虹ヶ咲学園の恥晒し   作:種子島

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人は見かけで判断するな

 

「ここ、いいかしら?」

 

 

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ! テストで赤点を取って補習に参加した俺の隣にセクシーなお姉さんが座ってきたんだ!

 

 な、なんちゅうエロさだ……えっち力が高すぎてスカウターが暴発するレベルだぞ。

 

 

「アッハイ」

 

「ふふ、ありがとう」

 

 

 セクシー姉さんは俺の隣の席に腰をかけると、憂いを帯びた表情でため息をひとつ吐いた。

 

 ふつくしい……

 

 

 すると流石にガン見しすぎたのか、セクシーお姉さんは困ったように眉を下げて小さく笑った。

 

 

「そんなに熱い視線を送られると困っちゃうわ」

 

「すみません、あまりにも綺麗だったんでこれはもう見ない方が失礼かと」

 

「あら、随分と情熱的な口説き文句ね」

 

 

 お姉さんは揶揄うようにクスリと笑う。その余裕綽々といった態度からは大人の色香が漂っている。

 

 

「まぁ、私は仕事柄人に見られることには慣れてるから構わないけどね」

 

「人に見られる仕事……グラビアアイドルとかですか!?!?」

 

「す、凄い食い付きね。一応モデルをやってるのよ」

 

「も、モデル!?」

 

 

 セクシーお姉さんかと思いきやまさかのモデルのお姉さんだった。いやまぁ、このスタイルだったらそりゃモデルの一つや二つ軽くこなすだろうけれど。

 

 

「失礼ですが、お名前をお聞かせいただいても?」

 

朝香(あさか)果林(かりん)、ライフデザイン学科の3年生よ」

 

 

 やはり3年生か、まぁこの大人びた雰囲気でなんとなく分かってはいたけど。つかリボンの色がウチの女神2人と同じ色だし。

 

 

「ん? つーか、ライデザ科の3年ってことは彼方先輩と同じか」

 

「えぇ、一応知った仲ではあるわ」

 

「えーっと……朝香果林、朝香果林っと……うぉ、マジで出てきた」

 

 

 俺は手に持ったスマホに朝香果林と入力して検索をした。すると端末の画面には何かお洒落な服を着て何かお洒落な場所で何かお洒落なポーズを取っている果林先輩の写真が出てきた。

 

 

「マジのモデルや……」

 

「嘘なんかつかないわよ」

 

「…………」

 

 

 

 『朝香果林 水着』

 

 

「何を検索してるのかしら」

 

「うぉっ!?」

 

「悪いけど、今のところ水着の撮影なんかはしてないわよ」

 

 

 ほぼノータイムで検索をかけた俺の端末を、隣にいる果林先輩がジト目を向けながら覗き込んでいた。

 

 つか水着写真ないのかよ…! どうしてだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 

 

「……エマから聞いてはいたけれど、噂通り本当に本能のままに動いてるのね」

 

「え、エマ先輩が俺のことを!? 何て言ってました!? 頼れる素敵な後輩ができて毎日胸がポカポカするの……とか!?」

 

「残念ながら。単に面白い後輩の男の子がいるってだけよ」

 

「……それ、脈アリだと思いますか?」

 

「知らないわよ」

 

 

 ぐぉぉぉぉぉ!!! 流石にかっこいい後輩ができたとは言ってなかったか…! いやでも面白い後輩ってのもそれなりに好感度高いのでは…!?

 

 

「……ん? てか噂ってのは?」

 

「あら、あなた有名人じゃない。ほら、虹ヶ咲の……」

 

「イケメン王子?」

 

「初めて聞いたわよそんなの」

 

 

 これマジ? 俺の中ではすっかり定着してる呼び名だったんだが。

 

 

「あ、すみません。自己紹介してもらったのに名前も告げないで……名前は松本零士、普通科の2年でスクールアイドル同好会のマネやってます。ちなみに果林さんみたいな素敵な年上の女性の彼女募集中です」

 

「あら、本当に口説かちゃったわ」

 

「どうです?」

 

「んー、まだお互いのことを何も知らないでしょう? 私たち。保留ってことにしておこうかしら」

 

「え、脈アリ?」

 

「ふふっ、エマから聞いてた通り面白い子ね貴方」

 

 

 果林さんはくすりと笑う。

 

 この余裕たっぷりな態度であしらわれる感じ、実に年上のお姉さんって感じでSo Goodだ。やっぱり年上のお姉さんは最高だぜ…!

 

 

「おーい、じゃあ今日の補習始めるぞ〜」

 

 

 補習担当の教師の声が教室に響く。それと同時に周りの強者たちも開いている教科書などをバッグにしまい始めた。

 

 

「じゃあお互い頑張りましょう。松本零士くん」

 

 

 果林さんはそう言ってウインクをした。こんなの全男子生徒が好きになっちゃうやつぢゃん……

 

 かっこ悪いとこを見せたくないし、ここは一発で補習に合格してやるぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 手応え無しッ!

 

 

 全然分かんなかったぜ。こりゃ明日も補習確定、なんならもうしばらくは同好会に行けないことも確定したようなもんだぜ。

 

 

「もうダメだ…おしまいだ……」

 

「あら、浮かない顔ね」

 

「そりゃそうですよ。明日も補習確定ですもん」

 

「ダメよ? ちゃんと勉強しないと」

 

 

 そう言ってクスリと笑う果林さんからは余裕が感じられる。恐らく手応えがあったのだろう。

 

 果林さん、いかにもできる女って感じだし、補習に出ることになったのだってきっとモデルの仕事が関係しているんだろう。

 

 

「はぁ」

 

「そんなに落ち込むことないわよ。ちゃんと勉強すればすぐ補習も抜け出せるわ」

 

「いや、補習のこともそうなんですけど、果林さんと明日はもう会えないことの方が残念です」

 

「……もしかして本気で口説いてる?」

 

「俺は最初から本気でしたよ」

 

 

 そう言うと果林さんは口元に手を当て、クスクスと声を出して笑う。

 

 

「ごめんなさい、補習中に本気で女の子を口説いてるっていうのが何か可笑しくて」クスクス

 

「果林さんみたいないい女は口説かない方が失礼っすよ」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

 

 お礼を述べた果林さんは椅子から立ち上がりバッグを手に取った。ふわりと揺れる髪から甘い香水のような匂いがして鼻をくすぐる。

 

 

「じゃあ次はこんな場所じゃないとこで会いましょう。虹ヶ咲のイケメン王子くん」

 

 

 男を魅了する蠱惑的な笑みを浮かべる果林さんはヒラヒラと手を振って教室を後にした。

 

 

 

「スゥ---」

 

 

 

 ……………たまらん。

 

 なんだあの思わせぶりな態度と仕草と色気。存在そのものがエロだろ。ぜっっったいに男子生徒を勘違いさせまくってる悪い女だぜ。まさしく童貞キラーだ。

 

 

「……キラーされてぇなぁ」(切実)

 

 

 朝香果林さんか、まさに理想の年上女性。次会えるのがいつになるのか分からないけど、その時を楽しみにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

「あ」

 

「あっ」

 

 

 翌日、補習の教室に向かうと、普通に昨日と同じ席にその人は座っていた。そして俺と目が合うと気まずそうに目を逸らす。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……果林さんもダメだったんすね」

 

「……えぇ」

 

 

 

 えっ、気まず。

 

 果林さんもそう思っているのか、昨日までのミステリアスな雰囲気は何処へやら。恥ずかしいのかさっきから薄っすらと耳が赤い。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……次はこんな場所じゃないとこで会いましょう」ボソッ

 

「〜〜〜〜っっ!!!」

 

 

 つい揶揄いたい欲が出て、昨日の果林さんの決め台詞を呟くと、隣の果林さんは椅子に座りながらプルプルと身悶えした。

 

 

「だ、誰にも言わないで頂戴」

 

「昨日果林さんが去り際に凄いかっこいい台詞を言ったのに、2人とも補習継続でまたすぐに再会してしまったことをですか?」

 

「あ、貴方……いい性格してるわね」

 

 

 ヒクヒクと引き攣った笑みを浮かべる果林さんは今すぐにでも羞恥で爆発してしまいそうだ。

 

 何だろう、昨日は完全無敵なクールビューティーガールに見えていたか、もしかしてこの人はかなり弄り甲斐があるのでは…?

 

 

「ふっ、ギャップってヤツですね」

 

「いらないわよこんなギャップ。私のイメージが崩れるわ」

 

「ははっ、果林さんまだまだ人にバレてないだけで実は……ってヤツありそうですよね。実は朝起きられないとか」

 

「……」

 

「え、図星?」

 

「……お願いだから誰にも言わないで頂戴ね」

 

 

 わーお、掘れば掘るほど面白い事実が出てくるじゃあーりませんか。でも朝弱い果林さん普通に可愛いと思う。(小並感)

 

 

「じゃあ今日こそ2人で補習から抜け出せるように頑張りましょう」

 

「えぇ、言われなくてもそのつもりよ」

 

「……そして次はこんな場所じゃないどこかで」

 

「それはやめなさい〜っ!」

 

 

 顔を真っ赤にして俺の頬をつねる果林さん。あはは、役得役得。

 

 

 

 

 

 

 

 

……………

 

〜補習3日目〜

 

 

「あっ」

 

「……そんな見ては行けないモノを見たような目しないで頂戴」

 

 

 

…………

 

 

〜補習4日目〜

 

 

「いやぁ、人数もずいぶん減りましたね」

 

「というか、もう私たちだけじゃない」

 

「2人きりですね」

 

「これほどムードの欠片もない2人きりは初めてよ」

 

 

 

 

 

…………

 

 

〜補習5日目〜

 

 

「果林さん」

 

「何よ」

 

「もしかして果林さんってポンコツ属性持ちなんですか?」

 

「……断じて認めないわ」

 

 

 既に補習残り組も俺と果林さんだけになった。流石にそろそろ80点以上を取って、この地獄から抜け出さないと無限ループに陥ってしまう。

 

 

「はぁ、同好会が恋しいぜ」

 

「そういえば、昨日同好会のメンバーの子が近くでライブしたらしいわね」

 

「あぁ、せつ菜のことっすよソレ。ダイバーシティの大階段を使ってライブするからって連絡来たんですけど、補習あるから見に行けなくて」

 

「罪な男ね」

 

「俺が見てなくても別に平気っすよアイツは」

 

 

 とはいえ、せつ菜のステージを見てみたかったかと聞かれれば答えはYesだ。最近は補習続きで同好会に顔を出せていないとはいえ、一応は俺も同好会のメンバーな訳で、仲間の行うライブがどんなステージになるのかは気になる。

 

 

「しゃーない、コイツを使うのはせつ菜に禁じられてるけど、そろそろ合格しないとマズいしな」

 

「あなた、まさかカンニングペーパーを…?」

 

「そんな事しませんよ。俺が使うのはコイツです」

 

 

 俺は筆箱からなんてことない古びた鉛筆を一本取り出す。果林さんはソレを怪訝な表情で見つめていた。

 

 

「これこそ! 今まで何度も俺を救ってきてくれた『直感くん』だ!」

 

「ただの鉛筆じゃない」

 

「ふっ、甘くみてもらっちゃ困りますぜ果林の姉御」

 

「誰が姉御よ」

 

 

 コイツは何か変な力が憑いてるのかってくらい当たるもんで、中学の頃は小テストなんかは全部コイツで乗り切ってたら菜々の奴に『自分の力で解かないと自分のためになりません!』って言われ、ソレ以来封印していたという過去を持つ代物だ。

 

 

「ふっ、使ったことがバレたら怒られるけど、バレなきゃ問題ない!」

 

「……」

 

「すみませんね果林さん、今日で俺は一抜けさせてもらいますよ」

 

「……ねぇ」

 

「はい?」

 

「そんなに当たるの? その……鉛筆」チラチラ

 

 

 かりんさんがこちらをちらちらみている。

 

 

「へぇ〜」ニチャァ

 

「その悪い顔やめなさい」

 

「もしかして使いたいんですか?」

 

「い、いや……別に、信じてなんかないけど……そんなに凄いのかしらって……ちょっと、気になるだけで」

 

 

 果林さんにしては歯切れが悪い。それにチラチラ直感くんを見ているのもバレバレだ。

 

 

「果林さん、素直になりやしょうや」

 

「うっ」

 

「本当は欲しくて欲しくて堪らないんでしょう? 俺の()()が」

 

「べ、別に……貴方の……なんて…っ」

 

「正直になればあげますよ? ちゃんと口に出してイッてください。俺のコレが欲しいって」

 

「あ、貴方の……」

 

「ほらほら!」

 

「欲しいの……!」

 

「何が!」

 

 

 

「あ、貴方の(鉛筆) がっ…! 欲しいの…! お願いよっ…!」

 

 

 言えたじゃねぇか……

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

「まさか本当に合格しちゃうなんてね」

 

「果林さんに貸した直感くん2号はオリジナルに比べれば正答率は下がりますが、それでもあのくらい朝飯前ですよ」

 

「……何か恥ずかしいことを言わされた気もするけど」

 

「可愛かったですよ」

 

「……忘れなさい」

 

「すみません、もう俺の脳内フォルダの奥の奥に保存しちゃったんで」

 

「なら仕方ないわね……」

 

「そうそう」

 

本体(あたま)を破壊するしか……」

 

「怖い怖い! てかそのハンマーどこから取り出したんすか!」

 

 

 完全に人を殺める覚悟を決めた顔をしてる果林さんを何とか宥め、2人並んで廊下を歩く。

 

 

「まぁでも、あなたの鉛筆に助けてもらったのは事実だし……何かお礼しなくちゃね」

 

「えっちなお礼ですか!?」

 

「あなた段々と私に対して遠慮がなくなってきたわね」

 

「それはお互い様ですよ」

 

 

 一つ息を吐いた果林さんは少し乱れた髪を指で撫でる。そんな何気ない姿ですら画になる時点でやっぱり綺麗な人なんだなと自覚させられる。

 

 そしてそんな綺麗な人からえっちなセリフが聞けたと思うと興奮してくる。

 

 

「……そうね、何か一つだけお願いを聞くというのはどうかしら?」

 

「ん? 今何でもするって」

 

「何でもではないわ。そのお願いを聞いて叶えてあげられそうなものならよ」

 

「例えば、おっぱい揉ませて欲しいとかはどうなるんですか!?」

 

「ダメに決まってるじゃない」

 

「どおしてだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」(血涙)

 

「むしろ何でいいと思ったのよ」

 

 

 そら果林さんみたいな人にそんな事言われたら、男なら誰だってえっちなお礼を期待するもんじゃろがい!!

 

 

「で、お願いはどうするの?」

 

「……エロいお願いがダメとなると、いまいまは思いつかんので保留でいいすか?」

 

「もぅ、仕方ないわねぇ」

 

 

 兎にも角にも、これでようやく無限補習編は突破した訳だ。久しぶりに同好会に顔出してエマ先輩と彼方先輩に癒してもらうとしよう。

 

 

「そんじゃあ俺は部室棟行くんで」

 

「えぇ、今日はありがとうね」

 

「その分こっちとしては良い思いさせてもらうんで気にしないでくださいよグヘヘ」

 

「だから、そういうお願いは無しって言ってるでしょう? もぅ」

 

 

 俺は困ったように微笑む果林さんに手を振って別れを告げる。そして早足で部室棟へと向かい、皆が待っているであろう同好会の部室へと辿り着いたのだが……

 

 

 

 

 

『ワンダーフォーゲル部』

 

 

「WHY…?」

 

 

 

 我がスクールアイドル同好会は、俺のいない数日間の間にワンダーフォーゲル部に変貌を遂げていたのでした。ちゃんちゃん。

 

 

 

 

 意☆味☆不☆明だぜ!!

 

 

 





 果林さんは困った顔が可愛いと思いまそ

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