新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
「これは大問題だよっ! 新エリー都の秩序に関わる大事件だよっ!!」
恋人のリンに呼ばれたと思ったら、第一声がこれでした。
リンがロスカリファへ行っていたこともあり、『あなた』とリンがこうして直接顔を合わせるのは久しぶりです。
しかも、今回の待ち合わせ場所はRandom Playでも『あなた』の部屋でもありません。最近できたばかりの高級ホテルです。
そのため、『あなた』もそれ相応の覚悟を決め、いつも以上に身だしなみを整えてやってきたのです。
——それなのに。
「見てよこれっ!! 高校生が、それも人前で、ちゅっ、チューしてるんだよっ!! 信じられるっ!?」
これです。
リンはスマホに写った高校生カップルの写真を突きつけながら、顔を真っ赤にしてぴゃーぴゃー騒ぎ続けています。
「これじゃあ新エリー都じゃなくて、新エロー都だよっ!! 多子若齢化待ったなしだよっ!!」
『あなた』は大きなため息をつきながら、部屋の奥にあるソファへ腰掛けました。
ふわりと身体がソファへ沈み込み、柔らかな感触が全身を包み込みます。
さすがは高級ホテルのソファです。
家のソファでは、もう満足できなくなるかもしれません。
——などと、現実逃避をしながら天井を見上げます。
その間にもリンは、キャーキャー、ぴゃーぴゃーと顔を赤くしながら両手を振り回しています。
かと思えば、今度は顔を手で覆い、そのままベッドへ突っ伏してしまいました。
どうやら、しばらくはこの調子が続きそうです。
そんなリンを見かねて、『あなた』は問いかけました。
“今はそういう時代なんでしょ。ていうか、何でそんなに騒いでるの? リンには関係なくない?”
するとリンは、怒っていますと言わんばかりに腕をピーンと伸ばし、頬をぷくっと膨らませました。
「関係ないけどさっ!! でも、ズルいじゃんっ!!」
その言葉を聞いた瞬間、『あなた』の眉がピクリと動きます。
“ズルいって、何が?”
「エレンばっかイチャイチャしててズルいっ!! 私だってイチャイチャしたいもんっ!!」
『あなた』は「ふーん」と目を細めました。
そして、ゆっくりとソファから立ち上がります。
“……リンもしたいんだ?”
「あたりっ!! ……まえ……だょ……」
勢いよく答えたリンでしたが、直後に自分が何を言ったのかを理解したようです。
みるみるうちに顔が赤くなり、先ほどまでの威勢が嘘のように小さくなっていきます。
「……うぅ」
リンは視線を逸らしながら、指先をちょんちょんと合わせています。
リンは自分の発言を改めて自覚し、真っ赤になりながら、みるみるうちに小さくか細くなっていきます。
『あなた』はリンのスマホを取り上げ、先ほどの写真を見せながら尋ねました。
“このカップルみたいなキス、したいんだ?”
「そっ、それはっ、そにょ……っ」
先ほどまでの威勢はどこへやら。
マスコットのように小さくなったリンは、真っ赤な顔で指をチョンチョンと合わせながら、『あなた』から顔を背けます。
しかし、『あなた』のターンは終わりません。
“ていうかさ、リン……ちょっと、ズルいよ?”
「ず、ズルいってなにがっ!?」
“人を煽るだけ煽っておいて、いざそういうことをしようとするとすぐ逃げるじゃん”
「にっ、逃げてないですけどっ!?」
リンは顔を真っ赤にしながら反論します。
ですが、その声には先ほどまでの勢いがありません。
「……っ」
『あなた』が一歩近づくと、リンは反射的に一歩後ろへ下がりました。
“……逃げてるじゃん”
「ち、違うもんっ! これはその……心の準備がっ!」
“心の準備?”
「そうっ! ひゃあ!?」
しかし、後ずさるうちに、どんどん追い詰められていきます。そしてついに、背中が背後の壁にぶつかりました。
顔を赤く染めたリンは、ゆっくりと近づいてくる『あなた』を押し除けようとします。しかし、『あなた』の手によって腕は抑えつけられ、抵抗はできません。
“あの日、リンが手を出しておいてそれっきり。キスすらさせてくれない。でもこうやって人の気持ちも知らずに煽る……もう、我慢の限界なんだけど?”
「ふえぇ!?」
『あなた』はリンの耳元で囁きます。
“ホテルに呼んで、人のことを煽って。……これって、もう合意ってことだよね?”
「そっ、それは……っ」
今にも破裂しそうなほど真っ赤に染まり、キュッと目を瞑るリン。
このまま距離を詰めれば、リンは『あなた』を受け入れるでしょう。
だからこそ、『あなた』はあえて一歩後ろへ下がり、リンとの距離を取りました。
「えっ……なんで……?」
リンは目を見開き、『あなた』を見つめます。
“リンが何も言わないってことは、同意じゃないってことでしょ? それだと、性犯罪者になっちゃうからね。だから、今日はここまで”
そう言って離れていく『あなた』を、リンは呆然と見つめます。
やがて、リンはフルフルと小さく体を震わせます。そして、リンは顔を上げ、『あなた』を見つめました。
頬は赤く、目は潤んでいます。
その表情はとても妖艶で、『あなた』の背徳心を強く刺激しました。
「いや……じゃない」
リンは『あなた』の袖をキュッと握り、甘えた声で言いました。
「おねがい……私を『あなた』でいっぱいにして……♡♡♡」
おいおいどうなってんだ?
真夏のファンタジィリゾート編とか言っておいて、もれなく全員ホテルインしてるじゃねぇか!!
こんなんただのラブホテル編じゃねぇか!!
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