新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話   作:ぽこちー

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まるちばーす・おぶ・まっどねす

 

 

 ジリリリ!! と耳につく目覚ましボンプ時計によって、『あなた』は目を覚ましました。

 

 時刻は午前8時です。

 

 半年前に仕事をクビになり、ニートとなった『あなた』にとって、この時間に起きる必要性は特にありません。昼過ぎまで寝ていても誰に咎められることはありませんが、生活習慣が完全に崩れてしまうのも困るため、毎日この時間に起きるようにしているのです。

 

 凝った首をコキコキと鳴らし、大きなため息をつきながら、『あなた』はベッドから立ち上がりました。そして、重い足取りで洗面所へと向かいます。

 

 洗面所の鏡に映っていたのは、ボサボサに伸びた髪と、無造作に生えた無精ヒゲを蓄えた男の姿でした。

 

 ニートになってからというもの、外へ出る機会はめっきり減り、人と会うこともほとんどなくなっています。そのため、髪やヒゲの手入れも、いつしか後回しになっていました。

 

 もっとも、ヒゲを伸ばし続けている理由は、それだけではありません。『あなた』が所属しているインターノッツ上のコミュニティ『怪啖屋』のメンバーが、以前こんなことを言っていたのです。

 

『ヒゲが生えてる男性って素敵だよね!』

 

 その何気ない一言を妙に気に入ってしまい、『あなた』は今日までヒゲを剃らずにいたのでした。

 

 ですが、冷静になって考えてみます。

 会ったこともない相手の好みに合わせてヒゲを伸ばし続けるというのは、少々どうなのだろうか、と。

 

 そして、それ以上に深刻な問題もありました。

 貯金です。

 

 半年もの間、収入もないまま切り崩し続けていた貯金は、既に底が見え始めています。このままでは、そう遠くないうちに生活が立ち行かなくなってしまうでしょう。そろそろ本気で仕事を探さなければなりません。

 

 ヒゲを生やしたままでも問題のない仕事を探すべきか。

 それとも、これを機にさっぱり剃ってしまうべきか。

 鏡の前でしばらく悩みながら、『あなた』は改めて自分の姿を見つめます。

 

 次の瞬間、バチリと脳裏に閃光が走りました。

 

 

 

 

『ふ〜ん……『あなた』が『ニート侍』さん? 想像してたよりすっごくかっこいいね♡』

 

『無造作に見えるけど、すごいシンメトリーなのだわ♡ それにとってもワイルドで素敵なのだわ♡』

 

『わーっ♡ すごくモジャモジャで面白い♡ ねぇねぇ、もっと近くで見せて♡』

 

『うふふっ♡ 男らしくて素敵だわ♡』

 

 突如、『あなた』目の前に現れた4人の女性。『あなた』は4人の女性にされるがままに手を引かれ、密室へと連れて行かれます。

 

 そして場面は変わり、4人の女性はベッド上で光悦な笑みを浮かべながら『あなた』に寄り添っています。ベッドは謎の液体でぐちゃぐちゃに濡れており、衣類は至る所に脱ぎ散らかされていました。

 

 そして、ベッドの上で倒れている『あなた』は、干物のようにしわっしわとなり、真っ白に燃え尽きているのでした……

 

 

 

 

“っ!?!?”

 

 現実世界へと戻ってきた『あなた』は、大量の汗を流しながら自分の体を確かめます。

 

 ずっと食っちゃ寝していたため脂肪こそついているものの、脳裏に浮かんだような映像のように干からびていません。その事実に安堵しつつ、先ほど見た映像が脳裏から離れません。

 

 このまま髭を伸ばし続けたら、とんでもないことになるかもしれない。

 『あなた』はそんな直感に従い、伸ばし続けていた髭を剃り始めるのでした。

 

 

 

 

 髭を剃り、さっぱりとした『あなた』でしたが、キュルルル〜と、突如、腹の虫が盛大に鳴き声を上げました。

 

 昨夜は晩ご飯を食べず、そのまま寝てしまったため、いつも以上の空腹が『あなた』を襲い始めます。

 

 仕事を探すのも大切ですが、まずは食事です。そう考えた『あなた』は、朝食の準備に取り掛かりました。ですが、冷蔵庫の中は見事なまでに空っぽです。

 

 代わりに、机の上には大量のカップラーメンが山積みになっていました。

 最近は毎日のようにカップラーメンばかり食べているため、流石に飽きが来ています。ですが、わざわざ外へ食べに行くのも面倒です。しばらく悩んだ末、『あなた』は結局カップラーメンへと手を伸ばしました。

 

 次の瞬間、バチリと脳裏に閃光が走りました。

 

 

 

 

『急に入ってマジごめん!! でも今ちょっと色々とヤバくて、ちょっと匿ってくんない!?!?……って、カップラーメンじゃん!! それに大量のお菓子にたまごプリンまで!! もしかしてあーしのために用意してくれた的な!?!? マジ神さまじゃん! いっただっきまーーーーす!!!!』

 

『シーシィアちゃ〜ん? 一般人に迷惑をかけるのはダメって言ったわよね〜?』

 

『急に押しかけて申し訳ございません。ですが、緊急事態でして。少しだけ捜査に協力をお願いします』

 

『何、お主に迷惑はかけぬ。それに、もしお主に何かあっても、我らがお主を守ってみせよう。安心するがよい』

 

 突如4人の女性が『あなた』の家に押し入ってきました。そのままその場の流れで4人の女性の手助けをすることになり、治安局から感謝状をもらいました。そして、あれよあれよと治安局へと就職。

 

 4人の女性と変わりばんこで様々な任務へと赴き、信頼を掴み取り、そしてそれは愛情へと変わります。そして4人はそのまま寿退社。

 

 昼間は治安局の仕事。夜は4人の嫁との夜のターン制バトル。『あなた』の体はみるみるうちに萎れていきます。

 

 そして場面は変わり、4人の女性はベッド上で光悦な笑みを浮かべながら『あなた』に寄り添っています。ベッドは謎の液体でぐちゃぐちゃに濡れており、衣類は至る所に脱ぎ散らかされていました。

 

 そして、ベッドの上で倒れている『あなた』は、干物のようにしわっしわとなり、真っ白に燃え尽きているのでした……

 

 

 

 

“っ!?!?”

 

 現実世界へと戻ってきた『あなた』は、大量の汗を流しながら自分の体を確かめます。

 

 ずっと食っちゃ寝していたため脂肪こそついているものの、脳裏に浮かんだような映像のように干からびていません。その事実に安堵しつつ、先ほど見た映像が脳裏から離れません。

 

 このままカップラーメンに手を伸ばしたら、とんでもないことになるかもしれない。

 『あなた』はそんな直感に従い、伸ばした手を引っ込めました。

 

 

 

 ならば、外食をしよう。そう思った『あなた』は、パジャマから私服へと着替え、玄関の扉へ手を伸ばしました。

 

 外へ出ると、サンサンと降り注ぐ太陽の光が『あなた』を照らします。

 心地よい風が頬を撫で、そして、その風に乗ってどこからともなくラーメンの良い香りが漂ってきました。

 

 この匂いには覚えがあります。

 チョップ大将のラーメンです。

 

 そういえば以前、新作のラーメンを研究していると言っていたことを思い出しました。きっと、その新作が完成したのでしょう。

 『あなた』は香ばしい匂いに釣られるように、チョップ大将の店へと歩き始めました。

 

 次の瞬間、バチリと脳裏に閃光が走りました。

 

 

 

 

『戦友なら共に激辛ラーメンを啜るべきよ』

 

『うわぁ……汁が真っ赤っかであります……』

 

『隊長の顔と同じくらい真っ赤だね〜』

 

『おい、それはどういうことだシード』

 

『どーどー、落ち着いてください。それとシード、白い服に汁が飛ぶと大変ですから、紙エプロンをつけてください』

 

 4人の女性と、一体の知能構造体。彼女たちは楽しそうにラーメンを啜っていました。どうやら店内は既に満席のようです。ならば少し時間を空けてから来よう。

 

 そう思い、踵を返そうとしたその時でした。

 悲鳴が町中に響きます。

 BOX GALAXYの金品を盗んだ強盗犯たちが、こちらへ向かって走ってきたのです。

 

 『あなた』は咄嗟に身構えます。ですが、それよりも早く、ラーメンを食べていた女性たちが席を立ちました。

 

 鮮やかな連携。

 流れるような動き。

 強盗犯たちは、あっという間に地面へと組み伏せられていきます。

 

 しかし、一人だけ包囲を抜け出した犯人がいました。その男は、『あなた』へ向かって一直線に駆けてきます。

 

 『あなた』は冷静に一歩横へと踏み込みました。そして、すれ違いざまに足を引っ掛けます。勢いよく転倒した犯人へ向け、顎を掠めるように拳を振るいました。次の瞬間、犯人の意識は綺麗に刈り取られていました。

 

 静まり返るその場。

 すると、ラーメンを食べていた女性たちが『あなた』の共へとやってきて、賞賛と防衛軍への勧誘を行いました。

 

 褒められて気分が良くなった『あなた』は、とりあえず防衛軍へと足を運びます。そしてそのままあれよあれよ防衛軍へと就職。そのまま4人と1人の知能構造体と絆を深め、愛を育み、全員と結婚。

 

 そして場面は変わり、4人の女性はベッド上で光悦な笑みを浮かべながら『あなた』に寄り添っています。ベッドは謎の液体でぐちゃぐちゃに(以下略。

 

 

 

 

“っ!?!?”

 

 現実世界へと戻ってきた『あなた』は、大量の汗を流しながら自分の体を確かめます。

 

 ずっと食っちゃ寝していたため脂肪こそついているものの、脳裏に浮かんだような映像のように干からびていません。その事実に安堵しつつ、先ほど見た映像が脳裏から離れません。

 

  このままチョップ大将の店へと向かったらとんでもないことになるかもしれない。

 

 『あなた』はそんな直感に従い、回れ右をしました。

 

 

 

 

 ならば、ラーメンではなくコンビニで弁当でも買って帰ろう。

 

 次の瞬間、バチリと脳裏に閃光が(以下略。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 それから『あなた』は何度も何度も脳裏に閃光が走りました。

 

 何でも屋に連れ去られ、そのままゴールイン。

 家政婦にご奉仕され、そのままゴールイン。

 建築・重工業グループに就職し、そのままゴールイン。

 対ホロウ六課に、郊外の走り屋に、歌姫とその用心棒に、怪盗に、修行者とその宗主に、TOPSの内部監査に、アイドルに、新エリー都から離れた浮遊島のメンバーに。

 

 様々な女性と出会い、愛を育み、最後には真っ白に燃え尽きた干物になってしまう。そんな映像が何度も何度も脳裏に浮かぶのでした。

 

 一つの選択が、数多の世界線を作り出す。

 悪夢のように『あなた』襲いかかる。

 まさに、マルチバース・オブ・マッドネス。

 

 そして、『あなた』は悟りました。

 これから訪れるであろう最悪の結末を回避する方法。

 

 それは、真っ白に燃え尽きないだけの体力を身につけること。

 

 幸いにも、まだ未来は確定していません。

 今なら、まだ間に合います。

 『あなた』はすぐさま家へと戻りました。

 

 汗でびっしょりになった服を脱ぎ捨て、ゆっくりと柚子風呂へ浸かります。未来への不安を洗い流すように、じっくりと湯に浸かった後、新しい服へと着替えました。

 

 そして始まる腕立て伏せ。

 

 腹筋。

 

 スクワット。

 

 ランニング。

 

 次々と筋力トレーニングを——

 

 

 

 

 

 

 

“……と、見せかけてベーーーッドインッッッ!!!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マルチバースだのマッドネスだの、そんなものは所詮オカルトです。それに、マルチバースは失敗だと、赤いスーツを着た破天荒で無責任なヒーローも言っていました。

 

 ならば、先ほどまで見ていた意味不明な映像など忘れてしまえばいい。

 そして忘れるためには、夢の世界へダイブするのが一番です。『あなた』はそう結論付けたのでした。

 

“……Zzz”

 

 ベッドへ飛び込んで約3秒。

 『あなた』は完全に夢の世界へと旅立っていくのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——ですが、これで終わるはずもありません。

 数多の世界線を観測したのは、『あなた』だけではなかったのです……

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「……♡」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 





ハーレムルート突入条件 : 考えるのをやめてベッドで寝る

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