新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
続きを書く予定はありませんましたが、公式からメイドレミエールと水着レミエールを供給されたので……
何も覚えていなかった。
自分の名前も。
今、自分がいるこの場所も。
両親も、友達も、恋人も。
何一つ分からない。
過去の記憶は真っ白で、まるで最初からこの世界に一人きりだったような感覚だけが、残っていた。
「はい、これ♪ 本当は『三倍キャラメルと大粒黒真珠のウーロンティーミルク』を飲んでほしかったんだけど、あれは期間限定だから」
レミエールが笑顔でカップを差し出してくる。
……真珠?
どうして飲み物に真珠を入れるのだろうか。
そんな硬いものを飲めば、歯が折れてしまう気がする。
「あっ、大粒黒真珠っていうのは、大きいタピオカのことだよ♪」
……タピオカ?
聞いたこともない単語だった。
「あぁ、そもそもタピオカが何なのか分からないか」
レミエールは困ったように頬を掻く。
「えーっと……まぁ、気にしないで♪ 今日のはタピオカ入ってないから♪」
そう言って俺の手にカップを乗せる。
透明な容器の中では、鮮やかなオレンジ色の液体が小さな泡を立てていた。
まるで、どこかの機械へ流し込む燃料のような色をしている。
「それは『ニトロフューエル・レモンティー』だよ」
レミエールは嬉しそうに説明を続ける。
「名前は燃料みたいだけど、ちゃんと飲み物だから安心して♪ 疲れた時に飲むと元気が出るって人気なんだ。サラリーマンの人たちにも評判なんだよ」
そして、にこりと笑う。
「それに、『あなた』はレモンティーが好きだったよね?」
……そうなのだろうか。
記憶のない僕には分からない。
レモンティーという飲み物を飲んだことがあるのかすら思い出せない。
本当に、これが僕の好物なのだろうか。
そんなことを考えていると、レミエールは悪戯っぽく口元を緩めた。
「ふふっ♪」
嫌な予感がした。
次の瞬間。
彼女は俺の手から『ニトロフューエル・レモンティー』をひょいと奪い、そのままストローへ口をつける。
「へっへーん、いただきっ♪」
『へっへーん、いただきっ♪』
“あっ、おい!? それ、僕のレモンティーだぞ!”
『油断してる『あなた』が悪いんだよ〜? あむっ♪』
“このっ……なら、こっちだって!”
『あーっ!! 私のミルクティー!!』
“なんだよ。先にやったのはそっちだろ?”
『むぅ〜……それは、そうだけど……』
“だったら、二人で半分こにしよう。そうすれば、一度で二つの味を楽しめるだろ?”
『それ、いいねっ♪ じゃあ、さっそくいただきま〜す♪』
“って、おい! それ絶対半分以上飲んでるだろ!”
『〜♪♪』
“っ……”
意識が、現実へと引き戻される。
「ん〜♪ やっぱり美味しい〜♪」
満足そうに笑っていたレミエールは、不意に首を傾げた。
「……あれ? もしかして、怒ってる?」
気がつけば、彼女の顔がすぐ目の前にあった。
心配そうに揺れる瞳が、じっとこちらを見つめている。
“いや……ちょっと驚いただけだよ”
「ふーん……」
レミエールは少しだけ考え込むように唇へ指を当てる。
そして、ぱっと表情を明るくした。
「あっ、いいこと思いついた♪ 『あなた』のレモンティーと、私のミルクティー、二人で半分こしよっか♪」
“それ……は……”
胸の奥が、ざわつく。
このやり取りを。
この言葉を。
俺は、どこかで——
「なーに? 私と半分こするの、嫌?」
嫌なわけじゃない。
むしろ、その逆だ。
レミエールのような女性と半分こなんて、普通なら嬉しいことなのだろう。
なのに、この感覚は——
「……まっ、いっか♪」
レミエールはにっこりと笑う。
「それじゃあ、次行こっか♪」
“次……?”
「うん♪」
「今日は一日中付き合ってもらうんだから、覚悟しておいてよね♪」
『なーにしてるの? ……ん? ボンプの人形?』
“あっ、見つかっちゃったか”
『わぁ……すっごく可愛い! 何これ、『あなた』の手作り!?』
“本当はサプライズにするつもりだったんだけど……バレちゃったなら仕方ないか。そうだよ。もしラミルがボンプだったら……って想像しながら作ったんだ”
『へぇ〜……でも、私の羽は白だよ?』
“白いラミルだけじゃ見慣れちゃうからね。だから、黒”
『見慣れちゃうって、ひどくな〜い? 大切な奥さんに言う台詞じゃないよね〜?』
“じゃあ、大切な旦那を着せ替え人形にするのはやめてくれないかな? 結構恥ずかしいんだけど”
『え〜? たまには趣向を変えないとマンネリ化しちゃうじゃん?』
“だからって、執事服とか学ランはちょっと……”
『ぶーぶー。いいじゃん〜♪ それに、『あなた』だってノリノリだったじゃん♪』
“それは……うん。でも、それとこれは別だから”
『……黒、好きなんだ?』
“好きってわけじゃないと思うけど……まぁ、とにかく! これは部屋に飾るからな?”
『分かったけど……私一人だけって、なんだか寂しくない?』
“うーん……それもそうか。じゃあ、もっと作ろうかな。そうだな……サンブリンガーボンプとか?”
『却下』
“えぇ……じゃあ、何がいいんだよ”
『……この黒ラミルちゃん、可哀想だな〜。このままじゃ独身になっちゃうな〜。どこかに素敵な旦那様はいないのかな〜?』
“……はぁ、分かったよ”
『やった〜♪』
“自分で自分を作るの、結構恥ずかしいんだからな?”
『それ、私の台詞なんだけど〜? ……そうだ! 今度は私が『あなた』の好みの服、着てあげるよ♪』
“えぇ? いいよ別に”
『そうだな〜……メイド服とかどうかな♪』
“…………お願いします”
『ふふっ♪ りょーかい♪♪』
『白いウィザーブルーム?』
“うん。ラミルにぴったりの花だと思ってさ。花のことなんて全然分からないけど、僕なりに一生懸命選んだんだ”
『……ウィザーブルームが、どういう時に供える花か知らないの?』
“? 知らない”
『はぁ……ほんっと、『あなた』って世間知らずというか……』
“え……もしかして、縁起の悪い花だった?”
『ウィザーブルームはね、弔辞の時に供える花なんだよ』
“ちょうじ……?”
『簡単に言うと、故人に供えるための花』
“…………返品してくる”
『ん〜……ダメ♪』
“な、なんでさ!? そんな花、ラミルに渡せないよ!”
『それでも、ダーメ♪』
“なんでだよ……。もしこれでラミルに何かあったら……”
『私は大丈夫だよ♪』
“でも……”
『それにね、せっかく『あなた』が私のために選んでくれた花なんだよ? それを返品しちゃうなんて、もったいないじゃん♪』
“……そっか”
『うん、そうだよ♪ だから、ありがとう♪ 大切にするね♪』
“——今度の任務が終わったらさ、海に行こうか”
『海?』
“うん、海。誰もいない浜辺で丸一日過ごすんだ。ビーチボールで遊んで、水を掛け合って、浜辺を走って、一緒に夕陽を眺めるんだ。——僕とラミル、二人っきりで”
『——いいね、それ』
“でしょ? だから、今のうちに水着を買いに行かなきゃ”
『……もしかして、それが本当の目的?』
“否定はしないかな”
『えっち』
“それを言うなら、ラミルもだろ?”
『……否定はしない、かな♪』
“ははっ。——でも、それだけじゃない”
『……?』
“軍も”
“任務も”
“ホロウも”
“エーテリアスも”
“全部忘れて”
“何もかも放り出して、自由になりたいんだ”
“世界のためとか”
“みんなのためとか”
“そんなものは、もう少しだけ忘れて”
“僕とラミルだけのための時間を過ごしたい”
“僕とラミルだけの思い出を、作りたいんだ”
『……そっか』
“だからさ——約束”
『——うん』
『約束』
——そう、痛みだ。
鋭くて、激しい痛み。
何も覚えていないはずなのに。
苦しくて。
切なくて。
寂しいんだ。
没案① : アンビー編の少年のオリジナルがレミエール編の『あなた』
『あなた』の台詞は?
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地の文だけで表現してほしい
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今くらいのセリフ量が良い
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もう少し喋ってほしい
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めちゃくちゃ喋ってほしい