新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
【注意】
他作品キャラが登場します。
ご注意ください。
時刻は20時過ぎ。
レッスン室の大きな鏡の前で、少女は一人踊っていた。
他の研修生はすでに帰宅しており、つい先ほどトレーナーもレッスン室の鍵を置いて帰ってしまった。
ステップを踏むたび、キュッ、キュッとシューズが床を鳴らす。その音だけが、広いレッスン室に孤独なほど響いていた。
少女は、ごく普通の女の子だった。
歌もダンスもトーク力も人並み。
いつも周りの空気を読んで、後手へと回ってしまう。
人間関係は悪くない。
今もデビューした同期の候補生たちとは連絡を取り合っている。
そして、デビューできずに心が折れ、この世界から去っていった同期たちとも。
少女の同期は、すでにデビューしているか、あるいはこの世界を去っていた。今、共にレッスンをしているのは少女の後輩ばかりだった。
少女はいわゆる“落ちこぼれ”という存在だった。
とはいえ、後輩たちとの仲は悪くない。むしろ良好だった。
みんな少女を慕い、共にアイドルデビューすることを夢見て日々成長している。
しかし、後輩の中には少女より先にデビューを果たした者も数多くいた。
少女は、彼女たちを満開の笑顔で見送った。けれど、少女の心は少しずつ、確実に傷ついていった。
どうして自分はデビューできないのか。
どうして自分には個性がないのか。
どうして自分だけが、こんなにつらい思いをしなければならないのか。
涙で枕を濡らす夜は、今もなお続いている。
それでも、少女は決して諦めなかった。
昔見た、小さなブラウン管のテレビ。
そこに映っていたアイドルたちの姿。
見た目も、歌も、踊りも。
すべてがキラキラしていた、あの光景。
あの輝きが、少女の心に刻み込まれているからだ。
いつか自分も、あのアイドルたちのように輝きたい。
人々に夢と希望を届けたい。
その想いだけは、決して消えなかった。
「ワンツー、ワンツー……きゃっ」
少女は足をもつれさせ、レッスン室の床へと転んでしまった。
長時間の練習で、体はすでに限界だった。
何年も努力しても思うように伸びない自分の実力も、少女の心を重くしていた。
「なんで……っ」
少女は俯いたまま拳を強く握り、涙を浮かべた。
悔しくて、悔しくて、つらかった。
するとその時、少女の目の前に一つの手が差し出された。
顔を上げると、そこには一人の男性がしゃがみ込み、こちらを覗き込んでいた。
”ターンをする時は、右足をもう半歩後ろにした方がいい。それと、練習しすぎだ。疲労がたまって倒れたら元も子もないよ”
少女は困惑しながらも、男性の手を取り立ち上がった。
まずはお礼を言うべきか。
それとも、何者なのかを尋ねるべきか。
ぐるぐると思考が回る中、立ち尽くしている少女を見かねたのか、男性は懐から一枚の名刺を取り出し、少女に差し出した。
少女はおずおずとそれを受け取る。
そして、そこに書かれていた内容を見て、驚きの声を上げた。
「ア、アイドル事務所のプロデューサー!?」
名刺と男性の顔を何度も見比べながら、少女は信じられないという様子でそわそわする。
だが、何かに気づいたのか、ハッとした表情を浮かべ、慌てて名刺を男性へ返した。
「あ、あの……〇〇ちゃんならもう帰っちゃいましたよ? というか、私以外の子は全員……」
”知ってるよ”
「あ、そうなんですね……あっ! さっきはありがとうございます!」
”別に大したことじゃないよ。担当アイドルの手を取るのは、プロデューサーの仕事だからね”
「そ、そうですよね……担当アイドルの手を……」
少女は一瞬うなずきかけたが、すぐに目を見開いた。
「えぇ!?!? た、担当アイドル!?」
”うん”
「誰が!?」
”キミ”
「誰のっ!?」
”僕”
「えぇっ!?!?」
少女はその場であたふたと慌て、大声を上げた。
「ど、どうして私が!? 〇〇ちゃんの方が歌もダンスも上手ですよっ!?」
”知ってる”
「知っ……!? そ、それに△△ちゃんの方が私よりお話も面白いですし……」
”知ってる”
「ふえぇ!? ……す、少しは否定してほしいですぅ……」
自分でも分かっていることでも、他人に言われるとなぜか傷つく。そんな当たり前のことを、少女はこの時初めて知った。
力が抜けたように、へにゃへにゃとその場に座り込む。
そんな少女に対して、男性は迷いなく言った。
“でも僕は、彼女たちよりもキミをプロデュースするために来た”
真っ直ぐな瞳で言われ、少女の胸がドキッと鳴る。
それでも少女は、おずおずと口を開いた。
「で、でも……私がアイドルになんて……」
俯く少女に、男性は静かに問いかけた。
“では、なぜアイドルを諦めずに毎日練習しているの?どうしてこんな時間まで、一人で練習をしているの?”
「それは……」
少女は言葉を詰まらせた。
心の奥から、様々な感情があふれ出す。
何を言えばいいのか分からなくなる。
その時、脳裏に浮かんだ。
あの日見た、アイドルの姿。
自分がアイドルを目指すきっかけとなった、あの日。
自分の人生が変わった、あの瞬間。
少女はぎゅっと拳を握り、涙を流しながら叫んだ。
「みんなに……夢と希望を届けたいから……!!」
少女は立ち上がり、必死な顔で続ける。
「あの日見たアイドルみたいに!! 私も新エリー都のみんなに、夢と希望を届けたいからです……っ!!」
少女の心からの叫びが、静まり返ったレッスン室に響き渡った。
すると、男性はふっと笑った。
”それだよ”
「……えっ?」
”キミが抱いている夢。人々に希望を届けたいと思う想い。
男性は少女の涙をハンカチで拭い、そっと手を差し出した。
”島村卯月さん。僕に貴女をプロデュースさせてください”
「……っ!!」
少女の瞳から、再び涙が溢れ出す。
しかし、その表情は先ほどのような曇った笑顔ではなかった。
今までデビューしたどのアイドルよりも。
今活躍している誰よりも。
美しい笑顔だった。
少女は、男性の手を取った。
これが、未来のトップアイドル———
『島村卯月』の始まりの瞬間だった。
「グスッ……何回見ても泣けるわ……」
「卯月先輩のオリジン……ほんっとうに素敵だよ……」
「グスッ……はい、千夏ちゃん、羽ちゃん。ティッシュ……ずびびっ」
「うちらよりアリアちゃんの方が涙すごいで……ぐすん」
“……なにこれ”
「グスッ……何って、プロデューサーの過去の話を元にした再現映像やで」
「卯月ちゃんと一緒に作成したんだよ」
“……僕、撮影した覚えないけど”
「最新のテクノロジー技術を元に再現した、ホログラムプロデューサーだよ!」
「話の内容はあながち……というかほぼほぼ同じやろ?」
“……まぁ、うん”
「卯月ちゃんだけじゃなくて、卯月ちゃんの所属している事務所のアイドルの半数はプロデュースしてたらしいよ?」
「だよね〜? でも今は私たち妄想エンジェルのプロデューサーなんだよ! いいでしょう?」
“いや、コメント越しに言われても分からないよ。せめて履歴書と自己紹介映像とダンスや歌の映像を頂戴。まずはそこからかな。何が得意なことある? 苦手なことは? もし、コンプレックスとかがあるなら素直に全部教えてほしい。長所も短所も全て知った上で、キミをプロデュースするよ。僕は他者のアイドル像は絶対に押し付けない。他人が履いたガラスの靴は履かせない。キミという1人のアイドルとして、キミをプロデュースするよ”
「ちょっと待ちぃ!? 何モーソー族を口説いてんねん!!」
「プロデューサ〜? ……浮気は許さないよ?」
「他の人にプロデューサーを取られるなんて……アリア、絶対に許しません……!!」
「「「は?」」」
“……仲良いね君たち”
「いやぁ〜それほどでも〜」
「僕らとモーソー族のみんなだから出来ることだよ〜」
「これも全て、プロデューサーさんがプロデュースしてくれたお陰ですよ!」
「そう、それなんよ!! そこがこのプロデューサーのクソボケポイントなんや!!」
「ねぇ、プロデューサー? どうして卯月ちゃんたちのプロデュースを辞めたの?」
“契約満了したから”
“うん”
“いやだって僕がいなくても十分やっていけるレベルまで育ったし”
“?? 笑顔で見送ってくれたよ? めっちゃ泣いてたけど”
「どう? みんな分かった? これが私たち妄想エンジェルのクソボケなんだ」
“えぇ〜? 僕なんも悪いことしてないじゃん”
“酷い……”
「当然やろ」
「当然の報いだね」
「当然だよ。……あ、そうだ。実はもう一つ、みんなに見てほしい映像があるんだ! 特別ゲストからのビデオレターなんだけど、実は私たちも全部の内容までは知らないんだよね。楽しみっ!! それじゃあはい、ポチッとな」
『妄想エンジェルのみなさん、モーソー族のみなさん、そして、プロデューサー!! お久しぶりです!! 島村卯月です!!』
『今回は妄想エンジェルのみんなにお願いを言って、特別にビデオレターを送らせていただきました!! まずは、妄想エンジェルのみんな!! この前のライブ、現地で見てたよ!! すっごくキラキラしてた!!』
「えっ!?!? 卯月ちゃんいたん!?!? 嘘やろ!?!?」
“僕が招待した”
「な、なんで言ってくれなかったのさ!?!?」
「卯月ちゃんがアリアの歌を……? ……キャー!!!! 嘘!? 嘘ですよね!?!? あ、あっ………キャーーーーー!!!!!」
『そんな妄想エンジェルのみんなを見たら私、居ても立っても居られなくなっちゃって……そこでなんと!! 私たち346プロの復活ライブを開催することが決まりました!! わーい!! パチパチ〜!!』
「ほ、ほほほほほほ、ほんま? これ、現実なん??」
「……????」
「ッ!?!? ッッッ!?!?!?!? ッッッッッッ!?!?!?!?」
“キミたち何してくれてんの? せっかくトップアイドルの座に君臨してたのに、あいつら来ちゃったら終わりだよ。妄想エンジェル喰われるよ。どうすんのこれ”
“100億万パーセント無理。そそらないよ、これは”
“無理だね”
『そして、この配信を見ているみんなに更なるサプライズ!! 今このQRコードを読み込んだ人は、特別な抽選を受けることが出来ますっ!! この後の一般抽選よりも優先的にライブに招待しちゃう抽選ですよ!! やったー!! そして、もし抽選に外れたとしても安心してくださいね! なんと、同時配信を無料で見れる特別コードを送っちゃいますよ!!』
“ねぇ、モーソー族NTRされてるけどいいの?”
「う、卯月ちゃん!! うちら!! うちらにはチケットあらへんの!?!?」
「卯月ちゃんお願い!! 一生のお願い!! 僕たちにも招待して!!」
「!?!!!!??!?!?!?!?!!?!?」
“だめだ、脳を焼かれてる”
『あっ、もちろん妄想エンジェルのみんなもライブに招待するよ!! もうすぐプロデューサーさんのスマホに連絡が行くと思うから安心してくださいね!!』
“あ、来た。でも貼り付けられてるから確認できないんだけど”ピコン
「よこしやプロデューサー!!!!」
「チケットおおおお!!!!」
「!!!!!!!!?!!??!!!?!!?」
“うおおおお!?!?”
『それじゃあ、画面の前のみなさん!! ライブ、楽しみにしててくださいねっ!!』
「「「やったああああああああ!!!!」」」
『あっ、そうだ。これを忘れていました』
『クソボケプロデューサーさんへ、私たちからプレゼントがあります。ポチッとな』
ウィーーーーーン、ガシャン!!
“え? なに? なんか目の前にでっかいスイカバーが出てきたんだけど?? なにこれ??”
「これはうちらが白祇重工にお願いして作ってもらった新兵器や!」
「どうみんな? すっごいでしょ〜?」
「型式番号『MSZ-006』、アルティメットスイカバーくんだよ!!」
“……は?”
『それじゃあ、私からプロデューサーさんに愛を込めて……』
『そこからいなくなって私の元に来ちゃえええええ!!!!』
ズキュゥゥゥゥゥン!!!!
“うおおおおおおおおおお!?!?!!??!”
「クソボケに対する当然の報いや!!」
「乙女の心を弄んだ罰だよっ!!」
「反省してくださいっ!!」
“ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?”
デレステの更新が終了して実質サ終みたいな感じだったけど、最近シンデレラが再び動き出して俺は嬉しいよ……!!
MOIWで言ってた『シンデレラガールズ、これからもみんなで輝きます!!』というのは本当だったんだなって……
また、このクソボケPの話はもう1、2話続きます。
ご了承ください。
【定期】
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また、『あのキャラの話を書いてほしい』『こんなシチュを書いて欲しい』等のリクエストがありましたら活動報告にコメントくれると嬉しいです。
『あなた』に超能力的な力(他作品クロス)を付与するのは?
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あり
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なし
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構わん、好きにしろ