新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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【注意】
この話のバーニスは、本編のバーニスとは異なる性格をしています。
ご注意ください。



バーニス・ホワイト ①

 

 

“疲れた体にこの一杯!! わさびとガソリンとサボテンと粉⭐︎バ⭐︎ナ⭐︎ナを混ぜた特製ドリンクじゃい!! お前らが飲まないなら俺が飲むっ!! いっきまああああああっす!!!!”

 

 

 郊外のバーのカウンターに飛び乗った『あなた』は、両手で掲げたグラスを照明にかざした。緑と紫が不穏に混ざり合い、どろりと濁った液体は、飲み物というよりもはや毒である。それでも躊躇いは一切なかった。

 

 歓声が上がる。酒で赤らんだ顔、無精髭、包帯の巻かれた腕。ここにいる者は皆、ホロウ災害で何かを失った者たちだ。だがその事実を、この瞬間だけは笑い飛ばそうとしている。

 

 『あなた』は勢いよくグラスをあおった。

 

 喉を通るたび、刺激臭が鼻腔を焼く。舌が痺れ、胃が拒絶する。それでも止まらない。むしろその無茶が、周囲の笑いを加速させる。

 

 

“ぷはあああああっ!!!!”

 

 

 グラスがカウンターに叩きつけられ、液体がわずかに飛び散る。

 

 

「あんちゃん、お味の方はいかがかなっ!?」

 

 

 問いかけられた『あなた』は、わざと間を取り、にやりと笑った。

 

 

“クソまずい!!!!”

 

 

 爆笑が弾けた。『あなた』の勇姿を見届けた客は皆、腹を抱え、涙を流し、机を叩き、床を蹴っている。

 

 

“3日間洗わずに放置した靴下みたいな味がした!!!!”

 

 

 さらに笑いが重なり、店内の空気が震えた。

 

 

“他に飲みたいやついる!? いねぇよなぁ!? じゃあもっかい俺が飲みまあああああっす!!”

 

 

 足元の火炎放射器から青い炎が噴き上がり、店内を蒼く染める。その光はどこか幻想的だった。

 

 次の瞬間。

 ゴツン、と鈍い衝撃が走った。

 

 

“ぐばっ!?”

 

 

「『あなた』、何やってるの!!」

 

 

 女性の怒鳴り声と共に、拳が的確に頭頂部へ入った。衝撃で放り投げてしまったグラスは綺麗に宙を舞い、『あなた』の顔面へと中の液体をぶちまけた。

 

 

“ぐわあああああっ!?!? 目が染みるうううううっ!?!?”

 

 

 地面をのたうち回る『あなた』に、周囲の客は再び笑い声をあげ、そして、『あなた』を殴った女性は腕を組みながら深いため息をついた。

 

 

“ば、()()()()お前ッ!! なっ、なにをするだァーーーーッ!!!”

 

 

「何って、馬鹿な行動をする『あなた』を止めてあげたんでしょ!!」

 

 

“馬鹿な行動をとは何だ!? 俺はただドリンクを飲んでいただけじゃないか!!”

 

 

「燃料が入ってる時点で飲み物じゃないわよっ!!」

 

 

“いや、元気になる液体って意味では同じかなって”

 

 

「同じなわけないでしょうがこの馬鹿っ!!」

 

 

“ぎにゃああああ!?!? 誰かタッケテェェェェ!?!?”

 

 

 赤い炎が噴き上がる。周囲の客はそれを酒のつまみのように感じながら、酒を口に含み、笑っていた。

 

 

「全く、若いってのはいいねぇ」

 

 

「これがあるからこの店に来るのは辞められないぜ」

 

 

「俺が生きているうちに結婚してほしいなぁ」

 

 

「分かる。なんなら、2人の誓いのキスをこの店の看板にしたい」

 

 

「「「「「「「それな」」」」」」」

 

 

 客たちはそれを肴に笑う。

 この光景が続くと、誰もが疑わずに思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が浮かび上がったとき、世界は歪んでいた。耳鳴りがひどく、視界が滲む。呼吸が浅い。記憶も混濁していた。

 

 

“バーニスッ!! おい、バーニス!! 正気に戻れ!!”

 

 

 『あなた』の声が、バーニスの濁った意識を引き裂いた。

 

 血の匂いが鼻を刺す。焦げた木材。崩れた壁。割れた看板。床に転がる見知った顔。さっきまで笑っていた人たちだった。

 

 ズシン、ズシンと地面が大きく揺れている。

 

 巨大なエーテリアスが、ゆっくりと近づいていた。その瞳は冷たい光を放ち、ただ破壊するためだけに存在しているようだった。

 

 

“……いいか、バーニス。お前だけでも逃げろ”

 

 

「でも、みんなは……」

 

 

 言葉にした瞬間、自分でも分かってしまう。もう動かない人々の姿が視界に入る。

 

 

“見れば分かるだろ!! ……もう助からないよ。いいか、俺が奴の注意を引く。お前はその間に安全な場所へ逃げろ”

 

 

「安全な場所ってどこ!?」

 

 

“知らねぇよ!! でも、今はここから逃げることが重要だろうが!!”

 

 

 怒鳴り返す声は荒いが、その奥に滲むのは焦りだった。安全な場所など存在しないことを、二人とも分かっている。それでも口にしなければ、立っていられなかった。

 

 

「それに、『あなた』を置いて逃げるなんてできないよ……!!」

 

 

 震える声。視線は揺れ、足は動かない。恐怖が体を縛りつけ、思考を鈍らせている。

 

 

“んなこと言ってる場合か!? だったらお前も戦え!! このクソッタレな運命に抗えよ!!”

 

 

 怒鳴るその姿は、怒りというより懇願に近かった。

 

 置いていく覚悟も、失う覚悟も、どちらも持てない彼女を、それでも前へ進ませようとしている。

 

 

「……もう……無理だよ……」

 

 

 膝が折れかける。

 さっきまで響いていた笑い声が、脳裏に蘇る。

 みんなが傷ついていくのに、自分は何もできなかった事実が、バーニスを襲う。

 

 

“バーニス……”

 

 

 その瞳の光が消えかけていることに気づき、『あなた』は思わず手を伸ばした。抱きしめてでも引き戻そうとしたその瞬間、巨大なエーテリアスが低く呻いた。

 

 それは声というより振動だった。

 空気そのものが軋み、衝撃となって二人を打ち据える。鼓膜が破れそうな圧力が全身を貫き、内臓が震える。

 

 『あなた』とバーニスは反射的に耳を塞ぎ、地面へとかがみ込んだ。砂塵が舞い上がり、瓦礫が跳ねる。

 

 そして、空気の流れが変わった。

 

 風向きが一方向へと収束していく。

 巨大なエーテリアスの顔面、その中心へと吸い寄せられるように、周囲の空気が渦を巻き始めた。

 

 瓦礫が浮き上がり、破片が音を立てて引き寄せられる。その中心で、禍々しい光が収縮していた。

 

 黒とも紫ともつかない輝き。その奥には禍々しくしさがあり、どこか美しさすら感じさせる。破壊のためだけに練り上げられた、純粋なエーテルエネルギー。

 

 脈動している。

 生き物の心臓のように、どくり、どくりと。

 

 そしてその光は、確実に二人を捉えていた。

 

 逃げ場は無かった。

 

 

“ははっ……あははっ……!!”

 

 

 バーニスの喉から零れたそれは、笑いというにはあまりにも乾いていた。震え、掠れ、どこか空虚で、感情が置き去りになっている。

 

 目は焦点を結ばず、迫り来る巨大なエーテリアスを見ているはずなのに、何も映していない。

 

 現実からから背けるように、脳が勝手に笑いという形を選んだのだ。

 

 

“……ッ!!”

 

 

 

 『あなた』は火炎放射器を構えた。

 燃料計は危険域。警告音が小さく鳴る。

 それでも構わない。

 

 腕に力を込め、トリガーに指をかける。そして、自分の中に残ったエネルギーを無理やりかき集め、火炎放射器へと注いでいく。

 

 

“なぁ、バーニス。俺、いつも言ってたよな? 辛い時こそ笑わなきゃって。でも、今のお前の笑いは、俺が言ってた笑いじゃねぇ”

 

 

 声は荒いが、不思議と優しかった。

 

 あの酒場で、馬鹿みたいに騒いでいた時間。どうしようもない現実を、どうしようもないまま笑い飛ばしていた時間。

 

 あれが本物だった。

 

 だが、今のこれは違う。

 

 

“笑いってのはな!! 心の底から楽しいと思わなきゃダメなんだよ!!”

 

 

 叫びと共に、火炎放射器のノズルが蒼く光る。

 

 迫るエーテリアスのエネルギーは、すでに臨界まで収束している。

 

 空気が震え、地面がひび割れ、熱が皮膚を刺す。

 

 それでも、『あなた』は笑った。

 強がりでも虚勢でもなく、本気で。

 

 

“笑えよバーニス!! 今から俺が、最高のエンターテイメントを見せてやっからよおおおお!!”

 

 

 次の瞬間、巨大なエーテリアスがエネルギー波を解き放つ。

 

 空間そのものを押し潰すような奔流。空気が裂け、衝撃が地面を抉り、熱が視界を歪ませる。

 

 

“うおおおおおおおおおおおッ!!!!!”

 

 

 それに向かって、『あなた』は青い炎を撃ち放った。

 

 轟音が衝突する。

 

 蒼と紫の光がぶつかり合い、周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。

 

 出力は明らかに劣っている。

 エネルギー波の方が圧倒的だ。

 

 青い炎は押し返され、じりじりと後退する。足元の地面が削れ、靴底が焦げる。腕の筋肉が悲鳴を上げる。

 

 それでも退かない。

 

 歯を食いしばり、全身の力をトリガーへ込める。

 

 青い炎は折れない。

 

 背後にいる愛する人を守るために。

 

 次第に、二つのエネルギーが混ざり合い始める。

 

 蒼が紫を侵し、紫が蒼を飲み込んだ。

 

 やがて、視界が白く染まる。

 

 光が、全てを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......んっ」

 

 

 喉が焼けるように痛み、肺に入る空気がひどく重かった。

 

 バーニスはゆっくりと目を開けた。視界は白く滲み、耳鳴りがまだ頭蓋の奥で反響している。

 

 だが、あれほど荒れ狂っていた衝撃音は消え失せ、代わりに異様な静寂が広がっていた。

 

 ぱち、ぱち、と青い炎が瓦礫の上で燃えている。

 

 

「私、生きてる......?」

 

 

指先を動かす。動く。呼吸もできる。痛みもある。

 

 そして、記憶が断片的に戻っていく。

 迫るエネルギー波。

 圧倒的な光。

 そして、自分の前に立った背中。

 

 すると、自分の体に何かが覆い被さっているのに気がついた。

 

 恐る恐る視線を落とす。

 

 

「っ!? ねえ、大丈夫!? しっかりしてっ!!」

 

 

 そこにいたのは『あなた』だった。

 

 顔は煤で黒く汚れ、額から血が伝っている。まぶたは閉じられ、呼吸は無い。

 

 嫌な予感がよぎった。

 バーニスは震える手で、その背中へ腕を回した。

 

 

 べちょり。

 

 

 指先に絡みつく、粘ついた感触。

 異様な熱。

 皮膚が焼けるような温度。

 違和感がバーニスを襲った。

 

 

「............えっ?」

 

 

 ゆっくりと視線を移す。

 そこにあったのは、皮膚ではなかった。

 

 赤黒く焼け爛れた肉。裂けた組織。炭化しかけた繊維。血と焦げた匂いが混ざり合い、吐き気を催す。

 

 理解が、追いつかない。

 だが事実だけは、残酷なほど明白だった。

 

 『あなた』は自身の身を挺してバーニスを守ったのだ。その証拠に、『あなた』の前面は、傷はあれど綺麗な体を保っていた。

 

 

「い.....や............」

 

 

 喉の奥で潰れた声が震える。

 

 理解してしまった。

 守られたのだと。

 自分だけが、生き残ったのだと。

 

 叫びが込み上げる。

 だが、その感情が形になるより早く———

 

 

 ズシン。

 

 

 地面が大きく揺れた。

 衝撃が足元から這い上がり、膝を震わせる。

 

 顔を上げる。

 巨大なエーテリアスは、まだそこに立っていた。

 

 全身を青い炎に焼かれ、ひび割れた体表から煙を上げている。確かにダメージはある。だが、その巨体は揺るがない。致命傷ではない。

 

 そして、その冷たい瞳が、確実にバーニスを捉えていた。

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 地面を陥没させながら、ゆっくりと近づいてくる。

 

 逃げ場はない。

 

 

「………いで」

 

 

 自分でも聞き取れないほど小さな声。

 

 

「来ないで……」

 

 

 願い。

 拒絶。

 懇願。

 

 だが怪物は止まらない。

 やがて、その巨影が目の前に立つ。

 

 空が塞がる。

 そして、振り上げられる巨大な腕。

 

 視界の端に動かない『あなた』が映った。

 その瞬間、バーニスの胸の奥で何かが弾けた。

 

 

「来ないでぇぇぇぇッッッ!!!!」

 

 

 悲鳴にも似た叫びと共に、バーニスは火炎放射器を掴み、引き金を引いた。

 

 赤い炎が噴き出す。

 

 炎は震えていた。

 出力も弱い。

 怒りも覚悟も、まだ混ざりきっていない未完成の炎。

 当然、怪物を止められるはずがない。

 

 

 ———はずだった。

 

 

 エーテリアスの体表で燃え続けていた青い炎と、赤い炎が触れた瞬間。

 

 異変が起きた。

 

 エーテリアスの体で燃えていた青い炎とバーニスの放った赤い炎が反応を起こしたのだ。

 

 二つの炎は手を握るかのように混ざり合い、一つとなり巨大な衝撃(混沌)を生んだ。

 

 そして、その巨大な衝撃(混沌)は次第に広がっていき、エーテリアスの体全体へと走っていく。

 

 融合した力が、エーテリアスの内部へと潜り込む。

 

 

 

 

『グオオオオオオッ!?!?』

 

 

 

 

 巨体の内側から衝撃が走る。

 ひび割れが音を立てて広がり、光が噴き出す。

 

 蒼と紅の混沌が、存在そのものを侵食する。

 

 次の瞬間———

 

 

 

 ドンッッッッッ!!!!

 

 

 

 空気が裂ける。

 衝撃波が瓦礫を吹き飛ばし、地面を抉る。

 

 内部から爆発したエーテリアスは、粉々に砕け、光の粒となって空へと溶けていった。

 

 そして、静寂。

 

 風すら止まったかのような無音が広がっていた。

 

 

「…………あはっ」

 

 

 小さな笑いが、喉の奥からこぼれ落ちた。

 

 それは確かに自分の声なのに、まるで遠くから響いてくる他人の笑いのようで、現実感がない。鼓動はやけに静かで、耳鳴りだけがまだ世界を曇らせている。

 

 カチャリ、と金属が擦れる乾いた音が響いた。

 

 無意識のまま握りしめていた火炎放射器。そのトリガーにかけた指が、わずかに力を込める。

 

 ドッ、と赤い炎が噴き上がった。

 

 熱が頬を撫でる。焦げた匂いが立ちのぼる。それでも、指は離れない。

 

 

「あはっ……あははははっ……」

 

 

 笑いが込み上げる。

 

 止まらない。

 

 胸の奥で何かが決壊したように、笑いが溢れ続ける。

 

 頬を伝うのは涙。

 

 だが、それが悲しみなのか安堵なのか、自分でも分からない。ただ、熱い。

 

 

 

「あはははははははははははははっ!!!!!!」

 

 

 

 赤い炎が全てを燃やし尽くす。

 

 その炎の中心で。

 

 バーニスは、涙を流しながら笑っていた。

 

 





死んだ人のエミュをするキャラ、好きなんすよ。
アビドスオジサンユメモドキとかね。


見て! 『あなた』が笑っているよ。
楽しそうだね。

バーニスが一緒に戦わないから、『あなた』が死んじゃいました。
一緒に戦えば、混沌ダメージでエーテリアスを倒せたのに。
バーニスのせいです。
あ〜あ。


※補足
バーニスって他人に身体を触られることが苦手らしいじゃん?
それ、身体に触れられると覆い被さってた『あなた』を思い出すから苦手、とかだったら良くない???(人の心


【定期】

感想・高評価・お気に入り登録お待ちしております。
モチベーションに繋がります。

また、『あのキャラの話を書いてほしい』『こんなシチュを書いて欲しい』等のリクエストがありましたら活動報告にコメントくれると嬉しいです。

『あなた』に超能力的な力(他作品クロス)を付与するのは?

  • あり
  • なし
  • 構わん、好きにしろ
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