虹ヶ咲学園の恥晒し 作:種子島
ニジガクはいいぞ…
※アニガサキ準拠
東京のお台場に存在している虹ヶ咲学園。通称ニジガクと呼ばれるその高校は、最先端の施設と幅広い分野の勉強ができると人気急上昇中の学校だ。
桜舞い散るこの季節。これから始まる学園生活へと期待に胸を弾ませた新入生たちが新たにニジガクの一員になった。
そして何を隠そう、この俺こと
虹ヶ咲は数年前から共学になった高校だが、女子校だった名残りか女子生徒の方が圧倒的に多数だ。比率で言えば男が2で女が8といったとこだろう。
え? やけに詳しいって? そりゃあ俺が虹ヶ咲を志望したのは、家がめちゃくちゃ近いっていう事の他に女子が多い楽園だからっていう理由も大きいからな。
そして虹ヶ咲では女子の数が多いだけではなく、その質もとんでもなく高い。
「えっ…私の学校の女子のレベル高すぎ…?」
学校の敷地内を歩く女子生徒を眺めているのだが、どの子も漏れなく美少女ばかりだ。ちょっと怖くなるほどに。
「天国はここにあったんだぁ」
これからの3年間をこの天国で過ごせるなんて必死に受験勉強した甲斐があったというものだ。
いやまぁ、アイツがかな〜り根気強く俺の勉強を見てくれたのが1番の要因ではあるが。
「……そういやアイツ見かけねぇな」
真面目なアイツのことだから入学式が始まる1時間前には学校に着いているハズ。
うーん、まぁそのうち見つかるか。普段は地味寄りだけどめちゃくちゃ美少女だし、俺の高性能美少女レーダーがあれば見つけるのは容易い……
「はっ!」
前方18メートル! 美少女の気配アリ! 直ちに戦闘モードに移行しますどうぞ!
俺の美少女センサー、別名チンピクセンサーが過剰な反応を見せる。ここまでの大きな反応、対象はS級美少女……いやSS級美少女か…!?
対象との距離が縮まる程にセンサーの反応が強くなっている。とてつもねぇ……入学初日からここまでの大物と出会えるなんて流石は虹ヶ咲だ…!
「む、あの子たちか!」
「でね〜?」
「あはは」
「ふ、2人……だと……」
なんてこった。美少女の気配が強いとは思っていたが、まさか2人組だなんてな。ふっ、それならあの強い反応も納得だ。
さて、問題はここからだ。対象をロックオンした次は当然声かけフェーズに移行する。ここで重要なのはいかに好印象を持ってもらうかだ。人間第一印象が大事だからな。ナンパの成功可否は第一印象で8割決まると言っても過言ではない。
だが心配はいらない。この時のためにシミュレーションで訓練は積んできた。今こそ長年の訓練の成果を見せる時だ松本零士!
「あのー、すみません」
「あ、すみません友達と一緒なので」
ダニぃっ!? まだまともに話してもないのに完全ガードだと!? くっ、さてはこの子たち声かけられ慣れてるな…!?
だ、だがこれくらいは想定の範囲内…! このくらいで挫けていては男の名折れ!
「い、いやー別に怪しいもんじゃないですよ? ちょーっとお話ししたいだけで〜」
「いえいえ、もう既に充分に怪しいですよ」ニコッ
「ぐぅ…! ち、違う! 俺はキミたちと同じ虹ヶ咲の生徒だ! 不審者じゃない! 制服着てるだろ!」
「ふふっ、早く本当の持ち主に返してきたほうがいいですよ?」ニコニコ
「盗んだわけじゃねぇよ!! 正真正銘俺のだっつーの!」
「へぇ〜、本物の高校の制服が手に入るなんて最近のコスプレショップは品揃えがいいんですね」ニコー
「本物の男子高校生ですぅぅぅぅぅぅ!! ピチピチの15歳ですぅぅぅぅぅ!!!!!!」
な、なんだこのツインテガール!? 俺の培ったナンパテクニックを見せる前に全てシャットアウトされるんだが!?
て、鉄壁や…! まさに難攻不落や…! 熊本城くらい難攻不落ッ…! 熊本城よく知らんが。
「よし、じゃあ行こっか。歩夢」
「う、うん。あれ? ねぇ侑ちゃん……その人って」
「ん? ただの怪しいナンパ男……あれ?」
完敗だ。今の俺にこの熊本城ガールを落とすことはできない。まだまだ未熟ッ…! 圧倒的未熟ッ…!
だが男松本零士! 恋の障害はデカければデカい程に燃える! 次会う時までには面白鉄板トークを3つほど携えてくるからその時まで待ってろよ!
そうと決まればこうしちゃいられん! 学校辞めてお笑いスクールに入学手続きを…!
「あのー」
「あ、すみません。今ちょっと退学の手続きについて調べてるからちょっと待っててもらえます?」
「入学初日だよね!?」
さっきまでガッチガチの愛想笑いを顔に貼り付けていたツインテ少女が俺の肩を掴む。
あれ? さっきまで取り付く島もない感じだったのに、やけにグイグイ絡んでくるな。
はっ! まさか! これが俗に言う押してダメなら引いてみろ戦法だと言うのか!? よもやよもやだ……意図せずして高度な駆け引きを披露していたとは、やはり俺は恋愛の天才か。
「ねぇ、どうせまたアホなこと考えてるんでしょ?」
「あ、アホ!?」
「……やっぱり。零士くんだよね?」
「な、何故俺の名前を!? はっ、まさか俺の熱狂的なファンもしくはストーカー…? そうかそうか、さっきの冷たい態度は照れ隠しだった訳か納得」
「歩夢、このどうしようもないアホさ。やっぱり零士くんだよ」
「うん、そうだね」
はぁ……我ながら罪な男だ。入学初日からファンを獲得してしまうなんて。
「ねぇ、そろそろアホ妄想してないで戻ってきてよ!」
「……俺はとんでもない物を盗んでいたんだな」
「え? 犯罪自慢?」
「────キミたちの心です」
「どうしよう歩夢、アホさだけじゃなくてウザさも成長してるよ! 筍もびっくりの成長速度だよ!」
「……ふぅ」
「あ、歩夢…?」
「俺の夢に向けてあまりにも順調なスタートだ。このままの勢いで俺は、俺を中心とした美少女ハーレムな学園生活を────いでっ!」
脇腹に鋭い痛みが走る。何事かと視線を下に向ければ、いつの間にか隣に立っていたSS級美少女の指が俺の脇腹を力強くつねっていた。
「そろそろちゃんとお話、しようよ」ニコ
「……は、はい」
何故だろう。美少女のキラキラした笑顔なのに、底知れぬ黒い感情が沸き出ている。
決してビビった訳ではないが、俺は掠れた声を出して首をゆっくり縦に振るのだった。
………
「おぉ! 歩夢に侑か! 久しぶりだなぁ!」
「気づくの遅いよー」
「仕方ないよ侑ちゃん。零士くんだもん」ニコニコ
俺たちは学校の敷地内にあるベンチに腰をかけて会話を弾ませる。
驚くことに、さっきまで俺が必死こいてナンパしようとしていた2人はどうやら俺の古い友人だったらしい。
ツインテールの方が
中学に上がると同時に俺が転校してめっきり会わなくなっていたから久しぶりの再会だな。
「いやー、マジで久しぶりだな! 元気だったか?」
「うん、歩夢も私も元気だよ。零士くんの方は?」
「ふふ、そんなの聞くまでもないよ侑ちゃん。入学初日に女の子に声かけるくらい元気が有り余ってるみたいなんだから」ニコニコ
「な、なぁ……なんか歩夢怒ってる…?」ヒソヒソ
「めちゃくちゃ機嫌悪い。あんな歩夢初めて見るってレベル」ヒソヒソ
「2人して秘密の話? 妬けちゃうなぁ」ニコニコ
「「ひえっ」」
な、なんだこの怒気…! 笑ってるのに全く笑ってねぇ! 心なしか歩夢の背景に修羅の姿が見える。歩夢のやつ、少し会わない間にスタンド使いになってやがったのか…!
「お、おい侑…! 歩夢のやつ何でこんなに怒ってるんだよ…! しかも俺だけに…!」
「えー、まぁ……心当たりはあるけど、私の口から言ってもいいものか」
「頼む教えてくれ! 土下座でもなんでもするから! 靴を舐めろと言われれば舐める! 他の場所でも喜んで舐める!」
「プライドとかないの…? あと舐めるのは絶対にやめて。 はぁ、仕方ないなぁ」
そう言うと侑は大きく息を吐いて俺の耳に顔を寄せてきた。そのままひそひそと声を出すもんだから耳に息が当たってくすぐったい。
いいだろ…? 世界で俺だけの高咲侑ASMRだぜ…?
「零士くんさぁ、私と歩夢に何も言わずにいなくなっちゃったでしょ…? 歩夢、すごいショック受けてたんだよ。しばらくずっと引きずってて……というか私だって今もちょっとムカついてるし」
「……悪い。自分が引っ越すこと、引っ越しの当日まで忘れてたんだよ」
「あ、アホすぎる……歩夢が不憫だよ……」
侑は額に手を当てて呆れたように息を吐く。
仕方ねぇだろ。小学6年生の男子なんてクラスの好きな女子とゲームと覚えたてのオ◯ニーのことくらいしか頭にねぇんだよ。それ以外に割く脳内メモリーの容量はないんだ。
「それだけじゃないよ。引っ越したって隣のおばさんに聞かされた後に、私たちメッセージも送ったのに全然返してくれなかったし」
「引っ越しした当日にスマホぶっ壊れたんだよ。Tバック重ね着オヤジと戦ってる時に」
「何そのサブストーリー、ちょっと気になるし」
「……あれは俺が引っ越しした日の夕方のことだった」
「あ、ごめん。やっぱいいや。いうほど聞きたくもないし」
マジかよ。この話に食いつかないヤツとか初めてなんだが? 転校先の中学校ではこの話でクラスの人気者にまで登り詰めた実績があるというのに。
そういえばアイツを初めて爆笑させたのもこのエピソードだったな。今度また話してやろう。
「だからさ、歩夢はそれがずっとモヤモヤしてるんだと思うんだ。本当は久しぶりに零士くんに会えて嬉しいはずだよ」
「そうか、それは確かに俺が悪いな」
「うんうん。だからちゃんと謝っといて、わだかまり無しの状態にして昔みたいにまた3人で遊ぼうよ! せっかく再会できたんだからさ!」
「侑……わかった。ちゃんとケジメはつけるさ」
侑は俺に向かってグッと親指を立てる。今も昔も変わらず良いヤツだ。
そして俺は先ほどから変わらず笑顔じゃない笑顔を貼り付ける歩夢の前に立つ。というかその闇笑顔怖いからやめてほしい。
「歩夢」
「どうしたの? もう2人だけの内緒話は終わったの?」ニコニコ
「歩夢ッ!」
「ふぇっ!? な、なにっ!?」
俺は勢いよくグワッシっと歩夢の細い肩を掴んだ。それに驚いた歩夢の顔から貼り付けていた闇笑顔が消え去った。
「歩夢、悪かった! 事情があったとはいえ、お前と侑を俺は傷つけてしまった!」
「……ふ、ふんっ、今さらそんなこと言われても。さっきだって、私と侑ちゃんはすぐ零士くんだって分かったのに、そっちはそうじゃなかったみたいだし、私たちのことなんてどうでもいいんでしょ…?」
「そんな訳ない!!」
「…!」
「確かに気づかなかった。でも、お前たちのことを忘れたことなんてない! 引っ越してからしばらくは俺だって普通に寂しかった」
「ふ、ふーん……そ、そうなんだ」
「……だから、久しぶりに会えて嬉しいぜ。歩夢」
「零士くん……わ、私も」
よし、いい雰囲気だ。ここは小細工無しで俺の素直な思いの丈をぶつけてやる!
「それに、声をかけた2人が歩夢と侑だって気が付かなかったのは理由があるんだ」
「理由?」
「あぁ、俺の中の記憶では2人はまだ小学校6年生だった。その頃に比べてお前たちは……その……」
「そ、その頃に比べて……? な、なに…?」ドキドキ
「こんなにエロく成長してるとは思わなかったんだ!!」
「………」
「零士くん……」ハァ
あぁ、そうさ! 俺の記憶の中の2人は可愛いは可愛いけどロリでしかなかった。それが今はどうだろう。ムッチムチやで! ムッチムチ!
まさか2人がこれ程まで女になっているとはこのリハクの目を持ってしても……
ん? 歩夢の顔がまた闇笑顔に戻ったぞ。Why?
「零士くん、手離してくれるかな?」ニコニコ
「あ、はい」
「行こっか、侑ちゃん」
「あ、ちょっと歩夢!」
「おい侑! チョマテヨ」
「ごめん、今のはどんな敏腕弁護士でも弁護できないくらい零士くんが悪いと思う」
あれぇ…? 心なしかさっきよりも怒ってないですかね上原さん。 ちょっと高咲さん、そんなゴミを見るような目で見ないでよ。
「零士くん」
「お、おぉ?」
「私たちはすぐ話しかけてきたのが零士くんだって気づいたよ? だって零士くん、昔と変わらず……いや、それよりずっとアホなんだから」ニコニコ
「アポ…?」
幼馴染の再会は罵倒と共に。
ニジガクはいいぞ