BLEACH 猫のしあわせ 作:やばばばやば
尸魂界について数日後
「離れるなっ!」
夜一さんが叫ぶ。砲弾がシールドにぶつかり、僕たちを守っていた壁が溶けている。そして、砲弾を維持していた霊圧が僕たちに絡んでいた
コレは、すぐに解けるぞ。うわぁ、誰もが遠い。コレは僕一人のコースかぁ
「コレは一時的に儂らに絡みついているだけじゃ! じき、渦を巻き消失するぞ! 離れておったら、バラバラ飛ばされ」
ズッ
ゴアオォォォ!!
「始まりおった!」
「うおおぉ! 飛ばされてたまるかよぉ!」
「うわぁ!? てめっ!?」
「わぁっ!?」
「……」
「ああ、バイバイ」
「茶渡くんっ!? 猫叉くんっ!?」
「わああぁぁ!?」
「チャドっ!?」
最初に石田さんを庇って茶渡さんが弾き出された。次に、誰の事も掴むことすら叶わなかった僕が飛ばされる
うーん。とりあえず、着地だな。まぁ、これぐらいの速度なら瞬歩の方が早いから大丈夫か
ドンッ!!
僕の事を覆っていた霊圧が解放され、着地した際に周りを破壊する。僕は霊圧を素早く抑え、建物内をゆっくり走る。うん、これぐらいでしょ
「っ! おい止まれ! どこの所属だ!」
「ひぃ!? よ、4番隊ですぅ!! お使いを頼まれてて、えっと、えっと」
「むっ、すまない! 4番隊の者はあっちに走っていったぞ!」
「あ、ありがとうございます!!」
へっへっへ! 見たか! もう、ほとんど覚えていない原作知識や!
いやぁ、助かる。うんうん、黒崎君の霊圧はあっちで、井上さんと石田さんが同じ。茶渡さんがはぐれてるっと。うーん、夜一さんは分からないなぁ
よーし、とりあえず、僕はルキアさんの居場所を特定するかぁ
「あっ! す、すいません! あの、罪人の朽木ルキアの居場所って」
「はぁ!?
「あ、ありがとうございます!」
「おい行くぞ! アッチに落ちた旅禍を探すぞ!!」
懴罪宮、ね。おっけ、でも、こんな簡単にルキアさんの居場所がわかるなんて、ラッキー♪
うーん、黒崎君達は、交戦しちゃったみたいだね。仕方ない、僕も手助けに行くか
「あら? 貴方は」
「っ!? う、卯ノ花、隊長……」
「はて、先程朽木ルキアの所在を聞いていましたが、どんな要件が?」
「招けっ!! 『福招引猫黒(ふくしょういんびょうこく)』!!」
「やはり、旅禍だったのですね。狙いは、朽木ルキア。なるほど」
「…………」
「なるほど、情報を与えないくらいの頭もある。始解も出来る。優秀ですね」
「…………」
やばいぞ。いきなり、隊長格だ。時間だ、そうだ時間を稼げ。そうすれば、ワンチャン逃げることが出来る
僕の始解は、時間が経てば経つほど有利になる。始解ってのは、卍解すら覆すときがある。平隊員ならまだしも、隊長なら、時間を少しは稼げるはず
「………その顔、書いてありますよ? 来ないで欲しいって」
「っ!? アァア゛!」
「あら?」
僕は無理やり体を捻り、卯ノ花隊長の一撃を避けた。クッソ、マジでやばい。マジでやばい!!
早過ぎて、目で追えなかったぞ!? 本当に勘だった! なんで避けれたんや!?
すぐさま刹歩で距離を取る。心臓が早鐘を打つ。ほんとうに、危なかった。コレが、コレが万全の隊長格!!
「………あれを避けられるとは。そうですね、では、次は?」
「卯ノ花隊長!」
「あら、虎徹」
「っ!!!」
◇
体が咄嗟に動いていた。一瞬、ホンの一瞬。視線が切れた。もう、ここしか無いと、動いてから思った
全力で下がる。下がる下がる下がる下がる下がる
もう、お構い無しだ。コレは、無理だ。心が、負けた
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
息が、しずらい。落ち着け、ゆっくり、ゆっくり息を吐け
うるさい。心臓の音が、ドクドクと頭の中で響く
………、くっそ、アレは、レベルが違う。次元が、違い過ぎる
怖い
「ああ、そうか。僕は、怖がってるのか」
ああ、なんか、ストンって感じた。心の不安そして焦燥が、分かった。そうだ、久しぶりだ。こんなに怖いのは
喜助さんとの訓練では、死は感じたけど、恐怖はそこまで感じなかった。夜一さんとの修行も、そうだ。痛みは感じた、でも、恐怖は感じなかった
アレは、違った
全然違った
圧倒的な、『ナニカ』。現世であった朽木白哉に幻想を抱いていた。ああ、隊長といえども、こんなものか。なら、大丈夫か、と
舐めていた。そうだ、なんで、気付かなかったんだ。舐めていたんだ
敵地なのに、僕は、1人でもなんとかなると思い込んでいた。ああ、烏滸がましい。なんて、恥ずかしいんだ
ドカッ
僕の右手が、右頬を打つ
「ふぅ」
僕は、もう、驕らない。意思だ、硬い意思だ。臆するな、引くな。死を超越しろ。それが、『死神』だろ
気付いたら、あの場所に立っていた。そこには、卯ノ花隊長と虎徹と呼ばれた副隊長の腕章を付けた長身の女性が立っていた
「………、ふむ。何故、と問うのは無粋でしょうか?」
「ああ、分かってんじゃん。次は、逃げない」
「………ふふふ。面白い。ならば、見せてもらいましょうか」
「もう一度、力を貸してくれるか? クロ」
にゃーん♪
僕は、肉迫する。剣の間合いにさせない。もっと、超至近距離に!
「なるほど、考えました、ね。私の動きが見切れないならば、動きを制限させる、と」
「はあぁぁぁ!!」
くっ、簡単に斬魄刀の柄で防がれる。ならっ!
「ふっ! くっらえっ!!」
「……!」
「なっ!?」
ドカッ!!
僕が、卯ノ花隊長に初めて、一撃を与えた
止まるな、打て、今しかない、打ち続けろ!!
「おォォォォッ!!!」
ドドドドドッ!!
僕の斬魄刀は、多分、かなり珍しい部類に入る。始解で斬魄刀が無くなるなんて、そうそう居ないと思う
しかも、何かを操れるようになる訳でもなし、何かを出せる訳でもない
『運』が良くなるんだ。ただ、それだけ
「……甘い」
「ごばっ!?」
「面白い歩法ですね。掴むのに少し、かかりました」
たった1発、殴られた。それだけで、ほぼ致命傷
内蔵のどれかが、多分イカれてる。喉の奥から血がせり上がってくる。ぶぺっと、吐き捨てる
相手は、その様子を見下ろしているだけ。僕は、今、伏せていたのか。足に力を入れ、左手を地面に突き立てる
痛い。ものすごく、痛い。常人なら、原型なんて残らないぐらいの威力。そりゃ、意識も飛ぶか
ふらつく足を叱咤する。痛いってことは、まだ、やれる。本当にやばい時は、痛みすらない
「……まさか、立てる、とは。副隊長ですら、再起不能の一撃を与えたつもりでしたが」
「……運が、良かった、のかな?」
「さて、それは、貴方の方なのでしょうか? 苦しみが続くだけですよ」
「だけど、まだ、戦えてる。立っている。諦めていない!!」
ああ、
僕は、駆ける。もう、履いていた草履はとうに砕け散っている。霊圧を固めて、足裏を爆ぜさせる。さっきの速度の比では無いぞ! 今の僕は、最高速度を常に更新し続けている
「ほう、まだ早くなりますか。流石に、追うのが厳しくなってきました」
「嘘こけっ!! ずっと目が会いっぱなしや!!」
「あら、気付かれてましたか」
「な、なんて速度……! 私ではもう、追い付かない………!!」
左側方からの掌打。片手で止められる
後方からの蹴り。片足を上げて止められる
もう一度、左側方からの突き。斬魄刀の柄で止められる。返しの刃を紙一重で避ける
「む? おかしいですね」
「はっ! 貴女の剣速に慣れてきましたよ!!」
「………嘘、では無い。けど、本当でも無い。コレは、この、違和感は?」
なんで気付けるんだよ。そのひと振りに何があったんだよ
そうだ、僕の斬魄刀能力が、徐々に強まってきたんだ。悟らせるつもりはなかった、素振りもなかった
「ハァァァアアッ!!!」
「………残念です」
「な、に………」
最高の、最高速度、過去一の突きだった。しかし、たった一本の、腕によって止められる。そして、掴まれてしまった
「他の所も終わりましたね。ここまで、ですね」
「グァ」
あ、あご、割れたら、どうすんねん
僕の意識は、そこで沈んだ。肩に担がれたような感じがしたが、もう何も、感じな