新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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ツイッギー ①

 

 

「……ん」

 

 

 『あなた』がソファに座ってテレビを眺めていると、隣にいたツイッギーがそっと口元を近づけてきました。

 

 『あなた』はツイッギーの頬に手を添え、そのまま唇を重ねます。

 

 

「んっ……。違う、そうじゃないわ」

 

 

 どうやら、違ったようです。

 

 ツイッギーは、『あなた』の手に握られていたハンバーガーを指差しました。彼女が求めていたのは、『あなた』のキスではなく、『あなた』が食べていたハンバーガーだったようです。

 

 『あなた』がハンバーガーを差し出すと、ツイッギーは満足そうにそれを食べ始めました。

 

 『あなた』とツイッギーの出会いは、まったくの偶然でした。

 

 ツイッギーは、とある実験によって手足を失いました。そして欠陥品として、ゴミ捨て場に放棄されていたのです。

 

 動きたくても動けない。

 ただ死を待つだけの、ガラクタ人形だったのです。

 

 そんな彼女のもとを、偶然通りかかったのが『あなた』です。

 同情だったのか、それとも偽善だったのか。病院へ連れて行く途中、『あなた』の背中で「アンビー隊長……」と呟くツイッギーの声を聞き、『あなた』は彼女を助けたいと思いました。

 

 『あなた』は、持っていたすべての財産をツイッギーのために費やしました。その結果、ツイッギーは失った手足を取り戻し、人として生きていけるようになったのです。

 

 その代償として、『あなた』は住む場所を失い、金もなく、薄暗い路地裏の片隅でひっそりと生きることになりました。

 

 そんな『あなた』を救ったのがツイッギーでした。

 『あなた』のおかげで救われたツイッギーと、ツイッギーのおかげで救われた『あなた』。偶然が生んだ奇妙な運命が、二人を強く結びつけているのです。

 

 

「明日、予定を空けておきなさい。一緒に映画を観に行くわよ」

 

 

 ツイッギーの突然の命令にも、『あなた』は嫌な顔ひとつ見せずにうなずきました。『あなた』は無職で、ツイッギーに養われているヒモニートです。明日どころか、毎日予定などありませんでした。

 

 

「デートの後は海へ行きましょう。誰にも邪魔されない、二人きりになれる場所へ、ね」

 

 

 しかしこの提案には、『あなた』は少し渋い表情を浮かべました。水着を持っていなかったからです。するとツイッギーは、『あなた』の考えを見透かしたかのように、くすりと笑いました。

 

 

「大丈夫よ。海には入らないから」

 

 

 そう言ってから、ツイッギーは澱んだ瞳で『あなた』を見つめ、問いかけました。

 

 

「ねぇ、もし私が、海に溶けて消えてしまいたいと言ったら……『あなた』は、ついてきてくれる?」

 

 

 『あなた』は、ツイッギーの過去をすべて知っているわけではありません。けれど、迷うことなくうなずきました。

 

 ツイッギーと一緒なら、どこへでもついていく。

 たとえそれが、地獄であっても。

 

 その答えを聞いた瞬間、ツイッギーは狂気を孕んだ笑みを浮かべ、『あなた』の頬に手を添えました。

 

 

「えぇ……えぇ!! やっぱり『あなた』は私の運命の人!! 絶対に離れたりはしないわ……離してやるものですか……!! あはっ、あはははははははははははははははははははははははははっっっ!!!!」

 

 

 彼女は、歪んでいました。

 人を、世界を、全てを憎んでいるのです。

 

 しかし、ツイッギーはいつから歪んでしまったのでしょうか。

 

 製造された時でしょうか。

 欠陥品として捨てられた時でしょうか。

 それとも、『あなた』に救われた時でしょうか。

 

 そもそも、ツイッギーは本当に歪んでいるのでしょうか。

 

 もしかしたら、本当に歪んでいるのは———

 

 

「愛してるわ、『あなた』♡」

 

 

 美しい黒いバラが、満開に咲き誇ります。

 

『あなた』はそのバラを、誰にも触れさせないように、()()()()()()()()()、強く抱きしめるのでした。

 

 

 





おっかしいな〜。
ツイッギーとの退廃的な生活を描いて、「エッチ(退廃ックス)なことしたんですね!?」って感想を貰おうと思ってたのに、気がついたらヤンデレになってて、最終的にホラー(?)になっちまっただ……
不思議だね(白目)


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