新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
みーんな「ダァスケヴェ、ダァスケヴェ」ばっか言ってよォ……
ふざけんな!!
テメーら、ナメてんじゃねーぞ!!
俺は決めた!!
読者が何を言おうが、俺が何度だって「ダァスケヴェ」を書いてやる!!
手加減は無しだよ、読者——
『製造番号87番、戦闘を開始します』
感情の籠っていない、機械のような音声が響いた。
刹那、目の前の敵は背中のブースターを噴射し、一気にターゲットへと飛び出す。
背中から伸びる二門の主砲がエネルギー波を放ち、両腕のガトリングガンは絶え間なく火線を描いた。
「……ッ」
しかし、そのターゲットは両手の刀を巧みに操り、降り注ぐ弾丸を弾き返す。
さらに、最小限の動きだけでエネルギー波を紙一重に躱していく。
製造番号87番はブースターを噴かし、ターゲットの真上へと飛び上がる。
背部のバックパックから大量のミサイルをばら撒き、そのままターゲットの周囲を低空飛行で旋回し、集中砲火を行った。
空襲のように降り注ぐミサイル。
二門の主砲から放たれるエネルギー波。
両腕のガトリングガンが吐き出す無数の弾丸。
途切れることなく続く猛攻が、ターゲットへと襲い掛かった。
爆風が連鎖し、轟音が大気を震わせる。
黒煙が立ち込め、無数の薬莢が金属音を響かせながら地面へと降り注いだ。
時間にして、およそ30秒。
製造番号87番は弾薬とエネルギーを使い果たすまで、一切の躊躇なく攻撃を継続した。
やがてガトリングガンは乾いた音を鳴らし、最後のミサイルも撃ち尽くされる。
ブースターの光も静かに消え、機体はゆっくりと地上へ降り立った。
製造番号87番は黒煙の立ち込めるターゲットのいた場所を見据え、任務を終えたように呟く。
『ターゲットロスト。これにて実験は——』
その言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
ヒュン。
何かが空気を切り裂く鋭い音。
次の瞬間。
製造番号87番の視界は、鮮やかな赤一色に染まった。
『あっ——え?』
温かな飛沫が宙を舞い、雨のように降り注ぐ。
それが自身の首から噴き出した血だと理解した瞬間、世界がゆっくりと傾き始めた。
べちゃり、と。
製造番号87番の身体は、血だまりの中へ力なく倒れ込んだ。
その様子をターゲット——アンビーは、感情のない瞳で見つめる。
やがて静かに刀を鞘へ納めると、戦闘の終わりを告げるように息を吐いた。
『流石は私のお気に入りね、アンビー。これで今日の実験は終了よ』
「……複製体0号、任務を終了します」
アンビーは踵を返し、製造番号87番を背に戦闘ルームを後にする。
『痛い……暗い……冷たい……パパ……マ……マ……』
その声を。
聞こえないふりをしたまま。
アンビーは、一度も振り返らなかった。
“おかえり、アンビー。今日の任務はどうだった?”
アンビーが自室へ戻ると、一人の少年が穏やかな笑みを浮かべて迎えた。
その姿を目にした瞬間。
アンビーは無言のまま歩みを速め、そのまま少年へと飛び込むように抱きついた。
“うぐっ……ちょっと、苦しいよ、アンビー”
少年は困ったように笑いながら、少しだけ力を緩めるよう伝える。
だが、アンビーは答えなかった。
震える両腕に力を込め、少年を離すまいとするように抱きしめ続ける。
“……お疲れ様、アンビー”
少年は何も問いかけない。
ただ優しくアンビーを抱きしめ返し、その背中を静かに撫でた。
アンビーの震えが収まるまで。
彼女の心が、少しだけ安らぐまで。
「ありがとう。だいぶ楽になったわ」
“そっか。それは良かったよ”
10分後。
落ち着きを取り戻したアンビーは、少年の肩へ頭を預けるようにもたれかかった。
表情はいつもと変わらず、感情を読み取らせない。
けれど、その声だけは。
いつもより少しだけ、温かかった。
アンビーと少年は、同じ研究所で生まれ育った。
アンビーは、防衛軍によって戦闘を目的として製造されたクローン。
そして少年は、そんなアンビーの精神を支えるためだけに連れてこられた、一人の一般人だった。
アンビーは、辛く厳しい訓練を終えるたび、必ず少年へと抱きつく。
荒んだ心を癒やすために。
『何か』を斬った感触を忘れるために。
今回で、それは87回目だった。
アンビーはこれまで、87体の『何か』を斬り続けてきた。
最初の頃は、何も感じなかった。
命令されるまま『何か』を斬り、攻撃を避け、また斬る。
それだけだった。
当初、『何か』は何も語らなかった。
ただアンビーに斬り捨てられるだけの駒。
しかし、回数を重ねるごとに、『何か』は成長していく。
武器を扱うようになり。
戦術を学ぶようになり。
そして、アンビーを追い詰めるほどの強敵へと変わっていった。
そして『何か』は、感情を持っていた。
戦闘中は決して感情を見せない。
だが、命が尽きる最後の瞬間だけは違う。
押し殺していた感情が溢れ出すように、言葉を零すのだ。
痛い。
苦しい。
死にたくない。
その最期の言葉は、呪いのようにアンビーの心へと刻まれ、少しずつ、確実に彼女を蝕んでいく。
しかし、戦闘用に製造されたクローンの心が、その程度で壊れては困る。
だから研究員たちは、一つの答えを用意した。
アンビーの心を繋ぎ止める存在。
『何か』を殺すことへ慣れさせるための精神安定剤。
それが、少年だった。
アンビーにとって少年は、誰よりもかけがえのない存在。
そして少年もまた、アンビーが立派な戦闘員となれるよう、誰よりも近くで彼女を支え続けてきた。
「……何か、話して。いつものように」
“うん、わかった”
少年は穏やかに笑みを浮かべると、静かに語り始めた。
“これはね、僕のパパとママがよく話してくれた話なんだけど——”
アンビーはいつもの無表情のまま、その瞳だけを輝かせる。
まるで、親の話を聞く幼い子どものように。
任務も。
実験も。
血の匂いも。
今だけはすべて忘れて。
一人の少女として、少年の話へ夢中になって耳を傾けていた。
『あ……がっ……ごぼっ……』
製造番号99番を斬り捨てたアンビーは、静かに刀を鞘へ納めた。
そして、観測室から見下ろす研究員たちへ視線を向ける。
早く帰りたい。
彼を抱きしめたい。
彼に抱きしめられたい。
その想いだけを胸に、アンビーは実験終了の合図を待った。
しかし、研究員たちは終了を告げなかった。
薄気味悪い笑みを浮かべたまま、黙ってアンビーを見下ろしている。
すると、戦闘ルームの扉が、ゆっくりと開いた。
『アンビー。これが最後の実験よ。心してかかりなさい』
アンビーは無言で刀を抜く。
コツン。
コツン。
静まり返った部屋に、足音だけが響く。
アンビーは息を整えた。
次の敵はどんな武器を持っているのか。
どんな戦術を使うのか。
どう斬れば勝てるのか。
99回積み重ねた経験を総動員し、思考を巡らせる。
やがて、一人の人影が姿を現した。
その瞬間。
アンビーの思考は、音もなく止まった。
“やぁ、アンビー”
「…………え?」
信じられなかった。
目の前に立っていたのは。
毎日、自分を抱きしめてくれた少年だった。
「……なんで……ここに……?」
震える声で問いかける。
だが、少年は、いつもと変わらない笑みを浮かべた。
“最後の相手は僕、製造番号100番なんだ……この意味、分かるでしょ?”
その笑顔も。
その声も。
何一つ変わらない。
いつもの少年の姿だった。
アンビーは少年を見つめる。
否定したかった。
夢だと思いたかった。
けれど、99回繰り返した実験の記憶が、この光景の意味を残酷なまでに理解させる。
刀が、手から滑り落ちた。
乾いた音が戦闘ルームに響く。
「…………でき、ない」
ぽたり。
ぽたり。
涙が頬を伝い、床へ落ちる。
アンビーは力なくその場へ膝をついた。
その様子を見た少年は、アンビーへゆっくりと歩み寄る。
そして、震える彼女の頭を優しく撫でた。
その温もりに、アンビーはいつものように抱きしめてもらえるのだと思い、ゆっくりと顔を上げる。
しかし。
少年はそのまま彼女の横を通り過ぎていった。
「……え?」
少年が向かった先。
そこには、先ほどアンビーが斬り捨てた製造番号99番が、血だまりの中で静かに横たわっていた。
少年は亡骸の傍らへ膝をつき、その顔へ静かに手を伸ばす。
製造番号99番。
——いや。
アンビーがこれまで斬り続けてきた『何か』は、全員が顔を覆うバイザーを装着していた。
敵の表情を見せないため。
アンビーが情に流されないため。
研究員たちが施した、たった一枚の仮面だった。
少年の指先が、そのバイザーに触れる。
パキッ。
乾いた音を立て、バイザーに亀裂が走る。
やがて、それは静かに剥がれ落ちた。
露わになった顔を見た瞬間。
アンビーの呼吸が止まった。
「あ……え……?」
そこにあったのは。
毎日笑いかけてくれた少年と、まったく同じ顔だった。
少年は、倒れた製造番号99番を見つめたまま静かに言う。
“できないって言ったって——”
ゆっくりとアンビーへ視線を向ける。
“キミはもう、99回も僕を殺してるじゃないか”
ゾクリ、と。
アンビーの背筋が凍りついた。
それと同時に、99回に及ぶ戦闘の記憶が、一気に脳裏へと蘇る。
『何か』を斬って。
斬って。
斬り続けた。
刃を伝う感触で、『何か』が生き物であることは分かっていた。
溢れ出す鮮血を見れば、『何か』が人間であることも分かっていた。
それでもアンビーは、その事実から目を背け続けてきた。
帰れば、少年がいてくれたから。
優しく抱きしめてくれる存在がいたから。
だから、自分を騙し続けることができた。
だが——
斬り続けてきた『何か』の正体は。
殺し続けてきた『何か』の正体は。
「っ……ぅ……おえっ……!!!」
耐えきれなくなったアンビーは、その場に膝をつき、激しく吐瀉した。
殺した。
自分の手で。
殺し続けてきた。
「がほっ……うっ……!!」
大切な存在を。
99回も。
“大丈夫かい、アンビー?”
少年は吐き続けるアンビーの傍らへ静かにしゃがみ込み、心配そうな眼差しを向けた。
涙で滲む視界の向こう。
虚ろな瞳のまま、アンビーは少年を見つめる。
そして、震える唇から小さく言葉を零した。
「ごめ……んなさい……」
少年は何も責めることなく、優しくアンビーの頭を撫でる。
しかし、アンビーの謝罪は止まらなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
壊れたラジオのように。
壊れてしまった人形のように。
アンビーは、ただひたすら謝り続けた。
すると少年は、いつものように穏やかな笑みを浮かべる。
“大丈夫だよ”
アンビーは虚ろな瞳で、ゆっくりと少年を見上げた。
“もう、アンビーに苦しい思いはさせないから”
そう言って少年は、静かにアンビーの刀を握り締めた。
“これでようやく、実験は終わる”
「——え?」
少年は静かにアンビーの刀を持ち上げると、その切っ先を自らの首へと当てた。
そして、いつものように優しく笑う。
“今まで楽しかったよ、アンビー。ありがとう”
その笑顔を見た瞬間。
アンビーの虚ろだった瞳に、僅かな光が戻った。
震える手を必死に伸ばす。
「——待っ」
ブシャッ
鮮血が宙を舞い、雨のようにアンビーへ降り注いだ。
何度も見てきた光景。
何度も見てきた、少年が倒れる瞬間。
何度も見てきた、少年が息絶える瞬間。
何度も見てきた。
自分が、大切な存在を失う瞬間。
静寂が、アンビーを包み込む。
また、死んだ。
また。
殺した。
『ふふっ……ふふふふふふふっ!!!!』
戦闘ルームに、研究員たちの笑い声が響き渡る。
まるで、この瞬間を心待ちにしていたかのように。
堪えきれなくなった歓喜を爆発させるように、狂った笑い声を響かせ続けた。
世界が。
全てが。
真っ黒に染まっていく。
プツン——
この残酷な世界から逃げるように。
アンビーは、静かに意識を手放した。
『これで、ようやく実験は次の段階へ進めるわ』
『兵器に感情なんていらない』
『私たちの命令に、ただ従えばいいのよ』
研究員は満足そうに笑みを浮かべる。
『さぁ、これから忙しくなるわ。アンビーのデータを基に、新たなクローンを製造する。数は11体』
一拍置き、研究員は愉快そうに告げた。
『部隊名は——』
『シルバー小隊よ』
「罪深い? あなたや私、そして姉妹たちが……みんな罪を背負っているって言いたいの?」
ツイッギーは震える声でアンビーへ問いかけた。
アンビーは静かに息を吸い、現実を受け入れるように真っ直ぐ彼女を見つめ返す。
「私たちは、罪そのものよ」
「だから……私たちは滅ぶべきだって?」
「少なくとも、罪の中で生き続けてはいけないわ」
「——アハッ」
その言葉を聞いた瞬間。
ツイッギーは壊れたように笑い始めた。
乾いた笑い声が、ホロウの静寂へ不気味に響き渡る。
「ハンバーガーを食べて、映画を観て、仕事を見つけて、人とデートするのが私たちのすべきことだった……?」
ゆっくりと顔を上げる。
狂気に染まった瞳が、アンビーを射抜いた。
「でもね、アンビー隊長……」
カタリ。
震える肩。
歪んだ笑顔。
そして。
「貴女こそが、罪の中で生き続けなければならないのよ?」
ザシュッ
鮮血が舞った。
ツイッギーの背中から赤い飛沫が噴き上がり、その身体は糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
「ツイッギー!」
アンビーは目を見開き、駆け出した。
しかし——
“やぁ、アンビー”
ゾクリ、と背筋が粟立つ。
ずっと聞きたかった声。
もう二度と聞きたくなかった声。
封じ込めていた記憶が、一気に脳裏へ溢れ出した。
“どうしたんだい? そんな、信じられないものを見るような顔をして”
「——あ……なん、で……」
アンビーと同じ、刀を手にしながら。
そして。
その瞳だけが違っていた。
底知れない狂気が、静かに宿っていた。
“あぁ、もしかして、僕が死んだと思ってた?
少年は首を傾げ、そして笑みを浮かべた。
“あはァ♪半分正解♪”
少年は楽しげに笑う。
その無邪気さが、かえって恐ろしかった。
“僕がキミに会うのは今日が初めて。だけど——”
笑みが、さらに深くなる。
“僕は、キミが殺した100人の『僕』の記憶を受け継いでいる”
“キミに斬り捨てられた記憶。その痛み。その苦しみ。その怒り。その憎しみ。全部。ぜーんぶ、僕が引き継いでいるんだ♪♪”
そして少年は、ゆっくりと自らを名乗る。
“
その体には。
100人分の憎悪と。
100人分復讐心が宿っていた。
“キミを殺しに来たよ、アンビー♪♪♪”
「
詐欺じゃないですかぁ!!こんなの!!!!
てかすみません。
これ、なんていう『妹達』と『番外個体』ですか???
誰か上条さん呼んできてーーーー!!!!
あと感想・高評価・お気に入り登録してーーーー!!!!(強欲のグリード)
『あなた』の台詞は?
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地の文だけで表現してほしい
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今くらいのセリフ量が良い
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もう少し喋ってほしい
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めちゃくちゃ喋ってほしい