新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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ビビアン・バンシー ① 続続

 

 

 

 落ちていく。

 

 深海へ沈むように、

 暗く、冷たく、静かに。

 

 まただ。またこの感覚だ。

 

 何百回、何千回繰り返して1回あるかないかのこの感覚。

 

 バチリ。

 

 視界が弾けた。

 

 鋭い光。

 

 激しい衝撃。

 

 そして次の瞬間、全身を焼くような痛みが走る。

 

 僕は痛みに耐える。

 耐えて耐えて、限界が訪れるその時まで。

 

 

 

 

E()a()r()t()h().()4()2()3() XX年XX日XX時XX分】

 

 

 

 

 

 ゆっくりと目を開ける。

 そこは、僕が知っているようで、知らない世界だ。

 

 

「やぁ、1253回ぶりだね。と言っても、君はなんのことだか分からないだろうけど」

 

 

「………」

 

 

 そして、いつも足元にいるこの謎のボンプ。

 どこか壊れているのか、声をかけても全く反応しない。

 僕はいつものようにこのボンプの頭を撫で、前を向く。

 

 

「さて……行きますか」

 

 

 そして僕は歩き出す。

 僕の世界とは似て非なる、この別世界を。

 

 

 

 


 

 

 

 ループを繰り返すうちに、ある変化に気づいた。

 それは、ループ発動時にも謎の文字が見えるようになったのだ。

 

 ループが発動する瞬間。

 そして、ループが終わった直後。

 視界の端に、必ず現れる謎の文字。

 

 右側の文字列は、毎回同じ形式だった。

 年月日、そして時刻。

 

 これは明らかに、時間を示している。

 だが——左側。

 

 『Earth.306』

 

 最初にそれを見たときは、意味など分からなかった。だが、回数を重ねるうちに理解した。

 

 これは“場所”だ。

 世界そのものを識別する、番号。

 それを証明する答えは、ランドンの研究所にあった。

 

 多次元宇宙論。

 そして、パラレルワールド論。

 

 かつては机上の空論とされていた理論。

 無数の宇宙が存在し、選択のたびに世界が分岐していくという仮説。

 証明など、誰もできなかったはずのそれを、僕は、身をもって知っている。

 

 僕の力は、ループだけではない。

 何万回も繰り返してようやく知ることのできた力。

 

 それは、別世界へのジャンプだ。

 

 分岐した世界線を、渡り歩く力。

 そして、ごく稀に起きる“例外”。

 

 ループではなく、明確に異質な感覚。

 

 より深く沈み、

 より強い痛みに襲われるあの現象。

 

 そして、そのときに現れる文字。

 

 『Earth.423』

 

 それは、僕がいた『Earth.306』とはまったく異なる世界を示している。

 

 さらに分かったことがある。

 

 あの痛み。

 あれに、どれだけ耐えたかで、到達する“時間”が変わる。

 

 長く耐えれば耐えるほど、より過去へと遡る。

 まるで、代償を支払うほど深く潜れるかのように。

 

 つまり——

 

 ・僕の能力は、時間の巻き戻しだけではない

 ・世界線の移動、そして異世界への跳躍

 ・そして痛みは、その距離と深度の代価

 

 そう考えれば、すべて辻褄が合う。

 

 そして。

 

 この『Earth.423』において——

 

 

 ビビアンは、生きている。

 

 

 何度繰り返しても救えなかった命。

 どれだけ世界を渡っても届かなかった結末。

 それが、この世界では——当たり前のように存在している。

 

 ならば。

 この世界には、必ず“何か”がある。

 

 僕の世界とは異なるたった一つの要因。

 彼女の生死を分けた、致命的な要因。

 

 それを見つけ出せば——

 僕の世界でも、彼女は生きる。

 

 だから、繰り返す。

 

 何度でも。

 

 何千回でも。何万回でも。

 

 数多に分岐した僕の世界の世界線などどうでもいい。

 

 たとえ、この身が擦り切れようと。

 

 心が壊れようと。

 

 ——ビビアンを、生かす。

 

 その目的だけが、

 今の僕を繋ぎ止めているのだ。

 

 

 






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