新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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一人称視点の話ってめちゃくちゃ書きやすいっすね。
筆(指)が進みましたとも。
えぇ、それだけですが何か?



儀降 ①

 

 

 ジジイがまた捨て子を拾ってきた。それも2人。

 名を『儀降』と『儀玄』。

 俺より3か4歳ほど年下の子供だ。

 

 服はボロボロで、髪もボサボサ。

 いかにも路地裏で生き延びてきました、と言わんばかりの姿だった。

 

 そんな2人の世話係に、俺は任命された。

 自分のことで手一杯だっていうのに、たまったもんじゃない。

 

 ジジイ曰く、2人には見込みがあり、いずれどちらかが青溟剣を継ぐとのこと。

 そして、その成長を手助けしてほしいと言ってきた。

 

 新たな青溟剣の使い手が現れること。

 それは、雲嶽山にとって喜ばしいことだ。

 誰もが歓迎し、誰もが祝福する出来事なのだろう。

 

 だが、俺にとっては違った。

 それは遠回しに、「お前には才能がない」と告げられているようなものだった。

 

 どれだけ修行に打ち込んでも。

 どれだけ周囲から才能を褒められても。

 ジジイは、俺に青溟剣を譲ろうとはしなかった。

 

 それは俺の実力を認めていないからなのか。

 それとも、俺に青溟剣の代償を払わせたくなかったからなのか。

 その真意は、最後まで分からなかった。

 

 だが、もし後者なのだとしたら。

 他人になら青溟剣の代償を払わせてもいいというのか。

 そんな疑問が、胸の奥で燻り続けていた。

 

 ……いや。

 そんなわけがない。

 そんなことが許されるわけがない。

 

 だからこそ。

 才能がある俺が受け継ぐべきなんだ。

 宗主であるジジイの血を引く俺が、犠牲になるべきなんだ。

 

 俺が──ジジイのように、みんなを守らなきゃいけない。

 そう思っていた。

 

 ……だが。

 

 結局、ジジイの真意を知ることはなかった。

 俺に分かったのは、儀降と儀玄のどちらかが、青溟剣を継ぐという事実だけだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 儀玄は生意気なガキだった。

 

 食い意地は張っているくせに、好き嫌いが激しい。

 苦手なキャベツは今にも泣きそうな顔で頬張るくせに、好物のチャーシューマンだけは目を輝かせて頬張る。

 

 だが、そんな儀玄は誰よりも儀降のことを大切にしていた。

 チャーシューマンを食べる時は、必ず半分に割って儀降と分け合う。

 幼い頃から2人で支え合って生きてきた、その名残。

 

 ……いや。

 きっと儀玄にとっては、それが当たり前なのだろう。

 儀降と儀玄は昔も今も、そしてこれからもずっと一緒なのだろう。

 

 だからか、俺がチャーシューマンを差し出すたび、儀玄は目を輝かせて飛びついてくる。

 そして嬉しそうに儀降の元へ駆け寄り、2人で仲良く頬張るのだ。

 そんな光景を見ていると、不思議と悪い気はしなかった。

 

 やがてチャーシューマンは、儀降と儀玄の2人だけではなく、俺も交えた3人で分け合うようになった。

 

 俺を家族として認めてくれた証……なのかもしれない。

 まぁ、その分、俺の取り分が減っていることには変わりないのだが。

 

 儀降は、本当に優しい人だった。

 

 妹の儀玄だけではない。

 共に修行する仲間にも、誰に対しても、その優しさを分け隔てなく向ける。

 文武両道で、誰からも慕われていた。

 

 そして、誰かを守るためなら、自分の身を犠牲にすることすら厭わない。

 そんな儀降を間近で見ているうちに、俺は少しずつ彼女に惹かれていった。

 

 同時に、ある疑問も抱くようになる。

 どうしてそこまで強くなろうとするのか。

 何が彼女を、そこまで突き動かしているのか。

 

 ある日、俺はその疑問を彼女にぶつけた。

 すると儀降は、穏やかに微笑みながら答えた。

 

「私には儀玄がいる。儀玄になら、青溟剣とみんなの未来を、いつか託せる。だから、それまでは──私が儀玄を守るの。だから私は、もっと強くならなきゃいけないの」

 

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。

 

 ……俺と同じだ。

 

 誰かを守るために。

 みんなを守るために。

 強くなりたい。

 強くならなくてはいけない。

 

 抱えている想いは、俺と何一つ変わらなかった。

 だから俺は、彼女に惹かれたのだろう。

 俺と同じ願いを抱き、それでも笑って前を向ける彼女に。

 

 だから、俺はこう返した。

 

 

 

“——だったら、俺にも手伝わせてくれ。俺と、儀降と、儀玄。そして、みんなが笑って暮らせる未来のために”

 

 

 

 

 

 

 

 

 それ以来、儀玄は今まで以上に俺を敵視するようになった。

 

「お前なんかに姉さまは渡さない!」

 

 そう啖呵を切っては、毎日のように組み手を挑んでくる。

 そんな儀玄を俺は適当にあしらい、時には返り討ちにして泣かせた。

 すると儀玄は涙目のまま儀降に駆け寄り、「お前なんか認めないからなっ!」と訴える。

 

 当然、儀降は苦笑い。

 本当に、生意気なガキだった。

 

 だが。

 組み手を重ねるたび、儀玄の才能には驚かされるばかりだった。

 

 一度覚えたことは二度と忘れない。

 昨日できなかったことを、今日は当然のようにやってのける。

 

 俺や儀降とは比べ物にならない速度で、その才能は開花していった。

 それが嬉しかった。

 儀降も同じだった。

 

 俺たちは儀玄の成長を見守る時間が、何より好きになっていた。

 かけがえのない、家族の時間だった。

 

 そんなある日。

 儀降が、ぽつりと呟いた。

 

「私たちに子供ができた時も……こんな気持ちなのかな……?」

 

 頬を真っ赤に染めながら、上目遣いでこちらを見る儀降。

 俺は照れ隠しに顔を逸らすことしかできなかった。

 きっと耳まで真っ赤だったと思う。

 

 それでも。

 そんな未来を想像すると、自然と胸が温かくなった。

 

“——そうだな。その時のためにも、もっと頑張らないと”

 

 そっと儀降の手を握る。

 儀降も優しく握り返してくれた。

 言葉はいらなかった。

 それだけで、俺たちの心は満たされていく。

 

「……あーっ!! 何を2人でイチャイチャしているっ!? 私はまだ、お前を認めてなんかいないからなーっ!!」

 

「……ふふっ♪」

 

 儀降が楽しそうに笑う。

 俺もつられて笑ってしまう。

 

 本当に。

 生意気なガキだよ、全く。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 儀降が、次期雲嶽山の宗主に選ばれた。

 それは喜ばしいことであり、同時に受け入れ難い事実でもあった。

 

 このままでは、儀降が犠牲になる。

 青溟剣を継ぎ、その代償を背負うことになる。

 そんな最悪の未来が、すぐそこまで迫っているように思えた。

 

 そして、俺に追い打ちをかけるように、ジジイが死んだ。

 雲嶽山のみんなを守るため、青溟剣の力を振るったのだ。

 それから日に日に衰えていくジジイの姿を見ても、俺は何も感じなかった。

 

 ……いや。

 感じたくなかった。

 感情を抱けば、自分まで壊れてしまいそうだったから。

 だから俺は、悲しみも苦しみも、心の奥底へ押し込めた。

 

 だが。

 ジジイの最期の言葉だけは、その蓋を容易く壊した。

 

「すまな、かった——」

 

 その一言だけで十分だった。

 閉じ込めていた感情が一気に溢れ出し、気づけば涙が止まらなくなっていた。

 

 それと同時に、俺の中で何かが崩れる音が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

()()は知っていたのか!? 青溟剣の秘密を……っ!!!!」

 

 胸ぐらを掴まれ、激しく揺さぶられる。

 儀玄は涙を浮かべながら、俺を睨みつけていた。

 俺は静かに答える。

 

“——あぁ”

 

「っ!! だったらどうして姉様が次期宗主になることを許したんだっ!! 宗主になるなら、()()だっただろう!!」

 

 その言葉に、俺は何も返せなかった。

 

 儀玄の言う通りだ。

 俺が弱かったから。

 青溟剣を継げなかったから。

 だから儀降が、次の犠牲になろうとしている。

 

 儀玄は俺を力いっぱい突き飛ばすと、そのまま部屋を飛び出していった。

 俺は、その背中を見送ることしかできなかった。

 そして、俺は決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこへ、行くのですか?」

 

 みんなが寝静まった夜。

 青溟剣を手に雲嶽山を去ろうとした俺を、儀降が呼び止めた。

 

 まるで、最初からこうなることを分かっていたかのように。

 俺は振り返らないまま答える。

 

“俺が青溟剣を継ぐ。そして、この力をものにして、みんなを救ってみせる”

 

「だったら私も……っ!」

 

 駆け寄ろうとする儀降へ、俺は静かに青溟剣を抜き、その切っ先を向けた。

 儀降の足が止まる。

 

“——お前には、やるべきことがあるだろう”

 

「でも……」

 

 儀降は唇を噛み、言葉を失った。

 俺も、本当は振り返りたかった。

 抱き締めて、一緒に来てくれと言いたかった。

 

 けれど、それを口にした瞬間、この決意は揺らいでしまう。

 だから。

 俺は感情を押し殺し、最後に一言だけ残した。

 

 

 

 

 

“じゃあな、儀降”

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 力が溢れ出す。

 

 全身を満たす力は底が見えない。

 

 目に映るもの全てを、容易く破壊できる。

 

 山も。

 

 岩も。

 

 エーテリアスも。

 

 何もかもが、あまりにも脆かった。

 

 あぁ。

 

 なんて心地いいんだろう。

 

 これで、ようやく俺は——。

 

 ……あれ?

 

 俺は、何をしたかったんだっけ。

 

 何のために、この力を——。

 

 誰かが、俺の前に立っている。

 

 ……誰だ。

 

 お前は、誰だ?

 

 頭の中が白く染まっていく。

 

 記憶が、一つずつ零れ落ちていく。

 

 それでも。

 

 たった一つだけ、どうしても消えない名前があった。

 

 ——儀降。

 

 そうだ、儀降……っ!

 

 見てくれよ、儀降。

 

 俺は、ようやく青溟剣を扱えるようになったんだ。

 

 これで俺たちは。

 

 みんな、幸せに——っ!!

 

 ……あれ?

 

 なんで。

 

 どうして儀降が、青溟剣を持っているんだ?

 

 待てよ、それは俺の——っ!!

 

 ……あれ?

 

 声が。

 

 言葉が、出ない。

 

 腕も、思うように動かない。

 

 なんだ、この腕は。

 

 黒く歪んで、異形の形をしている。

 

 まるで、エーテリアスみたいじゃないか。

 

 ……儀降?

 

 なんで。

 

 どうして泣いているんだ。

 

 そんな顔をするなよ。

 

 俺は、お前と——。

 

 ……あぁ。

 

 そうか。

 

 俺は——。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい……でも、私もすぐそっちに行くから。だから、もう少しだけ待ってて」

 

 

 

 

ごめんな、儀降

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、姉様、兄様」

 

 

「あれからもう随分経つが……あの日のことは、今でも——」

 

 

「あぁ、そのチャーシューマンは2人で分け合ってくれ」

 

 

「私はもう、苦手なんだ——」

 

 

 





え? 救い、ですか?
あー……そこになかったら無いっすね。
多分、青溟秘境にでもあるんじゃないすか?

『あなた』の台詞は?

  • 地の文だけで表現してほしい
  • 今くらいのセリフ量が良い
  • もう少し喋ってほしい
  • めちゃくちゃ喋ってほしい
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