新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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「『愛』とか『責任』とか…回りくどいのはやめやめ!好きなものにはガブっと噛みついて、もう離さない。それでいいじゃんね」

シーシィアまじ?? 
ドブカスギャルのくせして独占欲強めなんすか????
ほーん……今日バレンタインだし、そういう話でも書くかな。





シーシィア ①

 

 

「……時に、最近の若者の流行はなんだ?」

 

 

 上司であるセヴェリアンに資料を渡した『あなた』は、不意にそう問いかけられました。唐突な話題に一瞬戸惑いましたが、その意図はすぐに察しがつきました。

 

 パッと思い浮かんだのは、ニュースタンドの看板犬ウーフや、ボンプ型キーホルダー、ファンタジィリゾートの新作アトラクションなどでした。

 

いずれも最近よく耳にするものです。しかし、それらはどうにもセヴェリアンの求めている答えとは違う気がいたします。

 

 何と答えるべきか迷った末、先日、同僚のセスと共に訪れたリチャード・ティーミルクのことを思い出しました。

 

 

「リチャード・ティーミルク……治安局の前にあるあの店か……」

 

 

 あの店のミルクティーが評判であること、実際に味も良かったこと、そしてセスも気に入っていたことを簡潔に伝えます。

 

 

「……そうか、ご苦労だった。もう下がって良いぞ」

 

 

 セヴェリアンの表情は相変わらず硬いままでしたが、ほんのわずかに声色が高くなっているのに気がつきます。不器用な人だ、と胸中で小さく思いながら、『あなた』は一礼し、静かに部屋を後にしました。

 

 廊下に出た途端、背後から甘ったるく砕けた声が飛んできます。

 

 

「パイセ〜ン! お疲れっす〜!」

 

 

 次の瞬間、後頭部に柔らかい感触がぶつかりました。さらに、シュロロロ、と白い蛇が舌を舐めずり回しながら、視界の隅に現れました。

 

 

「あのクソ上司と普通に会話できるとかマジぱねぇっすよねパイセン! あーしだったら絶対無理! 顔どころか声聞くだけで鳥肌なんですけど!?」

 

 

 背後で騒ぎ立てるシーシィアを、鬱陶しそうに振り払い、『あなた』はそのまま歩き出します。

 

 

「あ、待ってくださいよパイセ〜ン! 可愛い可愛い後輩の話くらい聞いてくださいよぉ〜!」

 

 

 シーシィアは慌てて駆け寄り、その腕にしがみつきました。深いため息が自然と漏れます。どうせ報告書の件だろう、と察しはついていました。

 

 

「ぴんぽんぴんぽ〜ん! さっすがパイセン! あーしのこと全部理解してくれるじゃないですかぁ〜! あ、もしかしてこれって相思相愛ってヤツ!? キャー♪♪」

 

 

 体をくねらせるシーシィアに小さく舌打ちしながら、さっさと報告書を出すよう促します。

 

 こうして『あなた』は、シーシィアの“お願い”という名の雑務、いえ、尻拭いを日常的に押しつけられていました。当初はきっぱり断っていたものの、彼女はどこ吹く風です。まともに報告書も提出しないため、最終的にシーシィアの先輩である『あなた』に責任を問われてしまいます。ゆえにこれは、彼女のためではなく、自分の身を守るための行動でした。

 

 

「いつもあざま〜っす♪ じゃあコレ、お願いしまーす♪♪ あ、あと、今度のラマニアンホロウの探索なんすけど、あーしその日ちょうど予定が入っちゃって〜……」

 

 

 どうせサロンやエステといった“個人的な予定”だろうと、鋭い視線を向けます。

 

 

「ぎ、ぎくぅ!? だ、だってだってラマニアンってミアズマがうようよしてる激ヤバな場所じゃん!? そんなところにあーしが行くわけないっしょ!!」

 

 

 報告書も書かず、ホロウにも向かわない。では一体何ができるのか、と内心で呆れ混じりの舌打ちをします。しかし当の本人は意に介さず、調子よく言葉を重ねます。

 

 

「だから、あーしの心が読めて、あーしのこと大好きなパイセンが代わりに行ってきてくださいよぉ〜! マジ一生のお願い! 今度ご飯奢るっすから! なんなら家に作りに行きますから! だから、ね?」

 

 

 怒りはやがて静かな呆れへと変わっていきます。面倒くさそうに肩を落としながら、結局その“一生のお願い”を引き受けることになりました。

 

 

「パイセンまじ神っ!! 愛してるっ!!」

 

 

 勢いよく抱きついてきたかと思えば、大量の報告書をどさりと押しつけられます。感謝の言葉など、もはや耳に入っていません。暑苦しさに顔をしかめ、早々に引き剥がしてその場を離れます。

 

 

「じゃあ、パイセン。あとはおなしゃ〜っす!! ご飯の件はあーしに任せておいて!! パイセンの大好物なハンバーグの予定っすから、楽しみにしててよね!!」

 

 

 なぜ好物を知っているのかと、わずかな疑問が胸をよぎります。背後では、ぶんぶんと腕を振りながら見送るシーシィアの姿。深いため息をもう一つ落としながら、『あなた』は大量の報告書を抱え直しました。

 

 異動願いの件をセヴェリアンに改めて切り出すべきか、そんな考えが頭をかすめるのでした。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 病室の前で、シーシィアはひとり立ち尽くしていた。

 

 扉を叩こうと手を持ち上げては、寸前で引っ込める。その動作を、もう二十分近くも繰り返している。ノック一つで現実を直視せねばならないと思うと、どうしても指先に力が入らなかった。

 

 そのとき、不意に病室の扉が内側から開いた。

 セヴェリアン・ローウェルが立っていた。

 

 

「ッ……か、かんさつかん……パ、パイセン……は……?」

 

 

 かすれた声で問いかける。しかし、セヴェリアンは何も答えなかった。

 

 ただ、汚物でも見るかのような冷え切った視線を一瞬だけ向けると、無言のまま通り過ぎていく。その背中は、怒りとも失望ともつかぬ重い空気をまとっていた。

 

 シーシィアは小さく息を呑み、遠ざかっていく背を見送る。

 やがて意を決し、恐る恐る病室の中を覗き込んだ。

 

 視界に飛び込んできたのは、大きなベッド。そしてそこに横たわる身体から無数に伸びる管であった。静まり返った室内で、唯一規則を刻んでいるのは心電図の電子音だけだ。

 

 だが、そのリズムは安定していない。速く、遅く、不規則に跳ね、まるで不協和音のように耳を打つ。震える足を叱咤し、シーシィアは室内へと足を踏み入れた。

 

 ベッドの脇には、花束や見舞い品が山のように積まれている。その量が、そこに横たわる人物がどれほど慕われていたかを雄弁に物語っていた。

 

 

「パイ……セ……ン……?」

 

 

 か細い声が、静寂の中に溶ける。

 

 当然ながら、返事はない。

 返せるはずもない。

 口は厚い包帯によって固く塞がれているのだから。

 

 包帯は口だけではない。

 顔も、腕も、足も。

 ミアズマに侵食された全身が、幾重にも巻かれた白布に覆われている。

 

 ところどころに滲む赤黒い染みが、戦闘の凄惨さを物語っていた。

 

 そして、包帯の隙間から覗く眼球が、ぎょろりと動いた。

 

 

「ッ……」

 

 

 思わず一歩、後ずさる。

 

 そのとき、ベッド脇のモニターが微かな駆動音を立てて起動した。機械から伸びる何本もの細いケーブルが、『あなた』の頭部へと直接接続されている。それは、声を失った『あなた』の思考を読み取り、文字として表示するための装置であった。

 

 ピッ、ピッ、と心電図の音が乱れ始める。

 数値が跳ね上がり、波形が鋭く尖る。

 

 モニターの画面に、ゆっくりと文字が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こ ろ し て』

 

 





バレンタインだからって甘い話を書く訳ないよね。
ドブカスには当然の報いを与えなければと。
ドブカスギャルのシーシィアは絶対に分からせるべきだし、ゼンゼロのキャラで唯一曇らせたいキャラなんですよねすみません嘘言いましたどのキャラも曇らせたいですはい。



【定期】

感想・高評価・お気に入り登録お待ちしております。
モチベーションに繋がります。

また、『あのキャラの話を書いてほしい』『こんなシチュを書いて欲しい』等のリクエストがありましたら活動報告にコメントくれると嬉しいです。


ネタバレになるかもだけど、Ver.2.6の新キャラの話は?

  • 構わん、書け
  • もう少し待て。ネタバレダメ、絶対
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