星の白金(ひかり)で断つ運命 作:クルセイダース
とんでもなく強くて頼り甲斐があって、僕を導いてくれる人。
人格がふたつあるみたいで、基本的にはスターさんが主人格。
スターさんは気遣ってくれて優しいけど、厳しい時は厳しい。
ただこう、歳の離れたお兄ちゃんが居たらこんな感じなのかなって人。
もう一人のプラチナさんって人は寡黙であまり出てこないけど、子を見守る親というか……雛鳥を守る親鳥みたいな、そんな感じの人だ。
二人とも僕にとってかけがえのない存在だ。
二人と出会えたから、僕は頑張ってこられた。
どれだけ苦しくて辛くても、鍛えるのを嫌だと言わなかったのは二人に頼りきりにならないためだ。
僕自身も強くなって、無個性でも動けるようになって、戦えるようになる。
二人は個性代わりにはなってくれるけど、結局僕が無個性なのには変わりはない。
今度も結局スターさんの力を使った。スターさんは僕が飛び出した上で最適な行動をしたと褒めてはくれたけど。
そしてオールマイトは――
「君はヒーローになれる」
確かに僕を認めてくれたんだ。
その言葉をくれたのは、僕に力をくれて、僕を鍛えてくれて、僕にヒーローへの道を示してくれた、大切な人だけだった。
僕にとって一番大切な人が最初に
そして憧れの人が、僕にそう言ってくれた。
まるで今までの努力を、僕の人生を肯定するように。
言い忘れてたけどこれは、
白金色に流れる星の
「君なら私の力を受け継ぐに値する!」
「へっ……!?」
けれど流石に、これに驚くなは無理があると思う。
だってスターさんからも『マジで?』みたいな思考が流れてくるもん。
僕と違って、『本当にあったのか』っていう感じで、そう言った個性がある可能性を考えていたような。
「なんて顔しているんだ!? 『提案』だよ! 本番は此処からさ! いいかい少年!」
顔に出ていたようだ。
だけどオールマイトの個性は週刊誌などで説明出来ない身体能力に幾度も『怪力』だ。『ブースト』だ、と囁かれてきた。
決まってインタビューでは常に爆笑ジョークで茶を濁し、オールマイトは自分の個性の話を煙に巻いてきたほどだ。
それがまさか力を譲渡する個性なんて普通は想像出来るか!?
いや確かに
「私の“個性”は、聖火の如く歴代の継承者によって引き継がれてきた物なんだよ」
「引き継がれてきた……もの……!?」
「そう、そして次は君の番という事さ!」
「ちょっ! ちょっ待っ………待ってください!?」
「オールマイトの個性は確かに世界七不思議の一つとして喧々囂々と議論されてきた。ネットじゃ見かけない日はないくらいにでも、個性を引き継ぐってそれはちょっと意味がわからないというかそんな話今まで聞いた事も無いし議論の中でも推測されていないわけでソレは何故ってつまり有史以来そんな個性は確認されてないからっていうかそもそもアレは生まれつきの固有の身体的特徴であって自己を確立する要素だからこその
「──君はとりあえず否定から入るな! ナンセンス!」
「ナ……っ」
オールマイトに言われてから、考えが口から洩れていたことに気づいて口を押さえる。
「私は隠し事は多いが嘘はつかん!
一人が力を培い、その力を一人へ渡し、また培い、次へ。そうして救いを求める声と義勇の心が紡いできた――力の結晶!!」
オールマイトにとって大事な秘密を、今まで“明かされたことの無い個性”のことを僕に語ってくれた。
一人はみんなの為に。
正に、平和の象徴として貢献してきたオールマイトの生き方そのもの。そしてきっと、オールマイトの前の人も、その前の人も、他の人のために生きてきたのだろう
今の時代じゃあまり聞かなくなったもの。
スターさん曰く、チームワークが大切だというスローガンの一部らしい。元は外国の小説との事。
「そんな大層なもの何で………なんで僕に、そこまで──」
「“無個性”で只のヒーロー好きな君はあの場で誰よりもヒーローだった! ……元々後継は探していたのだ。そして君になら渡して良いと思ったのさ!! ……まあ、しかし君次第だけどね! どうする?」
話があまりに大きすぎる話だ。
だけどオールマイトの言葉にまた出そうになった涙を力強く拭う。
ここまで言ってもらえて。僕なんかに大事な秘密まで晒してくれて。
……あるか? 断る理由なんて……!
――ない、はずだけど。
スターさんは、どうなるんだ……? スターさんが僕に取り憑いてるのは僕が無個性だからだ。
証拠を見せるために一度かっちゃんに取り憑こうとして弾き出されていたスターさんを僕は知っている。
じゃあもし、僕が受け継いでしまえば? ただでさえ僕らの世代は無個性の数がほぼ居ない。探せば居るだろうけど、スターさんは自分を宿せるには一定の条件がなければ無理だと言っていた。
幽霊みたいな存在だから魂的なオーラが見えるらしく、僕は
その条件については詳しくは教えてくれなかったけど、ヒーローになる資格がある人とは言ってくれた。
そしてここまで身体を鍛えてくれて、オールマイトに見初められるまで生きてこられたのは
エンデヴァーや燈矢さん、轟くんと仲良くなれたのもかっちゃんと和解したのもお母さんが僕に対する罪悪感が消えたのもスターさんが個性代わりになってくれたから。
それを僕は、返しきれない恩を仇で返すのか?
……ダメだろ、そんなこと!!
(気にするな少年。元々俺は少年の個性ではない。得られるならば自分の力を得るべきだ)
スターさんは僕にそう勧めてくる。
けれど僕の感情は納得していなかった。
安全も保証されてないのに受け継ぐなんて出来ない。どうなるか分からないんだ。考える時間がいる。
こんな怒涛のことに、感情を整理する時間も。
「オールマイト……時間をくれませんか。一日だけ、考えたいんです。そしてその、出来たら人気のないところで。僕の秘密も話したいんです。受け継ぐかどうかはその話をしてからではダメですか?」
「秘密……? 確かに時間的にも遅い。ならば集合場所は私が決めておくよ」
「すみません、ありがとうございます」
「いいさ! 君自身整理する必要もある。それに即答出来ないのはその秘密とやらが関係してるのだろう?」
「はい……」
「ならば気にしなくていい。詳しくは明日聞かせてもらうけれどね! はい、これ私の連絡先。今日中に集合場所は連絡するから忘れないで見てね」
わざわざオールマイトに時間を作ってもらうのは申し訳なかったけど、連絡先を貰った僕はオールマイトを見送った。
オールマイトが居なくなったからか、スターさんが僕の横に出現する。
『何故即答しなかった? 夢を叶えるチャンスだろう』
「確かにそうですけど……」
僕は貴方に救われたんだ。
オールマイトは確かに憧れの人だ。
けれど僕にとって、
正義感や信念や覚悟が強く、優しくて強靱な精神性と気高く誇り高い意志を持ち、人の心に光を宿すことが出来るような、どんなピンチにも屈することなく突き進む神話の英雄のような人。
僕も
希望を与えられるような人になりたい。
笑顔で人を救える人になりたい。
オールマイトにただ憧れていただけの僕は、もう居ないんだ。
あの日、走り出した時から。
「僕はスターさんやプラチナさんと一緒がいいんです」
『それは受け継がない理由にはならないぞ。こんなチャンスは二度はない』
「分かってます。でもこれは僕だけで決めていい問題じゃない。スターさんに聞いてから決めるべきかと。それに僕が受け継ぐにしても、オールマイトに話してからでないと何があるか分かりません」
もし僕が受け継いだ瞬間、スターさん達の身に何かあれば?
僕はきっと、絶対前を向いてヒーローを目指すことは出来ない。
前例がない以上、オールマイトに事情を話して個性があっても問題ないか聞いてからにしないと。
『そうだな、互いに前例はない。力を提示されたからと言って食いつかず、慎重に判断したのは評価する』
『納得出来ないならば悩むといい。納得は全てに優先される。でなければ少年は前へ進めない。“どこへ”も“未来”への道も探す事が出来ない』
僕の意思が伝わってるのもあると思う。判断が間違ってるとは一言も言わなかった。
それにスターさんはいつも通りだ。変わらず冷静沈着で客観的に物事を捉えている。
『だが先も言ったが、俺は構わない。例え取り憑くことが出来なくなったとしてもヒーローにするという約束は叶える』
『勘違いするんじゃあないぞ、少年。恩を返したいと言うならば少年が真にヒーローになることが俺たちに恩を返すつーことだ。そこは履き違えるな』
僕がヒーローになることが、恩を返すということ……。
『時間はまだある。俺は、俺たちは少年の選択を待つ。“受け継ぐ”か“受け継がない”かは少年が決めろ』
それだけ書いたスターさんはそのまま僕の中へと消えた。
それっきり、何も感じることもない。
本当に僕の選択を尊重するらしい。
本当にどうしてこの人は、こんなにも僕を導いてくれるのだろう。
僕にいつだって答えをくれるのはこの人だ。道を照らしてくれるのはこの人だ。
――分かってるだろ、緑谷出久。
お前の答えはもう、とっくに出ている。
多古場海浜公園。
静岡県に位置している。海流の影響で漂着物が多く、そこにつけ込んだ不法投棄で荒れ果てているゴミの山とも言える場所。
オールマイトが指定したのはそこだった。
「さあ少年。秘密とやらを話してくれるかな?」
辿り着いた僕にオールマイトはすぐ本題に入っていた。
今はガリガリの骸骨みたいな姿、トゥルーフォームと呼んでる姿になっている。
「はい。僕が無個性なのはオールマイトも知ってると思います」
「うん、嘘を言ってるようには見えなかったしね。個性があるのにわざわざ無個性だの言う必要性はない」
オールマイトの言う通りだ。
ただし僕の場合は、外付けの個性という有り得ない現象が起きている。
表面上の個性は“憑依”にしてるけど、実際には無個性。
「でも僕はヘドロの時もある人の力を借りたんです。最初に会った時も、僕が飛び出した時も」
「ある人……?」
「今から紹介しますね」
スターさんに呼びかける。
昨日、既に話してある。
スターさんたちのことを明かしていいか。
スターさんたちは相手がオールマイトだから問題ないと言っていた。
「
次の瞬間、スターさんが僕の背後に出現する感覚があった。
左手を顔の前に出し、右腕伸ばしたポージング*1をしている。
バァーーンッ!!
「…………」
「…………」
「…………」
てっきり驚くかと思ったけれど、オールマイトから何の反応もなく、固まっていた。
な、なんだろうこの空気。
スターさんも同じ体勢のまま動かなくて、僕はオールマイトとスターさんに視線を往復させる。
そして数秒待っただろうか。
「――ハッ!? こ、こここここれは大変失礼致しました!!」
「え!?」
あのオールマイトが物凄く慌てた様子でマッスルフォームへと姿を変え、90度のお辞儀をして頭を下げていた。
ピンとして綺麗なお辞儀になっている。
え……スターさん何したの……?
そんな視線を込めて見つめたら、スターさんはポーズをやめて困惑していた。
見覚えのない対応をされたかのようだ。
「お、オールマイト? どうしたんですか?」
「ど、どどどどうしたもこうもないさ少年。いいかい、彼は、この御方は
星の、守護神……!?
「緑谷少年たちが知らないのも無理はない! けれど私たちの世代でこの御方の名を知らぬ者は居ないだろう! なんと言ったって私よりも凄い人でね。私は今平和の象徴と呼ばれているが、私がNo.1になるまでこの国が無事だったのはこの御方のお陰! とっても偉大な方だ!! それも日本だけでなく、私が留学していたアメリカでもそうだったが全世界でその名を連ねている正しく伝説の存在!! 私もヘドロヴィランの際に遭遇した時は思わず二度見してしまった!!」
スターさん――いや、
ヒーローのことは詳しいけど日本じゃそんなに話は聞かなかった。けれどオールマイトの話から考えるに僕が生まれ、オールマイトがヒーローになる前から活動していたことになる。
だから僕も知らなかったのか……!
そ、そんな人の力を僕はずっと……ッ!?
『――?』
あっ、スターさんが見たこともないような顔をしてる……ッ!
★★★★
星の守護神って何……。
俺とプラチナは初めて聞いた呼び方に混乱していた。
確かに俺たちは
確かに世界制覇していた際に凶悪なヴィランとか都市ひとつ破壊しかねないヴィランとかぶちのめしてはいたが。
「ま、まさかまたこうして会えるとは。失礼ながら今まで一体何をしていらしたのですか? 突如姿を消したことに、てっきり私はその身に何かあったのかと……」
『オールマイトがデビューするまでは居たが数十年前、世界を旅した。帰ってきたあとはずっと少年の中に居た。だからだろう。日本を護ってくれたようで感謝する』
「な、なるほど、そのような事情が……。いえいえ滅相もありません! 先代――私の師匠からは貴方様の活躍はお聞きになってますし、私も活躍を目にしたことがあります。その、私はファンでして、この歳で会えたことに感慨無量と言いますか……!」
低姿勢で遜るオールマイトの姿は正直俺も見たことがない。
そういえばエンデヴァーも俺のことを薄らと知っているかのようだった。
時代年数的に俺が最も活動していたのはオールマイトが学生の頃だろう。白髪変態変人男に追われてた頃だしな。
免許は持ってなかったが、あの頃はここまでガチガチに法律は固まってなかった。
そもそもあちこちで割と酷い有様だった影響で
まず火の粉を振り払ってたら記事にされてただけだしな。
「そ、そうだ! 貴方様のような方がどうして緑谷少年と? 今、緑谷少年から現れたように見えましたが……」
『事情を話そう。少年の秘密と、そして俺の秘密に関わることだ』
ホワイトボードにそう書いて見せると、オールマイトは息を呑んだように見えた。
オールマイトも大事な秘密を話したことだ、俺だけが隠す訳にもいかないだろう。
そもそも少年が受け継ぐなら知っておいてもらわないと困るし最初から話すつもりだったからな。
俺が話したことはエンデヴァーに話したことと同じだ。
その中には当然、今は少年の個性であり、外付けの個性だということ。少年の個性は引き寄せた霊を降霊させる個性だということで誤魔化してることも。
もちろんこの秘密を知っている者はエンデヴァーやその奥方以外に居ないことも。
人格が二つあり、今話してるのはスターである俺でもう一人プラチナがいることも。
「そういうことでしたか……むむ、エンデヴァー、羨ましい……ッ!! ですがあのときヘドロヴィランの際に居らしたのも私が最初に緑谷少年と出会った時、ヘドロヴィランが倒されていたのは
『気にするな。元はと言えば俺が少年に力を貸し、オールマイトにしがみつかせたのが原因だ』
ここまで礼儀正しく対応されるのは慣れてないからついでに普段通りにしていいと書いたのだが、オールマイト的にそれは出来ないらしい。
ただし流石に立場上、No.1で平和の象徴がここまで謙ってる姿を他に見せるわけにはいかないので俺と少年以外が居る時は普通にするように手を打った。
でなければ俺の存在がメチャクチャ目立つ。騒ぎどころか、世界中に拡散されてしまうだろう。
俺もプラチナも気にしてないんだがな……。
『それより個性の件はどうだ?』
そう、問題はこっちだ。
いくら外付けの個性と言えど譲渡する際に影響があるようなら完全にリンクを切らねばならない。
「ええ、その件は問題ないかと。私の先代も、その前の持ち主も元々個性を持っておりました。OFAには個性をストックする力が存在しているのです」
『なるほど、だからオールマイトの力はそれほどまであるのか。俺以上だ』
どういう原理かは分からないが、元々個性は謎が多い。譲渡する力とストックする力が合わさってもおかしくはないだろう。
ストックする個性に譲渡した際、二つの力が合体したと考えたら何ら不思議ではない。
「いえ私なんてまだまだ……この怪我を負ったのも私に至らないところがあったからですし。あのときに貴方様がいらしたらお師匠様も……もしもの話をしても仕方がありませんね」
思い出すように告げるオールマイトに何も言ってやれない。
あの時というのが何時の時代なのかは分からないが、俺が日本から出た後のことだろう。
スタープラチナには時を止める力はあるが、巻き戻す力は存在しない。あったら本体を喪うことなんてなかった。
「こほん……というわけで、緑谷少年の秘密は分かった」
「あ……はい。正直僕の方が新しく知った情報で混乱してますが……」
一度咳き込むことで話を戻すと、ついていけてなかった少年が起動したようだ。
俺のことは話していたが、まさかオールマイトが俺にこんな対応するとは予想してなかったのが大半を示してるだろう。
俺もしてなかった。
「分かった上で再び問おう。緑谷少年、私の力を受け取って見ないか? 今ならなんと! なんと私もついてくるぜ!」
「そんなおまけな扱い方をしないでください!? でもそれなら……お願いします!!」
俺に影響がないのが分かったのもあるだろう。
少年は受け継ぐ決意をしたらしい。
しかし他者から個性を受け継いだ際に個性因子がどうなるか分からないが、何分初めての経験だ。弾かれるようになったならそれはそれで諦めるしかない。
逆に無事なら無事で今まで通り幽波紋として少年を育てればいい。
どうなるかは俺もプラチナも予想出来ないな。
とにかく一応、少年の中に入っておくことにした。
もしかしたら受け継ぐ前に入ってたら弾かれない可能性も捨てきれないしな。
俺の存在がまず個性じゃないため、OFAの対象外になる可能性もある。
どちらにせよリンクを繋げたまま体内にいることで試そうということになった。
仮に因子が作り出されたら弾かれるだけで済むし。継承出来ないなんてことはまず起きないだろう。
「おお、そのような感じに……これは便利だ」
(祈っておこうかな……継承の無事を……)
初めて見る現象にオールマイトは感心したように見ていて、少年は緊張しつつ無事を祈っていた。
どうなるかは神のみぞ知る。
「では、継承の義を始めよう。はっきり言って緑谷少年は既に
「う、器……ですか?」
「そう! 私の個性、OFAは言わば何人の極まりし身体能力がひとつに収束されたもの! 生半可な身体では
「四肢が!?」
「何、心配ないさ! あの
オールマイトからの過大評価というか過剰評価は気になるが、少年を鍛えていたのは俺を扱うだけではなく、ちゃんとした意味があったようだ。
しかしオールマイトが見初めた部分と俺が少年から感じた
精神面も肉体面も合格範囲なら何ら心配する必要はないだろう。
四肢がもげて爆発するとは、鍛えてない少年だったら一年以内……いや雄英入試を考えれば十ヶ月くらいで鍛えないと継承は不可能だったと思うが。
「緑谷少年、肝に免じておきな! これは受け売りだが、最初から運良く授かったものと、認められ譲渡されたものではその本質が全く違う!」
人は生まれながらに個性を持つが、結局それは運でもある。
しかし少年は運悪く個性を持たずして生まれ、それでもオールマイトに認められた。
その行動力が。精神力が。肉体が。
少年の今までの努力そのものが肯定されたと言えよう。
少年が息を呑み――
「これは君自身が勝ち取った力だ! そして――」
オールマイトが何故か髪の毛を一本引きちぎっていた。
少年は気にしてなかったが、俺とプラチナはそのことに違和感を覚えた。
なんだろうか、思ってたのと違うことが起きそうな予感。
「食え」
「へあ……。い、意外ッ! それは髪の毛ッ!」
「はーハハッ! そうなるのも無理はないね! 別にDNAを取り込められるなら何でもいいんだけどさ。この方が気楽だろう!?」
「そ、それはそうですが、思ってたのと違いすぎる……!」
こればかりは俺も同感だった。
だがその方が楽ならば仕方ないだろう。
髪の毛を受け取った少年は、それを見つめていた。
(覚悟はいいか? 少年。俺たちは出来てる)
(はい……いきます!!)
継承後、どうなるかは分からない。
俺が傍に居られなくなるかもしれない。それが運命なら、あるがまま受け入れよう。
昨日、既にそう話してある。
人は何かを捨てて前に進む。
何かを決断し、何かをやる時、そこでは何かを捨てることでそれが叶うのであり、決めることは捨てることだ。
ただその時に注意しなければならないのは決して捨ててはいけないものは捨ててはいけない。捨てるものをしっかりと見極めることが必要になる。
俺が不必要になった場合は、そういうことだ。
それでも少年は前に突き進まんとする覚悟を胸に、オールマイトの髪の毛を口に含み、飲み込んだ。
当然胃腸が一瞬で働くわけがないため、個性は発現しない。
発現するまでに2、3時間は掛かるため、この公園に来た理由である奉仕活動を始めるのを俺は中で見守ることにした。
最近のヒーローは派手さばかり追い求めるが、本来奉仕活動。
そう告げるオールマイトには、つくづくヒーローだなと思ったが。
そしてついに、少年に個性が発現した。
その時だった。
「スターさん……? プラチナさん……?
「えっ!? 緑谷少年、とにかく落ち着くんだ!! 君が落ち着かねば――」
少年とオールマイトが慌てる姿を最後に俺は、いや俺たちの意識が