新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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ジンベエ「思いつかないのに無理やりネタを考えるな!! 無いものは無い!! 確認せい!! お前にまだ、残っておるものは何じゃ!!」


ワシ「———(ネタや性癖を共有してくれる)仲間がい゛る゛よ゛!!!!」


ということがあったので、リクエストにあったリンちゃんのお話です。



リン ①

 

三人がけのソファに腰を下ろし、『あなた』はブラウン管テレビに映し出される恋愛映画を眺めています。少し古めかしい映像と、どこか気恥ずかしくなるような甘い雰囲気が部屋を満たしていました。

 そのすぐ隣には、肩と肩をぴったりとくっつけながら画面を見つめているリンの姿があります。

 

 少し近すぎる気がして、『あなた』は無意識のうちに身体を引いてしまいます。しかし、その動きに合わせるかのように、リンは自然な仕草でさらに『あなた』へと身を寄せてきました。

 

 まるで主人に甘える猫のようだと思いながらも、ふわりと漂うリンの柔らかな香りに胸が高鳴り、『あなた』は誤魔化すように再び映画へと視線を戻します。

 

 テレビの中では、立ち去ろうとする男性の手を女性が掴み、顔を真っ赤にしながら想いを打ち明ける場面が流れていました。

 いかにも青春らしい一幕だと感じながら眺めていると、突然リンが『あなた』の手を握ってきました。

 

 何が起きたのか分からず、思わずリンの方を見る『あなた』ですが、彼女はいたずらが成功した子どものような、得意げな笑みを浮かべてこちらを見つめています。

 そして、『あなた』の手をにぎにぎと確かめるように握りしめながら、リンは言葉を紡ぎました。

 

 

「うーん……映画の女の子はすっごくドキドキしてるけど、私にはよく分かんないな〜」

 

 

 どうやら、映画の中の少女の気持ちを知るために、『あなた』の手を握ってみたようでした。

 このような行動を、何の前触れもなく取るものですから、『あなた』の胸の高鳴りはいつまで経っても収まりません。

 

 それでも、リンの周りには素敵な男性がたくさんいることを、『あなた』は知っています。

 きっといつか、その中の誰かと恋に落ち、幸せな人生を歩んでいくのだろう。そう考えると、胸の奥が少しだけ重くなるのでした。

 

 ですが、それまではせめて、この何気ないひとときを大切にしたい。

 そう心に決め、『あなた』はリンの体温を隣に感じながら、静かにこの時間を噛みしめるのでした。

 

 

「あはっ、やっぱ『あなた』の手はおっきいね!」

 

 

 やめてくれ、リン。

 その笑顔はオレに効く。

 やめてくれ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「えっへへ〜! 今人気のビデオ、たくさん手に入れちゃった!」

 

 

 リンは、ダンボールいっぱいに詰めたビデオを抱えながら、六分街の通りを軽やかに歩いていた。

 

 

「彼と一緒に観るの、楽しみだなぁ〜!」

 

 

 リンが手に入れたビデオは、Random Playで貸し出すためのものでもあるが、本当の目的は『あなた』と一緒に観ることにあった。

 どれから観ようかと考えるだけで、自然と頬が緩む。

 

 上機嫌なままRandom Playの扉へ手を伸ばした、その時だった。

 

 不意に、背後から『あなた』の声が聞こえてくる。

 その声に気づいたリンは、勢いよく振り返った。

 

 

「見てみてこのビデオたち! 今人気の———って、あれ?」

 

 

 視界に入ったのは、CDショップの店長・エイファと楽しそうに会話を交わす『あなた』の姿だった。

 

 

「エイファさんと……何を話してるんだろう。なんだか、とっても楽しそう……」

 

 

 笑顔で話す『あなた』を見た瞬間、リンの胸にチクリとした痛みが走る。

 

 

「あれ……? 何だろう、これ……」

 

 

 その痛みは一瞬で消えた。

 だが、今まで感じたことのない違和感に、リンは無意識のうちに胸元を押さえていた。

 

 やがてエイファとの会話を終えた『あなた』は、そのまま歩き出す。

 

 声をかけようとしたが、『あなた』の普段の生活をほとんど知らないリンは、なぜかその背中を追いかけることを選んだ。

 

 

「新しいゲーム入ってきてんけど、よかったらやっていかへん? うちが横で教えたげるさかい、心配せんでええよ」

 

 

「あっ、待ってたよお客さん! お客さんが楽しみにしてたコレ、とってあるよ!」

 

 

「い、いいいいらっしゃい……あっ、『あなた』でしたか……。よ、よかったらコレ、買っていきませんか……?」

 

 

 アシャ、スージー、ココ。

 リンの知らないところで、『あなた』は多くの人物と関わっていた。

 しかも、そのほとんどが女性だった。

 

 彼女たちと親しげに話す『あなた』の姿を物陰から見つめながら、リンは胸の奥がじわじわと痛むのを感じていた。

 

 

「なに……なんなの、この痛み……? 彼が女の人と話してると、すっごく胸が苦しい……」

 

 

 ズキリ、ズキリと脈打つような痛みに耐えきれず、リンはその場にしゃがみ込む。

 

 

「い、いえ、私は仕事中ですから、これを貰うわけには……」

 

 

 困ったような朱鳶の声が聞こえた。

 ゆっくり顔を上げると、『あなた』が朱鳶に差し入れをしている光景が目に入る。

 

 

「良いではないか、朱鳶。我はありがたくいただくとしよう」

 

 

「せ、先輩! 本当にもう……。え? 遠慮しなくて良い? この前のお礼? ……はぁ、分かりました。せっかく『あなた』が用意してくれたんですから、私もありがたくいただきますね」

 

 

「朱鳶さんに、青衣さん……? なんで彼を知ってるの……? それに、この前のお礼って……?」

 

 

 再び、胸がズキリと痛む。

 

 

「何……何なの、これ……!!」

 

 

 『あなた』が女性と話しているのを見ると。

 『あなた』が、自分の知らない場所で楽しそうにしている姿を見ると。

 

 胸が、張り裂けそうになる。

 

 

「……っ!!」

 

 

 リンは耐えきれなくなり、その場から逃げ出してしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、何故お主はそうグズグズしておるのだ。さっさと店長殿に告白をすれば良いものを」

 

 

「そう簡単にいくものではないんですよ、先輩」

 

 

「だが、誰の目から見ても店長殿はお主に惚れておるではないか」

 

 

「そ、それは……まぁ……」

 

 

「お主も男なら、ドンと胸を張って告白してくるが良い。もう覚悟はできておるのだろう? 良い報告を期待しておるぞ」

 

 

「そうですね……。いいですか? リンちゃんはとっても良い子なんですから、傷つけたら私が逮捕しますからね?」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 今日は珍しく、『あなた』の家で一緒にビデオを見ることになりました。

 

 リンから家に行きたいと言われた時は、思わず胸が高鳴りましたが、これは良い機会だと前向きに捉えることにしました。

 

 知り合いの女性の友人たちからさまざまなアドバイスをもらい、いわゆる「ムード」というものについても勉強しました。

 そして、ついにその成果を発揮する日が来たのです。

 

 部屋の隅々まで掃除をし、ディフューザーを設置し、ささやかなプレゼントまで用意しました。

 準備は万全でした。

 

 すると、玄関のチャイムが鳴ります。

 おそらくリンでしょう。

 

 『あなた』は少し早足で玄関へ向かい、リンを部屋に招き入れました。

 俯きがちで、どこか様子のおかしいリンにわずかな違和感を覚えながらも、椅子に座るよう促します。

 そして、『あなた』自身はベッドに腰掛け、今日はどのビデオを見るのかを尋ねようとしました。

 

 

「この匂い……」

 

 

 ディフューザーの香りに気づいたリンが、ぽつりと呟きました。

 この香りは、確かリンが好きだと言っていたものです。

 それに気づいてくれたことが嬉しくなり、『あなた』は少し浮き足立ちながら、これを選んだ日のことを話し始めました。

 

 

「へぇ……朱鳶さんと一緒に……」

 

 

 楽しそうに話す『あなた』とは対照的に、リンは相変わらず俯いたままでした。

 

 その次の瞬間、視界がぐるりと回転し、白い天井が目に飛び込んできます。

 ドサリと軽い衝撃が腹の上に伝わり、気がつくと『あなた』の視界いっぱいにリンの顔がありました。

 

 

「ねぇ……今は、他の女の人の話をしないで……」

 

 

 まずい、と『あなた』は慌てて言葉を訂正しようとします。

 しかし、声を発するより早く、唇が塞がれてしまいました。

 

 

「んっ……」

 

 

 あまりに突然の出来事に、頭の中が真っ白になります。

 

 

「私、『あなた』のことが好き……誰にも負けないくらい、大好きなの……」

 

「朱鳶さんに取られたくない……他の人に『あなた』を取られたくない……」

 

「だから……『あなた』を取られる前に……」

 

 

 リンの声は震えていましたが、その瞳には強い意志が宿っていました。

 

 

 

 

 

「『あなた』を、私のものにするね……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ!? 私の勘違い!?」

 

「た、確かにこの匂いは私の好きな匂いだし、部屋の雰囲気も私好みだけど……」

 

「う……うううぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

「穴があったら入りたいよぉぉぉぉ!!」

 

「穴じゃないけど、布団に篭ってる……? い、良いじゃん別にっ!!」

 

 

 しばらくして、リンは布団から顔だけを出しました。

 

 

「……え? 何これ。私にプレゼント?」

 

 

 差し出されたそれを見つめ、言葉を失います。

 

 

「………っ!!」

 

「———ありがとう。絶対、大切にするね」

 

 

 そう言って、リンは少し照れたように微笑みました。

 

 

「それと……」

 

 

 ほんの少しだけ距離を詰めて、囁くように言います。

 

 

 

「これからも、よろしくね♡」

 







【定期】

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