虹ヶ咲学園の恥晒し   作:種子島

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UAが10000超えました〜!
ありがとうございます!!





やりたいことやったもん勝ち

 

 事件は服飾同好会の部室で起きた。

 

 

「お嬢様、おかえりなさいませ〜。なんて」

 

 

 

「んぎゃッ!!ぎゃわいいぃぃ!!!!!!!!!!」

 

「うわ、うるさっ」

 

 

 

 エマ先輩のなりたいアイドル像を探すため、まずは衣装を着て形から入ってみてはどうかというしずくのアドバイスを元に俺たちは服飾同好会を訪れていた。

 

 そして試着室から出てきたエマ先輩は、王道を征く昔ながらのメイド服を身に纏っていた。そのあまりの可愛さと美しさとエロさと儚さと尊さと愛しさと切なさと心強さに胸を打たれた俺が大きな声を出して横にいる宮下が耳を塞いだ。

 

 

「えへへ、どんどん試していい?」

 

「ま、待ってください! 俺の心臓が持ちません! せめて10分間のインターバルを!」

 

「零士くんは無視してどんどん着たい衣装を試着しましょう!エマさん!」

 

 

 高咲ィ! 俺を殺す気か!?

 

 

 俺の願いも虚しく、そこからはエマ先輩による怒涛のファッションショーが始まった。

 

 

 

 

 

「これから花火でも見にいこっか〜♡」

 

「浴衣だ〜」

 

「たまやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!! 」

 

 

 

 

 

 

「イエイ! ゴーファイっ♡」

 

「チアだ〜」

 

「んぎゃわいぃぃッッ!!!! がんばれいじ!」

 

 

 

 

 

 

「がお〜 くまヴェルデだぞ〜 食べちゃうぞ〜♡」

 

「うわ〜!癒される〜!」

 

「食べられたいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

 

 

 

 クマの着ぐるみを身に纏ったエマ先輩に侑が抜け駆けして抱きつきやがった。いいすか? 拙者もあの可愛い物体に飛び込んで良いすか?

 

 

 

「零さん壊れちゃった」

 

「狂気的ですね」

 

「ぐぬぬ…! エマ先輩ばっかり可愛くなって…! かすみんだって負けませんよ〜!」

 

 

 くまヴェルデたんに飛びつくタイミングを今か今かと測っていると、果林先輩が新しい衣装を手に持って近寄ってくる。

 

 

「ねぇ、これもどうかしら? エマに似合うと思うんだけど」

 

「胸に飛行石ついてます?」

 

「空の果てまでふっ飛ばすわよ?」

 

 

 最近の俺に対する果林先輩の謎パワーを考えると本当にやりかねない。

 

 

「ねぇエマさん! 次の衣装に着替える前に一緒に写真撮っていい?」

 

「もちろん!」

 

「じゃあ私も!」

 

「私も!」

 

「私もお願いします!」

 

「朕も!」

 

「愛さんも!」

 

 

 

「今何か1人変なのいなかった?」

 

 

 

 そして俺たちはくまヴェルデを中心に、写真を撮るために集まって並ぶ。くっ侑のやつさっきからずっと引っ付いてて羨まけしからん。

 

 

「あれ? かすみちゃんいなくない?」

 

「ほんまや」

 

 

 

「じゃーん! どうですか皆さん! くまに対抗して猫かすみんですよ〜! にゃんにゃん〜♡」

 

「あーはい、にゃんにゃん。写真撮るからお前もこっち来いよ」

 

「ムキー! リアクション薄すぎませんか!?」

 

 

 エマ先輩に対抗して、猫の着ぐるみを身に纏ったカッスが勢いよく試着室から飛び出てくる。張り切って出てきたとこ悪いが写真のことを伝えると、ぷりぷりと怒りながらもこっちにきて一瞬でポーズを取る辺り流石の一言だ。

 

 

「果林ちゃんも一緒に撮ろうよ〜」

 

「えっ? 私はいいわよ」

 

「俺と一緒に写真撮るのが恥ずかしいんですか? もぉ〜そんなに照れないでくださいや」

 

「照れてないわよ。悪いけど私行くわね」

 

 

 果林先輩は頑なに写真に入ることを拒否して部屋の外へと出て行ってしまう。俺はともかく、エマ先輩に誘われても断るなんて一体どうしたんだろうか?

 

 

カシャッ

 

 

「あ゛っ!」

 

 

 果林パイセンのことに気を取られていると、セットされたスマホからシャッター音が静かに響き渡る。

 

 

「ちょっ! タンマタンマ! 俺まだキメ顔してないのに!」

 

「零士くんキメ顔とか言っていつも変顔するだけじゃん」

 

「そりゃキミらと撮る時はな! エマ先輩や彼方先輩と写るなら本気のキメ顔するに決まってるだろ!」

 

「でも零士先輩って素材がいいので、変に表情作るより今みたいに自然体な表情の方が素敵ですよ?」

 

「な、なんだしずく! お前俺のこと好きなのか!?」

 

「ちっ、違いますよ!? なんでちょっと褒めただけでそうなるんですか!?」

 

 

 俺たちが騒いでいると、いつの間にか果林先輩は本当に帰ってしまった。そして俺たちもその後何着かエマ先輩の試着をして今日のところは一旦解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 そして翌日、エマ先輩のPV撮影日になった。結局どの衣装を着るかは絞りきれず、そういうことなら全部着てしまおうとなったらしい。

 今は学校の中庭で撮影を行っているらしいので俺も急いで向かおうと思ったのだが、その道中で見慣れた人物の姿を見かける。

 

 

「そこの素敵なおねーさん。お一人ですか〜?」

 

「あら、お一人だけど……今はそういう気分じゃないのよ。ごめんなさいね」

 

「あちゃ、振られちった」

 

 

 声をかけた相手である果林先輩は小さく笑うとヒラヒラと手を振った。心なしかいつもの姿より元気がないようにも見える。

 

 

「あなた、同好会は?」

 

「今から向かおうと思ってたんですよ。エマ先輩のPV撮ってるらしいんで」

 

「……そう。衣装は決まったの?」

 

「エマ先輩がウェディングドレスで俺がタキシードを着ます」

 

「……嘘言わないの」

 

 

 一言だけ小さな声で囁いた果林先輩はやはりどこか元気がない。いつもなら軽口の一つでも言い返してくるだろうに。

 

 

「果林先輩も一緒にどうです?」

 

「……結構よ」

 

「何か用事でも?」

 

「そういう訳じゃないわ。でも、もう同好会の活動には顔を出さないから」

 

 

 なんだかんだで同好会の活動を手伝ってくれていた果林先輩だ。今回も一緒に来てくれるだろうと心のどこかで思っていたのだが、先輩の口から出たのは明確な拒絶の意思だった。

 

 

「どうしたんすかいきなり」

 

「別に……ただ昨日エマにも伝えたわ。もう同好会には誘わないでって」

 

「……そっすか」

 

 

 これまでは親友であるエマ先輩のためにと快く同好会の活動に手を貸してくれていた果林先輩。その先輩がエマ先輩にそんな突き放すようなことを言うなんて、昨日2人に何かあったのは確実だ。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

 俺と果林先輩は静寂に包まれる。夏の到来を予感させる生暖かい風を全身に浴びながら、俺と先輩は何を言うでもなく遠くを見つめる。

 

 

「……聞かないのね」

 

「スリーサイズですか?」

 

「ばか」

 

「いでで」

 

 

 果林先輩の指が俺の頬をつねる。ただあくまでそれはポーズだけで、本気で力を入れている訳じゃない。本気だったらこんなもんじゃないことは俺が身をもって知っている。

 

 

「昨日までは普通に同好会に手を貸していたのに、今日になって態度を豹変させたことよ。気にならないの?」

 

「いい男はグイグイ聞いたりしないんですよ。相手の心を受け止めて、相手が自分から話やすい空気を作る。それがいい男によるモテテクです」

 

「ふふっ、あなたいい男だったの?」

 

「果林先輩みたいないい女を口説くにはいい男である必要があるんですよ」

 

「もぅ、本当に調子がいいわね」

 

 

 さてと、そろそろ同好会の方に顔を出さないとな。エマ先輩のPV撮影を見逃すなんてことになったら後悔してもしきれないぜ。

 

 

「じゃあ俺はそろそろ行きますけど、その前に独り言を呟いてもいいですか? 果林先輩がメロメロになっちゃうようなイケボで」

 

「メロメロにはならないしイケボかも知らないけど、どうぞ」

 

「じゃあ失礼して」

 

「……」

 

 

 

「俺は朝香果林と一緒に同好会やりたいですよ。周りがどうとか関係ない。やりたいと思ったら飛び込んでみればいい。もし本当にあんな綺麗で可愛い人がスクールアイドル始めたら、ファンになっちゃうだろうな〜」

 

 

「……独り言にしては声が大きいわね」

 

 

「ついでにこれも独り言。スクールアイドルにならないならせめて俺の彼女になってくれないかな〜」

 

 

「……ふふっ、私も独り言。それこそお断りよ」

 

 

 独り言を呟いた果林先輩はいつも通りの綺麗な笑顔を浮かべてその場から離れていく。

 

 

 ……今なんか、すげぇナチュラルに振られた…?泣きそう。

 

 俺は涙を拭って逃げるようにその場から走って立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

「あそこは普通、『えっ、私のこと励ましてくれてる…? きゅん…好き…♡』ってなるとこだよなぁ。何故振られたのか納得いかんぜ」

 

「零士くん? どうしたの?」

 

「エマ先輩!!! 独り言なんで気にしないでください!!」

 

 

 Fu〜〜〜!!! 廊下を歩いていると偶然エマ先輩と遭遇しちゃったぜ!! ついさっき振られた心のダメージが癒えていくんじゃ〜^

 

 

「エマ先輩撮影はどうしたんですか?」

 

「今から部室に行って、衣装に着替えにいくとこなんだ」

 

「ほ、ほぉ」

 

 

 エマ先輩のお着替え…! なんて男心を唆られる魅力的な言葉だろうか! できれば着替えをしているところを守り神の如く見守っていたいが、それが叶わぬ夢ということは流石の俺でも分かっている。

 

 

「そうだ! 零士くん、一緒に来てお着替え手伝ってくれないかなぁ…?」

 

 

 

 

「なん……だと…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

「えーっと、衣装衣装」

 

「……」

 

 

 マジで部室に来ちゃったぞ。しかも今この部室には俺とエマ先輩の2人だけ。そんな状態でお着替えをお手伝い。

 

 

 いや、いいのか…!? 冷静に考えていいのか!? そりゃ叫び声あげたくなるくらい嬉しいけど本当にいいのか!?

 

 

 ふ、2人きりの部室でお着替えの手伝いなんてそんなの……

 

 

 

 

 

『ね、零士くん……脱がせてほしいな…♡』

 

 

『んっ、上手上手…♡ じゃあ次はこっちだよ?』

 

 

『えへへ、最近また大きくなっちゃって……恥ずかしいな』

 

 

『わぁ…♡ 零士くんのも大きくなっちゃった…♡』

 

 

『じゃあ次は、私が零士くんのお着替えをお手伝いするね…♡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「sparkingッッッッッッ!!!!!!!!」

 

 

 

 や、やるのか…? 松本零士17歳…! ここで男として次のステージに進むのか…!?

 

 あぁやってやる…! 勝負は今! この場で決める…! 悪いな皆、俺は一歩先に大人になる…!

 

 

 

 

「零士くん」

 

「せ、責任は取ります!」

 

 

「責任? よく分からないけど、コレを着るのを手伝ってくれるかな? えへへ、実は昨日も1人で着るの手こずっちゃって」

 

「………ひょ?」

 

 

 俺に微笑むエマ先輩が手に持ってるのは昨日のクマの着ぐるみだった。

 

 

 ……あー、そういうことね。完全に理解してきた。着ぐるみを着る手伝いをしてほしいだけね。うんうん、なるほどね。

 

 

 

 

 まぁそれはそれでいいか!

 

 

 

「それではお手伝いさせていただきます!」

 

「ありがとう〜」

 

 

 むふふな展開ではまるでなかったが、例え着ぐるみだろうとエマ先輩のお着替えを手伝うという事には変わりない。その字面とシチュエーションだけで白飯が3杯は食えるぜ。

 

 

ガタッ

 

 

「ぬ?」

 

 

 エマ先輩の方へ寄ろうとしたその時、机の角に体をぶつけてしまい机の上に置いてあったエマ先輩のスクールバッグが床に落ちる。

 

 

「あぁっ…! す、すみません! エマ先輩のバッグを床に落とすなんて…! 腹を切ってお詫びします!」

 

「わぁ! ジャパニーズハラキリ〜!? って、そんな事しなくて大丈夫だよ〜 全然怒ってないから」

 

 

 俺は目にも止まらぬ速度で床に落ちたエマ先輩のバッグを拾い上げる。そして何かの雑誌も同様に拾ったのだが、その表紙に一枚の白い紙が舞い落ちてエマ先輩の足元へ飛んでいく。

 

 

「あれ、なんだろうコレ」

 

 

 紙を拾い上げたエマ先輩はソレをジッと見つめる。そして驚いたように目を見開いてその場で固まってしまう。

 

 

「……果林ちゃんっ」

 

「果林先輩?」

 

 

 一体何が書かれているのかとエマ先輩の隣に行って紙を見ると、どうやらソレは果林先輩が書いた何かのアンケート用紙のようだ。

 

 そして目を引くのはその中の二つ目の項目。今1番興味があることは? という質問に対する果林先輩の答えだ。

 

 

「……スクールアイドル、か」

 

 

 そこにはハッキリとそう書いてあった。冗談なのか本気なのかは分からないけれど、確かにそう書いてある。

 

 

「なんだよ……やっぱやりてぇんじゃねぇかよ」

 

「やっぱ…?」

 

「あぁ、すみません。実はさっき果林先輩と話すタイミングがあって。エマ先輩にもう同好会には誘うなって言ったって話を聞いて……でもその時の果林先輩がどこか悲しそうだったんで」

 

「そうなんだ……」

 

 

 でもならば尚更分からない。興味があるのにどうして果林先輩はエマ先輩にあんな事を言ったんだろうか。

 

 

「零士くん、私大事なお友達なのに、果林ちゃんが何を考えてるのか分からないよ……」

 

「……それは仕方ないですよ。本人のことを完全に分かるのなんて本人だけなんですから」

 

「じゃあ、私はどうするべきなのかな…?」

 

 

 エマ先輩の瞳はうるうると潤っていて、今にでも泣き出してしまいそうだ。どうすればいいのか、そんな事は俺にだって分からない。でも、一つだけ言えることは……

 

 

「分からないです。分からないからこそ、一度ちゃんと話し合うべきだと思います」

 

「話し合う……」

 

「多分、このまま終わらせたら果林先輩も、エマ先輩も、そして俺も、全員後悔すると思います」

 

「……うん」

 

「だからちゃんと話さなきゃダメだと思います。エマ先輩はどうしたいのか、果林先輩は何を思ってるのか。俺は伝えたけどダメでした。多分エマ先輩じゃないとダメなんです」

 

 

 エマ先輩は勢いよく立ち上がってアンケート用紙をスカートのポケットの中に入れる。いつも笑顔のエマ先輩の凛々しい表情も変わらず素敵だ。

 

 

「零士くん、私行ってくるね!」

 

「エマ先輩、頑張ってください!」

 

「うん!」

 

 

 そう言ってエマ先輩は部室を飛び出して行った。そしてそれとちょうど入れ替わるようなタイミングで侑と歩夢が部室に入ってくる。

 

 

「あれ? エマさん走って行っちゃったけど」

 

「ていうか、エマさん着替えるって言って部室に行ったのに……どうして零士くんが一緒にいたの? ねぇ、ドウシテ…?」

 

 

 歩夢が恐ろしい顔をしてこっちをジッと見ているが、今の俺は正直言ってそれどころではない。

 

 

「……はぁ」

 

「零士くん? どうかしたの? そんなガッカリしたような表情して」

 

 

 どうかしただと…? こちとらエマ先輩のお着替えお手伝いチャンスを失ったんだぞ…? これがショックを受けずにいられようか…? あぁ、エマ先輩のお着替え……手伝いたかった。

 

 

 男の悔し涙が一粒だけ、部室の床にポツリと溢れ落ちたことは俺以外誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「えぇ〜! 果林先輩も同好会に入るんですか!?」

 

 

 翌日、同好会に顔を出したエマ先輩の隣には清々しい顔をした果林先輩がいた。どうやらエマ先輩はあの後上手くやれたようで、しっかり果林さんとお互いの気持ちをぶつけ合うことができたらしい。

 

 

「ふふっ、どこかのお節介な2人のおかげでね」

 

「果林ちゃんがいればもっと楽しくなるよ!」

 

「でも大丈夫なんですかぁ〜? モデルもやってスクールアイドルもやるなんて〜」

 

 

「あら、大丈夫よ。モデルでもスクールアイドルでもトップをとってみせるから」

 

 

 煽りを入れるカッスに対して、果林先輩は余裕綽々といった様子で微笑み返す。その表情から見るに本気でモデルとスクールアイドルの両方でトップを取るつもりらしい。

 

 何はともあれ、同好会もこれで俺と侑を入れて11人だ。2人だけで始めたのにいつの間にやら大所帯で感慨深いぜ。

 

 

 

 

 

「はぁい、そこの素敵なお兄さん」

 

「見る目がありますねぇ、素敵なお姉さん」

 

「ふふっ」

 

 

 椅子に座ってスマホを弄っていると、いつの間にか横に来ていた果林先輩が椅子の肘掛けにもたれながら話しかけてくる。

 

 

「色々あったけど、私も同好会に入ることにしたわ」

 

「ちぇ、俺の誘いじゃ首を縦に振らなかったのに」

 

「あら、妬いてるの?」

 

「そりゃもう。ジェラってますよ。もうメラメラと」

 

「ふふっ」

 

 

 果林先輩は楽しそうに笑っている。俺では口説き落とせなかった訳だが、まぁ今楽しそうに笑ってくれているのならよしとしよう。

 

 つかさっきから距離が近い。なんかすげぇいい匂いするし。これ吸っていいよね? 別に俺から近づいてるわけじゃないし遠慮なく吸っていいよね? セクハラじゃないよね不可抗力よね?

 

 

 

 

「零士くん」

 

「エマ先輩! 今日も相変わらず素敵ですね!」

 

「ありがとう、ふふ」

 

 

 果林先輩とは反対の方向からエマ先輩が声をかけてくる。左右から美人のお姉さん方に挟まれるなんてここは桃源郷かな?

 

 

「零士くん、昨日は改めてありがとうね」

 

「何がです?」

 

「頑張れって背中押してくれたでしょ? あの時、凄く胸がポカポカしたんだ。私もそんなポカポカを色んな人に届けられるようにこれからも頑張るよ!」

 

「エマ先輩が話しかけてくれるだけで俺の胸はもうポッカポカですよ。いや、もうポカポカを通り越してメラっメラです!」

 

「えぇ〜? そんなに熱くなったら火傷しちゃうよ〜」

 

 

 クスクスと笑うエマ先輩は本当に楽しそうで、そんなエマ先輩を見てると俺も幸せで、皆して幸せでハッピーハッピーやんけ。

 

 

「エマさん、昨日はありがとうって、零士くんと何かあったんですか?」

 

「ん?」

 

 

 その時だった、侑がひょっこりと顔を出してエマ先輩に訪ねる。そういえば昨日、俺とエマ先輩が部室で話をしたこととかは言ってなかったな。

 

 

 

「あ〜昨日ね? 部室で衣装のお着替えの手伝いを零士くんにお願いして」

 

 

 

 

「「「「えっ」」」」

 

 

 

 ん? 何やら部室の温度が下がったな。

 

 おーいエマ先輩、ちゃんとクマの着ぐるみを着る手伝いだったってことも言ってくださいよ? しかもなんならそれすら未遂だったことも伝えてくださいよ?

 

 じゃないとほら、周りの俺を見る視線がゴミを見る目になってるから。はっはっは、歩夢なんてあれもう視線だけで人を殺めることができるぞ。

 

 

 

 

 

「零士くん……」

 

「零士さん…? お着替えを手伝いしたというのは本当ですか…?」

 

「先輩……純粋なエマ先輩になんてことを」

 

 

「待て待て待て! 俺はむしろ手伝ってくれとお願いされた方だぞ!? って、そもそもお願いされたのはあの着ぐるみでなんなら俺は結局何もしてな────あっ、ちょっまって! 話を聞いて! 通報しないで! てかその手錠どっから出したんだよやめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 今日の教訓。

 

 報連相は、正確にね☆

 

 





おま◯け

零「エマ先輩は俺に応援された時胸がポカポカしてた。そして俺は常にエマ先輩のことを思うと胸がポカポカしてくる。これはもう両思いと言っても過言ではないのでは?」

果「過言でしょ」


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