虹ヶ咲学園の恥晒し 作:種子島
今回はぽむと零士の過去の話
私にとって松本零士くんは、とっても頭が残念な幼馴染の男の子です。
…………
せつ菜が同好会に復帰することが決まり、明日から本格的な活動が再開されるということで今日はそこで解散になった。
最初は全員一緒に帰っていたのだが、一人また一人と別れていき、気がつけば俺の隣には歩夢しかいなくなっていた。
「てか、侑は? キミら家隣じゃろ」
「なんか用事があるんだって」
「男か」
「そんな訳ないでしょ」
俺の軽口に歩夢は呆れたような表情を浮かべる。その後も何やかんやと中身のない話をしながら2人で歩いていたのだが、唐突に歩夢が話を変えた。
「そういえば、せつ菜ちゃんと零士くんって仲良しなんだよね」
「ん? まぁな。中学の時は基本ずっとせつ菜とつるんでたからなぁ」
「私と侑ちゃんと離れ離れになった後、仲良くなったんだ」
「あー、まぁそうなるな」
歩夢は2人きりになると時々こうして昔の話をする。俺も悪気はないとはいえ2人には悪いことをしたとは思ってるし、この話をされると弱いというのが正直なところだ。
「でもせつ菜ちゃんと零士くんってどうやって仲良くなったの?」
「おい、そんな『不真面目なコイツとあんな優等生な子がどうやって仲良く……』みたいな目やめろや」
「そ、そんなこと言ってないよ!?」
「いーや目が語ってた」
歩夢は意外と表情に出るから分かりやすいところがある。特に嫌なことがあると結構渋い顔をしてたりするからな。
「まぁ最初に話しかけたのは俺だったな。でもそっからあんだけ連むようになったきっかけとかは覚えてねぇな。気が付いたら仲良くなってた」
「ふーん」
「友だちなんてそんなもんだろ。歩夢と侑と仲良くなった時もそうだしな」
どうやら歩夢はあまり納得がいってない様子だ。これもまた表情に出ている。しかし俺としては仲良くなった決定的なきっかけとかは覚えてないんだから仕方ないだろう。
「じゃあ俺こっちだから」
「あ、うん」
「また明日な」
「うん……また明日ね」
少し寂しそうに手を小さく振る歩夢に対し、手を高く掲げて挨拶を返す。歩夢が俺に背を向けて歩き出したのを確認してから俺も歩き出す。
明日からは本格的に同好会の活動が再開される。柄にもなくワクワクしている気持ちをなるべく落ち着けて帰路についた。
………
「友だちなんてそんなもんだろ。歩夢と侑と仲良くなった時もそうだしな」
せつ菜ちゃんや、侑ちゃんや私とも気が付いたら友だちになっていた。特別なきっかけなんて覚えてない。
零士くんはそう言ったけどね、私はちゃんと覚えてるんだよ? 零士くんと初めて出会った時のことを。はっきりと。
それだけじゃない。
キミと初めて話をしたあの時も。
キミに初めて名前を呼ばれたあの時も。
キミに初めて触れたあの時も。
キミのことが好きになったあの時も。
キミのことが嫌いになったあの時も。
ぜんぶ。ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ。
私はぜんぶ覚えてるんだよ、零士くん。
初めてキミと出会ったのは、学校の近くの公園で遊んでいた時だった。侑ちゃんしかお友だちのいない、引込み事案な私の壁を壊していったあの日の出来事。
………
「なぁ、何泣いてるんだよ」
人目も憚らず泣きじゃくる私とそれを慰める侑ちゃん。そんな私たちに零士くんは声をかけてきてくれた。
「うっ、ひぐっ……ひ、ぅ」
「この子、歩夢がいつもつけてるヘアピンを失くしちゃったんだ」
「大事なモンなのか?」
「……うん」
「よっしゃ分かった!! この俺も一緒に探してやるぜ!! だからもう泣くな! はっはっは!!」
自信満々な態度と表情で高笑いを浮かべる零士くんを見て、私と侑ちゃんはただただ呆気に取られていた。
でもキミの言ったことは嘘なんかじゃなくて、それから日が暮れるまで一緒になって真剣にヘアピンを探してくれたのを覚えてる。
でも結局、ヘアピンは見つからなかったんだよね。
「歩夢、そろそろお家に帰ろっか」
「……う、ぅん」グスッ
「……なぁ! 明日もこの公園来るか!?」
「ぇ? えーっと、ゆ、侑ちゃん……どうする…?」
「別に来てもいいけど」
「じゃあ約束な! 明日!絶対だぞ!! 約束破ったら針万本飲むからな!!」
そう言って零士くんはあっという間に公園から走り去っていった。
「……針は千本だし自分で飲んでるし」
「………ふふ」
「あ、ようやく歩夢が笑ってくれた」
「え?」
「変な男の子だったけど良い人だったね」
「……うん」
変だけど優しい男の子、それが私と侑ちゃんが零士くんに初めて抱いた感想だった。
そして翌日約束通り公園に足を運ぶと、私たちに遅れること数十分、紙の袋を手に持った零士くんが息を切らして駆け寄ってきた。
「おーい! はぁ、はぁ、昨日の!」
「あっ」
「どうしたのそんなに急いで」
「はっはっは! いいモン持ってきたぞ!!」
零士くんは紙袋の中から何かを取り出す。彼の手のひらに乗っていたのは、黄色い花の形をしたヘアピンだった。
「これ…」
「昨日は大口叩いたのに見つけられなくてごめんな! でもコレをあげるからもう泣くな!」
「あ、ありがとう…?」
私は勢いに気圧されるまま彼の手からヘアピンを受け取って髪に付ける。すると侑ちゃんは満面の笑みで私の手を握った。
「わぁ! 歩夢可愛いよ! 似合ってる!」
「そ、そう…? えへへ」
「あなたもそう思うよね!」
「ん? そりゃな。なんたってこの俺が選んだんだからな! わっはっは!!」
「すっごい自信だね、あはは」
正直言って、前の気に入っていたヘアピンが無くなったのはまだショックだった。それでも、私のためにプレゼントをしてくれたということと、それを見て侑ちゃんたちが可愛いって言ってくれたこと。それがどうしようもなく、嬉しかった。
「あ、ありがとう……侑ちゃん。それと、えーっと」
「あ、そうだよ! 私たちまだあなたの名前知らない!」
「俺? 俺は松本零士! 将来の夢はハリウッド女優と結婚することだ! よろしくな!」
心の中の雲を晴らしてくれるような、どこまでも真っ直ぐで温かい笑顔。それから私と侑ちゃんが零士くんと仲良くなるのは自然な流れだった。
「よろしくね!」
「よ、よろしく…! えっと、れ、零士くん…?」
「!? な、なんだお前俺のこと好きになっちゃったのか!?」
「ふぇっ!?」
「はぁ!?」
「きゅ、急に下の名前で呼ぶとか…! 俺に惚れちゃったんだな!?」
「ちっ、ちちちち違うよぉ…!」
「はぁ〜もぅ! 男子ってなんでこう…!」
余談だけど、零士くんの精神年齢は初めてあったこの頃からあまり成長していない。
それからは私と侑ちゃんに零士くんを含めた3人で遊ぶことが増えた。同じ小学校で家も遠くないということもあって放課後はほとんど毎日一緒にいた気がする。
侑ちゃんと零士くんが私を引っ張ってくれるから、私の引込み事案や恥ずかしがり屋な部分も随分とマシにはなったと思う。
そして小学生高学年になった私たちだけど、変わらず3人仲良しのままだった。周りの女の子たちは恋愛とかに興味を持ち出す頃で、私たちと零士くんもそういう関係なんじゃないかと聞かれることもあった。
でも私にとって2人は大切な幼馴染。零士くんのことも好きだけど、それは決して男の子としてじゃない。
────そう、思っていたのに。
「歩夢、そろそろ泣き止んで…?」
「う、うぅ……ひぐ、うぇ、んんっ」
私は、ずっと楽しみにしていた校外学習当日に熱が出てしまって、侑ちゃんや零士くんと動物園に行けなくなったことで泣いていた。
「ほら、ちゃんとお薬飲んでいい子にしてるのよ?」
「ひぐ、ひぐ……うん」
今頃、侑ちゃんや零士くんはクラスのお友だちと一緒に動物園を楽しんでいるんだろうか。そんな事を考えているせいで涙は止まらなかった。
ピンポーン
来客を告げるチャイムが鳴る。お母さんの足音が聞こえてきて次にドアが開く音がする。
「えっ」
何だろう、お母さんが驚いたような声を出している。一体誰が来たんだろう。でも、私には関係ないんだろうと布団を被ったその時。
ガチャ
「おーっす歩夢〜。体調どうだー? って、良くないから遠足休みなんだよな。悪い悪い」
「……えっ、零士くん…? どうして…?」
扉を開いたのはいつも通りの笑顔を浮かべる零士くんだった。でも信じられなかった。だって零士くんは今頃みんなと一緒に動物園に行ってるはずなのに。
「ナイスガイが見舞いに来ましたぜ〜? 嬉しいか〜? へへっ」
「そうじゃなくて…! 今日は動物園に…!」
「ん〜、行くのやめた」
「えっ?」
「なんかさ、歩夢は今1人なんだな〜って思ったら動物とか見る気分じゃなくなったんだよ」
嬉しかった。
私と同じかそれ以上に校外学習を楽しみにしていた零士くんが、私のことを思って行動をしてくれたということが嬉しくて、今まで経験したことないくらい胸が締め付けられた。
「まーバス乗る前に勝手に抜け出してきたから先生はブチ切れてるだろうなぁ。侑にフォローよろしくって言ってきたけど多分侑も怒ってるかな」
体調治ったら一緒に謝ってくれよと笑う彼の顔が直視できなかった。
自分の鼓動の音だけが聞こえる。心臓の音が騒がしくて仕方ない。
「ほら、一緒にゼリー食おうぜ。今日は歩夢が先に好きな方選んでいいぞ……って、な、何で泣いてんだ!?」
「……ぇ?」
「ど、どっか痛いのか!? おばさん呼んでくるか!?」
「あ、ううん…! 違うの…! これは、違くて…!」
ダメだ。
自覚したら、止められない。
ドキドキする。
自分が変わるみたいでちょっと怖い。
それ以上に、胸が温かい。
「歩夢? 大丈夫か?」
「……零士くんは」
「ん?」
「零士くんは今日みたいに、私が悲しい時そばにいてくれる…?」
「え?」
「あっ、ごめん何でもないの! 今のは忘れて…!」
自分でも変なことを言ってしまったと自覚した時にはもう遅い。恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくのを感じて布団の中に逃げようとした時、零士くんはあっけらかんとした様子で答えた。
「歩夢がそうして欲しいならもちろんそうするぞ。悲しくなったら俺を呼べな! いつでもそばに駆けつけるからな! あっはっは!」
それより早くゼリー食べようぜ〜と言ってベッドに腰掛ける零士くん。肩と肩が触れ合って彼の温もりを直に感じる。
────好きだ
私、零士くんが好きなんだ。
この後2人でゼリーを食べて、零士くんは私が眠るまでそばでずっと好きなアニメの話をしてくれた。私はアニメはよく分からないけど、楽しそうに話す零士くんの声を聞いていると自然と眠りに落ちていた。
零士くんが帰った後、私のことを見るお母さんがニヤニヤと笑っていてとても恥ずかしかった。
…………
「卒業しちゃったねー!」
「ふふ、春から私たちも中学生だね」
「俺は天才だから飛び級して高校行くけどな」
「零士くんは学力的にはもう一回小学生した方がいいくらいでしょ?」
「ククク……事実だから言い返せない」
小学校6年生の春、私たちは無事学校を卒業して初めて出会った公園で思い出話に花を咲かせていた。
「それにしても、零士くんと初めて会ってからもう何年も経つんだね〜」
「おーそうだな。なんだかんだでずっと一緒にいたな俺たち。もうマブダチだなこれ」
「ダチで終わらせたくない人が一名いるみたいだけど〜?」ニヤリ
「んぁ?」
「んもぅ! 侑ちゃん!」
私の零士くんへの気持ちは侑ちゃんには筒抜けだ。あの日以降すぐに私の態度に違和感を覚えたらしく、あれよあれよという間に私は自分の気持ちを白状させられていた。
「まっ、中学上がってもどうせ一緒にいるんだから慌てることないだろうけど」
「ゆ、侑ちゃん…! しーっ…!しーっ…!」
「あははっ! あれ? 零士くんどうかした?」
「……ん? あーちょっとな」
らしくない彼の様子を気にしていたのは私だけじゃなかったみたいだ。零士くんは最近何やらボーッとしてることが多い気がする。
「なーんか忘れてる気がしてな。思い出せそうで思い出せない。もうすぐここまで出かかってるのに……悔しいです!!」
「えー? どうせ教室に何か忘れてきたとかじゃないの?」
「んー、忘れ物……じゃない気がするんだよなぁ。なんか、お前らにちゃんと話さないといけないことがあったような無かったような。ダメだ、思い出せん」
「ふーん、思い出せないってことは大したことじゃないんじゃない?」
侑ちゃんの言葉に対して零士くんは納得いってないように首を曲げて唸っている。
正直私も侑ちゃんと同じ考えで、思い出せないなら大したことじゃないと思っていた。大事なことなら忘れないし、忘れたとしてもすぐ思い出せる。
……でも、なんだか嫌な胸騒ぎがする。
「まぁいっか。腹減ったし今日は帰るわ!」
「じゃあね〜! また明日公園で集合!」
「零士くん、またね」
「おう! また明日な!」
でも一つ忘れていたのは零士くんだけじゃなく私の方もだった。私が好きになった松本零士という男の子は、私たちの想像を絶するほどに頭が残念だということを忘れていたのだ。
結論から言うと、私たちにいつも通りの明日は訪れることはなかった。
日が暮れても公園にやって来ない零士くんを心配して、私と侑ちゃんは彼の住んでいたマンションの一室へ足を運んだ。
そこで目にしたのは信じられない光景。まるで零士くんたち家族が最初からいなかったみたいに、そのマンションの一室はもぬけの殻になっていた。
「……………嘘」
放心状態の私の横で、侑ちゃんは偶然通りかかった零士くんの家のお隣さんに話を聞いている。どうやら零士くんたち家族は今日の朝にこのマンションから引っ越してしまったとのことだ。
追いかけようにも行き先を知らない。私たちは事態が飲み込めずに公園のベンチに座ってただただ呆然としていた。
「……そうだ! スマホで連絡しようよ!」
侑ちゃんの言葉を聞いてハッとした私は親から買ってもらった子どもようの携帯端末を開いて零士くんに電話をかける。
しかし、どれだけ待っても端末の向こうから彼の声が聞こえてくることはない。
「……零士くん、どうして」
私の大好きな人は、突如として私の前から姿を消してしまった。
零士くん、会いたいよ。悲しいよ。
私が悲しい時はそばにいてくれるって言ったのに、私が何度涙を流してもアニメや漫画のように彼が私の前に現れることはなかった。
そして私は中学生になり、中学校を卒業し、侑ちゃんと一緒にお台場の虹ヶ咲学園へと進学を決めた。
この3年間、何度も彼を忘れようとした。けれど厄介なことに、私の心は彼のことを忘れないどころか、日を重ねるごとに彼に会いたいという思いが強くなっていく。
「うわ〜! 虹ヶ咲やっぱりおっきいね!」
「もぅ〜、侑ちゃんったらはしゃぎすぎだよ」
私と侑ちゃんの周りには他の新入生の人たちも大勢歩いている。私はその中に彼の姿がないかつい探してしまう。そう都合よく見つかったりする訳がないのは分かっているのに。
「あのー、すみません」
「あ、すみません友達と一緒なので」
後ろから男の人の声がかけられる。私が振り返って反応するよりも前に侑ちゃんが突っぱねた。そのまま2人で歩き出そうとしたけれど、その人は意外にもしつこく話しかけてくる。
「い、いやー別に怪しいもんじゃないですよ? ちょーっとお話ししたいだけで〜」
「いえいえ、もう既に充分に怪しいですよ」ニコッ
「ぐぅ…! ち、違う! 俺はキミたちと同じ虹ヶ咲の生徒だ! 不審者じゃない! 制服着てるだろ!」
「ふふっ、早く本当の持ち主に返してきたほうがいいですよ?」ニコニコ
「盗んだわけじゃねぇよ!! 正真正銘俺のだっつーの!」
「へぇ〜、本物の高校の制服が手に入るなんて最近のコスプレショップは品揃えがいいんですね」ニコー
「本物の男子高校生ですぅぅぅぅぅぅ!! ピチピチの15歳ですぅぅぅぅぅ!!!!!!」
初対面にしてはやけに小気味良い侑ちゃんとの掛け合い。何故か私はそのやり取りを聞いて懐かしさを感じていた。
一体どんな人が声をかけてきたのかと思い、意を決して振り返るとそこに立っていたのは会いたいと願い続けていた男の子だった。
「…………うそ」
昔よりも身長がかなり伸びていて、顔つきも声も男の子らしくカッコよくなっている。けれど本人の醸し出す雰囲気はあの時そのままだった。
「じゃあ行こっか、歩夢」
「……侑ちゃん、その人って」
「ただの怪しいナンパ男でしょ……って、あれ?」
侑ちゃんも勘付いたようで目を見開いている。会いたいと願い続けた人が目の前にいるのに、私の体も口も何も動かない。
「ねぇ、どうせまたアホなこと考えてるんでしょ?」
「あ、アホ!? 誰がだ!?」
「やっぱり、零士くんだよね」
「何で俺の名前……まさか俺のファンかストーカーか!?」
やっぱり、そうだったんだ。
私たちの前から突如として姿を消した零士くんが、今度は突如として姿を現した。あまりの急な展開に私の脳みそは理解が追いつかない。
嬉しい……会えて嬉しい……
話したいことがいっぱいあるの……
それなのに、私の心の中は喜びの他の感情も膨らんでいていて押し潰されそうだった。
あぁ、やっぱり……ダメだなぁ。
嬉しいけど、許せない。
いきなり何も言わずに私たちの前からいなくなったのに、再会したと思ったら向こうは私たちのことに気がついていない。それどころか初対面だと思ってる女の子をナンパをしてくる始末。
私はずっと零士くんに会いたかったのに、零士くんはそうじゃなかったのかな?
ねぇ、どうして?
どうして、あの日私たちに何も言わなかったの?
どうして、連絡したのに返事してくれなかったの?
ドウシテ……ドウシテ……
ドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテ
どうして気付いてくれないの? 会いたかったのは私だけ…?
「歩夢ゥ! 零士くんアホさだけじゃなくてウザさも成長してるよ! まるで話が通じないよ〜!」
私の心の中にどす黒い感情が蔓延るのを感じる。これまでの思いをぶつけるように私は成長した零士くんの脇腹をつねる。
「んぉっ!?」
「そろそろちゃんと話、しようよ」
聞きたいこと、沢山あるんだよ? 零士くん。
………
後から聞けば、零士くんは引っ越すのをその当日まで忘れていて、連絡に反応がなかったのもスマホをすぐに壊してしまったかららしい。
そんな彼らしさ全開の理由を聞いた時は流石に笑うしかなかった。
零士くんは私たちの知る零士くんのままだった。優しいけど、おバカで女の子好きですぐ手を出そうとする。
それを裏付けるように、零士くんは入学してすぐに騒動を起こして虹ヶ咲学園の恥晒しなんて不名誉なあだ名をつけられ、私の知らないところで可愛い女の子の知り合いも沢山増やしている。
私以外の女の子と楽しそうにしていると、モヤモヤしちゃう。自分の嫉妬深さが嫌になる。
「はぁ……私、ダメだなぁ」
大好きなのに、許せないの。
私にとって松本零士くんは、とっても頭が残念な幼馴染で、とっても憎い男の子で、とっても大好きな男の子です。
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