新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
いつも悩む
地の文の行間や接続はどうしたら良いのかと
だから、毎回行間のバランスがバラバラなんですね
風と共に、病院の敷地に美しく咲き誇っていた桜の花びらが、窓から病室のベッドへと舞い落ちる。
少女は花びらをそっと手に取り、自身の顔の前へ持ち上げて眺めた。
ここ数日、雨が降る日が増えていた。新エリー都の桜は少しずつ散り、美しい緑が街を彩り始めている。春は、もう終わろうとしていた。
少女は静かに指を開く。花びらはひらひらと揺れながら、床へと落ちていく。まるで、自分の行く末を映しているようだった。
「よっと」
しかし、花びらが床へ届くことはなかった。病室へ入ってきた青年が、落ちる寸前でそれを掴んだのだ。そして、そのまま窓の外へと放る。風に乗った花びらは、青空へ向かって軽やかに舞い上がっていった。
青年はその姿を見届けると、少女の隣へ腰を下ろした。
“悠真……”
「なぁーに、しけたツラしてるの? ほら、キミの好きなシュークリームを買って来てあげたんだから、一緒に食べよう。あ、看護師さんには内緒だよ? 当然、柳課長にもね」
悠真はそう言って、少女へシュークリームを差し出した。少女は何も言わず、それを受け取る。けれど、食べようとはせず、ただシュークリームを見つめていた。そんな少女を見て、悠真はからかうように笑う。
「なに〜? もしかしてお腹いっぱい? それとも、僕に食べさせて欲しいの〜?」
悠真はカラカラと笑いながら、自身のシュークリームを口に運んだ。すると少女は、ゆっくりと口を開く。
“……うん、悠真が食べさせて”
「えぇ? 冗談で言ったつもりなんだけど?」
“……だめ?”
「……ダメじゃないよ」
呆気に取られた悠真だったが、少女が冗談で言っているわけではないことを悟り、自身のシュークリームを少女の口元へ運んだ。少女は小さな口をめいっぱい開き、悠真のシュークリームにかぶりつく。中のクリームが溢れ、白い頬に付着した。
“……ん”
少女は頬についたクリームを悠真へ見せる。悠真は小さくため息をつき、人差し指でそれを拭い、そのまま口へ運んだ。
“立場、逆転しちゃったね”
「ん?」
“昔は私が悠真に食べさせてあげたのに”
「あぁ。そんなこともあったね」
“それに、身長も大きくなって。いつの間にか弓術も抜かされちゃって。……遠くなっちゃった”
儚げに笑う少女に、悠真は一瞬だけ顔を曇らせる。だが、すぐにいつもの調子へ戻った。
「何言ってるの。キミもさっさと病気を治して僕を抜かせばいいだけじゃないか。まぁ? 簡単には抜かさせないけどね」
“……そうだね”
少女は小さく笑った。
そして、自分のシュークリームを手に取り、悠真の口元へそっと差し出した。
真っ白な肌。
陽の光に透かせば、細い血管が浮かび上がるほど白い。
腕は痩せ細り、少し触れただけで折れてしまいそうなほど頼りない。
震える腕は、シュークリーム一つ支えるだけでも精一杯だった。
「っ」
悠真の顔が、くしゃりと歪む。
いつも自分の前を歩き、迷えば手を差し伸べてくれたその手。その手が、今はこんなにも細く、弱々しくなってしまっていた。
“……? ほら、あーん”
少女は何事もないように、シュークリームを悠真の口元へ差し出す。
「……あーん」
悠真は涙を堪えながら、一口かじった。口いっぱいに甘いクリームが広がる。それなのに、胸の奥は苦しくて仕方がなかった。
その時だった。
ぽん、と頭に小さな手が乗せられる。
冷たい。
それでも、不思議なくらい温かい。
泣いていた幼い日の自分を、何度も優しく包み込んでくれた彼女の手だった。
“……本当に、大きくなったね、悠真”
「っ!」
その一言だけで、張り詰めていたものが音を立てて崩れた。
堪えていた涙が、静かに頬を伝っていく。
『——彼女はもう、長くありません』
医師の言葉が、不意に胸の奥で蘇る。
どうして。
どうして彼女なんだ。
愛して欲しいとは言わない。
別の男性と生涯を添い遂げても構わない。
ただ、彼女に生きていて欲しい。
生きて、幸せになって欲しい。
ただ、それだけなのに。
神様はそれを許してはくれない。
その願いだけは、最後まで神様に届かない。
世界は、どうしてこんなにも冷たいのだろう。その答えを考え始めると、涙はもう止まらなかった。
そんな悠真を、少女は優しく包み込む。
少女もまた、悠真と同じ願いを胸に抱いていた。
愛されなくても構わない。
別の女性と生涯を添い遂げても構わない。
ただ、悠真が幸せになってくれれば、それでいい。
——そう、自分に言い聞かせてきた。
でも、本当は違う。
誰よりも愛してほしかった。
悠真の隣で笑って、一緒に泣いて、くだらないことで笑い合って。
当たり前の日々を、共に生きていきたかった。
けれど、その願いは叶わない。
もう長くはない自分の想いは、悠真を縛るだけの呪いになってしまう。
だから最後まで、この気持ちは胸の奥へしまうのだ。
「愛してる」というその一言さえ、伝えることなく。
"(けれど、今この瞬間だけは)”
“(最期に一度だけ)”
“(神様、どうかわがままを許してください)”
少女はそっと目を閉じる。
そして、悠真の頭へ優しく口づけを落とした。
その夜。
少女は独り静かに息を引き取った。
最後まで、「愛してる」と伝えることはなかった。
そして、「愛してる」と
福山雅治の『最愛』を聞いてたら思いついた話です。
お互いに「愛してる」と伝えられていたら、結末は変わったのかもしれません……
まあ、それはそれとして別件
本小説の詳細もしくは作者のマイページに飛ぶと良いことがあるかも……???
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