虹ヶ咲学園の恥晒し   作:種子島

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 連休がずっと続いてほしい





赤点と100点は紙一重

 

 

 

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が発足してから数ヶ月が経過した。5人はせつ菜考案の厳しい練習を重ね、出会った頃に比べたら比較にならないほど体力もついている。

 

 まぁ少しスパルタがすぎるような気もしなくもないが、まだギリギリで周りのメンバーもついていけているので口は出すまい。

 

 そして季節は初夏、6月になり虹ヶ咲学園の生徒たちも夏服に衣替えをして眼福な季節になった。

 

 

「やはり夏服は……良い!」

 

 

 夏服、それは魅惑の言葉。女子たちは半袖になり美しい腕を曝け出す。そしてシャツを着ている女子が汗をかけば背中には透けたブラが…!

 

 

「おーい、そこの血走った目をしてる変態くん」

 

「変態? 俺のことじゃないな」

 

「零士くんに決まってるじゃん」

 

「ん? 侑か」

 

 

 人を変態呼ばわりするとは失礼なヤツだ。今だって目にも止まらぬ速度でお前の絶対領域を盗み見したくらいで全然変態なんかじゃないぞ俺は。

 

 

「何してたのこんな所で?」

 

「夏服の良さを噛み締めてた」

 

「うわ気持ち悪」

 

「おい、言葉を慎めよ…!」

 

 

 サッと俺から自分の身体を隠すような仕草を見せる侑。そんな事をしてもえっち力は上昇するだけだということをお前に教えたい。

 

 

「そんな事してる暇あるなら勉強しなよ」

 

「人生についての勉強なら今もこうして」

 

「そういうのじゃなくて、定期試験。明日からでしょ?」

 

「………え?」

 

「あっ(察し)」

 

 

 定期試験…? そういうのって普通夏休みに入る直前にやったりするもんじゃないの? 何でこんな時期にやるの? 馬鹿なの? 死ぬの? 僕は死にましぇん!!

 

 

「現実逃避してないでちゃんと勉強しなよ? 赤点取ったら放課後に補修らしいからね」

 

「ゆ、侑……ちなみに教えてくれたりは」

 

「私も自分ので精一杯だよ〜、元々成績は良い方でもないし……歩夢に頼んでみたら?」

 

「歩夢かぁ」

 

 

 アイツ俺に対してだけ辛辣になるんだよなぁ。会話の終わりが大体『零士くんはアホだもんね』なんだよ。

 

 

「まぁ、今回は武士らしく潔く散るさ」

 

「これに懲りたら普段からもう少し勉強することだね。じゃあ私はもう行くから。またね!」

 

「うぇーい」

 

 

 去っていく侑とは反対方向に俺もゆっくりと歩みを進めていく。いつもなら女神に会えることに対するウキウキ感で軽い足取りも、テストのことを思うとどうしても重くなってしまう。とほほ〜。

 

 

 

 

 

………

 

 

「と、いう訳で俺しばらく同好会に顔出せんわ」

 

「いやいやいや、そこは諦めないで赤点回避しましょうよ!」

 

 

 同好会の面々に別れを告げると、せつ菜のツッコミが部室内に響き渡る。相変わらず良い声量してらっしゃる。

 

 

「ふっ、テストは明日からだぞ? 今更どう足掻いても未来は変わらないのさ」

 

「お〜、悟ってるねぇ」

 

「悪い方向にですけどね」

 

 

 彼方先輩の言葉にしずくが突っ込む。

 

 

「あれ? かすみちゃんどこ行くの?」

 

「ぎくぅ!」

 

「リアクションを口に出すなや」

 

 

 抜足差し足忍び足で部室を出て行こうとしているカッスだったがエマ先輩に見つかる。そんな彼女を見てしずくがじっとりとした視線をぶつける。

 

 

「かすみさんも他人事じゃないもんね」

 

「うぇっ!? か、かすみんはテストくらい余裕なんだけど!? 零士先輩と一緒にしないでください!」

 

「お前もアホにならないか?」スッ

 

「何ですかそのポーズ…?」

 

 

 猗窩座の真似をしてみたがカッスには伝わっていない。唯一元ネタを知ってるせつ菜だけが笑うのを我慢していた。

 

 

「かすみさん、不安なとこがあるなら今からでも私が教えるよ?」

 

「うぇっ…! だ、だからぁ……かすみんは勉強なんてしなくても〜」

 

「かすみちゃ〜ん。こういう時は素直に教えてもらった方がいいと彼方ちゃんは思うよ〜」

 

「私もそう思うよ。赤点取っちゃったら部活にも来れないよ?」

 

「うぐぐっ、可愛いかすみんがスクールアイドルできなくなるのは可愛い界にとっての損失…! し、しず子ぉ〜!」

 

「はいはい、苦手なとこ教えてね」クスッ

 

 

 結局、しずくとかすみは緊急勉強会を開くとかで何処かへ消えて行った。今からやっても良い点数を取るのは難しいが、赤点の回避くらいなら何とかなるというしずくの目立てだ。

 

 

「というか今日の練習は?」

 

「学生は学業が本分ですから、テストを疎かにはできません。テストを乗り越えて憂いなく練習に取り組めば問題ありません!」

 

 

 なんだコイツ学生の鑑か? さすせつ。

 

 

「そういうことなら彼方ちゃんも今日は勉強しようかなぁ。ちょっと数学が危なくてね〜」

 

「俺が教えますよ。さぁ、2人きりになれる場所に行きましょうか」

 

「零士さんが教えられるのは精々中学の範囲まででしょう?」ジトー

 

「初めてですよぉ……この私をここまでコケにしたお馬鹿さんは……」

 

 

 まぁ普通に図星だから何にも言えんのだが。ちくしょう…! 俺が頭良ければここで彼方先輩との勉強会デートイベントが発生したのに…!

 

 

「エマ先輩はどうします?」

 

「私は自分は大丈夫だと思うんだけど、お友だちの勉強を見てあげる約束があるんだ〜。練習終わってからのつもりだったけど、練習が無いならすぐに始めちゃおうかな」

 

「エマ先輩、ここに勉強を見てあげないとマズそうな後輩がいますよ」

 

「えっ?」

 

「あ〜エマ先輩に勉強見てもらいたいなぁ〜。エマ先輩に見てもらえたらめちゃくちゃやる気でるのになぁ……2人きりで教えてもらいたいなぁ〜」

 

「ん、ん〜! 零士くんのお勉強も見てあげたいけど、私の身体は1つしかないし…! ど、どうしよう〜!」

 

「エマ先輩を困らせないでください! エマ先輩! この人のことは無視してお友だちの所へ行ってあげてください!」

 

 

 ちっ、せつ菜め。余計なことしやがって。あと少しでエマ先輩との勉強会デートイベントが発生したっていうのによぉ!

 

 

「「それじゃあね〜、せつ菜ちゃん。零士く〜ん」」フリフリ

 

「はい! お勉強頑張ってください!」

 

「あぁ〜! 俺の癒しがぁ〜」

 

 

 エマ先輩と彼方先輩は笑顔で手を振って部室を後にした。俺の癒しが……はぁ。

 

 

 

「テスト、どうすっかなぁ」

 

「……」オホン

 

「今から一人でやっても間に合わんよなぁ」

 

「……」ソワソワ

 

「さてと」

 

「っ…!」

 

 

 

「俺も帰るか」

 

「何でですか!!」

 

「うぉっ!」

 

 

 俺もその流れで帰ろうかと思って立ち上がると、せつ菜に肩をぐっと引っ張られた。

 

 

「な、何だ何だ!?」

 

「普通そこは私を頼るとこでしょう!」

 

「え、見てくれんの?」

 

「も、もちろん! まぁ零士さんが嫌とおっしゃるなら別ですが……」

 

「嫌な訳ないだろ。むしろ感謝しかねぇよ」

 

「で、では! 私が零士さんの赤点を回避させてみせます!」

 

 

 グッと拳を握りペカーと笑うせつ菜。何がそんなに嬉しいのかは分からないが、微笑ましいのでまぁいいだろう。

 

 

「で、どこでやる?」

 

「部室でと言いたいですが、部室棟は物音もあって集中できませんし、教室も放課後はどこかの同好会や部活動が使用していますからね」

 

「カフェは?」

 

「年上の女性がいる場所では零士さんが集中できると思えません」

 

 

 悔しいが否定できないな。コイツ最近マジで俺の生態を把握してきてやがる。まるで零士くん博士だ。

 

 つーかそれだと学内で勉強できるとこほぼねぇじゃんか。流石に外でやるってのもなぁ……

 

 

 

「んー、じゃあウチくるか?」

 

「………へっ?」

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

「入って、どうぞ」

 

「お、おおおおおお邪魔しましましましま!」

 

「どんだけ縞々なんだよ」

 

 

 

 鍵を開けて部屋の中に菜々を通すと、何故かめちゃくちゃ挙動不審な様子で訳の分からんことを言っている。

 

 

「あっ! ああああああの! ご家族の方は!?」

 

「いないけど? 俺、高校から一人暮らしだし」

 

「へぁっ!?」

 

 

 ヒトデマンみてぇな声出しやがって……

 

 というかまだ一人暮らしの事については教えてなかったっけ? すっかり言った気になってたぜ。

 

 

「そ、そそそそそれは一体どのような理由で…?」

 

「あー、まぁ色々あるんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

『零士、突然だが父さん転勤が決まってな』

 

『ほーん』

 

『父さんは母さんがいない生活なんて発狂してしまうから、もちろん母さんにも着いてきてもらうけどお前はどうする?』

 

『いや、俺もう高校も決まってるしそんないきなり言われても』

 

『まぁそうだろうな。それでお前さえ良ければこっちで1人で暮らしてみるか? もちろん父さんたちが仕送りはする』

 

『マジ? じゃあそうするわ』

 

『その代わり、定期的に生活状況の報告はするように。もしもあまりにも酷い生活を送っているようだったら、父さんたちの元へ来てもらうからな』

 

『余裕余裕。任せとけって』

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「てな感じよ」

 

「な、なるほど……なんというか、やはり零士さんのお父様も少しぶっ飛んでいるんですね」

 

「ちなみに今月は今んとこインスタント食品しか食ってないからバレたら多分強制送還されるぜ」

 

「それは体に良くないですね……よ、よろしければ今度私がご飯を作りましょうか…?」

 

「マジ? お前料理できんのかよ」

 

「腕によりをかけて作りますね!」

 

 

 

 やったぜ。美少女の手作り料理が食べられるとかもう勝ち組だろこれ。真面目な菜々のことだ。きっと料理もきちっとレシピ通りに美味いもんを作ってくれるに違いない。

 

 

「あ、そうだ。一個聞いておきたいんだが、今は菜々でいいのか?」

 

「えっ? あ、それは……零士さんのお好きに……」

 

「まぁ周りに人がいない時は菜々でいいだろ」

 

「ふ、2人きりの時だけの呼び方という訳ですね……な、なんだか恋愛漫画みたいですね…!」

 

「お前も2人きりの時は俺のことダーリンって呼んでもいいんだぜ?」

 

「あ、それは遠慮します」

 

 

 何でやねん。ダーリンって呼んでくれよ。そしたら俺もハニーって呼ぶからさ。いいだろ? アメリカの馬鹿ップルみたいで。

 

 

「さてと、それじゃあ」

 

「はい」

 

 

 

「どのゲームからする?」

 

「勉強は!?」

 

 

 勉強? 何それ美味しいの?

 

 友だちを家に連れてきたんだからゲームして遊ぶに決まってるだろぉ!? このシチュエーションで遊ばない奴いる? いねぇよなぁ!?

 

 

「零士さん! 今日の目的をお忘れですか!?」

 

「え、ゲーム大会だろ?」

 

「微塵もそんな話出てなかったですよね!」

 

「まぁまぁ、ほらこっちこいよ」

 

「あっ、ちょっと…!」

 

 

 菜々の手を引いて横の座椅子に座らせる。そしてゲーム機のコントローラーを1つ渡して電源を入れた。

 

 

「ちょっと零士さん…!」

 

「まぁまぁ、ちょっとだけだからさ。ほらこれ、菜々に前貸した漫画のゲームなんだぜ」

 

「えっ、ゲームがあったんですか?」

 

「おうよ。結構面白いぞ。バトルモードもあるんだけど、ストーリーモードの原作再現度が凄くてなぁ。2人で協力プレイもできる」

 

 

 説明を受けた菜々のオタクスイッチが入った。恐ろしく早い目の輝き、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

 

「ほら、始まったぞ」

 

「す、凄いですね! あのシーンを忠実に再現されてます!」

 

「バトルも迫力あんだ。ほら、早速敵がくるぞ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 私操作方法とか何も知りませんよ!?」

 

「戦いながら覚えればへーきへーき。ほら始まるぞ!」

 

「わっ、わっ! わわわっ!」

 

 

 それからは菜々と2人でゲームに熱中した。2人でストーリーモードをクリアし、対戦モードも遊び尽くし、別の菜々が好きなアニメのゲームでも遊び尽くす。

 

 そして気がつけば太陽は沈み、カーテンの外には夜の帷が降りていた。

 

 

 

 

 

「面白かったです!!!!」ペカー

 

「だろ! 最高だよなこのゲーム!」

 

「はい! ついつい熱中してしまいました!」

 

「あっ、そういえば菜々に前貸した漫画あっただろ? アレ最新刊出たから続き貸すよ」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

「おう、母ちゃんに見つかんないようにな」

 

 

 菜々に漫画の入った紙袋を渡す。ソレを受け取った菜々は満面の笑みを浮かべて礼を述べる。

 

 

「ありがとうございます! それでは私はそろそろ門限が近いので帰りますね!」

 

「途中まで送ってく」

 

「いえいえ、お気遣いなく! それじゃあ零士さん! 今日はありがとうございました! とても楽しかったです!」

 

「俺も楽しかったよ。またいつでも来いよ」

 

「はい! それでは!」

 

 

 

 菜々はウキウキとした笑みを浮かべたまま俺の部屋を出ていく。1人残された静かな部屋を見渡し、俺は思いきり体を伸ばして呟いた。

 

 

「風呂入って飯食って寝るかぁ」

 

 

 なーんか忘れてる気がするけど、まぁいいや。なんくるないさー。

 

 今日も楽しい1日だった。明日はもっと楽しくなるよね? ハム太郎。へけっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

「という訳で見事補習が確定した」

 

「せつ菜先輩…?」

 

「……ほんっとうに面目ないです」

 

 

 勉強をしなかった俺は見事に赤点を取り、しばらくの間放課後は補習に参加することが確定した。

 

 事の顛末を聞いたカッスがせつ菜に対してマジかコイツみたいな視線を向けると、せつ菜は恥ずかしそうに顔を赤くして頭を抱える。

 

 

「先輩、補習はいつからなんですか?」

 

「おぅ、さっそくこの後行ってくるぞ。って、そうこう言ってるうちに時間が……ほらカッス一緒に行くぞ」

 

「かすみんを勝手に赤点仲間にしないでください!」

 

「違うのか!?」

 

「ふふん! かすみんが赤点なんか取るわけないじゃないですか!」

 

「かすみさん、ギリギリ32点だったよね」

 

「しず子シャラップ」

 

 

 なん……だと……? じゃあ同好会で補習を受けるのは俺だけ……ってコト!?

 

 

 

「カッス、お前変わっちまったな」

 

「なんか、かすみんが悪いみたいな言い方腹立つんでやめてください」

 

「しずくちゃんが教えて32点ってことは、しずくちゃんが教えてなかったら赤点だったかもねぇ」

 

「しずくちゃん偉い偉い」

 

「え、エマ先輩…!? あ、あの頭を撫でられると恥ずかしいです……」

 

「偉いのはかすみんもですぅ〜! エマ先輩、かすみんも撫でてください!」

 

 

 

「……しずくさんはしっかりと役目を果たしたというのに、ソレに比べて私は…! 私は…! 零士さんが赤点を取ったのは私の責任と言っても過言ではないです…!」クッ

 

「過言過言」

 

 

 落ち込むせつ菜を彼方先輩がヨシヨシしている。そしてエマ先輩は1年2人組をヨシヨシしている。

 

 ……俺もヨシヨシされたい。

 

 

 

「じゃあ俺そろそろ行きますね。ぱっぱと終わらせてくるんで寂しがらないでくださいね」

 

「かすみんは寂しくなんかないで〜す」

 

「ガキが……」

 

「私は寂しいかなぁ。やっぱり皆揃って同好会だからね。だから零士くん、早く帰ってきてね」

 

「エマ先輩is god」

 

 

 大天使エマエルの言葉を胸に抱き、俺は補習生徒の集まる教室へと向かう。今回の補習では学年を問わず赤点を取った生徒が集う。

 そして自習とテストを繰り返し、見事80点以上を取った生徒から補習が終了するという形式なのだ。逆に言えば80点を取るまでは毎日放課後に補習に参加しなければならない。

 

 

 

「まぁ俺レベルになると1回で終わっちゃうけどな」

 

 

 補習用の教室で椅子に座って教室を待つ。既に教室内には強者どもが揃っており、それぞれが教科書にしがみ付いて自習を開始している。

 

 

 

「ここ、いいかしら?」

 

「ん? あ、はいどうぞ…………」

 

 

 声をかけられて相手の顔を見る。するとそこには、エマ先輩や彼方先輩と同じく、緑色のリボンを胸に結んだ3人目の女神が立っていた。

 

 

 うほっ…♀いい女!

 

 






 歩夢と侑とせっつーとの過去の話もそのうち書きます


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