虹ヶ咲学園の恥晒し   作:種子島

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 今回の話で出てくるマナティが自分のうんこ食って気絶する動画は実在する動画なので気になったら見てみてください。めっちゃ元気出ます。





放課後遊びは学生の特権

「おーし、じゃあ行くぞーしお子」

 

「はっ、はい! 若輩者ですがよろしくお願いします!」

 

「おいおい肩肘張りすぎだろ。友だち同士で遊びに行くだけなんだから気楽に行こうぜ」

 

 

 生徒会の業務を終えた俺はしお子を連れて虹ヶ咲を後にする。こうして誰かと放課後に遊びに行くことが初めてだと言うしお子は、いかにも緊張してますという表情でずんずんと進んでいく。

 

 

「そ、そんなに硬くなっているように見えますか?」

 

「あずきバーくらい硬いぞ」

 

「それはカチカチですね」

 

「しお子の牙なら簡単に貫けそうだけどな」

 

「流石に無理ですよ。あと牙というほど尖ってはいません」

 

 

 適当な会話をしているうちにしお子の硬さが取れていく。友だちと遊んでいる時なんて変に硬くならず適当なくらいで丁度いい。

 

 

「さてと、じゃあどこ行く?」

 

「ご存知かと思いますが、私はこう言った経験がないので零士さんにお任せしてもよろしいですか?」

 

「未経験か、いい響きだな」

 

「はい?」

 

「いや、何でもない。じゃあ────着いて来れるか?」

 

「……何故キメ顔で言うんですか?」

 

 

 それは言わないお約束でしょうよ。

 

 

 俺はしお子と適当に会話をしながらお目当ての場所へと辿り着く。そこは様々な人々の喧騒に包まれた学生にとってのユートピアだ。

 

 

「ゲームセンターですか?」

 

「来たことあるか?」

 

「いえ、ありません。知識としては知っていますが、まさか入ることになるとは思ってませんでした」

 

「入ったらしお子も不良だな」ニヤリ

 

「……」

 

「おい冗談だから帰ろうとすんなって! 今時不良じゃなくてもゲーセンなんて誰だって来るからよ!」

 

 

 すーっとゲーセンの入り口から離れていくしお子の肩を掴んで静止する。ちょっと揶揄ってやろうと思っただけなのに思ったよりもマジに捉えられてしまった。

 

 そしてゲーセンの中に足を踏み入れると、しお子はポカンと口を開いたままキョロキョロと辺りを見渡している。

 

 

「くくっ、見過ぎだろ」

 

「し、しかし…! どこを見渡しても初めて見る物ばかりなので…!」

 

「しお子にとっては新世界だったか」

 

 

 好奇心が抑えられていないしお子は真面目な顔でゲームセンターの設備を見回しては、ふむふむと謎の相槌を打っている。はしゃぐ犬コロみたいで見てて微笑ましい。

 

 

「なんか遊んでみたいもんあるか?」

 

「そうですね、種類が多くて目移りしてしまいますが……やはりコレでしょうか?」

 

「クレーンゲームか、王道だな」

 

「とれるでしょうか…?」

 

「何事も挑戦あるのみですぜ。ほら、やってみろって」

 

 

 俺が背中を押すとしお子は真面目な顔つきで小銭を機会に投入する。そしてガラス越しにクレーンを睨みつけながらレバーを動かす。

 

 しお子が狙っているのはチョコ菓子が入った大きな箱だ。大体どこのゲーセンにもあるやつだが見た目よりとずっと難しいんだコレが。

 

 

 

「しお子人生初のクレーンゲームです! 果たしてお目当ての菓子は取れるのでしょうか…! 実況は私、虹ヶ咲の貴公子である松本零士が担当しております!」

 

「零士さん!? もしかして撮ってます…?」

 

「しお子の成長の証としてな。いつか見返して泣く時がくるぞ!」

 

「……み、見られてると思うとなんだか手がうまく動きませんね…!」

 

 

 クレーンゲームに熱中するしお子をスマホのカメラに捉えて撮影をする。しお子は一瞬だけ動揺したようにチラリとカメラに目線を向けたが、すぐに目の前のクレーンゲームに視線を戻す。

 

 

「んっ」

 

「あ、あ、あっ」

 

「……ダメでした」シオ…

 

 

 しお子の操作したアームは菓子の箱をガッツリと掴んでその場に持ち上げる。その事に興奮したしお子が声を漏らして行く末を見守るが、アームはその場で箱を離して落としてしまった。

 

 

「はっはっは! 甘いぞしお子! ちょっと俺にやらせてみたまえ」

 

「零士さん取れるのですか?」

 

「てやんでい! こちとらクレーンゲーム検定準一級の持ち主だぞ?」

 

「そ、そんな資格があるのですね」

 

「いや無いけど」

 

「……零士さんの言葉は話半分に聞く事にします」

 

 

 横からしお子のじっとりとした視線をぶつけられるが、俺は気にせず目の前のクレーンゲームに集中する。

 俺の操作したアームは箱の小さな凹みをガッチリと掴みその場で持ち上げる。

 

 

「俺の眼はどんな弱点をも見逃さない!」

 

「あっ! 取れそうです…!」

 

「またつまらぬ物を掴んでしまったでござるよ」

 

 

 完全に勝ちを確信した俺は、アームが穴に向かって箱を落とす瞬間を見届けるモードに移行する。

 しかし穴まであと少しというところでアームは急に力が抜けたように箱を離し、ソレは無情にも穴の付近に音を立てて落下した。

 

 

「ダニィ!?」

 

「惜しかったですね」

 

「くっ、こんなの俺のデータにないぞ…! てかもうほぼ落ちてるようなもんだろこれ!」

 

「……でもこれならもう取れそうですね」

 

 

 そう言うとしお子は再び小銭を投入してアームを操作する。そして今度は掴むのではなく、アームでぐぐぐっと箱を押して穴の中に落とした。

 

 

「あっ、取れました」

 

「ま、まさか今のは奥義、『爪押し』…!?」

 

「そのような技名が?」

 

「いや俺が今適当につけた。てかすげぇじゃねぇかしお子! ほらソレ持ってこっち向けって!」

 

「えっ?」

 

「初の景品ゲットを祝して記念撮影だよ」

 

 

 カメラを向けると、しお子は景品を手に持ったまま気恥ずかしそうに控えめなピースを作る。

 

 

「くくっ、顔赤すぎだろ」

 

「い、いきなり写真を撮影する零士さんのせいです」

 

「でも幸先いいな。よし、じゃんじゃん遊ぼうぜ!」

 

 

 そしてそこからは様々な種類のゲームを回り、遊び方をしお子に教えながらゲームを楽しんだ。

 

 

 

「わはは! 見ろしお子! このメダルの量を!」

 

「凄いですね。これだけあったらもうずっと遊べそうです」

 

「ちっちっち、それは雑魚の思考だよ三船くん。メダルゲームってのは入れるメダルの量が増えるほどリターンも大きくなるもんさ」

 

「ですがリスクも大きくなるのでは?」

 

「ククク、狂気の沙汰ほど面白い…!」

 

 

 

、、、

 

 

 

「……しお子ぉ、メダル分けてぇ」シクシク

 

「もぅ、仕方ありませんね」

 

 

 メダルゲームで遊んだり。

 

 

 

 

 

「零士さん、これは何ですか?」

 

「こりゃあレースゲームだな。でも免許必要だから俺らは遊べないぞ」

 

「えっ、ゲームでも必要なのですね」

 

「いや嘘だけど」

 

「……」ジトー

 

「悪かったからその目やめい」

 

 

 レースゲームで白熱のレースを繰り広げたり。

 

 

 

 

 

「せいっ」

 

「はっはっは、そんなパンチじゃ俺の本物のパンチには敵わないぜ」

 

「ぱ、パンチなんて経験したことがないので」

 

「俺にやらせてみ? 天をも切り裂く俺の右ストレートをその目に焼き付けろ! どりゃぁ!!!」

 

「わっ…! す、凄いですね。私とは数値がまるで違います! 流石は男性の方で……あれ、零士さん? どうかしました?」

 

 

 

 

「あっ、やばい、肩痛めた……あだだだだ、これダメなやつかも、しお子肩さすってくれぇ」

 

「えっ!? も、もぅ、仕方ないですね…!」

 

 

 パンチングマシーンで男らしさを見せつけたり。

 

 

 

 

 

『じゃあ次は変顔いってみよー!』

 

「ほらしお子! 次は変顔をご所望だぞ!」

 

「えっえっえっ? い、いきなりそんな事を言われても!」

 

「ほら! 3、2、1…!」

 

「え、えいっ」

 

 

カシャ

 

 

「おいしお子、これ変顔か?」

 

「す、すみません。いきなりすぎて対応できませんでした」

 

「……いや、真顔ダブルピースは逆にシュールで面白いかもしれない」

 

「あ、ありがとうございます? ですが隣の零士さんの変顔に比べたら…………ふふっ」

 

「いやん、恥ずかしい」

 

「ふっ、ふふっ……んふっ…! どっ、どうやったらこうなるのですか…? 零士さん表情筋が柔らかすぎますよ…!」プルプル

 

「クラスの皆には内緒だよ!」

 

 

 プリクラで全力の変顔を見せつけたり。

 

 

 とまぁそれなりに遊び尽くした。そして程なくして俺たちはゲームセンターを後にして再び街の中を歩き出す。

 

 

「いやぁ〜、遊んだなぁ! どうだったしお子。初のゲーセンは?」

 

「何もかも初めての体験で新鮮でした。それに楽しかったです、零士さんのおかげですね」

 

「いやぁ〜それ程でもあるかな」

 

「ふふっ」

 

 

 隣を歩くしお子の表情に学園を出たばかりの頃のような硬さは無い。半ば無理やり遊びに連れ出したような形だったが、楽しんでいるなら良かった。

 

 

「体も動かしたしちょっと小腹空いたな」

 

「そうですね。言われてみれば私も少し」

 

「よし、じゃあしお子はあそこのベンチ取っておいてくれ!」

 

「えっ? あ、はい。わかりました」

 

 

 俺はおあつらえ向きにその辺にあった屋台へと駆け寄り商品を購入する。そしてベンチで待っているしお子の元へと全力でダーーッシュ!!

 

 

「おまたへ」

 

「あ、いえ全然待っていませんけど……たこ焼きですか?」

 

「美味そうだったもんでな」

 

 

 ベンチに座ってカバンを横に置く。2つある爪楊枝の1つをしお子に渡し、さっそく俺は熱々のたこ焼きを頬張る。

 

 

「あふっ、あふ、あふい…! でもうまい…!」

 

「あの、零士さん? 私も半分出しますので値段を教えていただけますか?」

 

「ごくっ……はぁ、口ん中火傷したぜ。あー、値段? そんなん気にしなくていいからしお子も早く食べろって」

 

「で、ですが」

 

「ほら、はよせんと俺が全部食い尽くすぞ? 俺を虹ヶ咲の食い尽くし系男子にさせるつもりか?」

 

「そんなつもりはありませんが……わかりました。ではお言葉に甘えていただきます」

 

 

 そう言ってしお子は爪楊枝に刺したたこ焼きをふーふーと冷ましてかじる。それでも少し熱そうにほぅほぅとしているが、飲み込んだ次の瞬間には笑顔を浮かべた。

 

 

「とても美味しいです」

 

「外で食うと余計にだよなぁ」

 

「気持ちは分かります。学校からの帰り道に何かを買って食べるなんて、とても新鮮です」

 

「おー、もしかして買い食いも初めてか?」

 

「はい。今日はとても新鮮な経験をさせていただいていますね」

 

 

 たこ焼きを頬張りながらしお子の言葉に耳を傾ける。

 

 

「放課後にこうして友人と遊んで帰ったり、ゲームセンターに行ったり、その友人とこうして軽食を取ったり、私にとっては何もかもが初の体験でとても楽しませてもらっています」

 

「……俺が、しお子の初めてを……」

 

「何やら良からぬことを考えていますね、零士さん」ジトー

 

「おっ、俺のことよく分かってきたじゃねぇの」

 

「零士さんが分かりやすすぎるだけでは?」

 

 

 たこ焼きは順調なペースで減っていく。なんなら俺にとっては物足りないくらいだ。男子高校生の食欲は恐ろしいですなぁ。

 

 

「零士さん、本日は誘っていただき本当にありがとうございました。その……ご迷惑でなければ、またこうして遊んでいただけますか…?」

 

「しお子……」

 

「は、はい」

 

「唇の横に青のりついてんぞ」

 

「なっ!? そ、そういう事は先に言ってください!」

 

 

 顔を真っ赤にしたしお子はハンカチで口の周りをごしごしと擦る。真面目な顔で話してるのに唇に青のり付いてるギャップが面白かったから黙って見てただけなんだ。許しておくれしお子。

 

 

「と、取れましたか?」

 

「おう」

 

「ありがとうございます。えーっと、それで、零士さん。先ほどの話ですが」

 

「ん? 遊びのことか? んなもん勿論いいに決まってんだろ。つか俺も楽しかったし、今度はまた違うことして遊ぼうや」

 

「ほ、本当ですか! ありがとうございます!」

 

 

 たこ焼きが乗っていた紙を丁度横にあったゴミ箱に捨てる。そしてしお子の方へと向き直って会話を再開する。

 

 

「おぅ、いつでも気軽に誘ってくれ。部活がない日ならウェルカムだぜ」

 

「とても楽しみです。零士さん、今度も私に沢山の初めてを教えてくださいね」

 

「俺が……しお子に初めてを……?」

 

「あっ! い、今の言い方は語弊がありますね…! わ、忘れてください!」

 

 

 すまない。今のセリフは俺の脳内フォルダの奥の奥に保存済みだ。前に果林さんの恥ずかしいセリフを保存したのと同じ階層だ。

 

 

「んじゃあ、ほれ」

 

「……?」

 

「連絡先、交換してねぇと遊び誘えんだろ」

 

「な、なるほど」

 

 

 しお子はカバンの中からスマホを取り出す。そしてアプリを開いて互いの連絡先を登録した。

 

 

「遊びの誘い以外も気軽にしてこいよ。俺も特に中身のない連絡とかめっちゃするし。ちなみに俺は女子から連絡が来たらどんなに中身が無くても泣いて喜ぶ派の人間だ」

 

「ぜ、善処します」

 

「えっちな自撮りとかは気軽に送るんじゃないぞ?」

 

「そっ、そんな物送りません!」

 

 

 さてと、それじゃあそろそろ帰りますかねと思い立ち上がったところで思い出す。そういえばコレを渡していなかった。

 

 

「ほれ、これやるよしお子」

 

「何ですかコレは?」

 

「しお子がトイレ行ってる間になんとなくやってみたら一発で取れたんだよ。八重歯いぬ」

 

 

 手のひらサイズの小さなぬいぐるみをしお子に手渡す。ソレはやけに発達した八重歯が特徴的なキャラクターらしいが、しお子にちょっと似ているのでプレゼントだ。

 

 

「しお子にちょっと似てるだろ」

 

「……そうでしょうか?」

 

「私の方が可愛いわよ!ってか?」

 

「ち、違います! そういう訳じゃ…! と、とにかくありがとうございます、大事にしますね」

 

 

 しお子は受け取った八重歯いぬのぬいぐるみをカバンの中にしまう。八重歯いぬも俺より華のJKのカバンにしまってもらえる方が嬉しいだろう。

 

 

「さてと、じゃあ帰りますか!」

 

「はい」

 

 

 

 こうして俺に新たな友人ができた。しお子の性格的に向こうからメッセージを送るのに困ってそうだからこっちから送るとしよう。

 

 しかし無難にメッセージを送るだけではつまらない。可愛い女子をちょっと困らせたくなるのは男子の悲しきサガなのだ。

 悩んだ挙句、俺はマナティが自分のうんこ食って気絶する動画を無言で送信した。アレは辛い時に見ても笑える最高の動画だ。

 

 

 そして既読がついてから約5分後、『何かの暗号ですか?』という菜々と全く同じリアクションのメッセージを見て俺は爆笑したのだった。

 

 

 

 

 ちなみに、しお子と仲良くなったことを菜々に伝えるとめちゃくちゃ驚かれた後に、変なことをしていないかとめちゃくちゃに疑われた。

 

 初めてを教えてやったぜと返信すると鬼電がかかってきたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜Side 栞子〜

 

 

「ふぅ」

 

 

 自宅へ戻り、お風呂に入って自室の椅子に座る。そして日課の勉強をしながら今日の出来事を振り返る。

 

 生徒会長の紹介で臨時の助っ人としてやってきた松本零士先輩。噂通りの変わった人で、その言動に振り回されもしたが、何気ないやり取りが楽しいと感じさせる不思議な人だった。

 

 そして、私の友人でもある。友人なのだから気軽に連絡をしてこいと言われたが、いざ連絡をしてみようと思っても何も思い浮かばない。

 

 

「やはり無難に、今後ともよろしくお願いしますといった挨拶でしょうか……」

 

「それじゃ硬すぎない? もっと気軽な感じでいいと思うけど」

 

「ですがそれが難くて……って、姉さん!?」

 

 

 声のした方へ顔を向けると、いつの間にか部屋に入ってきていた私の姉の薫子姉さんがすぐ近くにいた。

 長らく家を開けていた姉との再開に驚いた私は、いつ帰ってきたのかという1番に問うべき質問ではないことを口走る。

 

 

「へ、部屋に入るのならノックをしてください!」

 

「したけど」

 

「えっ?」

 

「栞子のことだし勉強に集中してるのかなとも思ったけど、そしたらスマホを手に持ってあーでもないこーでもないって言ってたから」

 

「うぅ」

 

 

 恥ずかしい。そこまで集中していたとは。

 

 

「で、相手は誰なの?」

 

「……友人です。今日は一緒に遊んできました。とても楽しかったのでまた誘おうと思ったのですが、経験に乏しく何を送っていいものか迷っていたんです」

 

「栞子……よ゛か゛った゛ね゛ぇ〜!!!」

 

「ちょっ、姉さんくっつかないでください」

 

 

 姉さんは何故か泣きながら抱きついてきて高速で頭を撫で撫でしてくる。正直嫌ではないどころか嬉しいのだが、気恥ずかしさから突き放してしまう。

 

 

「あぁ、ごめんごめん。でもそっか、栞子にも嵐珠ちゃん以外のお友達ができたんだね。うんうん、青春だ」

 

「はぁ」

 

「さっきも言ったけどそんな難しく考える事ないんじゃない? 既に友だちなら尚更。その人はどんな人なの? 気難しい人?」

 

「いえ、そんな事は全然ありません。気さくな方ですよ。ただ先輩ではあるので最低限の礼儀は弁えるべきではあると思いますが」

 

「へぇ〜年上かぁ。嵐珠ちゃんといい栞子は年上キラーなのかな」

 

 

 姉さんは何故か私以上に楽しそうに独り言を語っている。まぁ楽しいのであればそれは構わないけれど。

 

 

「ねぇねぇ! その人のこともっと教えてよ」

 

「はぁ……構いませんけど」

 

「じゃあまず名前は?」

 

「零士さんです」

 

「へぇ〜、カッコいい名前だね。男の子みたい」

 

「……? 零士さんは男性ですが」

 

「………………え」

 

 

 一体どうしたのであろうか。姉さんは壊れた機械のようにその場でフリーズしてしまう。

 

 

「おっ、おおお男の子なの…?」

 

「はい」

 

「……い、一応聞くけど怪しいお友達とかじゃないよね…? ほら、めっちゃ年上の人だったり」

 

「同じ虹ヶ咲学園の先輩ですよ。私の1つ上です」

 

「あっ、そっかそっか。健全な関係かぁ……そっかぁ〜」

 

 

 姉さんは何故か額に汗を浮かべながら、ウンウンと何度も頷いている。そして徐に立ち上がったかと思えば、駆け足で部屋を後にした。

 

 

 

 

「お母さん〜〜!! お赤飯〜!!!!」

 

「ね、姉さん!? 何か壮大な思い違いをしている気がします!!」

 

 

 私は急いで走る姉の後を追いかける。

 

 今日は何だかいつもより疲れる日だけど、いつもより楽しかった。

 

 

 





おま◯け


しお「全く姉さんは……おや、零士さんから動画が送られてきてますね」

しお「………………………………………ふふっ、何ですかこの動画は」

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