虹ヶ咲学園の恥晒し 作:種子島
評価バーに色がつきました〜!! そのおかげなのかお気に入りも凄く増えててびっくりです! ありがとうございますmm
皆さんからの評価やお気に入りをモチベに変えて今後も小説を投稿していこうと思います。どうぞ今後ともよろしくお願いします。
「虹ヶ咲学園2年、松本零士! 趣味はアニメとゲームとその他諸々! 夢は年上のセクシーなお姉さんに狙われて捕まって食べられて結婚することです! 真面目に頑張るのでよろしくお願いしマッスル!」
「自己紹介が既に真面目ではないのですが」
生徒会室の中に響く俺の美声に続いて副会長ちゃんの厳しい指摘が飛んでくる。
何故生徒会役員でもない俺が生徒会室で自己紹介をしているかと言うと、それは今朝に菜々からかかってきた一本の電話が原因だった。
………
「熱? マジかよ、あーゆーおーけー?」
『おーけーではないから学校を休むんですよ……』
「そりゃそうか」
制服に着替えてご陽気な朝食を楽しんでいた俺だったのだが、珍しくこんな朝っぱらに菜々から電話がかかってきたので何かと思えば、どうやら風邪を引いてしまい今日は学校を休むとのことだ。
「んで? 何でまた電話なんか。ティーチャーに伝えればいいのか?」
『いえ、そうではなく……零士さんに一つお願いしたいことがありまして』
「スリーサイズか?」
『全く興味ないです』
おいおい、マジかコイツ。零士くんのスリーサイズに興味ない人間とかいるのかよ。この世の中で俺しか知らないトップシークレットだぜ? 後で後悔しても知らないからな。
『実は、今日は生徒会の仕事がとても忙しくなる予定なんです。それなのに私が抜けると副会長が会長の仕事に回ることになって他の業務に遅れが出てしまうんです』
「そりゃ大変」
『だから零士さんに今日だけ生徒会の仕事を手伝ってほしいんです。誰でもできる雑務なんですが量が多くて』
「別に構わんが……自分で言うのもなんだが俺でいいのか? 生徒会の仕事だろ? しずくとかの方が向いてそうじゃないか?」
『……もちろん同好会の皆さんに頼むことも考えました。でも、私は零士さんを信用しています。こんなお願い、零士さんにしかできないんです』
画面の向こうから菜々の真面目な声が聞こえてくる。生徒会の仕事が何なのかは全くもって知らないし戦力になるかは分からんが、ダチにここまで言われて断るなんて男じゃねぇな。
「しゃーねぇな、分かったよ」
『ありがとうございます! 副会長には私から連絡をしておくので、放課後になったら生徒会室に向かってください!』
「おう、こっちのことは心配すんな。お前はイビキかいて寝てゆっくりしとけ」
『イビキなんてかきません!』
「ははっ、元気そうで安心したぜ。じゃあな」
『あっ、零士さん! 私本当にいびきなんてかいたりしまs』
プツッ
……よしっ、いっちょやったりますかぁ!
………
という理由でございやす。
まぁ生徒会の皆さんや、俺がきたからには大船どころかドラゴンに乗ったつもりで安心してくださいや。やる時はやる男ですぜ俺は。
「正直人選に思うところはありますが、今は生徒会長を信じましょう」
「そう言うなって副会長ちゃん。きっと今日俺が帰る頃には『きょ、今日だけと言わずこれからも生徒会に力を貸してください!』って言ってると思うぜ?」
「120%ないですね。さぁ、忙しいのでちゃっちゃと始めますよ」
仕事スイッチを入れた副会長ちゃんは席に座って書類を取り出す。他の役員たちも自分の目の前の仕事にテキパキと取り組んでいく。
あるれぇ? れいじくんはなにをすればいいの? まさかのスパルタ教育ですかい?
「こちらの複雑な業務は私たちで担当します。三船さん、そちらと松本さんはお任せしてもよろしいですか?」
ん? 三船さん?
「承知しました」
「うぉ! いつの間に俺の背後に」
「ずっといましたが…?」
副会長ちゃんの視線が俺の背後に向いていたので振り返ると、めちゃくちゃ至近距離に真剣な表情を浮かべる女子生徒が佇んでいた。
「えーっと、キミが三船さん?」
「はい、虹ヶ咲学園普通科1年の三船栞子です。本日は松本先輩の指導を担当させていただきます」
三船はそう言うと教科書にお手本として載せたいくらい綺麗なお辞儀を披露する。なんならお辞儀だけではなく、言葉遣いから所作の一つ一つまでの全てが丁寧で育ちとか品の良さを感じる。
「じゃあ頼むぜ、三船さん」
「私の方が後輩なのでさんはいりませんよ」
「あそう? なら、よろしくな三船」
「よろしくお願いします。まずはこちらの作業を担当していただきます」
そう言って三船は机の上に数え切れないほどの印刷物と業務用のバカでかいホッチキスを2つ用意した。
「これは?」
「保護者の皆さんに配布される学年便りです。印刷は済んでいるので後はコレを使ってまとめるだけです」
「えぇ、こういの先生がやるんじゃねぇのか?」
「教員の皆さんもご多忙ですので……もし嫌でしたらこちらは私が全て行うので松本先輩には別のお仕事を割り当てましょうか?」
「あぁっ、いやそういうわけじゃねぇって…!俺もやるよ。ほら半分こな」
菜々に頼まれて手伝いに来てんのに仕事が嫌だとか我儘言ってられっかよ。というか、本気で1人でやろうとするあたり三船の奴は相当真面目な奴なんだな。ある意味では菜々にちょっと似てるのかもしれない。
そしてそこからは黙々と単純作業の繰り返しだ。意外に思われるかもしれないが俺は割とこういう作業が嫌いではない。
いざ始まれば順調なペースで冊子を積み上げていき、小一時間程度で持っている量の全てが完了した。
「かぁ〜! 終わったぁ〜!」
「お疲れ様です。松本先輩の方が私よりもかなり多く積み上げていますね」
「おー、なんか途中からゾーンに入ってたかも」
「……」
「ん? どした」
「あ、いえすみません。ただ、少し意外だったので」
俺が首を傾げると、三船は少しだけ申し訳なさそうに俺の瞳を見ながら口を開いた。
「その、先輩は学園内であまり良くない噂が広まっているので」
「え、どんな?」
「その……3年生の綺麗な女性を見かけては声をかけて困らせているなど」
「はぅっ…!」
「他には、運動部の女子部員が走る姿を邪な視線で見ているなども」
「ぐっ…!」
「あ、それ以外には入学初日に下着姿で校内のメインストリートを歩いていたとも……って、流石にこれは与太話ですよね」
……苦笑いを浮かべる三船の顔を直視できねぇ。
すまない、本当にすまない。
今の噂、全部身に覚えがありすぎるんだ。というか最後のも与太話でもなんでもなく史実に基づいたものなんだ。
「先輩? どうかしましたか?」
「……いや、気にしないでくれ。それより次の仕事を始めようぜ」
「そうですね。では次はこれにしましょう」
そう言って三船は抽選箱のような物を取り出して机に置いた。箱の表面に貼られた白い紙にはデカデカと目安箱と記載されている。
「ほぉ〜、こんなのあったのかよ」
「はい。我々生徒会は生徒の皆さんから寄せられたこの意見を定期的に確認しているんです」
目安箱を持ち上げた三船は蓋を開いてひっくり返す。すると箱の中からはひらひらと数枚の紙が舞い落ちるが、特に驚いた様子もない三船のリアクションからするに、特別多くも少なくもないんだろう。
「ではまずこちらから」
「白紙だな」
「悪戯ですね」
「しょうもねぇことする奴もいるもんでさぁね」
「ふふっ、まぁこういった物は破棄するだけなので楽ではあるんですがね」
三船はそう言って手に持った白紙の紙をシュレッダーの中に放り込む。そして次の紙を手に取ったかと思うと、絶対零度の冷たい視線をその紙に向けた。
「お、おぉ……どうした一体」
「いえ、紙に描かれた内容が少し」
「どれどれ」
『朝香果林さんのスリーサイズが知りたい!』
「ほぉ」
『俺も知りたいです』
「先輩…?」シオ…
「おいおい冗談に決まってるだろ! だからその顔やめろ! なんかすげぇ傷つく!」
俺が紙に返事を書くと、それを真正面から見ていた三船は哀れな生き物を見るような、それでいてちゃんとドン引きしているような何とも言えない表情で俺を見ていた。背後に「しお…」っていう文字が浮かんで見えたぞ。
「コレはこうしましょう」
「あぁ…! なんてご無体な!」
全男子生徒の希望を三船はシュレッダーにぶち込んで粉々にしてしまう。あぁ、顔も知らない同志よ。この無念いつか晴らそうぞ。
「次はこれですね。ふむ……」
「何が書いてんだ?」
「食堂のメニューにもっと食べ応えのあるメニューを増やしてほしいとの要望です」
「あ〜、ちょっと分かるかも」
虹ヶ咲学園は今でこそ共学になったが、少し前までは女子校だった。その影響もあってか食堂のメニューもオシャレなもんが多かったりすんだよな。もちろんカレーとかカツ丼とかみたいなのもあるけど、そのバリエーションがもっと欲しいってことだろう。
「多分書いたのは男子だな」
「男子生徒である先輩の意見を直接聞けるのは貴重な機会ですね。ちなみに先輩はどのような料理がお好きなんですか?」
「おいおい、そりゃあ1番好きなジャンプ主人公は誰?ってくらい難しい質問だぜ」
「……すみません、例えがよく分かりません」
いやぁ難しい。焼き肉も好きだし寿司も好きだし天ぷらもしょうが焼きもラーメンもうどんもチャーハンも餃子もカツ丼も牛丼も……
「あまりにも難しいが……強いていうなら…!断腸の思いで1番を挙げるのなら…! カレーとハンバーグだ!」
「1つではないんですね……ふふっ」
「なにわろとんねん」
「いえ、まさに男の子といったようなメニューがお好きなのが想像通りで」
珍しく三船が表情を崩す。そんなに面白おかしいことを言ったつもりはないが、まぁ楽しそうだしいいか。
「男はいくつになっても少年の心を忘れないんだよ。よく覚えとけよ? 男ってのはドラゴンとロボットとカブトムシとヒーローとおっぱいはいくつになっても好きなんだよ」
「色々あるんですね……って、おっ!? おっぱ!?」
「ちなみにお尻も好きだぞ」
「……あ、あの……そういった話は……その……」
「おや〜? 三船殿、顔が真っ赤でござるよ〜?」
「え、いや……その……こ、困ります……」
むほほ…w なんだかもっと意地悪したくなりますなぁ。悪いな三船、男子は可愛い子にちょっかいかけたくなっちゃうもんなんだよぉ!?
「も、もぅ! 早く残りのも確認しますよ!」
「へ〜い」
そして俺と三船は残りの紙も全て確認したが、まぁ碌なもんが無かった。結局あの食堂のメニューについての要望が1番まともだった。
「なんかしょーもないの多かったな」
「まぁこんな事もよくありますよ」
「ひぇ〜、生徒会も大変なんだな」
「ですがやりがいもありますよ」
三船はシュレッダーの中身をゴミ箱に捨てながら静かに微笑む。その様子から生徒会の仕事に誇りを持って臨んでいることが伝わってくる。
「それなら来年は俺が生徒会長に立候補しようかな〜」
「えっ、先輩がですか……」
「おい! 何だその顔! 傷つくぞ!」
「あ、いえすみません! 決してそんなつもりでは!」
「お、おぉ、いや別にマジで怒ったりなんかしてないからそんな謝るなって」
「……すみません」
そんなにマジに捉える必要なんてまるで無いというのに、三船はしょんぼりとした顔で俯いてしまう。なんか逆にこっちが悪い事したみたいな気分になってくるぞ。
「そんな申し訳なさそうにすんなって。軽口くらいダチ同士なら普通だかんな」
「ダチ?」
「友だちってこと」
「……私と先輩がですか?」
「おうよ、俺とおっぱいについて語り合ったらそりゃもうダチだろ」
「別に語り合ってませんが!?」
三船にしては大きな声を出したかと思えば、次の瞬間には暗い表情を浮かべてペタンと椅子に座り込む。
「……すみません、実は私、友達という関係があまり分からなくて。幼馴染ならいるのですが」
「ふむ?」
「きっと私のお堅い性格のせいでしょうね。昔から友人と呼べるような関係性の人物は全然いませんでした」
「ふぅん」
「きっと私には友達を作る適正がなかったんでしょうね」
そう言って俯く三船の表情は寂しげだった。適正がないから仕方ない、まるで自分にそう言い聞かせているように見えた。
「適性ね」
「はい……」
「だがしかし残念だったな! 例えお前に適性が無かろうが! 俺にはダチを作る適性がある!」
「え?」
「適性のある俺がお前とダチになっただけだ。お前に適性が無いとかどうとか関係ないね! 参ったか!」
俺の言葉を聞いた三船はポカーンとした表情を浮かべている。そのまま数秒間沈黙が続いたが、次の瞬間に三船は口に手を当ててくすくすと笑い出した。
「ふふっ、松本先輩は噂通りめちゃくちゃな人なんですね」
「そうだ。そんで今日から俺とお前はダチだ。だからもう適性がないとか言うんじゃねーぞ」
「友達……私の友達……ですか」
「試しに俺のこと名前で呼んでみろよ」
「……零士、さん…?」
「いいじゃん。なんならさんもいらねぇけどな」
流石にそれは……と言って三船は苦笑いを浮かべる。というか、俺のことを名前で呼ばせるんなら俺だけ名字で呼んでたらフェアじゃないな。
「俺も栞子って呼んでいいか?」
「は、はい!」
「じゃあ改めてよろしくな、栞子……って、栞子って少し長いな」
「え、そうですか?」
「……よし、じゃあ今日からしお子って呼ぶわ!」
「し、しお子ですか…?」
「あだ名だよあだ名」
「あだ名……私に」
なんでか分かんないけどしお子って言葉がフッと浮かんだんだよな。よく見たら栞子ってめちゃくちゃしお子感ないか?(意味不明)
……つか完全にカッスのがうつってんな。
「三船さん、松本さん」
「おぅ、副会長ちゃん。どした?」
「いえ、こちら側の本日中に済ませなければならない仕事が終わったので様子を見に……お二人も大分進んでますね。今日はこの辺にしておきましょうか」
「頑張ったから褒めて♥」
「嫌です。ですが、お礼は言わせてください。ありがとうございます」
そう言って副会長ちゃんは頭を下げる。何はともあれ、これで菜々にもいい報告ができそうだな。何事もなく終わって良かった。
「てな訳で今日はありがとうな、しお子」
「い、いえ! お礼を言うのはこっちの方です」
しお子は再び綺麗なお辞儀を披露する。いくら慌てていようとそのフォームの美しさはまるで変わらない。
「よせやい、ダチが困ってるなら助けるのは当たり前よ」
「……そう、ですか」
「おう」
「……あの、私たちって、お友だち、なんですよね?」
「オフコース」
「……ありがとうございます」
「だから!」
「えっ」ビクッ
「この後空いてるか? 遊びに行くぞ!」
「……へ?」
その時のしお子は、鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしていた。きっとあの時の顔を俺はずっと忘れない。
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