アランナラがゆく!   作:ナラ

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オンパロス!
そのいち!


 

 

 

 

 なんとも愛らしい歌声は、二人の若者の心に深く突き刺さった。

 

 

「あの子の手、よく見てみて」

 

 まるで内緒話をしているかのような声音でキュレネは言った。それに応えるように、ファイノンは頭の上にある四葉ではなく、可愛らしい手へと視線を向けた。

 

「もしかして、花の冠を作ってるのかな?」

 

 

 小さな手で花の冠を作る後ろ姿は、目が離せないほどに愛しかった。

 キュレネは胸の前で拳を握り、心の中で何度も「可愛い……可愛い……!」と叫んでしまうほどに愛いのだ。ファイノンはキラキラした瞳をさらに輝かせ、無意識に口をぽかんと開けていた。

 愛らしい歌声と体を持つ生き物は、可愛らしい反応をする二人に気づいていなかった。自分の鼻歌に身を傾けて、一つ一つ花を紡いでいく。次第に、花は冠の形を成していった。

 

 淡いピンク色の花と、藍白色の花が交互に編まれた花の冠。

 炎のような赤色の花と、琥珀色の花がまばらに編まれた花の冠。

 可愛い生き物から生み出された花の冠は、とてつもなく可愛らしい。同じレシピでも、作り手が違えば味は変わってしまう。それと同じように、花の冠は可愛らしく美しく、輝いていた。

 

「なんだか夢を見てるみたいだ」

「あたしもそう思うわ。もしかしたら、本当に夢の中かもしれないわね」

 

 二人は可愛い生き物の邪魔をしないように、ひそひそと話す。

 

「……もう少しだけ近くに行ってみようよ。君も、『可愛いけど、後ろ姿しか見れてないのが残念ね……』って思ってるんじゃない?」

「ファイノンってば、乙女の心を読むなんて感心しないわ。……ふふっ、冗談。少しだけよ?」

 

 ファイノンが足音を出さないよう動くのと同時に、「モノマネが上手になったわね♪」とキュレネは嬉しそうにファイノンの成長を受け入れた。そしてキュレネも、ファイノンの後ろを一歩ずつ慎重に進んでいく。

 

「ここまで来れば───」

「──あ、そこに枝が……」

 

 

「だ、だれかそこにいるの!?」

 

 パキっと乾いた音がファイノンの足元で鳴り、可愛いらしい生き物は体を大きく跳ねさせてしまった。

 その反応を見てしまったファイノンは、しまったと後悔して一瞬で茂みに身を隠す。キュレネは横目に、「もう遅いわよ……」と思わず苦笑いが零れた。

 

「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったの。あたしはキュレネ、あなたって驚いた姿も可愛らしいのね♪」

「キュレネ、謝らないでくれ……僕が吃驚させてしまったんだ。ごめんね。僕はファイノン、君を傷つけたりはしない。約束するよ」

「悪いナラ……じゃない? ピンク色のナラとナラノンは良いナラ、本当?」

「ナラノン!? ふ、ふふっ……あたしと同じくらい可愛い名前を付けてもらって良かったわね。ナラノン♪」

「笑いを堪えてるのバレバレ。キュレネだって人の事言えないじゃないか。ピンク色のナラ、君の方が可愛いと思うけど? 僕のはかっこいいって言って欲しいな」

 

 ファイノンの次くらいにセンスの無い名前を編み出したその子は、ピンク色のナラとナラノンを交互に見て目をパチパチとさせている。

 さっきまで眉毛を八の字にして悲しそうな顔をしていたナラノンが、瞬きをする度に表情が変わっている。それを見ているピンク色のナラはくすくすと笑っていた。

 二人に着いていけてない可愛い生き物は、顔をキョトンとさせ戸惑っていた。

 

「彼がナラノンなら、あたしも名前がいいわ。ナラキュレネ……少し長いわね。ナラキュレとかどうかしら」

「一文字減っただけ……でもいいんじゃないか?」

「ねぇ、愛しい妖精さん。あなたはどう思う?」

 

 

「…………いいと思う!」

 

 愛しい妖精は、考えるのをやめた。目の前にいるナラ達が楽しそうだったから、別にいいかと考えをほっぽり出したのだ。

 

「じゃあ決まりね! ナラキュレとナラノン。そうだわ、あなたの名前まだ聞いてなかったわね」

「本当だ。君の名前はなんて言うんだい?」

 

 

 

 

「アランナラ! ナラキュレとナラノンはアランナラの友達! 」

「ふふっ、素敵な名前ね♪」

「友達になれて嬉しいよ。よろしくね、アランナラ」

 

 

 アランナラは、ファイノンから差し出された手をぎゅっと握った。ファイノンの手より遥かに小さすぎる手は、ファイノンの胸を突き刺すには丁度いい魅力だ。

 

「すごく小さい……握り返すのが怖いくらいだ」

「ナラノン、握手しない?」

「ふふっ、アランナラが困ってるわよ? 優しく握り返してあげればいいのよ」

 

 

 

 ファイノンが優しく握り返してあげたのを見守った後、キュレネは思う。「二人とも可愛いわね。あたしも負けてられないわ」と心の中で競争心を燃やした。

 その間、アランナラは握手出来たことが嬉しくて、数分間ずっとファイノンの手を握ったままだった。ファイノンは手を離してくれないことに吃驚して、手汗がじわじわと吹き出している。アランナラの手は、ファイノンより暖かくはないかもしれないが冷たくもない。優しい温度だ。その二つが重なって、手汗はじわじわと増していったのかもしれない。

 

 

「そ、そろそろ離してくれないかな……?」

「アランナラと握手したくない? わかった……」

「違う! 君を傷つけるつもりはないんだ! アランナラ、君が望むならずっと握っててもいい!」

「ふふっ、ちょっと必死すぎない? でもわかるわ。こんなに可愛い子に嫌われたくないわよね♪」

 

 

 

 エリュシオンには、アランナラの他にも妖精はいる。だけれどその妖精たちは、アランナラのような可愛さを持っていない。アランナラも同じように、その妖精達が持っている可愛さを持っていない。彼らは似ているけど、違うのだ。

 両方とも違う可愛さがあって、とても愛い。

 

 

「あ、そうだ……」

「あっ……どうしたんだい?」

 

 アランナラはファイノンの手を急に離すと、二人の頭を見て花の冠を見て、また二人の頭を見て花の冠を見て、それを数回繰り返して、やっと可愛らしい口を開いた。

 

「ナラノン!」

「ん? 頭に葉っぱでもついてた?」

「ナラキュレ!」

「ふふっ、そんなに見つめてどうしたの? まさかあたしに惚れちゃったかしら?」

 

 

 

「これ、あげる!」

 

 アランナラは、自分の隣に置いていた花の冠を優しく取り、勢いよく二人に差し出した。

 ファイノンに驚かされる前までは、花の冠をずっと編んでいた。渡す人も、同士もここにはいないくせに。アランナラは、自分の知らない地で独り寂しく花の冠を作っているだけだった。でも、ファイノンとキュレネがやってきたことにより、アランナラは孤独では無くなった。

 アランナラは、最初こそ驚いたものすぐに仲良くなり、この地での初めての友達になった。だから、アランナラにしかできない特別な感謝を伝えたい。出来ればナラノンとナラキュレがわっと驚くようなもの。

 

 歌は、アランナラ達やナラにとっても特別ではない。身近に存在しているもの。

 ナラノンとナラキュレを夢の世界へ連れていくことも、大して特別でもない。二人にすごく素敵な夢を見せたいけど、アランナラは夢を制御できたりはしない。

 特別って一体何だろうか。

 特別、特別、特別、頭の中でその言葉を繰り返しても、アランナラは答えにたどり着けなかった。アランナラの特別と、ナラの特別は違うかもしれない。

 アランナラはさらに頭を悩ませた。ナラの特別はなんだろう、その疑問と共に二人に視線を向けてみた。

 

 ナラノンは、優しくアランナラの手を握ってくれている。

 ナラキュレは、微笑ましそうにアランナラとナラノンを見ている。

 

 二人の笑っている姿を見て、アランナラの悩みはぶっ飛んでしまった。

 最初から悩む必要なんてなかったのかもしれない。特別なものでは無いかもしれないけど、アランナラにとって友達から貰ったものはなんでも特別だ。

 

 

 

 アランナラは、自分で編んだ花の冠を優しく手に持ち、勢いよく二人に差し出した。

 

 

「これ、あげる!」

 

 

 

「……ありがとう、アランナラ。ねぇ、どうかしら? 今のあたし最高に可愛いでしょ?」

 

 ナラキュレには、淡いピンク色の花と、藍白色の花が交互に編まれた花の冠を。

 

 

「ほ、本当にいいのかい? ……ありがとう、アランナラ」

 

 ナラノンには、炎のような赤色の花と、琥珀色の花がまばらに編まれた花の冠をプレゼントした。

 

 

 

 二人とも花の冠を受け取り、優しい手つきで頭の上へと乗せた。

 特別なものじゃなくても、友達から受け取ったものは全て特別。アランナラだけではなく二人も同じだった。

 

 儚げで優しい心を持つナラキュレ。

 太陽のような温かさを持つナラノン。

 そして、可愛くて愛しいアランナラ。

 

 

 

 

 

 きっと彼らなら、どんな困難も乗り越えられる。

 

 

 

 

 

 だって、彼らは特別なのだから。

 

 

 

 

 

 

 







アランナラって可愛いですよね。

☆アランナラが輪廻の仲間に加わった!
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