新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
「……ん」
『あなた』がソファに座ってテレビを眺めていると、隣にいたツイッギーがそっと口元を近づけてきました。
『あなた』はツイッギーの頬に手を添え、そのまま唇を重ねます。
「んっ……。違う、そうじゃないわ」
どうやら、違ったようです。
ツイッギーは、『あなた』の手に握られていたハンバーガーを指差しました。彼女が求めていたのは、『あなた』のキスではなく、『あなた』が食べていたハンバーガーだったようです。
『あなた』がハンバーガーを差し出すと、ツイッギーは満足そうにそれを食べ始めました。
『あなた』とツイッギーの出会いは、まったくの偶然でした。
ツイッギーは、とある実験によって手足を失いました。そして欠陥品として、ゴミ捨て場に放棄されていたのです。
動きたくても動けない。
ただ死を待つだけの、ガラクタ人形だったのです。
そんな彼女のもとを、偶然通りかかったのが『あなた』です。
同情だったのか、それとも偽善だったのか。病院へ連れて行く途中、『あなた』の背中で「アンビー隊長……」と呟くツイッギーの声を聞き、『あなた』は彼女を助けたいと思いました。
『あなた』は、持っていたすべての財産をツイッギーのために費やしました。その結果、ツイッギーは失った手足を取り戻し、人として生きていけるようになったのです。
その代償として、『あなた』は住む場所を失い、金もなく、薄暗い路地裏の片隅でひっそりと生きることになりました。
そんな『あなた』を救ったのがツイッギーでした。
『あなた』のおかげで救われたツイッギーと、ツイッギーのおかげで救われた『あなた』。偶然が生んだ奇妙な運命が、二人を強く結びつけているのです。
「明日、予定を空けておきなさい。一緒に映画を観に行くわよ」
ツイッギーの突然の命令にも、『あなた』は嫌な顔ひとつ見せずにうなずきました。『あなた』は無職で、ツイッギーに養われているヒモニートです。明日どころか、毎日予定などありませんでした。
「デートの後は海へ行きましょう。誰にも邪魔されない、二人きりになれる場所へ、ね」
しかしこの提案には、『あなた』は少し渋い表情を浮かべました。水着を持っていなかったからです。するとツイッギーは、『あなた』の考えを見透かしたかのように、くすりと笑いました。
「大丈夫よ。海には入らないから」
そう言ってから、ツイッギーは澱んだ瞳で『あなた』を見つめ、問いかけました。
「ねぇ、もし私が、海に溶けて消えてしまいたいと言ったら……『あなた』は、ついてきてくれる?」
『あなた』は、ツイッギーの過去をすべて知っているわけではありません。けれど、迷うことなくうなずきました。
ツイッギーと一緒なら、どこへでもついていく。
たとえそれが、地獄であっても。
その答えを聞いた瞬間、ツイッギーは狂気を孕んだ笑みを浮かべ、『あなた』の頬に手を添えました。
「えぇ……えぇ!! やっぱり『あなた』は私の運命の人!! 絶対に離れたりはしないわ……離してやるものですか……!! あはっ、あはははははははははははははははははははははははははっっっ!!!!」
彼女は、歪んでいました。
人を、世界を、全てを憎んでいるのです。
しかし、ツイッギーはいつから歪んでしまったのでしょうか。
製造された時でしょうか。
欠陥品として捨てられた時でしょうか。
それとも、『あなた』に救われた時でしょうか。
そもそも、ツイッギーは本当に歪んでいるのでしょうか。
もしかしたら、本当に歪んでいるのは———
「愛してるわ、『あなた』♡」
美しい黒いバラが、満開に咲き誇ります。
『あなた』はそのバラを、誰にも触れさせないように、
おっかしいな〜。
ツイッギーとの退廃的な生活を描いて、「
不思議だね(白目)
【定期】
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