虹ヶ咲学園の恥晒し 作:種子島
熱かったり寒かったり
とある休日の昼下がり、部屋で全裸になりAVをイヤホンなしで見るという漢の休日を満喫していた俺だったが、突如として家を訪ねてきた同好会メンバーに色々あって部屋に侵入されてしまったのだった。
濃い休日だぜ!
「零さんの部屋、なんか男子!って感じがする!」
「なんじゃそりゃ」
「だってホラ! ゲームとか漫画とか沢山あるし、誰が買うんだコレって感じのドラゴンとか剣のキーホルダーあるし!」
「全国の小学生男子に謝れ! アレはな旅先で見かけたらつい欲しくなっちまうんだよ!」
宮下の奴め、よほどさっき恥ずかしい思いをさせられたのが悔しかったのか、何か暴いてやろうとでも言わんばかりの勢いで俺の部屋を探索している。大丈夫だとは思うが、エロ系のグッズが見つからないからちょい気がかりだぜ。
「お、おぉ…! 零士さん! この間お借りした漫画の新刊があるじゃないですか! 読んでもいいですか!」
「もろちん」
「ありがとうございます!」
菜々は前に俺の部屋に来た時と同じように漫画やゲームなんかに目を輝かせている。俺の軽く引くレベルの下ネタを気にもしない辺り相当テンションが上がっているようだ。こやつは放っておいて問題ないだろう。
「先輩、向こうの引き出しの中がカップラーメンで埋め尽くされてましたが、もしかしてそれしか食べてないんですか?」
「無論」
「ダメですよ? それじゃあ栄養が偏ってしまいますからね。ちゃんとしたご飯も食べてください」
「分かったよしずくママ」
「誰がママですか」
いやまぁ、作れないこともないんだけどやっぱり楽しちゃうんだよな。それに自分のためだけに作るってのもなんか面倒だし……それに最近のカップラーメンは凄いぜ? めちゃくちゃ種類豊富だし美味いし。
さてさて、何だかんだで3人に部屋の中へ侵入されてしまった訳だが、隠したAVやエロ本がいつバレるか気が気でない。何とかして一刻も早く彼奴らにお帰りいただかなくては……
もしアレらが見つかったりでもしたら高貴で清楚な俺のイメージがまる崩れだからな。
「ん〜、何も無いなぁ」
「何ケツ振ってんだよ」
「は、はぁっ!? 振ってないし!」
俺の痴態を暴こうとしている宮下が四つん這いになってベッドの下を覗き込んでいたので声をかけると、顔を赤くしてサッとスカートの上からケツを隠す。
「お前な、今日日ベッドの下にそういうモンを隠してる男子なんていねーから。まぁ俺はそもそもそんな物持ってないけどな」
「む〜! 絶対暴きだしてやる!」
そう言って宮下はキョロキョロと部屋の中を見回す。一体何がコイツをそこまで突き動かしているのかは知らんが、どうしても俺が隠しているブツを見つけ出したいらしい。
「第一、お前本当にそういうモンを見つけ出したとしてどうすんだよ」
「別にどうもしないけど? 宝探しすること自体が楽しいじゃん?」
「大海賊時代を生きてる人間のメンタリティだな」
やはり宮下を放置しとくのは危険だ。このままだといずれ俺の隠した
菜々は変わらず漫画に夢中だし放っておいて問題ない。そしてしずくは……あれ、しずくがどこにもいない。
消えたしずくを探して部屋を出ると、風呂の前の脱衣所で山積みになったタオルやらハンカチをいそいそと畳む姿を発見した。
「おーい、しずくさん」
「あ、先輩。すみません、つい目に入ったので気になっちゃって」
「いや俺としてはめちゃくちゃありがたいんだが、別に放っておいていいぞ? ほら、向こうで一緒にゲームでもしようぜ」
「でも、もう少しで全部終わりますから」
そう言ってしずくはテキパキと積まれた物を綺麗に畳んでいく。俺としてはありがたい……本当にありがたいのだが……
「あー、しずく? ほら、もうその辺で」
「もう少しで終わりますから」
「いや、その下には」
「なんですか? えっ?」
ひょいひょいと小気味良いスピードでタオルを畳んでいたしずくが手に取った布を見て硬直する。彼女が手にしたソレは紛れもない俺のパンツだった。
そのことに気がついたしずくの頬は薄らと赤く染まり、二度三度と大きく咳払いをする。
「べ、別にこれくらいで動揺したりなんかしませんよ。こんなのただの布きれですから。別に他のタオルやらと何も変わりありません」
「何も言ってないのにめちゃくちゃ喋るじゃん。あと顔赤いぞ。耳も」
「こ、これはそういうメイクです!」
意味不明な言い訳をしながら、しずくは震える手で俺のパンツを畳もうとする。だが男物の下着を畳んだ経験がないのか、どうしたものかと試行錯誤を重ねているようだ。
「先輩、畳み方これであっていますか?」
「しずくが俺のパンツ畳んでるの変な感じだな」
「い、いちいち言わないでください」
「いつも俺の下半身を包んでる聖なる布きれにしずくの指が触れてるなんて」
「変な言い方しないでくださいよ!」
ちょっと揶揄いが過ぎたのか、しずくは勢いに任せてパンツを畳むと赤い顔のまま脱衣所を後にして2人のいる部屋へ戻っていく。
「あれ? 2人とも何してたの? しずく顔赤くない?」
「赤くないです!」
「お、おぉ……零さん何か怒らせたの?」
「脱衣所に入ったらしずくが俺のパンツ握ってただけだが?」
「え?」
「人聞きの悪い言い方しないでください!!」
一瞬だけ困惑の表情で固まった宮下にしずくは身振り手振りを交えて必死に釈明する。すると納得がいった宮下は笑顔で宝探しを再開した。
そしてしずくは座椅子に腰をかけると、ぷくぅと頬を膨らませて俺のことをジト目で睨んだ。
「まったく、先輩が変な言い方するから私が下着を漁る変態になるところでしたよ」
「違うのか?」
「せ・ん・ぱ・い〜?」
「悪い悪い。普通に感謝してるよ。畳んでくれてありがとな」
「……はい、どういたしまして」
怒りがおさまったのか、しずくの膨らんだ頬が萎むと同時に小さく微笑む。さっきまで赤みがかっていた顔の色も次第に、正常なしずく本来の綺麗な白さへと戻っていく。
「まぁでもいつか彼氏の洗濯物を畳むシーンとか演じるかもしれないだろ? そう考えたらいい経験かもしれんぜ」
「……確かに、初めての体験だからこそいい経験値になりますよね。アレが新婚だとしたらもっと……」ブツブツ
しずくは口元に手を置いてブツブツと何かを呟きながら目を細める。自分で言っておいてなんだが、コイツは演技を絡めれば何でも言いくるめられそうで心配になるな。
「よし、じゃあ新婚さん
「お帰りなさい、あなた」フフッ
女優スイッチONになるの早過ぎて草。
しずくは大抵即興劇を振ると乗ってくる。今だって一瞬だけ困惑したけどすぐにスイッチを切り替えて新婚の奥さんを演じている。意外とノリがいい子なんです。
「おう、ただいま」
「ご飯にします?お風呂にします? それとも……ワ・タ・シ…?」
「はっはっは、もちろんしずくと言いたいが、今日はちょっと汗をかいたから風呂にしようかな」
上目遣いであざとく
「酷いっ…! 昔だったら、ノータイムで私を選んでくれたのにっ! 私にはもう飽きたんですか!」
「お、おいおい、何を怒ってるんだよハニー。君に飽きるなんてそんなことあり得ないだろ?」
女優モードのしずくの演技に若干圧倒されつつ、俺もなんとか演技でくらいついていく。段々とエンジンがフルスロットルになっていくしずくはベッドに座りスマホを弄る宮下の方を指さした。
「私知ってるんです! あなたがどこの馬の骨とも知らないギャルと浮気してるんだって!」
「ち、違う!あのギャルはそういうんじゃ…!」
「……えっ!? 愛さんなんか巻き込まれてる!?」
ボケーっとしていた宮下は急に桜坂劇場に巻き込まれたことに困惑して自分の顔を指差す。
「今朝だってベッドに明らかに私のじゃない金色の髪が落ちてたんです!」
「ぐぅッ…!」
「正直に白状してください!」
「じ、実は……俺じゃなくてギャルの方から俺を襲ってきたんだ」
「えっ」
「いやいやいや! そんな愛さんのことを獣を見るような目で見ないでよ!そんなのでまかせだから!」
「お、俺は必死に抵抗したんだ…! それなのに、『愛さんに勝てるわけないじゃん♥』って無理やり服を脱がされて…!」シクシク
「そんな……」
「どう考えても愛さんよりそこで泣き真似してる旦那さんの方が強いですよ奥さん!」
シクシクと涙を流す俺の手をしずくが優しく握る。そして優しく微笑みながら頷いた。
「ごめんなさい、あなたのことを疑ってしまって」
「しずくっ…! 信じてくれるのか!」
「うそーっ!」
「もう一度確認しますけど、あなたは襲われただけなんですよね…?」
「あぁ、『愛さんっ…!
「やかましいわ!」
「しずくっ…!」
「零士さんっ…!」
また一つ障害を乗り越えた俺たち夫婦は互いの存在を確かめ合うように手を強く握る。そして自然と熱の籠った瞳に吸い寄せられるように仲直りのキッスを……
「はいはいはい、そこまでそこまで。2人とも熱入り過ぎだから」
「むぐっ」
「ひゅぐぅ」
割り込んできた宮下が俺たちの額に手を当てて無理やり顔を引き剥がす。呆れたように大きく息を吐いてジト目で見つめてくる宮下を見て、俺としずくは演劇スイッチをOFFに切り替えた。
「ふぅ、ありがとうございました、先輩」
「しずくの女優魂を見せてもらったぜ」
「先輩は本気で演じて応えてくれるからとてもいい練習になります!」
「くくく、演技に照れや躊躇は不要だからな」
むしろちょっと照れてる奴の演技とかを見る方が恥ずかしかったりするからな。やると決めたら何事も全力でやるのが大事ってことですわ。
するとジト目のままこっちをずっと見ていた宮下が、俺としずくを交互に見比べて呟く。
「2人って一見正反対っぽいけど仲良いよね」
「正反対?」
「うん、品行方正のお嬢様とちゃらんぽらん」
「おいしずく、お前ちゃらんぽらんって思われてるみたいだぞぷーくすくす」
「ふふっ、100%先輩のことだと思いますよ?」
なにっ!? この俺がちゃらんぽらんだと? 全く宮下の人を見る目には困ったもんだな。俺ほど気高い精神を持った男なんてそうそういないだろうに。
「でも、そうですね。零士先輩は今まで関わったことのないような人ですが、だからこそ色々と新しい経験があってとても楽しいですよ。演技の練習にも付き合ってくれますし」
「ふーん」
「ははは、参ったなぁ。後輩に慕われちゃう俺のカリスマ」
まぁ俺レベルになると黙っていても人が集まってくるっていうか? 気がついたらもうダチになってるっていうか? まー人気者は困るぜ。
「確実に調子に乗ってる顔してる」
「あはは」
「正反対と言えば、せっつーと零さんがすっごい仲良しなのもそうだよね。共通点はあるんだろうけどやっぱりちょっと意外かも」
「いい機会ですし、せつ菜先輩にその辺のこと聞いてみます?」
「そだね! おーい、せっつー!」
宮下が元気よく菜々に声をかけるが、菜々からの反応はないどころかジッと手に持った漫画を持って微動だにしない。
やけに集中してんな。漫画の新巻読むって言ってたけど、一巻読むだけであんなに時間はかからんだろうに。
「おーい、菜々。宮下が呼んで……」
菜々の方へと近寄り肩を叩くも反応はない。仕方なく上から覗き込んで何を呼んでるか確認すると、菜々はガッツリどすけべしてる男女のシーンのコマを凝視していた。
……うん、これ隠してたエロ漫画だわ。
「フッ…!」
「あっ!」
俺は風の如き早さでそれを菜々の手から奪って後ろに隠す。菜々の顔は真っ赤で気まずそうに俺のことを見上げている。
「ちっ、ちちちち違うんです! 本棚の後ろに何か落ちていたので拾ったらその本だっただけで!」
「おっ、おおおおお俺もこんな本知らんが!? 決して俺の所有物じゃないからな! 前に住んでた奴が忘れてったんだろうなきっと! 俺こんなの持ってないし!」
エロ本の存在がバレたことで冷静さを失った俺の手から本が奪われる。振り向くと後ろでベッドに座る宮下が本を見せつけるようにしながらニヤニヤと笑っていた。
「やっぱり持ってるんじゃ〜ん」
「それは保健体育の教科書だが?」
「いやいや無理あるって。さ〜て、零さんの恥ずかしいトコた〜っぷり見ちゃうぞ〜。ふむふむ、零さんってばこういうのが好き……好き……うっ」
「……揶揄うならちゃんと揶揄えよギャル下。耳まで真っ赤だぞ」
「う、うるさいなぁ!」
本を開いてペラペラとページを巡った宮下はすぐに顔を真っ赤にする。隣から覗き込んだしずくも恥ずかしそうに目を手で隠しながらもチラチラと見ることをやめない。
「うぅ〜! なんだかすっごく体が熱いです…! すみません零士さん、別の漫画を呼んで一旦気を紛らわせさせていただきます…!」
「あっ! おい待てそこは!」
菜々は本棚のドラ◯ンボールの単行本に手を伸ばす。そして一巻を手に取ると、その奥に隠されている何かに気がついたように目を丸くする。
「何でしょう? 何か漫画の後ろに置いてあるような」
「それを見ちゃいかーーーん!!!!」
菜々が手に取ったのは俺がせっせと急いで隠したアダルトなビデオのケース。そしてソレを目にした菜々の顔がより一層赤く、茹でた蛸のようになっていく。
『真面目な生徒会長を快楽で調教──。生徒会室の放課後の情事』
「なっ…! なななななななな!!!!!!!」
よりにもよってそれかよっていうタイトルを手に取りやがった菜々は、何かを言いたげにAVと俺を交互に指差している。
「ま、待て!違うぞ! たまたまそういうヤツだっただけで別に他意はないからな! マジで!」
「……れ、零士さんは私とこういうコトしたいと思ってるんですか…?」
「落ち着け! お前は今とんでもないことを口走っているぞ! 冷静になるんだ!深呼吸しよう!」
「わっ、なんか他にも色々あるよ」
「す、凄いですね……」
「どさくさに紛れてなにをしとんねん!!」
しれーっと本棚を漁り出す宮下としずく。そして腕を伸ばしたしずくが手に取ったソレを見て目を見開いた。
嫌な予感がするぜチクショウ!
『小悪魔な後輩をわからせっ◯す! いや、ダメです先輩っ♥ コレは演技じゃないですっ♥』
だから何でお前らはドンピシャでそういうのを引き当てるんだよぉぉぉぉ!!!!!!
「せ、先輩……ダメです……私たちが夫婦なのはさっきの演技の話で……」
「分かってる! 分かってるから! 決して変な意味で買った訳じゃないから! てか他にも色々あんのになんでドンピシャでお前がソレを引き当てるんだよ!!」
「ほ、他にも色々って……まさか…! 愛さんっぽいのも…!」
「ま、待て宮下!」
くっ、この流れは…!
『Ohっ♥ Don't touch meっ♥ Japaneseボーイにアメリカンなmeが負ける訳アリマセーンっ♥』
「……ふんっ!」
「あ、おい投げんな!」
ふぅ……あ、危なかった。ネタ枠で買った洋モノを手に取りやがった宮下の奴め。ギャル物を引き当てられてたらとんでもない空気になってるところだったぜ。いや、もうなってるか!
「れ、零士さん! ちゃんと説明してもらいますからね! どうしてこのビデオを買ったんですか!」
「だから偶々で他意はないんだって!」
ビデオをぐいぐいと押し付けながら迫ってくる菜々。その勢いに押されて後退する俺のかかとに何か硬い感触が伝わる。
カチッ
「あ?」
俺が踏んだのはテレビのリモコンだった。一瞬の電子音の後に続いて液晶に光が灯る。そして画面にはさっき消したビデオの続きが映った。
『あんあんあん♥ あんあんあん♥ あんあんあんあんあんあんあん♥』
「「「「…………」」」」
……なんで喘ぎ声が三三七拍子なんだよ。
「「「きゃ〜〜〜!!!!!!!!!」」」
俺はきっとこの時聞いた喘ぎ声と悲鳴を生涯忘れることはないだろう。
………
〜後日〜
「よ〜し! じゃあランニング行きますよ〜! 気合いを入れるためにもかすみんが笛を吹くのでそれに合わせて声も出していきましょう!」
ピッピッピッ
ピッピッピッ
ピッピッピッピッピッピッピッ
「「「三三七拍子はやめて(ください)〜〜!!」」」
「えぇっ!? 何でですか!?」
後日、3人は三三七拍子に敏感になっていた。
映画の2章見返しすぎて全部覚えちゃった