新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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レミエール・ダン ① 続続続

 

 

「ほら見て。夕陽だよ。綺麗だね……」

 

 レミエールは水平線の彼方へと沈んでいく夕陽を指差した。

 

 海は茜色に染まり。

 波は穏やかに寄せては返す。

 辺りに人影はなく、聞こえるのは静かな波音だけだった。

 

 今日一日、レミエールといろいろな場所を巡った。

 それはまるで、真っ白だったキャンバスへ少しずつ色が重なっていくような、空っぽだった心が、少しずつ満たされていくような心地の良い感覚だった。

 

 なのに。

 

 胸の奥では、鋭い痛みが広がっていく。

 

 心は満たされている。

 

 それなのに。

 

 苦しい。

 

 切ない。

 

 寂しい。

 

 どうしてなのか、自分でも分からなかった。

 

「……ねぇ、今日はどうだった?」

 

 波打ち際に立ったまま、レミエールが静かに問いかける。

 

「私はね、とっても楽しかった」

 

 こちらへ振り向かない。

 けれど、純白の羽が小さく揺れている。

 その羽だけで、彼女が本心から笑っていることは分かった。

 

「100年前に失った『あなた』との時間が、戻ってきたみたいで」

 

「止まっていた時間が、また動き出したみたいで」

 

「本当に、楽しかった」

 

 一拍置いて。

 彼女は、小さく息を吐く。

 

「でも、それ以上に……」

 

 ゆっくりとこちらを振り返る。

 夕陽を背負ったその表情は、逆光で見えない。

 けれど。

 

 

 

 

「——痛かった」

 

 

 

 

 頬を伝う涙だけは、はっきりと見えた。

 

「おかしいよね」

 

「『あなた』とまた出会えたのに」

 

「嬉しくて」

 

「楽しくて」

 

「心が躍ってるはずなのに」

 

「とっても、痛いんだ」

 

 きっと。

 彼女は笑っている。

 俺に心配をかけないように。

 いつものように笑おうとしている。

 それでも涙だけは止まらず、茜色に染まった海へぽたり、ぽたりと落ちていく。

 

「『あなた』は『あなた』なのに」

 

「もう、私の知ってる『あなた』じゃない」

 

 少しだけ首を横に振る。

 

「……ううん、違うね」

 

「きっと『あなた』は、私の知ってる『あなた』なんだと思う」

 

「でも」

 

「心の奥では、こう思ってる」

 

「もう、『あなた』はいないんだって」

 

 一つ一つの言葉が棘のように胸へ突き刺さる。

 

 どうして。

 どうしてこんなにも苦しいのだろう。

 この感情の名前を、俺は知らない。

 

「『あなた』は悪くない。いつまでも過去に囚われてる私が悪いの」

 

 そう言って、レミエールは夕陽へ向かって歩き出す。

 

 まるで。

 

 沈んでいく夕陽と一緒に、この世界から消えてしまうかのように。

 

 手を伸ばそうとした。

 

 けれど、腕は動かない。

 

 呼び止めようとした。

 

 けれど、言葉にならなかった。

 

「だからね、今日でおしまい♪」

 

 いつものように明るい声。

 だけど。

 震えていた。

 泣くのを必死に堪えていることが、その声だけで伝わってくる。

 

「軍も」

 

「任務も」

 

「ホロウも」

 

「エーテリアスも」

 

「そして——私も」

 

「もう、『あなた』を縛るものは何もない」

 

「世界のためとか」

 

「みんなのためとか」

 

「そんなものは、もう忘れていいの」

 

 レミエールが、遠ざかっていく。

 

「『あなた』はもう、自由なんだ」

 

 ふわり、と。

 純白の羽が広がった。

 舞い散る羽根は雪のように空を漂い、静かに海へと降り積もっていく。

 

「今日は私のわがままに付き合ってくれて、ありがとね」

 

「これでもう、思い残すことはない」

 

 夕陽が水平線の向こうへ沈んでいく。

 世界が少しずつ暗く染まり、夜が訪れる。

 孤独が、静かに僕を包み込んでいく。

 

 

 

「最後に『約束』を果たせて、本当によかった」

 

 

 

 

 

 ()()()が、消えていく。

 

 

 

 

「——バイバイ」

 

 

 





これで()()()()()の話は終わりです。
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『あなた』の台詞は?

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  • 今くらいのセリフ量が良い
  • もう少し喋ってほしい
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