ようこそ、元軍人がいる教室へ   作:名無しの生徒

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第2話 元軍人は、隣人と会話し説明を受ける

「ここが、Dクラスか…………」

 

「大丈夫か、みーちゃん?」

 

「う……うん、少し緊張してるけど大丈夫だよ」

 

「それじゃ、開けるぞ」

 

「うん」

 

 みーちゃんが教室を前にしてそんなことを呟く。

 みーちゃんの返答を待ってから教室の扉を開けた。

 教室の中には既に多くの生徒達が集まっており、席に座り端末を弄ったり、席を立ち楽しそうに談笑をしていた。

 そんなクラスメイト達の姿を見ながら、天井に視線を移すと生徒達の死角になるように監視カメラが設置されていた。

 

「黒島くん、大丈夫?」

 

「…………あぁ、大丈夫だ。取り敢えず、俺達も座席を確認するか」

 

「うん、そうだね」

 

 しばらく、監視カメラを眺めているとみーちゃんが可愛らしく首を傾げながら声を掛けてきた。

 ここでみーちゃんに監視カメラの存在を知らせても良かったのだが、混乱を起こしてしまうと考えて監視カメラの存在は隠し、黒板に貼り出されている座席表を確認することにした。

 座席表を確認すると俺は窓側の席、みーちゃんは廊下側の席と綺麗に離れてしまった。

 

「別に席が離れても同じクラスならいつでも話す機会はあるし、お互いより良い学園生活を送るためには多くの友人を作った方がいいだろ」

 

「うん、確かにそうだよね。頑張って、黒島くん以外の友達を作ってみるよ」

 

「あぁ、お互い頑張ろう」

 

 何処か寂しげな表情をしているみーちゃんに声を掛ける。

 すると、みーちゃんは顔を上げて身体の前で拳を握りそう宣言した。

 そして俺とみーちゃんは互いの健闘を祈りながら、自分の座席へと向かった。

 

「もしかして、君が私のお隣さんかな?」

 

「そうだが…………」

 

「あっ、いきなり声を掛けてごめんね。私は松下千秋、よろしくね」

 

「俺は黒島真也だ、よろしくな松下」

 

 席に座ると隣の女子生徒が声を掛けてきた。

 女子生徒は茶髪のロングヘアが特徴的で高校生ながら大人な雰囲気を醸し出しており、小動物系のみーちゃんとはまさに正反対な存在だ。

 それからお互いに自己紹介をし、親睦を深めるため談笑を始めた。

 

 

 

 

 

 松下と談笑を始めてから数十分。

 始業を告げるチャイムが教室中に鳴り響く。

 そして、チャイムが鳴り終わると同時にスーツを身にまとい、腰まで届く長い黒髪をポニーテール状にまとめた女性教師が教室に入って来た。

 

「新入生諸君、入学おめでとう。私は君達Dクラスの担任となった茶柱左枝だ。普段は日本史の授業を担当している。この学校にはクラス替えというものは存在しないため、卒業までの三年間私が担任としてお前達全員と学ぶことになるだろう。今から一時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう」

 

 前の席から見覚えのある資料が回ってくる、それは合格発表とともに届けられた封筒に入っていたものと同じものだった。

 この学校には一般の高校とは異なる部分がいくつも存在する。

 この高度育成高等学校に通う全ての生徒は敷地内にある寮で生活することを義務付けられて、在学中は特例を除き外部との連絡や敷地内から出ることを一切禁じられている。

 だが、その反面生徒達が生活に苦労しないように敷地内にはカラオケやシアタルームといった娯楽施設、カフェやショッピングモールといった商業施設など様々な施設が存在する。

 

「今から学生証カードを配る。この学生証は敷地内にある全ての施設を利用したり、売店などで商品を購入することが出来るようになっている。ただし、その場合ポイントを消費することになるので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものは無い、学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だ」

 

 配布されたこの学生証はポイントカードと一体化しており、学校での現金の意味合いも持つ。

 つまり、この学生証はクレジットカードと同じものだ。

 学校側が紙幣を持たせない理由は学生間の金銭トラブルを未然に防いだり、ポイントを消耗をチェックすることで俺達の消費癖を確かめるためだろう。

 

「次にこの学生証の使い方だが、施設では通すか提示することがで使用することが出来る。使い方はシンプルだから迷うことは無いだろう。それからポイントは毎月一日に自動的に振り込まれるようになっている。既にお前達には十万ポイントが支給されているはずだ」

 

 教室中がざわつき始めた。

 それもそうだろう、今俺達の手元には十万円という大金がある。

 大人からしたら大した金額では無いだろうが、高校生になったばかりの俺達からしたら破格な金額だ。

 

「ポイントの支給額が多いことに驚いたか? この学校では実力で生徒を測る。入学を果たしたお前達にはそれだけの価値と可用性がある、その十万ポイントはそのことに対する評価みたいなものだ、遠慮なくすることなく使え。だが、このポイントは卒業と同時に学校側が回収することになっている。現金化したりなんてことは出来ないから、ポイントを貯めても得は無いぞ。振り込まれたポイントをどう使うかはお前達の自由だ。ただし、ポイントを他者から無理矢理得ようとすることはするなよ、学校はいじめだけには敏感だからな」

 

 教室中に戸惑いが広がって行く。

 

「どうやら、質問は無いようだな。これから、一時間後に入学式が始まる。遅刻だけはするなよ」

 

 茶柱先生は戸惑いが広がって行く教室を見渡したあと、俺達に向かってそう告げると教室から出て行った。

 

「なんか、思ったより厳しい学校じゃ無いみたいだね」

 

「…………確かに、結構ゆるそうだな」

 

 クラスメイト達が十万ポイントという破格な金額に驚きを隠せていないなか、松下が話し掛けてきた。

 確かに松下の言う通り、現状この学校は厳しい部分よりも緩い部分が目立っている。

 卒業するまでの三年間寮生活を強いられ敷地内から出られず、外部とは連絡を取ることが出来ないという制限があるものの無償で提供されるこのポイントや敷地内にある施設があれば今のところ何一つ不満を口にする生徒は居ないだろう。

 更に、この高度育成高等学校の魅力は進学率・就職率がほぼ百パーセントという部分だろう、事実この学校を卒業した卒業生の中には様々な分野で活躍している者が多くいる。

 これらの事を知ればこの学校のことを「地獄」ではなく「楽園」と考え直す生徒が増えるだろう。

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