虹ヶ咲学園の恥晒し   作:種子島

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 アニガサキエマちゃん回の話




留学生って響きがかっこいい

 

「ひっるめしひるめし〜」

 

 

 やぁ皆! 虹ヶ咲学園一の美男子こと松本零士だ。今日も今日とて授業という長く激しい戦いで疲弊した体を食堂に癒しにきたんだぜ。

 

 それなりに賑わっている食堂で注文したメニューを受け取り席を探していると、角の方に見覚えのある人たちを見つけて俺の心は一気にウキウキと踊り出す。

 

 

「あっ! エマすわぁ〜〜ん!」

 

「あれ? 零士くん、今からお昼ご飯?」

 

「はい! 腹を満たしに来たんですけど、腹だけじゃなくて胸もいっぱいです!」

 

「どうして?」

 

「もちろん、エマ先輩に会えたからですよ」キラッ

 

「わ〜、ありがとう〜。私も零士くんに会えて嬉しいよ〜」

 

「ウ゛ッッッ!!!!」

 

 

 

 はぁ〜〜〜〜現世に舞い降りた天使ぢゃん。

 

 エマ・ヴェルデという存在自体がもうストレスに対する特効薬だと思うんですよねぼかぁ。話してるだけで心がふわっふわに軽くなる。

 

 

 

「ちょっと、私もいるんだけど?」

 

「あぁ、果林パイセンちっすちっす。眩しくて見えてませんでした。モデルだから。うわっ、オーラが眩しぃっ!」

 

「馬鹿にしてる? 馬鹿にしてるわよね?」

 

 

 エマ先輩の正面には果林先輩が座っていた。よく2人でいるところを見るしこの2人は相当に仲が良いんだな。

 

 

「前から思ってたのだけど貴方、エマと彼方に対する態度と私に対する態度でなんか差がないかしら? 自分で言うのもなんだけど、私だって貴方の好きな年上のお姉さんじゃない」

 

「いや〜もちろん果林先輩がド級の美人で俺のドストライクなのは大前提として、おもしれー女って感じなんですよね果林先輩って。だからつい困らせたくなっちゃうっていうのは男子の悲しきサガなんですわ」

 

「私のどこがおもしれー女なのよ。ミステリアスな美人の先輩でしょう?」

 

「果林先輩それストローじゃなくてマドラーですよ」

 

「あっ」

 

 

 間違いに気づいた果林先輩の頬が薄らと桜色に染まっていく。そしていかにも怒ってますという視線で俺を睨みつけているが、今のは俺全く悪くないと思うんだ。

 

 

「そうだ! 零士くんも一緒に食べようよ!」

 

「いいんですか? 嬉しすぎて心臓飛び出そうなんですけど」

 

「ふふっ、もちろんだよ〜」

 

「待ちなさいエマ、私はまだ許可してないわよ」

 

「残念でしたぁ〜。一緒に食べる派が2人なので多数決でそっちに決まったんですぅ〜〜」

 

「そのドヤ顔どうやってしてるのよ。表情筋が柔らかすぎないかしら…?」

 

 

 俺は椅子を一つ持ってきて2人と同じテーブルの前に座る。そして手に持っていたトレーを置いて割り箸を勢いよく割った。

 

 

「いただきまーす」

 

「わー、カツ丼とラーメン? 美味しそう〜」

 

「……エマも食べる方だけど、貴方はより食べるわね。そんなに食べれるの?」

 

「男子高校生の食欲と性欲を舐めない方がいいですよ果林先輩」

 

「エマの前でそういう話はしないで頂戴」

 

「それは2人きりの時に話をして欲しいという意味ですか?」キリッ

 

「キメ顔で言っても内容が最悪すぎて全くカッコよくないわね」

 

 

 馬鹿な。世の中には顔が良ければ何を言っても様になるというジンクスがあるハズでは? ただしイケメンに限るなんて言葉もあるくらいで、イケメンである俺にはそれが適応されるハズなのに。

 

 

 

「ふふっ、2人とも仲良しさんだねぇ」

 

「エマ、それは私に対する誹謗中傷よ?」

 

「おいおい照れんなよ果林。俺たちの仲だろ?」

 

「ふふふふふふ、そうね私照れているの。だからこれは照れ隠しってことで大目に見て頂戴ねダーリン」

 

「あだだだだだだだだだだ!!!! 頭蓋骨からしちゃいけない音がしてるぜハニー!!!」

 

 

 果林さんの細くて長い指からは予想できないほどに強い力で俺のご尊顔が握り潰される。前も受けたことあるけどこの人なんでこんなアイアンクロー強いんだよあっこれ死ぬっ♥

 

 

 

「やっぱり仲良しさんだ〜」

 

「って、こんなことしてる場合じゃなかったわ」

 

「俺の顔を壊滅的状態にしておいてそんなことて」

 

「貴方たち今日も同好会?」

 

「うん! 皆やる気が凄いんだよ〜! ソロアイドルをやるって決めたからより一層!」

 

「俺も同好会行くつもりだったんですけどちょっと病院に用事ができました」

 

 

 

 

 

「果林ちゃんも一緒にやれたらいいのになぁ」

 

 

 エマ先輩の何気ない呟きが静かに響き渡る。潰れた顔面が元の形に戻っていくのと比例して視力も回復していき、眩しい光が視界に差し込むと目の前には少しだけ寂しそうな果林先輩の顔があった。

 

 

「そういう騒がしいのは苦手なの。じゃあ私もう行くわね」

 

「あっ、果林ちゃん」

 

 

 そう言って果林先輩は立ち上がって歩き出してしまう。そしてこの場には俺とエマ先輩だけが残された。

 

 ……果林先輩、まさかこれは俺とエマ先輩を2人きりにするためのアシストですか…? 果林先輩のその優しさ、俺無駄にはしないっす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後特に何も起こることなくエマ先輩と楽しく昼食を取ったよ。ちくしょうめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

「よーしよしよしよし」

「ごろにゃーん」

 

 

 放課後、いつも通り同好会の部室に集まった俺たちだったのだが、せつ菜とカッスがまだ来てないので練習は始まっていない。

 それぞれが適当に時間を潰す中、部室のソファですやぴする彼方先輩はエマ先輩に膝枕をしてもらいながら頭を撫でてもらっている。

 

 

 

「ふつくしい……宗教画かな?」

 

「何アホなこと言ってんの」

 

 

 俺の呟きに侑が突っ込みを入れてくるが、あの尊さと美しさの前では俺の発言もあながち冗談でもないと言える。

 

 

「こうしてるとネーヴェちゃんを思い出すよ〜」

 

「スイスのお友達ですか?」

 

「ううん、ウチで飼ってる子ヤギだよ?」

 

「ヤギ飼ってるんですか!?」

 

 

 流石はスイス出身のエマさん。リアルアルプスの少女ハイジだ。というかそのネーヴェとやらはああしてエマ先輩に撫でてもらっていたということか。羨まけしからんですなぁ。

 

 

「エマ先輩、ホームシックとか大丈夫なんですか?」

 

「うん。同好会の皆といるとスイスの妹たちといるみたいなんだ〜 いつでも賑やかでとっても楽しいよ!」

 

「俺も妹扱いですか?」

 

「あっ、零士くんは違ったね」

 

 

 そ、そそそそそれってまさか……こ、こいびt

 

 

「零士くんは弟だね。男の子だもんね〜」

 

「お、弟……」

 

「零さん、ドンマイ」

 

「ペットじゃなかっただけマシだと思うよ」

 

 

 励ますように肩をポンと叩く宮下と笑顔で毒を吐いてくる歩夢。しかし俺は別に凹んでいる訳ではないぞ。

 

 

 

「義理の弟ならセーフだよな。そうなるとエマ先輩は義姉……いいね、ちょっと興奮する」

 

「無敵の人じゃん」

 

「このポジティブさは零士先輩のいい所でもあり、厄介な所でもありますよね」

 

 

 聞こえてんぞしずくコラ。俺のポジティブさは長所100%でしょうが。

 

 

 

「でも家族の皆は私が日本で上手くやれてるのか心配みたい」

 

「エマ先輩、ご家族と電話を繋いでくれませんか? エマ先輩は俺が守るから心配はしないでくれとお義父さんに伝えますから」

 

「お義父さん言うなし」

 

「抜け目がない……」

 

 

 侑と天王寺が何かボソッと呟いたが今はそれどころじゃない。一刻も早くお義父さんとお義母さんを安心させてあげたいんだぜ。

 

 

ガラッ

 

 

「皆さんお揃いですね」

 

「ふっふっふ。ちょっとこれを見てください」

 

 

 その時だった、部室の扉が開いてせつ菜とカッスが社長出勤してくる。そして何故かニヤニヤと笑みを浮かべているカッスはPCを操作し始めたかと思うと、前にupした歩夢の自己紹介PV動画を再生した。

 

 

「な、何で急にこれを皆で!?」

 

「この動画、今伸びてきてるんですよ!」

 

 

 PVの再生数は2095回と表示されている。ついこの間までは3桁だったことを考えれば物凄い伸び率と言ってもいいだろう。ましてや俺たちはまだまだ無名だ。

 

 

 

「そこで提案なんですが、私たちもソロアイドルとしてプロモーションビデオを取るのはいかがですか? 自己紹介でも特技でも、自分をアピールできるのを投稿したいと思います」

 

 

 せつ菜からの提案に対して同好会メンバーは好意的な反応を示す。今の同好会は学内ではそれなりに存在を知られつつあるが、学外のファンを獲得するためにもこういった活動は大事だろうから俺も賛成だ。

 

 

「エマさん! 家族に頑張ってる姿を見せるのもいいんじゃない? どんなPVにしよっか!」

 

「え? どんな……うーん」

 

 

 侑からの提案にエマ先輩は悩ましげな声を出す。まぁいきなりコレを撮る!なんて意見が決まることはないと思うし当然の反応だろう。

 

 

 

「つか侑、お前何でジャージの羽織り方が幸村精市スタイルなんだよ」

 

「え、誰?」

 

「坊や、これはジャージを落とすゲームじゃないんだよ」フフフ

 

「ふーん、じゃあそのゲームは俺の勝ち」

 

 

キャッキャッキャッ

 

 

 

「零士先輩とせつ菜先輩が盛り上がってるのを見るに何かのアニメや漫画のネタでしょうね」

 

「と、とにかく! 今はPVの話です! せつ菜先輩! 零士先輩と遊んでないでどんな動画にするか決めますよ!」

 

 

 テニプリごっこが熱を帯び始めていたが、せつ菜はカッスに手を掴まれて連れ戻される。その姿は小さな子どものようで先輩や生徒会長の威厳は感じられない。

 

 

「どんな動画がいいのかなぁ。せつ菜ちゃんのライブはかっこよくて、かすみちゃんの自己紹介は可愛い」

 

「彼方先輩ならカメラの前に立って無言でこっちを見つめてるだけの動画でも再生回数回りますよ! 俺は絶対再生しまくります!」

 

「お〜、なんか呪いの動画とか別の意味で知名度上がっちゃいそうだね〜」

 

 

 彼方先輩ほどの美貌を持っているのならば変に拘らずとも10万再生は余裕だぜ。なんならすやぴしてるだけの動画でも良き。

 

 

「侑ちゃん、私どんなところをアピールしたらいいんだろう?」

 

「うーん、歩夢といえば、ニコニコ笑ったかなと思えば急に泣いたりほっぺ膨らませて怒ったりずーっと見てて飽きない感じ!」

 

「もぅ侑ちゃん、それ全然アイドルっぽくないよ〜」

 

「あはは、それそれ!」

 

 

 ほっぺをぷくーと膨らませた歩夢がポカポカと侑の肩を叩く。それを受ける侑は嬉しそうに笑っていて歩夢も表面こそ怒ってるフリをしているがそんなやり取りを楽しんでいるようだ。

 

 イチャイチャしやがって。こんちくしょう。

 

 

「侑ちゃんってよく見てるよね。歩夢ちゃんだけじゃなくて皆のことも」

 

「えへへ、私スクールアイドルに本当にハマっちゃって。だから皆を応援したくて! ね、零士くんもそうだよね!」

 

「べっ、別にあんたたちを応援するためにマネージャーやってる訳じゃないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」

 

「何でいきなり平成初期のツンデレキャラみたいなこと言ってるんですか」

 

 

 す、素直になれないだけで心の中ではちゃんと皆のことを応援してるんだからねっ!

 

 まぁ、マジな話、侑ほどスクールアイドルにハマってる訳ではないが、少なくともこの同好会のメンバーのことはちゃんと応援しているつもりだ。

 

 そして話もひと段落ついたので、一旦それぞれが自分のアピールしたいことを考える時間になったのだが、部室の隅でエマ彼方ウォッチングをしていた俺の裾をせつ菜がちょいちょいと引っ張ってきた。

 

 

「ん? どした」

 

「……零士さんは私のアピールポイントってどういうとこだと思います…?」

 

「はぁ? 急にどうしたんだよ」

 

「い、いいから……答えてください」

 

 

 な、何だよせつ菜のやつ急にしおらしくなりやがって。いつもの暑苦しさは何処へ?

 

 俺の裾を掴んで離さないせつ菜は、俺からの返答を期待するようにジッと上目遣いで見つめてくる。その吸い込まれそうな瞳から俺は逃げるように目を逸らす。

 

 

「……そうだなぁ」

 

 

 ……まず顔は可愛い。艶々としてる黒い髪も綺麗だしスタイルも……意外と胸デカいし。体ちっせーのにエネルギッシュなとことか、何も考えてなさそうな笑った顔とか……まぁ色々あるわな。

 

 

 ……口に出すのは恥ずいから言わんけど。

 

 

 

「あー、さっきも皆言ってたじゃねぇか。お前のパフォーマンスはカッコいいってよ、俺もそう思うぜ」

 

「……そうですか。はい、参考になりました。ありがとうございます」

 

「うっ」

 

 

 な、何でそんな寂しそうに笑うんだよ。まるでもっと違う言葉を期待してたみたいな……あー、ちくしょう。そんな顔はお前には似合ってないんだよ。

 

 

「……ま、待った。カッコいいのはそうだけど……その、なんだ。スタイル良いとことか、笑った顔とかも可愛いからアピールポイントだと思うぞ。あ、あくまで一般的な男子高校生から見た場合の意見だけどな…!」

 

「かわいい……えへへ、そうですか」

 

 

 ……嬉しそうな顔しやがって。

 

 

「元気なとこもアピールポイントだと思うぞ。チビなのにエネルギッシュだよなお前」

 

「ち、チビ!? 聞き捨てなりませんね!」

 

「おいおい、俺は褒めてるんだぜ? 横に並んだ時とか意外とちっこくて可愛いと思うしな。ちっこくて」

 

「ち、ちっこいを強調しないでください! 零士さんが無駄に身長高いだけです!」

 

「無駄だと!? お前には申し訳ねぇけど俺まだまだ伸びるから! 将来的には185cmくらいになるから」

 

 

 ちなみに春の健康診断では179cmだった。とっとと180の大台に乗せて目標の185まで高校在学中に突っ走ってやるぜ。

 

 

「わ、私だってまだまだ大きくなりますよ!」

 

「いーやお前はもう劇的には伸びないね。中3から全然変わってねぇじゃんか。そういや最初に話した中1の時はお前の方がちょっと大きいくらいだったのに、いつの間にやら逆転したな」

 

「私の成長はまだまだ続いてます!」

 

「いやまぁ確かに胸はエロい感じにまだまだデカくなってるけどよ……あっ」

 

 

 

 し、しまった。ヒートアップしすぎてついうっかり思ってたことそのまま口に出しちまった。

 

 

「あ、あー! いやっ! 今のは違うんだ! つい普段から思ってたことが口に出ちまって!」

 

「ふ、普段から…?」

 

「あ゛っ!」

 

 

 せつ菜はギュッと腕を組んで自身の胸を俺から隠す。そして真っ赤な顔で上目遣いに俺を見つめながら一言だけ呟いた。

 

 

 

「零士さんのえっち……」

 

 

 そしてぴょぴょーいと走り去って他の同好会メンバーの中に混ざっていく。

 

 確かにさっきのは軽率だった俺が悪い。だがなせつ菜、一つだけ言い訳をさせてくれ。

 

 

 高校生男子なんて皆えっちな生き物なんだよぉぉぉぉ!!!!!!!

 

 そもそもだな、男子高校生なんて脳内の9割は飯とエロスの事だけで占めているんだよ。1番欲望に忠実な時期なんだよ思春期なんだよ。そんな時期に君たちみたいな女子と普段から一緒にいたらそりゃ胸とかチラチラ見ちゃったりもするしドキドキしたりもするのは至って健全な反応であって俺が特別エロいという訳では……ブツブツ

 

 

 

 

 

「零士くん? もう皆行っちゃうよ?」

 

「はっ! えっ、行くってどこに?」

 

「もぅ、聞いてなかったの? エマさんの目指す、人の心をポカポカさせちゃうようなアイドルのイメージを探るために色々な衣装を合わせてみるって話になったでしょ?」

 

 

 歩夢が頬をぷくと膨らませて説明してくれるが、申し訳ない事にその話は全く聞いてなかった。

 俺が心の中でエロスへの弁解をしている間にそんな話になっていようとは。エマ先輩が色々な衣装を着るのか……それは心が踊るってもんよ!

 

 俺はとりあえず歩夢の膨らんだ頬を指でぷすっと刺して空気を抜いておく。

 

 

「んひゅっ、も、もうっ! 零士くん!」

 

「よっしゃ! 早く皆を追いかけるぞ!歩夢!」

 

「あっ、待ってよ零士くん!」

 

 

 俺と歩夢は、少し先を歩いている他のメンバーの背中を目指して勢いよく駆け出した。

 

 

 

 






 一話5000文字くらいが丁度いいと聞いたのでそれを目指してます。

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