新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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パイパー最推しです。



パイパー・ウィール ①

 

 郊外の道を走るトラックの助手席に、『あなた』は座っています。舗装の甘い路面を踏むたびに、車体は大きく跳ねました。砂利が跳ね、タイヤの下で乾いた音が弾けます。

 

 普段であれば、それすらも郊外の仕事の醍醐味だと思えたはずでした。しかし、今日の『あなた』には、その揺れを楽しむ余裕などありません。

 

 

「♪〜♪」

 

 

 隣ではパイパーが軽い鼻歌を口ずさみながら、ハンドルを気だるげに握っています。気ままで、どこか掴みどころのない横顔。夕暮れの光が差し込み、その横顔を柔らかく照らしていました。

 

 『あなた』はポケットの中の一枚のチケットを、汗ばむ手で何度も握り直します。

 

 今日一日、渡す機会をうかがっていました。作業の合間、昼休み、帰り支度のとき。しかし結局、どの瞬間も決定打にはならず、気づけば任務は終わっていました。今は二人きりでブレイズウッドへ戻る途中です。

 

 このままでは、また今日も言えないまま終わってしまう。

 

 するとパイパーが「あー、ちょいと休憩だなぁ」と呟き、トラックを路肩に寄せました。エンジン音が静まり、あたりには風の音だけが残ります。

 

 今しかありません。

 

 『あなた』は息を吸い、声をかけようとしました。しかしそれよりも早く、パイパーがこちらを振り向きました。

 

 

「だいじょうぶかぁ? 今日はずっと心ここにあらずって感じだぜい? 何か相談事があるなら遠慮なく言えよなぁ? あたしたち、パートナーなんだからよぅ〜」

 

 

 間延びした声。それでも、そこには確かな気遣いが滲んでいました。

 

 『あなた』とパイパーは仕事仲間です。任務は常に二人一組。背中を預け合い、危険をくぐり抜けてきました。けれど、『あなた』の胸にある想いは、もうそれだけでは収まりません。

 

 仕事上の「パートナー」ではなく、パイパーの隣を歩く存在としての「パートナー」になりたい。その願いを、今日こそは伝えなければなりません。

 

 『あなた』はゆっくりとパイパーに向き直りました。その真剣な様子に、彼女は目を丸くします。

 

 

「お、おぉ? 急にどうしたんだぁ? 本当に悩み事かぁ?」

 

 

 ごくり、と喉が鳴ります。

 震える指先で、ポケットからチケットを取り出しました。少し折れ曲がったそれを、そっと差し出します。

 

 

「なんだぁ? 宝くじかぁ? 宝くじはこの前ひどい目に遭ったからもう見たくは……へ? ファンタジィリゾートのペアチケット?」

 

 

 パイパーは目を瞬かせ、チケットと『あなた』を交互に見比べました。いつもの飄々とした調子が、ほんの少しだけ崩れています。

 

 心臓が、痛いほどに鳴り響きます。

 もう逃げ場はありません。

 

 『あなた』は息を整え、まっすぐに彼女を見つめました。

 

 

“お、俺と一緒に行かないか? その、2人きり……で……”

 

 

 震えながらも、胸に秘めてきた想いを、ひとつ残らず言葉にしました。

 

 沈黙が落ちます。

 

 エンジンを止めたトラックの中は、驚くほど静かでした。遠くで風が吹き、車体がかすかに軋む音だけが耳に届きます。その沈黙は、『あなた』の熱くなっていた頭を、ゆっくりと冷ましていきました。

 

 なんだ、今のは。

 

 脳裏に、つい先ほどの自分の声が蘇ります。声は震えていて、語尾は弱く、最後はほとんど消え入りそうでした。覚悟を決めたはずなのに、堂々とは程遠い告白でした。

 

 情けなさが胸に広がります。男らしさなど、どこにもありません。頼れるパートナーとして隣に立ってきたはずなのに、肝心なところでこれでは様になりません。

 

 顔が熱くなり、視線を落としかけたそのときでした。

 

 

「……ぷっ」

 

 

 小さく、吹き出す音。

 恐る恐る顔を上げると、パイパーが肩を震わせています。けれどそれは、嘲笑ではありませんでした。

 

 

「はは……いやぁ、悪ぃ悪ぃ」

 

 

 口元を押さえながら、目尻にうっすら涙を浮かべています。

 

 

「そんなに震えるほど緊張してたのかぁ?」

 

 

 からかうような口調。

 『あなた』は顔が赤くなるのを感じ、パイパーから目を逸らしました。

 

 

「でもよぅ」

 

 

 パイパーは一歩、距離を詰めます。助手席と運転席のわずかな隙間が、急に近く感じられました。

 

 

「震えててもさぁ、本気なのはちゃんと伝わったぜい」

 

 

 チケットを指でひらひらと揺らしながら、にやりと口角を上げます。

 

 

「いいぜい。たまにはそういうのも悪くないからなぁ……その代わり、“こいつ”のエスコートは任せたからなぁ?」

 

 

 からかうようでいて、ほんのり頬が赤いことに、『あなた』は気づきました。

 

 夕暮れの中、二人きりの休憩時間。

 

 それはきっと、これまでとは少しだけ違う帰り道の始まりでした。

 

 





次回、パイパーとデート編に続く!!
……かも??

現在、アリア、オルペウス&鬼火(リクエスト)、リナ(リクエスト)、ライト(リクエスト+私の癖)の構想を考えています。
上記以外にふと思いついたらそっちを優先するかもしれませんが、しばしお待ちいただければと思います。


【定期】

感想・高評価・お気に入り登録お待ちしております。
モチベーションに繋がります。

また、『あのキャラの話を書いてほしい』『こんなシチュを書いて欲しい』等のリクエストがありましたら活動報告にコメントくれると嬉しいです。

『あなた』に超能力的な力(他作品クロス)を付与するのは?

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