星の白金(ひかり)で断つ運命 作:クルセイダース
気が付けば真っ暗な世界に居た。
人の気配を感じて隣に向けると、そこにはスタープラチナの姿がある。
しかし普段は紫色だというのに、隣にいるスタープラチナの色は緑色だ。
『スター……?』
『プラチナ……?』
明らかに意識が分かれてある。
互いに互いを認識している状態。
しかもこの空間は話せるらしい。
であるならば俺の体はどうなっている?
俺は元人間だ、つまりどういう訳か知らないが分離してるなら俺の体は元の人間の形をしているはず。
そう思ってプラチナに触れられるか試そうと手を伸ばすと、
すぐに体に視線を向けると、体が人間ではない。これはスタープラチナの姿ということか?
仮に魂の状態としても……俺は人の形を無くし、本当にスタープラチナの姿になってしまったのだろう。
色は青色だ。
しかし目の前にいるプラチナよりも細身*1に対し、プラチナは俺よりも筋肉質。*2
これは多分だが、スピードが速い分パワーが低い俺とパワーと安定したスピードを持つプラチナという違い故の体の違いだろう。
『どういうことだ、我らは共に在る存在のはず……』
『何故今、分かれた? そもそもこの空間はなんだ?』
互いに手を伸ばせば手と手が触れ合う。
つまり実体がある。いや、この場合は魂と言えるか。
周囲に目を向ける。
今立っている場所は真っ暗な世界で唯一ある、宙に浮いた罅割れた部屋の一角。
そこには8つの席がある。
あまりに不可解な現象だ。
どういう意図かは分からないが、スタンドによる攻撃かと俺とプラチナが警戒してると、椅子の奥から人が8人出てきた。
否、正確には一人だけ黄色のオーラだが、魂の感じからしてオールマイトなのだと理解した。
突如現れた存在に俺とプラチナは互いを守るように背中合わせになり、拳を構えた。
長年どれだけ共に居たと思うのか。相手がどういう存在なのか、この空間が何なのか分からなくても、俺たちにとって取る行動は敵ならばぶちのめすだけだ。
「ようこそ……僕たちの、OFAの世界へ……。それにしても驚いたな……そんなつもりはなかったけど、OFAに取り込まれることなくこうして無事に姿を保ち、正常な状態で居られるなんて」
「いや……それどころか俺たちが押し退けられている」
「あまりに強い光だ。道理でAFOが奪えないわけだな」
「警戒しないでくれ、私たちは敵では無い」
「そういうわけさ。むしろこれから苦楽を共にする仲間ってもんさ!」
「そういうことなので、拳を降ろして貰えると助かるよ」
「貴方は……お初にお目にかかります、星の守護神様」
話せるのは計七人。
そのうちの一人は俺たちを知っているようで、敵意を感じられなかった俺とプラチナは互いを見て頷いた後、拳を降ろした。
どうやら事情を聞く必要があるらしい。
こいつらは俺たちが知らないこの空間のことを知っているようだ。
少なくとも本来ならば、俺たちは取り込まれていた可能性があったようだが……力をストックする個性とやらのせいだろう。
しかし、その程度で本体から生み出された魂のビジョンである俺たちが取り込まれるわけないだろう。
しかも俺たちは二人合わせてだから、二人分だ。
「ありがとう。君に、君たちに伝えたいことがあるんだ。特に君たちは僕の兄――AFOに目を付けられてるから」
『AFO……? まさか』
『あの白髪のことか』
虚弱な、あまりに細身な両眼が隠れた白髪の男性。うっすらと緑の瞳が見える。
その男の特徴から俺とプラチナは理解した。
この男は、あの変態不審者白髪男の弟なんだと。
「お前たちは俺たちが生きてきた時代よりも激闘の日々を繰り広げたらしいな」
「DIOとジョースターの因縁、スタンドの矢、殺人鬼との激闘、そしてDIOの意志を継ぐ者との戦い……」
「想像以上に濃い人生だ。なんなら酷い時代を生きてきた私たちですらドン引きするほどのものだ」
「正直、俺たちが霞んじまうな」
「ええ、だけど逆にこれほどの激闘を繰り広げた者がいると分かるのは心強い」
「私がヒーローをしてる時に噂はかねがね聞き及んでいたけれど……これほどまでとは。幽鬼から星の守護神と呼ばれるまでに至ったのも納得です」
どうやら俺やプラチナのことを、本体の記憶を読み取ったらしい。
――少し、不愉快だ。
俺たちの思い出を穢すのであれば、容赦するつもりはない。
分かった気で居られたくもない。
この気持ちは、想いは、無力感は、罪悪感は、怒りは、悲しみは、全部全部俺たちだけが抱いていい感情なんだ。
「ごめんね、覗くつもりはなかったんだ。ただ君があの子――九代目の個性代わりになってる影響でOFAが継がれた際に君たちの記憶が僕たちに流れてきたんだ」
『……ならば何も言うな。憐れみや同情するのであれば俺は殴るぞ』
「分かった。このことは僕たちの胸に仕舞うことにするって誓うよ。みんなも、それでいいかな?」
白髪の男性がこの場いる者に聞くと、全員が頷いた。
完全に臨戦態勢を解く。
『貴様らは何者だ』
「先に自己紹介をしようか。僕は死柄木与一。“個性の譲渡”の個性を持ってた、初代OFA保持者ってところかな」
「駆藤敏次だ。二代目継承者であり、“変速”の個性を持っている」
「ブルース・リー。三代目継承者で“発勁”を持っている」
「私は四ノ森避影。四代目継承者で“危機感知”の個性を持っている」
「俺ぁ万縄大悟郎。ヒーロー名はラリアット。五代目継承者で“黒鞭”の個性を持っているのさ」
「俺は揺蕩井煙。ヒーロー名はガエン。六代目継承者で“煙幕”の個性を持ってるよ」
「私は志村菜奈。七代目継承者で“浮遊”の個性を持ってます」
「そして最後に、彼が八代目継承者の八木俊典くん。彼は話せないんだ。僕たちは既に亡くなっていていわば、OFAの残り香みたいなものでね、君のような精神体と思ってくれた方が分かりやすいかな」
プラチナの問いかけに次々と自己紹介をしてきた。
そして彼らは、魂だけがOFAに取り込まれた存在なのだと理解する。
恐らく、OFAが取り込んだ個性因子に宿った意識か。
オールマイトだけが曖昧なのは存命なのもあるのだろう。
だが解せないのは、何故俺たちがここに居るか、という話である。
精神体だからこそ干渉出来たのか?
『君には共有しておきたいんだ。僕たちのことを、そしてOFAの始まりを――』
白髪の男性が手を翳す。
すると俺の頭の中に、いや恐らくプラチナにも映像のようなものが流れ始めた。
言葉通りならば、OFAの秘密。
始まりが見えた。
2人の男が相対している。
1人は死柄木与一と名乗った男。もう1人は顔の上半分が見えないが、貼り付けたような笑顔が印象的だった。
見覚えがある。
こいつは、あの白髪男だと。
そこから真実が語られた。
聖火の始まり。OFAの起源にして、
無理矢理与えられた”力をストックする
それが、ワン・フォー・オールの秘密。
八代にも渡り、譲渡されてきた力の結晶。
そして魔王の弟として生まれ、しかし正義の心を忘れず抱き続けた男と、それに手を差し伸べた男。
手を差し伸べたことから始まった、物語。
まるでひいひいおじいちゃんの、ジョースター家の因縁のような。
そんな始まりと終わりの物語。
そして少年に与えられることになった、新たな使命。
特異点が過ぎ去った力、『
「君にはそれを支えて欲しい。八木くんが討ち取ったけれど、兄さんがそう簡単に終わるとは思えない」
「坊主には近いうちに俺たちの個性が、6つの個性が芽生える。それを扱うのはきっと至難の業になると思うのさ」
「先輩の言う通り、難しいものになる。当然俺たちも力を貸すつもりだけど……」
「俺たちの個性は俺たちが使っていたものよりもワン・フォー・オールの影響で強化されている。特に俺の個性、“変速”は危険だ」
「まだ出久くんには早いと思いまして。まずは貴方方に伝えた方がいいと思ったんだ。入試もあることですし」
『そうか……少年を気遣ってくれたのは感謝する。それがお前たちの望みか』
『把握はした。もとより我らはあの者を導くと決めている』
そう、もとよりそのつもりだ。
同時に分かったことがある。
やはり俺たちの使命は、巨悪を討つものなのだと。
それが俺に、スタープラチナに与えられた使命なのだ。俺たちがこの世界に出現した理由なのだと。
ならば、本体の元へと還るためにOFAを完遂させねばならない。
「すまない……兄さんのことで君たちを巻き込んだ。本当は僕たちが終わらせなくちゃいけなかったのに。それに……OFAは譲渡出来る個性。受け継いでしまった以上、九代目の周りや本人が狙われる可能性も出てくるかもしれない」
『継承するかどうか選んだのは少年に過ぎない。それに巻き込まれたと言うが、それは俺たちの“運命”というものだ。空条承太郎から生まれた俺たちには彼ら、ジョースター家同様、星のように並外れて強い魂の輝きを持つ。光が強ければ強いほど、目は惹き付けられる。運命を操る神がそんな俺たちを見逃すはずがない。ならば俺たちはただ悪を裁くだけだ。どんなやつが相手だろうと。運命が待っていようと』
『我らが拳で打ち砕く』
「――ありがとう、
俺とプラチナの拳が互いに打ち付けられる。
白髪の男性の感謝の言葉を最後に、分離していたはずの魂が再び重なり、肉体が合わさり、俺たちの意識は一気に引き戻されていく。
「スターさん! プラチナさん……! 僕が受け継いだから、こんなことなら個性を受け継がなければ――」
『オラァ!!』
「ぐべらァ!?」
「緑谷少年ーッ! って、
鼻血を噴き出して吹き飛んでいく少年をオールマイトが手を伸ばしていたが掴むことは出来ず、すぐに俺に反応した。
戻ってきたらあまりに情けないことを言っていたため、思わず拳が出てしまった。
少年のことだから突然反応が無くなった俺たちを心配していたのだろう。それは分かる。
分かるが、継承すると決めたのは少年自身だ。
だというのにこの程度のことで後悔するなど、一度決めたならば最後まで貫いてもらわねば困る。
俺たちは最強で無敵のスタンドだ。それでも絶対に負けないわけではない。
もし俺たちが消えた時に、託した時に、絶望して挫かれるのは困る。
その精神を、魂を受け継いで貰う必要があるのだ。
それが生きる者に出来る、死者に対してしてやれる弔いだろう。無駄にしてはならないのだ。
無駄死にさせることなど、めちゃ許せん。
厳しいと思われるかもしれないが、いずれ戦場に立つなら誰が死に、居なくなるか分からないのだから。
「す、スターさんっ。無事だったの……!?」
『無事も何も、死ぬわけないだろう。何か起きるとすればせいぜい弾かれる程度だ……どうやらOFAの特異性に依るもので取り憑くことは問題ないようだが』
戻ってきた少年は俺に触れて安心したようだが、俺は少年の鼻に鼻ぽんを突っ込む。
OFAを継承者した際に死ぬなら既に個性を持つ者に憑依しようとした時に俺は死んでいる。
恐らくOFAの元になった力をストックする個性の影響で問題ないのだろう。後は歴代が俺たちを受け入れてるというのもあるのだろうか。そもそも歴代が幽霊みたいなものになってるのもあるか?
少なくともライン自体はこっちから切れるようだが。
あの白髪男が狙ってきた時も問題なかったが、取り込まれなかったのは同様の理由だというのは分かる。簡単に取り込まれてるなら昔にやつの手に俺は渡っているだろうしな。
『それよりオールマイトと少年に話すことが出来た。OFAの秘密に関わる』
「OFAの秘密、ですか……?」
俺とプラチナで抱えてもいいことでは無い。
俺はあの中で、OFAの中で起きた現象のことをオールマイトと少年に話した。
――OFAの中に存在する意識と個性。
――OFAの起源とその運命。
――これから発現する6つの個性。
AFOが生きているかもしれない。
そのことだけは伏せ、他は二人に話した。
オールマイトも少年も、確信のない情報に不安を抱くかもしれないからだ。
この件は確証がない間は俺たちと、OFA継承者だけが背負えばいい。
「歴代の継承者との会話……私の時にはそんなことありませんでしたが……」
『少年が継承した際に可能になったようだ。そしてオールマイト、お前は無個性だな?』
「ええ、そういえば言ってませんでしたね」
「オールマイトも!?」
「ああ、君の世代ほどではないが珍しい部類だったんだぜ。それでも先代は私を信じて鍛えてくださった」
6つの個性ということ、歴代の個性からそれは考えるまでもなかった。
本来発現するなら8人分の力。
初代がOFAであるならば、7つと言うべきなのだから。
しかしこれで分かったことがある。
『歴代の意識はOFAの中に取り込まれた“個性”に宿ったモノ。OFAはひとの意識ごと運ぶようになったのだろう』
「そうか、“力のストック”か!」
『細胞に意識が宿るという話は有名だ。遺伝子として受け継がれる個性ならば、個性そのものに意識が宿っても不思議では無い。とにかく少年は先にOFAの制御から始めていかねばならない』
「OFAに6つの個性……やることが多い……! でも受け継いだ以上、僕はやらなくちゃあならない。そうですよね」
『そうだ。いずれ歴代とコミュニケーションを取ることも出来るようになるだろう。だが6つの個性は段階を踏んでからだ。雄英入試までに出来ることからやっていく』
「個性届に関しては今まで通りで問題ないだろう。奇しくも
そう、偶然だ。
元々は俺が時間停止が可能になった際に違和感がないような設定を作ったのだが、そのお陰でOFAと6つの個性、俺の力が含まれても問題ない設定になってある。
もしそれがなければOFAについては他に話せないため、複数個性に目覚めた時に困ったことになっていたに違いない。
OFAだけなら超パワーで何とかなっていたが、他を含めると無理があるからだ。
しかし憑依ということにしてあるため、誤魔化すことに関しては心配する必要はないだろう。
『今は歴代の個性は忘れ、OFAを試すのが最優先だ』
無個性だった少年は生まれたて同然と言える。
全てを扱うことは出来ない。
少年が最優先で身につけなければならないのは本来の力であるOFAだろう。
歴代の力は本来発現するものではなく、少年の代で可能になった。
逆に言えばOFAをある程度制御出来なければ話にならないはずだ。
しかしOFAのことはオールマイトに任せればいいだろう。
俺は個性ではないため、制御方法も違う。OFAに俺より詳しく、なおかつNo.1ヒーローとして活躍してきたオールマイトの方が教える方が合理的だ。
「準備はいいかな?」
「はい!」
「早速OFAを使ってみよう! そうだな、海に向かって撃つのがいいかな? 今君自身の体に流れるOFAの力を感じられると思う」
「確かに……さっきと違ってOFAだと思われるナニカを感じます」
完全に消化したのもあり、個性が少年の物になったのだろう。
感じられるならば後は引き出すだけになる。
しかしコントロール出来なければ宝の持ち腐れ。
オールマイトがどう教えるのか、見物だな。
「あとはその力を腕に集めて撃つイメージで放つんだ。いいか、緑谷少年!」
「グッ! ダン! ギューン! ズドーン! って感じ!」
『オラァ!!』
「いったぁ!?」
「お、オールマイトォ!?」
人が見守っていたらとんでもないことをしでかそうとしたオールマイトに思わずチョップ。
マッスルフォームとやらになっているとはいえ軽くチョップした程度だ。
しかし頭を押さえて蹲るオールマイトを俺は見下ろした。
ゴゴゴゴゴゴ……。
『正気か、貴様。いくら少年は鍛えたとはいえOFAは強大な力の塊みたいなものだ。 初めから全力を出せばここまで鍛え上げた肉体といえど簡単にぶっ壊れる』
『その結果、行き場を失った力が骨と筋肉が自壊することで発散されるだろう。そもそもなんだ、その抽象的すぎる教え方は。もっと真面目に教えろ』
「い、いやでも、私受け取ったときにはもう使えてたから……」
オールマイトの活躍を見ていたから知っているが、あれほどのパワーを市街地で自在に操るにはコントロール技術も高くなければならない。
オールマイトはただ単にセンスのある、いわゆる天才だったのだろう。
しかし少年はそれほどのセンスはない。むしろ凡人寄りだろう。
俺を操作することである程度は慣れてるかもしれないが、俺を操作するのと個性を使うのはまた違ったものになる。
個性そのものに意思はないのだから。
『それはお前の代だろう。同じ条件ならば少年は骨にヒビが入る程度で済んだだろうが、オールマイト自身が蓄えた力となれば今の少年でも全力は不可能だ。コントロールが全く出来ないのだぞ?』
OFAの出力を分散させず腕だけに集めてしまえば耐えきれずに腕が壊れるのは考えず分かる。
オールマイト自身が蓄えた分も含まれているのだ。少なくとも数十年分。
銃弾より速く動くらしいオールマイトの力と考えれば制御してない状態で扱うのは危険すぎる。
ぶっぱなした結果、腕が使い物にならなくなったら無駄な時間のロスだ。
「し、しかしそうなると私はどう教えればいいのか……緑谷少年に感覚を教えることは出来ませんし」
俺の中でオールマイトの評価が下がった気がする。
こいつ、何かを教えるのに向いて無さすぎる。プラチナも同感のようだ。
役立たずだな……。
「オールマイトの100%を僕が使うと自壊する……。なら、電子レンジで卵が爆発しないイメージ!」
「おおっ! 地味だがユニーク! けどいいイメージかも!」
『もう降りろ、俺が教える。そして少年は一度中止しろ』
「痛い!!」
「あだっ!?」
ただでさえ憧れの存在であるオールマイトが肯定してしまえば少年は余計にそのイメージでやってしまう。
オールマイトと少年にデコピンして阻止した。
すると少年から溢れ出ようとしていた力の流れが霧散する。
危うくご婦人にどう言い訳すればいいか分からなくなるところだった。
というか――
『そもそも電子レンジに卵を入れたら爆発するのは当然だろう。そのイメージだと少年の中に“爆発”するという失敗のイメージが固定化されかねない』
『人間、失敗を考えて動くと硬くなるものだ。身構えては意味が無い。第一、少年は呼吸する時に“息を吸いすぎないように”など考えるか? 走る時に“転ばないように”と考えるか? 跳ぶ際に“着地をミスしないように”など考えるか? 転びそうになった時に“受け身を取らないと”など、いちいち考えるか?』
「考えないです……」
「自然と無意識にやってしまうね……」
何故か少年とオールマイトが正座しているが、この際どうだっていい。
慣れてしまったら正すのが難しくなる。
その前に軌道を修正する必要があるのだ。
『いいか? “爆発しない”というのは結局のところ
『コントロールが出来ない力なのだから、そうすると100%の力を使ってしまう可能性の方が高い。100%から99、98、97と下げてやれるとでも思うのか?』
「た、確かに……! まだ細かい制御は出来ないと思う。力みすぎて全力でやってしまうかも」
むしろ二人居て、それも長年使ってきたオールマイトが居て何故そこに至らないのかが俺からしたら疑問でしかない。
爆発すると分かってるイメージでやって、爆発しないイメージをする方が逆に難しいとすら思う。
『イメージはなんでもいい。分かりやすく身近なものだと蛇口だろう。電子レンジで卵が爆発しないイメージだと100から1までになるが、蛇口は0から増やしていく。何もしてない少年はゼロだ。そこへプラスしていくのだから100から減らすより0から増やした方が安全性もある上、手っ取り早い。あとは徐々に捻って限界だと思う出力を解き放て』
「ゼロからプラスに……」
「むむっ! その通りだ、なぜそんな簡単なことに気づかなかったのか……!」
それは俺が聞きたいのだが、もし俺が居なかったらオールマイトはどうするつもりだったのか。
プラチナすら呆れている。俺も呆れている。
「やってみます!」
少年が立ち上がり、海に向かって構える。
俺とオールマイトは見える位置で待機し、少年は目を閉じていた。
「少しずつ、少しずつ水を出していくように、溢れ出ない程度に捻って出すイメージ――」
「ほう、もうそこまで……!」
少年の腕に何らかのエネルギーが集まっていくのが分かる。
服が弾け飛んでしまっているが、オールマイトの反応から考えるに悪くない出力なのだろう。
そして。
「SMASH!!!!」
少年が突き出した腕から風圧が解き放たれ、海を割りながら周囲のゴミを吹き飛ばしていた。
飛んできた室外機を拳で弾いて吹き飛ばしつつ、少年の腕を見ると特に怪我らしい怪我もしておらず、本人は驚いてるだけで痛みがあるわけでもなさそうだった。
手のひらを見つめて握ったり開いたりしている。
その後、実感してきたのか口角を上げて嬉しそうに握り拳を作っていた。
どうやら成功、らしいな。
「これが、OFA……」
『どれくらいだ?』
「だいたい4割と半分ってところかと」
45%か。
そう考えれば悪くはない。
これからすべきことはこのゴミの山を片付けること。
その際に必要な分の出力のみを発動をさせ、他の出力を出せるようにしつつオンオフを繰り返させて感覚を慣れさせる。
その後は部位ではなく、常に全身にOFAを纏わせる特訓だ。
例え個性を制御出来ても今の状態だとラグが起こりすぎている。だが常にOFAを纏い、それに慣れることに成功すれば少年はマイナスからゼロになった今から、ジュウに躍進するだろう。
そのことをオールマイトに伝えると、オールマイトは首を傾げていた。
「全身ですか……?」
『少年の性格から考えてオールマイトの見よう見真似をしかねない。お前は脳筋のように基本パンチしかしないが、それはお前のセンスが天才的であるが故に感覚で成せるだけの話。普通には無理だ』
「うっ」
拳1本でだいたい解決出来るのはこいつのコントロール技術とOFAが奇跡的に噛み合ってるだけだ。
身体能力の強化というシンプルな能力+物事を把握する天才肌。感覚で物事を把握する天才肌と超パワー&超スピードのOFA。この世にこれほど相性のいいものがあるだろうか?
『少年には少年の戦い方がある。お前と少年は真逆な上、少年は考えすぎる節がある。感覚ではなく分析型だ。ならばまだ全力を使えない以上、これからのことを考えて足と拳を合わせたスタイルを身につけさせる』
「なるほど、緑谷少年には緑谷少年の戦い方……確かに緑谷少年はどちらかというと“彼”に近い……。あれ、私何もしてなくない? けど緑谷少年のことを考えるなら私一人の力では難しいかも……。これ以上
「あとお詫びしてからナイトアイにもお願いしよう、彼も推してる子いるけど緑谷少年なら大丈夫だろうし……うん、その方がいい! ただ
何やらツテがあるのか小声で、なおかつ萎んでいる体でガクガクと恐怖するかのように身体を震わせていたが自分なりに答えを出したようだ。
ふむ……しかし海岸の掃除となると爆破の少年も呼ぶのはありか。使う筋肉が違うだろうし鍛えるには十分だ。
オールマイトやOFAのことは隠すが、いずれにせよライバル的な立ち位置になってるならば同じように成長させた方が少年も触発される可能性はあるからな。
後の問題はオールマイトの体。
……波紋じゃ無理だろうか?
欠損は無理? それもそうか。欠損が治るなら祖父の義手は治っていたはずだ。
クレイジー・ダイヤモンドやゴールド・エクスペリエンスといったスタンドが無ければ不可能か。
そしてスタープラチナには治癒能力はない。
これに関してはもうどうしようもないのだろう。
唯一の例外は……
つまり何も出来ない。
『オールマイト、少年と共に人を鍛えさせるのは問題ないな?』
「うん? 宛があるのかな? 私は構いませんが、出来るなら秘密は……」
『その辺は無論そのつもりだ、少年にとってはライバルみたいな相手でな』
「なるほど、向上心を掻き立てることが出来ていいかもしれませんね」
『なら明日呼ぶとしよう。ひとまずはこの一角のゴミ清掃をしつつ個性の制御をしていく』
やることは決まった。
どちらにせよ、体が治せないならオールマイトはいずれ引退することになる。その前に出来る限り少年を強くするしかない。
さすればオールマイトは安心して引退出来るだろう。
さあ、頑張ってもらうとするか、少年に。
ちなみに弱ってた頃のスターくんなら普通に取り込まれてました。
スタンドにとって大事なのは出来て当然と思う精神力だし、自分は本体から生み出された無敵のスタンド!! という思い込みも多分強化に含まれてるんじゃないかな。馬鹿野郎お前ら程度が本体に勝てるわけないだろ!! と思ってそう。