立向居ユウキの母親。無個性。儚げな雰囲気の優しい美人。ユウキが無個性だったことに負い目があったが個性発現で最近は明るくなった。いじめられたことはなかったが疎外感はあり、無個性にコンプレックスを持っている。
立向居勇大(オリキャラ)
立向居ユウキの父親。無個性。心配性、優しいちょび髭の紳士。周りからは"とにかくいい奴"と言われるほどのお人好し。環境保護に重要な技術を持つ会社を経営しているため稼いでくる。昔困っていた優子を助け、それがきっかけで交際、結婚。無個性にコンプレックスは持っていない。
名前を出す以上、設定置いときます。
基本出ません。
あれから数日。
ユウキは家の中で、そわそわと落ち着かない時間を過ごしていた。
リビングを行ったり来たりしては、何度もため息をつく。
母から渡された飲み物も、気が散っていたせいで少しこぼしてしまった。
その緊張は、キッチンに立つ母──優子にもすぐに伝わる。
思わず小さく息をつき、それから柔らかな笑みを浮かべた。
情けない姿だと思いつつ、やはり嬉しいのだ。
──息子が、友達を連れてくるということが。
ピンポン、とインターホンが鳴る。
ユウキはびくりと肩を跳ねさせ、そそくさとモニターを確認した。
予想どおりの人物だった。
短い応答を交わし、玄関へ向かう。
ドアノブに手をかけて、扉を開く。
そこに立っていたのは、ライバルの姿。
「立向居! 今日はよろしくなー!」
「うん。よろしく、切島くん」
今日は切島くんと特訓をする約束の日であり、
そして、彼を初めて家に招く日でもあった。
屋上での決意からしばらくが経ち、ようやく切島くんを家に呼ぶ都合がついた。
立向居家では、母が専業主婦として家事のほとんどを担っている。
友達を呼ぶと伝えたとき、優子は驚いた後、目に見えて嬉しそうに笑った。
「じゃあ、おもてなししなきゃね。少し準備の時間ちょうだい?」
それ以来、掃除をしながら鼻歌を歌い、料理中も終始上機嫌だった。
今までどれほど心配をかけてきたのか──その反動なのだろう。
練習がてら気合の入った料理を前に、申し訳なさを覚えつつも、ユウキは残さず食べた。
そして迎えた、いわばXデー。
冷蔵庫には昼食用の材料がぎっしりと詰め込まれ、
家中は磨き上げられ、特訓後に風呂に入ることまで想定して浴室も輝いていた。
切島くんを招き入れ、母を簡単に紹介してから、自分の部屋へ案内する。
「お邪魔しまーす……って、なんか質素な部屋だな。ベッドと机だけかよ」
「まぁ、趣味も特にないからね。生活できれば十分かなって。一応、漫画は結構好きで読んでるけど」
「馬鹿野郎! 漫画は男子の標準装備だろ! くそー、意外な一面を見つけてやろうと思ったのに!」
悔しそうに頭を掻く切島くんを横目に、
ユウキは机の上に置いていたタイヤ特訓用のグローブを手に取った。
数週間しか使っていないはずなのに、縫い目は擦り切れ、表面には細かな傷が増えている。
──そろそろ、買い替え時かもしれない。
着替えはすでに済ませてある。
二人して外へ出るだけで、準備は整った。
「タイヤ特訓は……意外性あると思うよ。多分、君の想像以上だと思う」
「へぇ? そりゃ楽しみだな」
切島くんは腕を鳴らし、好戦的な笑みを浮かべた。
立向居家の庭は広い。
しかし、少し歩けば、すぐに目的の場所へ着いた。
庭の中央には大木が一本立ち、その太い枝からロープで吊るされたタイヤが揺れている。
「一旦、見本を見せるね」
切島くんを数歩下がらせ、グローブをはめる。
肩を回し、脚を伸ばし、体をほぐす。
そして、タイヤを掴み、思いきり投げた。
空気を切る音。
一瞬の静止。
次の瞬間、重力に引かれた黒い塊が加速して戻ってくる。
「うおぉぉぉぉ!」
姿勢を低くし、衝撃に備える。
腕で止めれば吹き飛ばされる。
だから、足から地面へ力を流す。
足、腰、背中。
全身で衝撃を受け止め、摩擦で勢いを削ぐ。
──止まった。
これは、数週間タイヤに弾き飛ばされ続けた末に身につけた技術だった。
筋力が足りないなら、受け流し方とタイミングを磨くしかなかった。
タイヤを元の位置に戻し、振り返る。
「……これ、ヤバくねぇか?」
切島くんは顔を引き攣らせていた。
地面には、二メートル近くに及ぶ摺り跡が残っている。
この特訓による衝撃は、理論上、軽自動車が時速六キロで衝突するのと同程度だ。
幼児が走る程度の速度でも、
それが約一トンの鉄の塊だと考えれば、その恐ろしさは明らかだった。
「最初は、軽めに投げたほうがいいよ」
切島くんは答えず、黙ってグローブをはめる。
タイヤの前に立ち、息を吸い込み、全力で投げた。
直後、体が硬化する。
「う、おおお……おわぁ!?」
衝撃を真正面から受け、一瞬拮抗したかに見えたが、
次の瞬間、体が宙に浮いた。
「だ、大丈夫!?」
駆け寄ると、切島くんは数秒沈黙し──突然笑い出した。
「……ふ、ふははは!」
頭を打ったのではと一瞬思ったが、杞憂だった。
彼は笑いながら立ち上がる。
「立向居、すげぇな! これを生身で受け止めてるんだもんな!」
悔しそうに拳を握り、だが意志は目を輝かせた。
「……俺も、負けてられねぇ!」
再びタイヤを投げ、挑み続ける。
がむしゃらな姿は、実に切島くんらしい。
ユウキを意識していることからライバルと認められてると思い、自然と笑みが溢れる。
何より、仲間と切磋琢磨している今の環境が嬉しかった。
その後、二人で交互にタイヤを受け止め、存分に汗をかいた。
昼食後、二人は縁側で体を休めていた。
午後も特訓するつもりだったが、切島くんがぽつりと口を開く。
「硬化を、もっと硬くしたい?」
「ああ。さっきのタイヤだ。勢いに押されて、硬化が負けた。どんな衝撃にも負けねぇくらいになりてぇ」
切島くんの個性「硬化」は、体全体、あるいは一部を硬くする能力だ。
現状では、大きな岩に拳を打ちつければ破られる程度の硬度らしい。
ヒーローとして前線に立てば、
増強型や巨大化の個性と相対する可能性も高い。
その不安は、もっともだった。
力になりたいと思ったユウキは自身の秘密である夢を回想した。
「これは……俺の憧れてる人の話なんだけど」
──
「すごいですね、それでそのノートにはなにが書いてあったんですか?」
満点の星空の下、イナズマキャラバンの上で円堂さんと夢のユウキが話していた。
陽花戸中学に訪れた真の理由。
曰く、円堂さんの祖父が残した必殺技のノートを探しに来たのだ。
「究極奥義さ」
「きゅ、究極奥義?」
究極奥義という言葉に円堂さんは目を輝かせる。
「ああ、すごい技ばっかだ。思い出しただけで震えるくらいな。正◻︎◻︎◻︎拳ていうパンチ技があるんだぜ。俺はまずこれをマスターしてみせる」
──パッと開かず、グッと握って、ダン! ギューン! ドカーン!
突然の擬音に混乱するが、その究極奥義を出すための説明なのだろう。
夢のユウキはその言葉を聞き、どのような動作か思考し始めた。
「ダン、ギューン、ドカーン.ダンで踏み込むんですよね。で、ドカーンでパンチ。ギューンってなんだろう?」
「そうなんだよなぁ。ギューンが問題なんだよ。ギューンが」
手をパーからグーにする。
ダンで踏み込み、ギューンで何かをして、ドカーンでパンチを打ち出す。
大体の行為は予想しつつも肝心なギュンという擬音語がわからなかった。
「「ギューン、ギュン? ギュン」」
2人して悩みながらその日は解決しなかった。
その後、沖縄で大海原中学と戦い、サーファーが波に飲まれないような腰を入れる動作がギューンであるとわかる。
教えてくれた人物は派手な髪、日焼けした肌、竹を割ったような性格をした綱海さんというらしい。
綱海さんとサーフィンの特訓をして、円堂さんは正◻︎◻︎◻︎拳を習得することができた。
──
「ふーん? で、それがどう関係すんだ?」
切島くんは正直な反応を返す。
「伝えたかったのはさ」
ユウキは笑って続ける。
「がむしゃらに鍛えるのもいいけど、まずは硬化の課題を整理するのが大事なんじゃないかな」
円堂さんは必殺技習得に向けて、まず最初に課題を整理していた。
必殺技のコツであるダン、ギューン、ドカーンがどのような動作なのか予想し、ギューンの試行錯誤を続けた結果、必殺技を習得することができた。
切島くんは眉をひそめる。
ユウキは続けた。
「たとえば、皮膚だけが硬化してるのか、筋肉や骨まで影響してるのか。部位ごとに硬さは同じなのか、持続時間はどうなのか……」
一つずつ言葉にするうちに、ユウキ自身の頭の中も整理されていく。
「できることを把握してから、その中で“どうすれば強度が上がるか”を考えたほうが、近道だと思う」
沈黙。
切島くんは腕を硬化させ、じっと眺める。
表面を叩き、指でなぞり、感触を確かめる。
「……なるほどな」
しばらくして、低く呟いた。
「俺、硬くすることばっか考えてた。でも、自分の個性をちゃんと理解してなかったかもしれねぇ」
そう言って、ふっと笑う。
「ありがとな、立向居」
その一言に、胸の奥が少し温かくなった。
ちゃんと、力になれたのだと感じる。
「……立向居はどうなんだ?」
切島くんは、今度は遠慮がちに聞いてきた。
「敵事件のときの個性。まだ再現できてねぇんだろ?」
──ゴッドハンド。
あの時、鉄のポールを受け止めた巨大な手は未だ一度も発動できていない。
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
「うん……まだ一度も、完全には」
庭へ出て、再びタイヤの前に立つ。
構えは覚えている。
オーラの出し方も、手の形を作るところまではできる。
踏み込み、重心移動、右手を突き出す。
「ゴッドハンド!」
青いオーラが迸り、手の形を成す。
だが──小さい。
そして、どこか頼りない。
タイヤがぶつかった瞬間、ひびが入り、霧散する。
「脆いな」
切島くんの言葉は率直だった。
「構えとか、出し方は合ってると思うんだけど……」
ユウキは拳を握りしめる。
「あの時は、必死だった。子供を助けなきゃって、それしか考えてなくて……」
冷静さがあれば、再現できたのではないか。
そんな後悔が、ずっと胸に残っている。
「……無個性だったからさ」
思わず、言葉が零れる。
「みんなよりスタートが遅れてる。とっかかりも掴めないままじゃ、このままヒーローなんて……」
──なれない
不安を吐露したかった。
あの時のゴッドハンドは確かにすごい技、個性だった。
だが技が使えないのであれば一気に頼りなくなる個性である。
期待値が高いだけの個性ならばヒーローを目指すどころの話ではない。
世の中には色々な個性があり、ヒーローは人気の職業である。
周りとの差を考え生まれた焦燥感がユウキを少しずつ追い詰めていた。
切島くんは呆れたようにため息をつく。
「悩みすぎだっての」
「え?」
切島くんは、にっと笑う。
「気楽に行こうぜ。俺だってまだまだだ。でも、ヒーローになることを諦めねぇ」
──諦めない。
それは、ユウキが憧れた人の、根幹にある言葉。
「諦めないのが、漢だろ?」
切島くんの視線が、まっすぐ突き刺さる。
「お前は、諦めんのか?」
胸の奥で、何かが弾けた。
「……諦めない」
「よっしゃ! じゃあもういっちょタイヤ行くぞ!」
再び、庭へ。
個性を使いながら、何度も吹き飛ばされる。
それでも、二人は笑っていた。
──
エイリア学園との試合を控え、新必殺技の練習をしている時だった。
綱海さんのシュートが止められず、夢の勇気にしては
「波だって高けりゃ高いほど乗りがいがある。ま、気楽に行こうぜ、気楽に気楽によ!」
夢のユウキは焦りを感じつつも綱海さんの言葉を受け入れた。
海のような広い心を持ち、困っている人を見かけたらほっとけない兄貴肌。
それでいてサッカー未経験にも関わらず、雷門イレブンと渡り合う鬼才の持ち主。
綱海条介。
彼の言葉は今の自分によく刺さる。
焦ってばかりじゃ何も解決しない。
それを教えてくれた綱海さんと切島くんが重なって見えた。
感想と評価お待ちしてます〜!
ちなみにイナイレ技で1番好きな技はエクスカリバーです。
エドガーのエクスカリバーが漢過ぎて......^ ^