぬことはまずないのだが、まぁ実際に何もしなければ死ぬのは事実だ。
嘘は言ってないだろう。
「増強型、もしくは浮遊の個性か……? 何はともあれ急がねば……!」
少年が視界を閉じたがバレない程度に顔を出してオールマイトを観察する。
オールマイトが咳き込んだかと思えば、口元から僅かに血を流している。
オーラを見ていて分かってはいたが、オールマイトの身に何かがあるようだ。
エンデヴァーからはその辺は何も聞いてなかったが……つまり知られていないナニカがある?
本人も急いでいるらしい。
少年には聴こえてないだろうが、俺の聴力を持ってすれば風に煽られて聴こえづらくとも聞き取ることは出来る。
どこかの屋上に降ろされた少年は手摺を掴んで立ち上がっていた。
鍛えてなければ動けなかったかもしれないが、鍛えるということは丈夫になるという意味でもある。
「全く! もう。マジで、本当に、時間がないので私はこれで!!」
「待って!」
「NO!! 待たない!」
去ろうとするオールマイトを呼び止めようする少年だが、オールマイト自身も余裕が無さそうな様子だ
無言で去らずに受け答えはするのは流石はNo.1と言える。
俺ならば止めることは出来るが、今は操作権を任せてる以上は俺から動くことはない。
さっきのだって少年が望んだからやっただけなのだ。
「じゃあそのままでいいので聞いてください!」
少年のその一言に一度視線を向けて、言葉通りに足を動かす。
少年の声は聴こえている。
宿主だからこそ、思ってることは俺にも届くのだ。
憧れの人に聞きたい。No.1の、平和の象徴に一中学生に時間を裂ける余裕はない。
だけど。それでも。
こんなチャンスは二度とないから、せめて一言。
それが少年が今思っていること。
「──個性がなくても、ヒーローはできますか!?」
「個性のない人間でも、あなたみたいな、あなたのようなヒーローになれますか!?」
言葉が届いたのか、“無個性”という珍しさからか、オールマイトは止まった。
無個性……? と疑問の声を挙げるのが聴こえたが、突如としてオールマイトの体から蒸気が出てきた。
まるで力むような動きをするオールマイトに俺も少年も不思議に思ってると――オールマイトは少しして骸骨になった。
「オ、オオオオオオ!!! 萎んでる!? 偽物!?」
「私はオールマイコポォ」
流石に俺もプラチナも驚いたが、同時にあれほど絶大なオーラが一気に減っていることに気づいた。
オールマイトならば俺を宿せるかもしれない。そう思ってはいたが……これを見る限り、それは無理だっただろう。
さっきのオールマイトなら問題なかったと思うが、今のオールマイトでは圧倒的に足りない。
恐らくオールマイトの身に何かがあったのだろう。力を維持出来なくなるような、生命エネルギーが減る出来事が。
もしかしたら俺の力をフルに扱えていたかもしれない人物が弱っている事実に少し残念に思う。
俺が日本から離れた後、日本を護っていてくれたのは彼だ。
出会うことはなかったがオールマイトは軟弱なものが多くなったヒーローの中でも数少ない俺が認めていた存在でもあるのもある。
そうしてオールマイトは、語り始めた。
自らの身に起きたこと。
状態のこと。傷のこと。
弱体化のこと。
オールマイトにこれほどの傷を負わせたヴィランのこと。
平和の象徴の矜持。
「プロはいつだって命懸けだよ。力がなくても成り立つなんて、とてもじゃないが言えないね」
オールマイトの言葉は間違っていない。
幽波紋使い同士の戦いを知るからこそ、力が無い者がどうなるかなんてよく分かっている。
しかもこの世界だって頂点に位置するオールマイトが一日の活動時間が約三時間になるほどの大怪我。
無個性でもヒーローになれる、なんてオールマイトが言えるはずもない。
少年にとって望む答えでは無かったはずだ。
しかし少年はオールマイトの言葉を聞いて俯いた顔をあげると、《 《笑っていた》》。
「それでも、僕はヒーローを目指します」
「君は……」
「憧れてしまったから、なりたいと思ってしまったから。焦がれてしまったから。それが茨な道だったとしても、僕を肯定してくれて、導いてくれた大切な人が居るから。だからこれはただの確認だったんです。オールマイト」
「答えてくださって、ありがとうございます。それでも僕は諦めません」
「僕は憧れた夢を叶えるために行動する、“覚悟”を決めてます。例えオールマイトが遠回しに無理だと告げても――僕は“無個性“でもヒーローになります」
“凄み”を宿した表情でそう告げる少年に、俺とプラチナは腕を組む――イメージだが、満足気に頷いていた。
あの泣き虫でもやしだった少年がよくここまで成長したものだ。
心配せずとも俺たちが少年をヒーローにして見せよう、
スタープラチナの眼には生命エネルギーが立ち昇っているのが分かる。
「それでは……ありがとうございました!」
少年がフェンスを飛び越えて降りる。
操作権は渡してあるため、少年は俺の腕を伸ばしてパルクールのように着地していた。
一度振り返ってオールマイトが居た位置を見つめた後、目を伏せた少年は建物から完全に降りていた。
(大丈夫だよ、スターさん。僕が見出した“希望”と“正義”は変わらない。前例がないなら僕が作ればいい! それに僕にはスターさんが居るしね)
心配するのは野暮というものらしいな。
これからも鍛えるとしよう。
(そ、それはお手柔らかに……)
それは少年次第だ。
だが――否定されてなお絶望せず啖呵を切ったのはよくやった。
その“意志”が大切なのだ。
ひとつ俺からアドバイスをしよう。
人間讃歌は『勇気』の讃歌だ。人間の素晴らしさは、その勇気の素晴らしさ。それを胸に刻むといい。
(はいっ!)
言いたいことは伝わったのだろう。
分かりやすく翻訳すると、自分よりも強い相手と闘わなければならない状況においてしばしばそれは無謀とも言えるものだ。少年にとってどの相手もほとんどが強い相手ということになる。
しかし翻せば、それは勇気とも取れる。
困難な状況においても諦めることなく自らの力で道を切り開く。これ肯定するのが人間讃歌。
立ち向かおうとする“意志”は簡単に引き出せるものではない。しかし立ち向かうことが出来ない人間に何かを残すことなど出来やしないのだ。
少なくとも俺が見てきた人たちは皆、覚悟を胸にナニカに立ち向かっていた。
俺に出来るのは少年を鍛えてやることだけだが、それは精神面も含まれる。
今の少年は夢に向かって真っ直ぐに向かっていけるだろう。一度挫折を経験した者と経験してない者では天と地ほどの差があるものだからな。
帰り際のことだった。
俺の耳に轟音が響き、同時に商店街の方角で炎が吹き荒れていた。
様子を確認しに少年が向かうと、そこには折寺中学の制服に身を包んだ男子生徒が先程倒したはずのヘドロに捕らわれていた。
オールマイトが持っていたはずだが……知らぬ間に落としたのだろうか。考えられるとしたら少年が抱きついて暴れた時。
少年が周囲に目を向ける。
しかし、プロヒーローは相性問題で出れていない。
――だから軟弱と言っているのだ。
相性がなんだ。俺の本体なんて能力も幽波紋のステータスもバレていたにも関わらず、相性が悪くても戦っていたぞ。
有利な“個性”を待つしかないというのは甘えだろう。これほどヒーローが居なかった時代を知っている俺からすれば、この場に居る者だけで解決しなければならない。他人に頼れない状況なら思考を止めず、個性に頼らない方法を模索すべきだ。
思考停止は諦めと同義でしかない。
捕まっていた生徒の顔が、偶然にも目に映る。
それは間違いなく、
少年が、飛び出した。
「うぅうううううおおおおおおお!!!!」
「バカ! 止まれ!!!!」
ヘドロに向かっていく少年には為す術はない。
物理攻撃は効かない。
効かないが――
(少年、俺を使え)
(えっ、でも……いいんですか!?)
(体が勝手に動いたのだろう。ならば救って見せろ。あとのことはこっちで何とかする)
(……はい!)
カバンを投げつけた際に、少年のノートがヴィランの目に入る。
「ギッ!」
「
そして目の前まで接近した少年は、俺の腕で捕らわれていた生徒の手を掴んだ。
「もう大丈夫! 僕が来たッ!!」
少年だということに気づいたのだろう。
捕まった生徒がなんで、と聞くような視線に対し。
「だって君が、助けを求める顔、してたから」
色んな感情がごちゃ混ぜになったような、万感の瞳が少年を射抜いている。
少年は安心させるように、ただ笑顔を浮かべていた。
同時に腕を引き、力だけで引き抜く。
「このガキがぁーッ!!」
『ォオオオオオ!!』
振りかぶられた攻撃に対し、完全に実体化した俺は片腕で受け止めた。
もう片方の腕で攻撃してくるヘドロに対し、残った左拳に力を貯める。
そして。
「情けない! 君に諭しておいて、己が実践しないなんて……! プロはいつだって命懸け……!!」
「DETROIT SMASH!!!!!」
『オラァ!!!!』
いつの間にか隣に来ていたオールマイトが片方の腕を押さえ、俺とオールマイトは同時に拳を振り被り――上昇気流が発生した。
次第に雨が降る中、少年が背中を盾にするように生徒を守ってるのを見た俺は両腕を降ろすように残心を取る。
「! 貴方様はもしや……ッ!?」
オールマイトが何故か俺を二度見していたが、俺は
「まっ、待ってく――」
傍から見れば俺が消えたように見えるだろうが、実際に消えて少年の元へ戻っただけである。
それなら最初から透明になればという発想にはなったこともあったが、一時的にしか使えないし攻撃が出来ないのでまた別なのだろう。本来はスタンド使い以外見えないはずだし、その本来のルールを無理矢理持ってきてるという感じかもしれない。
とにかく姿を消した理由は単純。
緊急時だから問題ないとはいえ個性を使用したというのを知られると警察の対応が面倒になるからだ、主に少年が。
その後、どの面を下げて少年に対して叱るプロヒーローの姿を見て、一度殴ってやろうかとは思った。
順序が違うだろう。少年が飛び出したのは何もしないプロヒーローが原因でしかない。
子供一人救えず避難誘導しか出来ないならプロヒーローでなくたって警察で十分に事足りる。
もしあのまま相性待ちで待機していたら?
あの生徒は死んでいただろう。
オールマイトが集団の中に居たのは知っていたが、飛び出してこなかったことから制限時間を過ぎていたのだろう。
それでもオールマイトは駆け付けた。
他のヒーローと別で。
少年が飛び出した時にプロヒーローも止めようとはしていたが、それは結局少年が走り出すことになった原因であるプロヒーローたちが悪いとしか言えない。
彼らが何とか出来ていたなら、そうすることはなかったのだから。
二次災害にならないように下手に手を出さないのは最善ではある。
だがせめて方法くらい考えろとは俺も思っていたし。全てをやれ、とまでは言わないが。
そもそも相性のいいヒーローが来るなんて確証もないしな。
……それは結局、職業としてヒーローが存在するようになったからこそ、でもあるかもしれないな。
元来ヒーローとは、見返りを求めないものなのだから。
「緑谷!!」
「騰炎くん! 大丈夫なの?」
「ああ、緑谷のお陰でな。それと……言いたいことがあったんだ。ごめん、“無個性”だからって無理なんて言って、本当にごめん!!」
先程助けた生徒が深く頭を下げていた。
目を瞬きするする少年は気にしないでいい、と両手を振っている。
「“無個性”だからって関係ない。今日、お前は間違いなくヒーローだった! だから助けてくれてありがとう!! 雄英の入試も応援してる!」
「……うんっ!」
言いたかったのは感謝と謝罪だったのだろう。
帰り道が違うからか、それっきりその生徒は背を向けて手を振りながら走り去っていた。
それから今度こそ帰ろうとした、その瞬間。
「私が来たァ!!!」
「おわああ!? オールマイト!? さっきまで取材に」
「抜けるなんてわけないさ! なぜなら私はオールマイグフォア!!!」
「ォアアー!!!」
先回りしてきたのかオールマイトが現れたかと思えば、また吐血していた。
元々制限時間もなかったようだし無茶をした反動だろう。俺一人で十分だったが……それでもなお、動いたオールマイトは俺から見ても“本物”だと思った。
「少年、詫びと訂正を言いに来た。君の言葉を聞いていなければ、口先だけの偽筋になっていた」
「そんな……僕が悪いんです。“無個性“で、免許もないのにあんなことして」
俺はあくまで個性ではないため、少年は無個性だ。嘘は言ってない。
操作権は譲ってるとはいえ。
「そうさ……あの場の誰でもない、“無個性”の君だったからこそ。私も、動かされた。トップヒーローは学生時代から逸話を残す。彼らの多くが何時も、話をこう結ぶ!」
「考えるより先に体が動いていた、と」
少年の記憶が流れてくる。
ご婦人が謝る姿。
少年自身が強いショックを受ける姿。
そして何より深く、強く記憶から思い起こされた――俺がヒーローになれると告げた場面。
「君も、そうだったんだろう!?」
「うん!!!!」
「君はヒーローになれる」
オールマイトが告げた言葉に少年が涙を流す姿を、俺はただ見守っていた。
憧れの人に言われた言葉は、少年にとって最も嬉しかっただろう。
――よかったな、少年。
分かりやすくスタープラチナに対する感情はまとめるとこんな感じ。
エンデヴァー→返せない恩。何かあったら全面的に協力するつもり。一緒に活動する時、めちゃくちゃ頼りになるせいでツーマンセルで組むと事件解決はもちろんのこと、大半のヴィランが秒殺出来る。
まだ能力が使えない状態ということを忘れてしまう……。
冷→家族を救ってくれた恩人。来てくれると家族も喜ぶのでもっと居てくれてもいいのに。事情は知ってるけど普通の人間にしか見えないので普通の人間として扱っている。
燈矢→自分を救ってくれた光。ぜってー、一緒に活動してもらう。お父さんにはサイドキックがたくさんいるだろ、俺から取るなよ。
個性に関してはサポートアイテムもあるが、個性のコントロールを高めたので解決してる。
冬美→ありのままの自分を曝け出せる人。男の基準が少・中・高の間に完全に破壊された。責任取って欲しい。
私もう成人してるし愛さえあれば関係ないのでは?(おめめぐるぐる)
夏雄→お兄ちゃんみたいな人。燈矢兄がアレなので相談しやすい。冬姉には同情してる。
けどこの人恋愛とか興味なさそうだしなぁ……。
焦凍→緑谷に憑いてる家族を救ってくれたすごい人。俺もこの人みたいになりたい。俺だってもっと話したいのになんでこの人、ここに住んでくれないんだろう(素朴な疑問)。
レディ・ナガン→取り返しがつかなくなる前に救ってくれた人。もっと知りたいけど全然会えない。
どこに行ったんだ?
爆豪→身近では1番の最強。負ける姿を見た事がなく、精神面でも成熟してる上、アドバイスも的確でとても頼りになるので憧れ。現時点で唯一尊敬してる相手でもある。確実にエンデヴァーより強いと思ってる。
スタープラチナを宿す出久には絶対負けられない。羨ましい。
引子→もう一人の家族みたいな人。全面的に信頼してるため、出久のことを安心して任せられる。
出久→次回。
オールマイト→???
おまけ。
スターくん→承太郎のことを割と神格化してる。ジョースター家は素晴らしい人たち。異論は認めない。
何? 異論がある?
このクサレ脳ミソがァーーッ! お前の行為は蛇にそそのかされたイヴのごとき愚かなる過ち。
さっそく始めるか。もたもたする事もない……。一瞬でカタをつけよう。当然、オラオラだッ! 多くの悪を裁いてきたオラオラッ! それが流儀ィィッ!
プラチナ→本体守れなかった。スターと居るのは楽しい。基本任せてるけど、何かあったら誰よりも自分に相談してくれるの嬉しい。