完全版・セイウンスカイは正論男に褒められたい   作:春華ゆが

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第三章は日常編!!


第三章 杞憂とデクレタム
星雲相墜つサイレントデイ


 

 春と秋は似ている。暑い時期と寒い時期の間にあることとか、どちらにせよ天皇賞があることとか。何より穏やかで快適な気候で、毎日がお出かけ日和の素敵な季節というのが素晴らしい共通点。つまり何が言いたいのかというと、私とトレーナーさんが春ぶりに「ここ」に来ているのもある種当然、みたいな話だ。

 

「トレーナーさん、今日はいくらでも釣っていいですよ」

「何を言ってるんだ。釣り堀で釣りすぎるとあとでお金を払う段になって困る」

「おお、それに気づくとは。前回の教訓が生きてますね」

 

 ひらひらと水面に落ちる紅葉。秋を象徴するようなそれが作る波紋の下には、こちとら季節の巡りなんて関係ないって感じで相変わらず所狭しとニジマスが銀の鱗を光らせながら泳いでいる。そんなここはもちろん、春以来にやってきた釣り堀だ。十一月の初日になってようやく、私はトレーナーさんからの菊花賞祝いを頂くことになり、そして例のごとく行き先に釣り堀を指定した、というわけ。そりゃあ当然今回もトレーナーさんの奢りだけど、そこについてはむしろ安上がりな女の子だと感謝してほしいくらい、なんて。釣具を受付から貰ってこちらに走ってきたトレーナーさんに、そんなことを考えながら私は一つの質問をする。ちょっとした推測。今の状況とは三割くらいしか関係ない、空気も流れもない質問。もし今やってるのが男女の逢引きだったなら、こんなこと絶対聞いちゃいけないよな、なんて。もちろんそうではないので、遠慮なく聞いちゃうんだけどね。

 

「そういえばトレーナーさん、キングとはどこ行ったんですか?」

「……キングと出かけたこと、スカイに伝えた記憶がないぞ」

 

 ほら、的中。そこでしらばっくれることをできないのが、トレーナーさんが不器用たる所以である。なーんだ、やっぱりキングともお出かけしてたんだ、私だけじゃなくって、という予想のついていた事実を知る。とはいえ別に二股とかそういう関係でもなんでもないので、私の質問も単なる好奇心によるものなのだけど。

 ……いや、本当に怒ってないですからね。照れ隠しとかじゃなくて、ここで嫉妬なんてしたら私は一体何だっていうんですか、まったく。ちゃんと大人の対応に配慮できるくらいには、子供といっても成長した子供なんですよ。

 

「そりゃ、言ってませんから。でも予想はできます。トレーナーさん、私だけ贔屓とかできないでしょ。菊花賞に<アルビレオ>から出たのは、私だけじゃないんだから」

「そうだな。……とりあえず、釣りを始めるぞ」

「いいですけど、誤魔化すの下手ですね」

 

 というわけで、とりあえず。ちゃぽん、ちゃぽん。二人の釣り糸がほぼ同時に水面に落ち、ほどなくして手応えが返ってくる。川釣り海釣りならのんびり並んで会話しながら、なんてシチュエーションは作りやすいのだけど、水面に糸を垂らせばすぐに釣れる釣り堀というものでは残念ながら休む暇はない。結局素直に、下手くそな誤魔化しに付き合ってしまっている。

 まあ釣り堀とはいおうと、やっぱり釣りには真剣になっちゃいますね、私。

 

「おっ! 釣れた!」

「よっ、と。こっちもですね」

 

 それにどれだけ楽に釣れようと、竿を振って引いて獲物が手に入るという、釣りの原則的な楽しさは保たれている。忙しなくても入れ食いでも、釣りは釣り。二度目の釣り堀で思うのは、案外、もしくはやっぱり、私だってこういうのも悪くないと思えるな、ってこと。もちろんトレーナーさんの奢りなら、だけどね。魚の手応えがあって、それに満足。そんな当たり前を目一杯喜ぶあなたを見ながらの釣り堀なら、悪くない。

 ……まあ、誤魔化しに付き合うのもこの辺にして。

 

「で、キングとはどこ行ったんですか? 気になるじゃないですか。そんな人に言えないようなところに行ったんですか?」

「そうだな、隠すことではないな」

「そうですよ、単純な話です。別にどんな話をしましたか、とか、そんなとこまでとやかく聞きません」

「……それは、ありがたいな」

 

 まだ釣り糸の先端で暴れるニジマスの口から針を抜きながら、その間ですかさずトレーナーさんに追撃。とはいえ実際本当に私の言う通りの単純な意味合い、どこに行ったんだろうってことが気になるくらいの意味合いの質問で、菊花賞のあとのキングが話してみてどうだったか、彼女の様子がどうだったか、ということはあまり気にしていなかった。あのレースの翌日からの彼女が菊花賞までとは明確に変わっていたのは、私でも感じ取れたから。彼女もまた、成長している。大人になっているのだと、そう思わされた。だから、大丈夫。私が気をつけなきゃいけないとしたら、君に置いていかれないようにすることくらいだ。

 とはいえそれでも念のためというか、負けてしまった担当ウマ娘には元気づけのためのお出かけなんかが欠かせないとしたら、つくづくトレーナーというのは大変な仕事である。そのことを他の担当に、からかい半分意地悪半分でつっつかれるのも含めて。……私の時もお出かけじゃないけどしっかり慰めたり励ましたりしてくれたのは、私にとってある種の救いにすらなったのは確かだったから、それもまた必要なことなのくらいはわかってやってるけどね。

 

 

 

 まあそんな同情にもならない同情をしながらぴしっと顔を見つめて返事を待ちつづけてやると、しばらくしてやっと、ようやくトレーナーさんが話し始めた。やっぱり、躊躇いながら。躊躇うのも当然、みたいな答えではあったけどね。別の女にデートの内容を報告する、みたいなふうに見えなくもない妙な修羅場もどきを抜きにしても。

 

「……有名なオーケストラの演奏会、だった」

「なるほど、それはそれは。流石キング、というべきか」

 

 やっと話に出てきたそれを聞いて、トレーナーさんが話を渋っていた理由にもなんとなく察しはついた。オーケストラのコンサート、かあ。やっぱり良家のお嬢様の要求と庶民の私の要求じゃ、お出かけと言って思い浮かぶものの発想がそもそも違うし、なんというか私とキングじゃレベルが違うと思わされる。

 ちなみにこの場合のレベルとは、金額的な問題である。他にもあるんだろうけど、私にはわからない領域な気がするし。自分もコンサートなど聴きに行ったことはないからわからないが、少なくとも釣り堀よりはだいぶ高級だ。キングのことだから結構いい席を取らせただろうし、それにもちろん嫌な顔をしないトレーナーさんまで想像できる。気を遣ってとかではなく、多分この人は本当に嫌な顔をしないはず。だってまあ、キングがしっかりエスコートしてくれるトレーナーさんのことも考えて、二人とも楽しめるようなものを選べることくらいはわかるから。そしてそんな素敵なものを見たあなたは、まるで子供みたいに目を輝かせてしまうから。

 ……あなたも本当、ご苦労様ですねえ。大人のくせに結構純真なところがあるのが、この人のおちょくりがいのある……おっと、長所だ。

 

「それが、昨日だ」

「昨日ですか。二日連続で女の子を取っ替え引っ替えとは、トレーナーさんもなかなかやり手ですねえ」

「……そうだな」

 

 そしてそのあとになって私もちゃんとお出かけに誘うし、そのことにも悩んでしまう。同じレースに同じチームから出て、結果自体は明確に分かれたはずの二人を、そのあとの扱いとしては並べてしまうことに、やっぱりこうして悩んでしまっている。片方だけのフォローは良くないと、不器用な大人がとった手段。それならば双方同じ扱いをするべきだなんて、無茶な正論を通そうとしてしまう。

 そんな正論の裏には、どうすれば一番私たちのためになるか、なんてことばかりを考えて。結局この人は正論に基づいた平等性を求めているのではなくて、本質にあるのは個人的な優しさでしかないのに。大人でも子供でも誰でも持てる、だけど誰にとっても持つことの難しい、他者への想いというものでしかないのに。

 そういったエゴとも呼べる感情を包んで一見見えないようにしているのは、こうやって私が少し掘り返せばすぐに解けてしまうような、固くて脆い正論というもの。

 この人は、そういう人だから。やれやれ、つくづく難儀なトレーナーさんだ。そんなところにお節介を焼く私の方も、またまた難儀なやつなのかもしれないけどね。

 

「何で元気なくすんですかトレーナーさん、せっかくのお出かけなのにセイちゃん悲しいです」

「元気はある。まだまだ努力が足りないと思っただけだ」

「努力、ですかあ。相変わらず好きですね、そういう熱血」

「当然だ! 諦めないことが、やはり勝利への近道だからな」

 

 はあ、結局そうなるのか。そこは頑固で強情で、いつまでたっても私とウマの合わないところ。けれどこうやって、頑固なところも含めて、あなたはあなたのまま変わらないからこそ。だからこそ私は、あなたを信頼しているのだろう。私たちは互いの影響を受け、けれど本質は変化しない。どこまでも相手に触れていくけれど、それぞれの光を覆い隠してしまうことはない。限りなく重なり、されど同一にはならない二重星。

 ぽちゃん。再び水面に落ちる波紋も、やはり干渉し合うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間、二時間、あともうちょっと。釣り竿を振りまくってやがて手が疲れてきたあたりで、私たちはバケツいっぱいのニジマスと共に釣り堀スペースから離れる。トレーナーさんの方をちらりと見たらなんとか前回よりは釣れていたようなので、これからこの魚の山を全部食べなければいけないことを考えても、これくらいがちょうどいいだろう。

 釣り堀併設の食事スペースも、春ぶりだ。バケツを渡せば釣り堀のスタッフさんがそれを全部焼いて大きな皿の上に山積みにしてくれるのも、春ぶり。なんだかんだとトレーナーさんと私は自重せずに釣りつづけたので、これから大量で熱々の焼き魚を二人で食すことになる。これでもウマ娘である私はこのくらいの量なら食べ切ることができるつもりだけど、こんなに釣ってしまってトレーナーさんの財布と胃袋は大丈夫なのだろうか?

 釣り堀は釣ったぶん金を払って腹を満たさないといけないことなんて、一回来たことがあるんだから知ってるはずだけど。

 と、テーブルでトレーナーさんを待ちながらそんな私なりの配慮とも呼べる思考を並べていたのだが、しばらくしてからこんもりと盛られた焼きたてのニジマスの山を手に帰ってきたトレーナーさんの言葉は、こうだった。

 

「これだけ釣れば、少しはキングに負けないな」

 

 ……はあ。本当に、何度も思わされることすら癪なくらい、この人は難儀な性格だ。苦手だなあ、噛みあわないなあ。まったく、どうしてそんなに私なんかに気を遣ってくれちゃうのかな、ってさ。まあ、ちゃんと気持ちは受け取ってやろう。しっかり嬉しくなってしまうんだから、少しくらいは嬉しいって伝えてやろうか。

 

「そうですね、キングとおあいこです。ありがとうございます」

「ああ! 俺も楽しかったぞ!」

 

 自分でキングも私もお出かけに連れていって、それで自分でキングと私の両方のイベントを戦わせているのだからなんというか世話はないのだが、それだけチームメイト同士に優劣をつけたくないということなのだろうか。私たちが身を置いている世界はむしろその対極で、勝敗を互いの存在に刻むために走っているのに。それは事実。それは揺るがせない。そしてこの人も、それはわかっているのだろう。ウマ娘の生きる世界は、残酷に明暗を分つ世界だと。

 たとえば今日も、そう。食事スペースは結構広くて二桁あるかないかのテーブルが私たちの周りにあって、それでもそれらは大体食事をする人たちでそれなりに埋まっていたけれど、そんな人たちすべての視線は一つの場所に釘付けだった。私とトレーナーさんも含めて、たった一つの画面を見ている。

 食事のお供によければどうぞ、そんな感じの普段は環境音代わりの賑やかしが主な役割なんだろう、私たちを壁面から見下ろす食事スペース備え付けの大きなテレビ。

 そこに映し出されていたのは、バラエティやワイドショーみたいな何でもない番組ではなくて。少なくとも私にとってはいつもそうだし、今日のそれは日本中の誰にとっても注目の的になると言っても過言じゃない。

 そんな誰もが目を向けているテレビの中に映し出されていたのは、もうすぐ始まるトゥインクル・シリーズのメインレースの特集。

 世界を変えるかもしれない、伝説の開花を予感させる一戦だ。

 

「十一月一日11R、『一』づくしの今日の東京レース場のメインレース、天皇賞(秋)! それを目前に控え、既に観客席は大盛り上がりを見せています!」

 

 テレビの中の実況さんは、そう画面越しにまで届きそうな大声で現地の興奮を伝えていた。ウマ娘にとってのレース、それはさまざまな意味を持つ。もちろん走るのは楽しいし、そうでなきゃ走る意味はない。

 

 

 けれど同じくらい、私たちは雌雄を決することに拘る。勝つことに、誰かに勝ちたいって気持ちに拘る。多分、そうでなければならない。そうであることも、やはり走る理由に数えなければならない。走ることと勝つことが、ウマ娘の本能だから。青い青い空のように何も描かれていないトゥインクル・シリーズに、自分だけの軌跡を描きたいと願うのが、そこにいる私たちみんなの想いだから。

 

「今日の天皇賞、エルコンドルパサーが出るんだったな」

「はい。エルには二度と負けたくない相手がいるので」

 

 ホクホクと熱くて美味しい焼き魚の山を少しずつ処理しながらも、口に一匹ずつ入れる合間に自然とトレーナーさんと天皇賞の話が始まった。

 レースの話。勝ち負けの話。トレーナーさんがトレーナーである限り、私たちウマ娘がウマ娘である限り、どんなにみんなが並び立つことを願っても、どんなに誰もが勝ちたいと願っていて全力で走っていても、それでも勝者は一人だけ。その瞬間にある最高を手に入れられるのは、一人だけ。そんな何度も直面した現実を、今日は横から二人で眺めていた。テレビの画面越しに、遠く遠くから。

 やがて本バ場入場が始まり、エルが入ってきた時には大歓声と呼べるものが湧いていた。それはエルが積み重ねてきた期待の証。勝利を掲げてきた実力の証明。巻き起こる声援は疑いようもなく、とても大きなものだった。

 だけど最後の一人になって、彼女の入場のタイミングで、直接現地で聞いていない私にもわかるくらいに一際大きな歓声が聞こえた。エルよりも、先ほどまでの誰よりも、その姿を出迎える声は大きい。さらさらと伸びる栗毛の真っ直ぐなロングヘア、静寂を抱く翡翠の瞳。レースの前だというのに落ち着いた様子で、あれほどの観客の声すら聞こえていないみたいにゆっくりとそのシルエットを現す彼女。今日の一番人気は、エルじゃなくて。

 

「さあ、最後に登場したのは、サイレンススズカ!」

 

 一枠一番一番人気、"異次元の逃亡者"サイレンススズカ。

 かつてのチーム<リギル>、エルやグラスちゃんのチームの先輩であり。

 今はチーム<スピカ>、スペちゃんのチームメイトで、憧れだ。

 ちなみにそんなスズカさんと私には、気にかけるほどの接点はほとんどない。だけどそれでも注目してしまう、ウマ娘のある種の頂点に近い人。だからやっぱり、私でさえ意識してしまう。サイレンススズカというウマ娘は、あらゆる人の世界にいる。それだけの、大きな大きな存在だ。期待を超えた先にある、夢さえも現実に変える力。きっとあの人はそれだけのものを持っているから、誰もがその姿に心を奪われるのだ。

 けれど、単にそれだけでもなくて。ほんの少しだけ、私とスズカさんには接点がある。つながりのかけらが、存在する。そしてそのほとんどないうちの少しの接点を作った人がいるとしたら、それは今横にいる人。私のトレーナーさんだ。

 

「なるほど。エルコンドルパサーにとっては、毎日王冠以来のサイレンススズカへのリベンジというわけだな」

「はい、だから燃えてましたよ。私にとっての毎日王冠といえば、京都大賞典の同日って感じですけど」

「あの時か」

 

 そう、塩辛いニジマスを食べながらもテレビを見つづけ、声だけのやりとりで二人で確認する通り。きっとあちらは私のことなどまだ何も知らないけれど、私はスズカさんのことをそれなりに認識しているのだ。異次元の逃亡、未来に繋がる夢を見せる走り。同じ「逃げ」でも、私とは違う。一方的なものかもしれないけれど、その差を認識している。

 差であって、重ならないからこそ意味があるのだと信じている。あのスズカさんの逃げを、ただひたすらに突き放し続け最後にもう一度脚を伸ばすあの逃げを真似することは、私には決してできないこと。

 だからこそあの京都大賞典では、私は私の逃げをした。誰かの代わりになんて誰もなれないから、私なりの逃げを見せることにした。暴走を装い引き寄せてからペースを崩してやるなんて、きっとこれは恐れ多くも私にしかできない逃げ。スズカさんには、できないはずの逃げ。

 だから、そうした。東西逃げウマ並び立つ、そう言わせてみせるために。

 そして、できた。私は私なりの走りを、私らしさを確立した。

 だけどそんな意識のきっかけは、私一人で見つけられたものじゃない。そのきっかけになったのは、紛れもなくトレーナーさんの一言だった。「サイレンススズカに負けるな」、この人はそう言ったのだ。無謀にも、だけど策謀を以て。

 私が私らしくあれば、誰にだって負けるわけがないと。

 

「はい、トレーナーさんもご存知のあの京都大賞典です。スズカさんに負けないよう、ひいひい言いながら走りましたとも」

「そうだな! あの時のスカイはサイレンススズカに負けていなかった!」

「そんな急に大声出さないでくださいよ。だから個人的に、スズカさんのことは気にしてるんですよね」

 

 ウマ娘が、他のウマ娘を気にする。その言葉は、きっと色んな意味を持つものだろう。多くがトレセン学園に通い、他のウマ娘と顔を合わせる機会も多い。ウマ娘にとって同種である他のウマ娘を機にすることなんてきっとたくさんあって、理由もたくさんあるだろう。だけどその中で、主だった一つとして挙げられるのは──。

 

「私、いつかあの人と走りたいです」

 

 ──滾り昂る闘争本能。欲深く獰猛で、されど眩しいくらいに前向きな、私たちが走る理由の一つ。勝ちたいという、純粋な感情の発露。やっぱり私は、すべてに勝ちたい。願いや祈りと呼べるほど繊細で綺麗な気持ちじゃなくても、そう思うことだけは止められない。

 そんな場違いとも言える渇望を告げたあとの沈黙は、互いの魚を食べる手すら止まるほどのものだったけど。だけど、時間は進んだまま。そこにある沈黙は何かを感じ取り考えるから。また一つ、互いに変化の波紋を落とすから。

やがて、トレーナーさんは喋り出す。いつも通りの言葉だったけれど、声色は少し違っていた。ほんのちょっぴり、嬉しそうに。

 

「そうか。なら、もっとトレーニングだな」

「はい。頑張らないといけませんねえ」

 

 そしてそのいつも通りの言葉に、こうしてからかいも誤魔化しも交えずに返してしまうのは、我ながらこちらもずいぶんと変わってしまったというか。けれど多分、ある意味では素直になっただけ。変化だけど、本質はやっぱり変わらない。

 それにやりたいことをやりたいと言えることは、ありふれた幸せの一つだろうから。ここにあるのも、微かだけど確かな成長だった。

 

「さあ、十二人のウマ娘がゲートに入りました! サイレンススズカを捕まえることは果たしてできるか!」

 

 ……と、そうこうしているうちにゲートイン。注目されているのはやはりスズカさん、何しろダントツの一番人気だ。内枠も逃げウマには有利だし、調子もすこぶる良さそうで、既に誰もがその勝利を疑っていない気さえした。そんなことはもちろんわからないけれど、最近のスズカさんのレースはあの毎日王冠のように、本当に夢のような走りを見せてくれるから。

 それに期待してしまうのは、誰だって無理もない。

 さあ、果たして今日のサイレンススズカは、どのような走りをするのだろうか。皆が彼女に期待しているからこその、一番人気という事前投票。期待と不安はコインの裏表ではあるけれど、今のスズカさんからはそんな私の理屈なんて吹き飛んでしまいそうなオーラを、画面越しにまで感じさせている気がした。

 とはいえ伏兵贔屓としては、エルを応援したい気持ちもあるかな、なんて。友達のよしみと言ってはこのタイミングでは失礼かもしれないけれど、やっぱりレースの結果なんて走ってみなくちゃわからない。ちゃんと、エルは勝つ気なんだから。きっと自分だってかつて同じチームにいたスズカさんのことは憧れの一つとしてあって、だから彼女だって負けられない。

 頑張りなよ、エル。君を独りにしない人は、確かに存在するからさ。

 とはいえ、だった。それでもやはり人気は揺るがぬ人気であり、それと同時に人気だからこそ生まれる責任というものがある。テレビの外で私含めた大勢が見守っていて、テレビの中でも観客席は満員御礼。そしてそれだけの注目の中で、今スズカさんが背負うものが一番人気という期待の表れ。期待だからこそ、重く脚を縛りかねないもの。

 

 

 一番人気の重みとは、どれほどのものなのか。

 私にはわからない。私の勝利はいつだって、上位人気をひっくり返す大物食い。だからこそ驚かせることができて、だからこそ期待に応えられた。

 でも、今のスズカさんを包むものは真逆だ。二番人気から大きく突き放しての一番人気なんて、闘う前から勝つことを約束させられたようなもの。そんな勝って当たり前とさえ言われてしまいそうな状況で、なおも驚きを与えられるとしたら。予想を超えて期待に応えるような、誰もの記憶に刻まれるような最高のレースができるとしたら。

 

「今、ゲートが開きました!」

 

 それだけの埒外の事象を可能とする存在の一人が、サイレンススズカ。

 常識や限界さえ置いていくような、異次元の逃亡者だ。

 

「サイレンススズカがすーっと上がって先頭! 二番手にはエルコンドルパサー!」

「エルはスズカさんを突き放させない作戦、だね」

「そうだな。スカイでもそうするか?」

「そうですねえ、逃げ対決で競り合うのは嫌ですからね。でも、逃げはどこまでも自分のペースなんですよ」

 

 そう私が言ったのを知ってか知らずか、画面内のスズカさんはどんどんエルを突き放していく。突き放させないと後続が狙いを定めても、それすら気にせず逃げることができてしまえばいい。俗にいう大逃げで、その理屈はシンプルだ。

 誰よりも、速ければいい。

 私の場合、大逃げというものは一種の釣りとして使い、あとで速度を落として他人を誑かす数ある搦手の一つだけれど、スズカさんの場合は違う。

 もっと単純明快で、たった一つの方法論しか存在しない。

 最初に抜群に引き離し、最後までトップスピードを保ってしまう。常に一定以上速度を維持しつづけて先頭を譲らないのが逃げという脚質における走り方ならば、スタートからゴールまで最高速なら誰も追いつくことはできない。

 ……それだけ。

 それだけだからこそ、強い。

 それだけだからこそ、誰にも真似できない。

 同じ逃げウマの私には、その異常さが他の人よりもよくわかる。

 

「まもなく三コーナー! これだけの差が開いています!」

 

 誰よりも速く風を切り、何バ身も差を付けて。走り始めてからずっと、サイレンススズカの脚色はまったく衰えない。誰がどう見ても絶好調で、もうあとは「誰が勝つか」ではなく「どう勝つか」だった。どれほどの驚きを以て、サイレンススズカはこのレースを終えるのか。期待は裏切らず、予想は遥かに超えてゆく。これこそ、すべてをひっくり返す驚愕というもの。

 ……悔しいけど、あの人には私の目指すことができているんだ。

 そして何より、誰よりも走ることを楽しんでいるんだ。

 ウマ娘の理想型、その一つが明確に今ターフの上を駆けている。

 ああ、本当にすごいなあ!

 

「あれに勝つのなら、本当に大変だな」

「……はい」

「だが俺は君を信じている。いつか必ず」

「うん。なら、私もそう思う」

 

 でも。それでも、私の気持ちは変わらない、トレーナーさんと二人でスズカさんの走りに圧倒されながら、それでも私の勝ちたい気持ちは変わらなかった。そしてそれは、トレーナーさんも同じみたい。「信じている」、だなんて。私みたいな嘘と隠し事が服を着て歩いているようなのを、信じてくれるなんて。何度か聞いたけど、やっぱりその言葉はくすぐったい。だってバカみたいじゃないか、根拠も何もあったものじゃない。でもそうやって、チームメイトを贔屓してこそのトレーナーさんなんだよね。時には二人のチームメイトに優劣を付けたくなくて悩むこともあるけど、それも含めて。この人はきっと、チームメイトが最高の存在でいてほしいのだと。だから、信じているのだと。そういうことなら、やっぱり嬉しい。

 ならばあなたの期待に応えたいと、そう思う。

 私もいつか、これくらいの憧れになりたいと、そう望む。

 

「サイレンススズカが飛ばしに飛ばしている! もう何バ身離しているのか! 会場の盛り上がりは最高潮に達しています!」

 

 レースは中盤で、更に加速するスズカさん。スタミナ切れはウマ娘に誰しもありえることなのに、そんなそぶりは微塵も感じさせない。どんな理由があっても、このあとに失速するなんて有り得ないように見えた。

 つまり逃げウマの死角である最終コーナー以降のスパートすらも彼女は克服し、最初から最後まで加速しつづける。

 「逃げ」の完成系、いや、「走り」の完成系の一つがそこにある。

 ただ一人、自分だけの景色を見ている。

 彼女にしかわからない世界の見え方が、異次元の速度の中に存在していた。

 そんなことを考えるうちにも、先頭を走るスズカさんは更に踏み込んで。

 

「おーっと、更に加速した!」

 

 速度を増すたびに呼応して、スタンド中に更に巻き起こる大歓声。テレビの先の私たちさえ、おおっと声を上げてしまうほど。独壇場という表現が相応しかった。この状況のためだけにその言葉があるんじゃないかって思うくらいに、彼女独りが壇上に登る舞台だった。

 

 テレビカメラの範囲ではもう後続を収められず、スズカさんだけが画面いっぱいに映し出されていた。きっと観客席の皆も、スズカさん以外を見る余裕なんてなかった。

 それほどまでに圧倒的で、たとえ他の子を応援していたってその姿から目を離せるわけなんかなかった。

 あまりにも鮮烈。

 あまりにも桁違い。

 あまりにも、夢のようなその走り。

 だから、誰もがその瞬間まで見ていた。

 更に更にスピードを上げて、大ケヤキの陰に一瞬隠れるまでは。

 そしてあっという間に出てきて再びそこに現実離れした走りが存在することも、だから誰もが疑わなかったのだ。

 期待していたから。

 信じて、いたから。

 

 

 

 

 だから。

 だから、誰もが見ていた。

 さまざまの想いを込めて、日本中の百万をゆうに超える人数が見ていた。それだけの人の気持ちを背負って、そしてそこにあるものすべてさえ超えてサイレンススズカは走っていたのだ。

 その瞬間までは、彼女が一番夢と希望を体現していた。

 理想のウマ娘、だった。

 だから、誰もが気づいた。

 その瞬間、それでも皆がその光景に目を向けていたことには変わらない。たくさんの想いが入り混じりながらも、それを目撃したことには変わりない。

 彼女の勝利を待ち望むか、その姿に憧れるか。

 圧倒的な強さを恨めしく思う人だって、きっといただろう。

 だけど、誰もが願ったのは。

 それでも絶対に、それまでどんな想いを抱えていた人間であろうとも。ただその瞬間に想うことは、誰しもたった一つだけ。

 目に映るものが、嘘であってほしい。

 それだけだっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「サイレンススズカ、サイレンススズカに故障発生です──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秋の天皇賞、一着でゴールしたのはエルだった。彼女はテレビの真ん中で、楯を両手で抱えていた。嬉しそうな顔はしていなかった。映えある栄冠がそこにあること、それは誰もが疑いようのないものなのに、誰も嬉しそうな顔はしていなかった。仕方のないことだった。当然のことだった。誰も飲み込めないのも、仕方がなくて当然だった。だって「必ずアナタに勝ちます」と、エルが勝利を誓った相手がいたのに。エルにとって今日のライバルは、その人だったのに。彼女が勝ちたいと願った後ろ姿は最後まで追いかけるだけで、二度と勝負を挑むことすらできない可能性が、重々しく首をもたげていたのだから。

 サイレンススズカ、レース中に故障発生。既にネットにも速報が上がり始め、私たちテレビ越しの観客もそれを現実だと認めざるを得なくなる。レース中の事故、故障。ありえないはずはないと理屈ではわかっているけれど、自分の目では確かめたくなかったこと。

 だけど、起こってしまったこと。

 テーブルに座って意気揚々と画面越しに見物していた私もトレーナーさんも他の人たちすべても、思うことは同じだった。今の世界が、嘘であってほしかった。

 杞憂であって、ほしかった。

 

「……スカイ、大丈夫か」

「私なんか心配して、どうするんですか」

 

 冷えた焼き魚を空しく見つめている私に向けて、トレーナーさんが沈黙を破るために話しかける。本当に、私なんか、だった。いつもの卑下とは少し違った。私たちはどうやっても、画面の先の悲劇に干渉はできなかった。カメラがその光景から外れていくのを見て、良かったとさえ思ってしまっていた。トップスピードにもつれて今にも転倒してしまいそうな、命の危機すらある彼女の脚の動きを見なくて済んだことに、少し安心してしまっていた。それは文字通り、目を逸らすことに過ぎないのに。

 私の方なんか見て心配しても、それは見たくないものから目を逸らしているだけ。けれどもちろん目を逸らさないことを選んだとして、できることなど何もない。だからやっぱり、トレーナーさんの方が正解。あの光景には届かない。終わってしまった。何もできるわけがなかった。ならせめて自分にできることをするのが、当たり前の正論だ。

 ……だけど。だけど、それなら。

 

「私のことなんて心配しても、何にもなりませんよ。トレーナーさんだってわかるはずです。今大変なのは、私じゃなくて──」

 

 そうやってぶつけてしまうのが、私にとっての正論。私はいつも、スズカさんのことはテレビで見ていただけだ。これまでのスズカさんとの関係は当然薄くて、それはこれから紡いでいきたかったものに過ぎなくて。だから彼女の身に降り注いだ「故障」というものも、ただ恐ろしくて理不尽なものにしか見えていない。それが絶ってしまった未来の話など、何も知らない私にはわからない。今自分が見た以上の絶望なんて、それが誰かにのしかかっているなんて。耐えられない。私じゃない誰かが抱えているものは、私ならきっと耐えられない。たとえ、紛れもない現実だとしても。耐えられなくても、受け止めなければならないとしても。

 

「……私じゃなくて、スズカさんです」

 

 そしてそうでなければ、あるいは。あるいは他にも、慮るべき人はいる。たとえばリベンジに燃える一戦で、こんな結末を迎えてしまったエル。たとえば憧れの先輩と同期の運命の一戦とそこで起こった事件を、レース場の間近で見ていた、グラスちゃんとスペちゃん。彼女たちほどには、私は何も理解していない。何も理解してやれない。彼女たちの方が私なんかより、よっぽど。だからトレーナーさんから手を差し伸べられても、今の私はそれを払い退けてしまう。そこまで固辞する理由はわからない。

 自分なんかがここまで焦ってしまっている理由は、わからない。

 何もわからないし知らないくせに、呼吸は浅く耳は絞られ、冷や汗がぽつりと木のテーブルに落ちる。どうして私なんかが、ここまで追い詰められているのか。

 それは私独りでは、わからなかった。

 ……だけど、それをわかる人がいるとすれば。

 子供の私にわからないことを、教えてくれる人がいるとすれば。

 

「スカイ。そうだとしても、君が落ち着いていないのはわかる」

 

 そう言えるのは、トレーナーさんしかいなかった。この状況で、私を一番に優先できてしまうのは、あなたしかいなかった。

 

「そうですね。何でこんなに、怖いんでしょうか」

 

 得体の知れない恐怖が、身体を覆っていた。蝕むように、蔓延っていた。それを言葉にしなければ、きっと私は耐えられない。

 

「スズカさんとそんなに関わりがあったわけじゃないです。エルやグラスちゃんやスペちゃんほどには」

 

 それでも脳裏に焼きついた、大ケヤキの先の残像。今まで見てきたものの中で、一番危うく恐ろしい光景。必死に踏もうとする足。それでも崩れていく身体。己の速度が己に牙を向く恐怖。そんなものは確かに、想像するだけで恐ろしい光景だけど。

 

「だから、そんなに慌てふためくはずないんです。そんな資格は、私には」

 

 だけど、私は遠くから見ていただけなのに。恐怖も焦燥も、自分にとっては何もかもが不相応。スズカさんのことは他人事に近くて、ここにある感情は抱いてしまうとしても抑えておくべきものだ。そのことはわかっているのに、それでも感情に制御が効かない。どうしようもない発露に身を任せ、子供のように喚いてしまう。それは、私がやるべきことじゃないのに。そう、そうなんだよ。私は、こんなことをしている場合じゃない。

 怖いか。焦ってしまうか。不安か。悲しいか。そうだとしても、それらに縛られているのは私だけじゃないだろうに。私なんか、そう思うのは卑下じゃない。私が大事じゃないんじゃなくて、それでも大切な人がいるからだった。私なんかより、私よりもずっと。少なくとも、今この時は。

 だから、だから。私が、私こそが今やるべきことがあるとすれば、それはきっと──。

 

「私はきっと、みんなを元気づけなきゃいけないのに」

 

 ──それが自らの感情の根幹だと、多分その時ようやく気づいた。あの場にいた友達に、私は何かしてやりたい。だから私がショックを受けている暇はない。私が抱えたのは、そんな焦りだった。恐れと不安を感じるのも、きっともっとみんなの方が強く感じているはず。だから、それが私の役割。やらなきゃいけないこと。みんなのために、やりたいことだ。

 そこまで聞いて、トレーナーさんはゆっくりと口を開く。

 彼は私を待っていてくれたのだと、そんなことにもその時気づけた。

 

「レース中の故障は、ショッキングな出来事だ。……それを見てしまったら、誰だって怖い。俺だって怖い。でも、スカイは誰かの力になりたいんだな」

「エゴ、ですけどね」

「それでいい。俺はそんなスカイを誇らしく思う」

 

 それでも、あなたは私を一番に考える。この人はこんな時でさえ、私のことを元気づけてくれるのか。褒めてくれるのか。そうして、立ち上がらせてくれるのか。私なんか、なのに。 

 ……ああ、でも。

 

「そうやって期待されたなら、私もその期待に応えないといけないね」

 

 私だからできることがあるのなら、やっぱり私なんかとは言っていられない。なら、やるしかない。私だから、できる選択を。スズカさんの安否については祈るしかないというのはどうにもならないことで、そのことから来るあらゆる感情もやっぱりどうにもならないとしても。

 辛い時に寄り添ってやるのが、友達だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからなんとか、どよめきとざわめきを伴う時間を過ごすことができて。ついでにニジマスの山も、一つ残らず平らげて。夕日も沈み、星が瞬く夜が来て。電車を乗り継ぎ、いつもの寮への帰路に着いて。あらゆる点で時間をかけて、私の気持ちを落ち着かせる。

 スズカさんへの心配は、やはり完全に収まりはしない。むしろ動悸は激しくなり、気持ちは緊張の一途をたどっている気がする。でも、そこは信じるしかない。信じることはできるから、私は一つの願いを託す。スズカさんは無事でまた走れるのだと、私の願いの一つとして。あのレースを見ていたみんなが思うだろうそれに、私のぶんも重ねて。

 だって願いや夢は信じなければ、叶うことなどあり得ないのだから。

 

「多分サイレンススズカは、緊急入院の措置を取られているはずだ。今は彼女が目覚めるのを待っている」

「はい。私も待ってます」

 

 二人で歩く夜の道は、何度目かの経験だった。こんなに緊迫した帰り道は、おそらく初めてだったのだろうけど。秋の天皇賞で起こった異常事態は、二人ともしばらく、もしかしたらずっと、忘れられないだろう。けれど、前を向くんだ。私よりも深く沈んでしまった人にも、前へとその目を向かせるために。もし私がその道標になれたなら、最後には一番底まで沈んでしまった、あの大ケヤキの陰にある闇に囚われた存在にまで、きっと手が届くはず。

 

「では、ここら辺で。電話、しなくちゃいけませんから」

「……スカイ」

「なんですか?」

 

 トレセン学園が近づいてきて、けど私はこれから寮に帰らず友達に電話をするつもり。それなりに急ぎの用事だし、誰が私から一番声をかけなきゃいけないのかもわかっている。だからトレーナーさんとは今日はここでお別れだ。

 本来なら釣り堀の感想トークでもしていたのだろうけど、そういう状況では無くなってしまったし。深刻だとしても、私たちには手の届かない、それが今の現実を包むもの。恐怖と不安は闇より深く、私たちのいる空間を支配している。

 けれど、それだけじゃない。それだけじゃ、ないんだ。

 

「スカイなら、誰かの力になれる。俺は信じている」

「……大げさかもしれませんけど。私も、そうだったらいいと思います」

 

 仲間のためになりたい。焦りばかりの感情でも、それだけは嘘じゃない。それはわかった。唯一だけど、紛れもない道標。そしてそれは、トレーナーさんが気づかせてくれたこと。吐き出させて、何もわからなかった私に教えてくれたこと。トレーナーさんが私のことを気にかけてくれたから、できたこと。

 そう、今から私がやるのもそういうことだ。遠いからこそ、教えられることがある。遠いからこそ、より近い人より自分は強くあらねばならないと思ってしまうことがある。確かにこれは、各々で受ける衝撃に差があるようなことだろう。確かに私より、そう思ってしまうことはあるだろう。だけどだからこそ誰も辛さを取り払ってくれない立場に立ってしまうのなら、それを見つけてそこに寄り添うのが私の役割なんだ。

 寮に帰るトレーナーさんを見送って、少しだけ手を振って学園内に駆け出す。二人の会話はそこまで。だけど私の夜は、ここからだ。

 

「私からLANEを送るなんて、珍しいんだけど」

 

 誰もいない校舎裏で、壁に寄りかかりスマホをいじる。まずはそうやって、アプリを開いてテキストのメッセージを送ってみる。スズカさんのレースをその目で見ていた友人は三人いて、彼女たちにとっての距離感も様々で。だけど、きっとみんな辛くて。それでもだからこそ、私は一人を、私だから寄り添うべき一人を選ぶのだ。

 

 入学時からの憧れの存在を失う危機に瀕しているスぺちゃん。同じレースを走り、今日こそ勝つのだと息巻いていたエル。エルのチームメイトとしてその場にいながらも、きっとかつて同じチームにいた先輩として、いずれ再選を果たすべき相手として、スズカさんのことも見守っていたはずのグラスちゃん。

 三者三様のその中から、私が、私こそがメッセージを送る相手として選ぶなら。

 程なくして既読がついて、彼女からの返信が返ってくる。彼女らしい落ち着いた、文面はそういう口調だった。

 

「そうですね、セイちゃん。私に何か御用ですか?」

 

 私がメッセージを送ったのは、グラスちゃん。きっと、私たちの誰よりも強いグラスちゃん。誰よりもスズカさんへの憧れが強いスペちゃんではなく、その崩れてゆく背中を支えたい気持ちを抑えて必死にレースに集中したエルでもなく。その二人の次に近くにいて、きっと二人の気持ちに寄り添って支えてあげる側に立つことを選ぶグラスちゃん。

 だけどだからこそ、君には助けは必要だ。

 私が手を伸ばすなら、君しかいない。

 何とメッセージを送るべきか、数瞬迷ってそのあと、結局私はキーパッドに画面を切り替えて、知ってはいるけど普段はなかなか打ち込まない彼女の電話番号を入力する。彼女の言葉を、ありのままの姿にしてもらうために。「声に出した方がいい」というのは、いつかトレーナーさんが言っていたことだ。おそらくグラスちゃんは、どんな物事も自分の中で納得をつけれる人間。だからきっと、直接言葉にするものさえ形を整えてから口に出す。そうして、自分の弱さを自分で乗り越えることができる。それが、グラスちゃん。それが、グラスちゃんらしさ。

 だけど今くらいは、私は君に寄り添いたい。

 誰にも依らない存在だと、知っているからこそ。

 

「こんばんは、グラスちゃん」

 

 君のことをよく知っているからこそ、辛い時は友達を頼ってほしいんだ。

 

「こんばんは、セイちゃん。セイちゃんから連絡なんて、本当に珍しいですね」

「うん。……今日のあれ、私もテレビで見てたから」

 

「やっぱり、そういうことですか。スズカさんのこと、まだスペちゃんから連絡はありません。心配、ですね」

 スズカさんが心配だというグラスちゃんは、さりげなくもうスペちゃんとも連絡を取っていた。それならきっとエルの複雑な心境も、彼女が受け止めてあげたあとなのだろう。スズカさんのことをもっとも慮れるのはスペちゃんやエルで、その二人の話を一番近くで聞けるのはグラスちゃんだ。あのレースからの観戦距離そのままに、そういうつながりができていた。

 うん、だから私はグラスちゃんに連絡をした。スペちゃんの抑えきれない不安を吐き出させる役割と、エルの複雑な勝利への苦悩をこぼさせる役割は、君が既に担っているから。

 だけどそれを聞いた君は、その上で独りで二人の話ごと自分の痛みも引き受けようとしてしまうだろうから。そんなグラスちゃんの話を聞けるのは、きっと私の役割だから。スペちゃんやエルから一歩引いたところから寄り添えるのがグラスちゃんなら、そのグラスちゃんから更に一歩引いたところから寄り添えるのが私だ。

 だから、私は君にこう問う。

 

「グラスちゃん」

「はい、なんでしょう」

「私は、グラスちゃんも心配だよ」

 

 君の弱音を、聞かせてほしいと。

 私さえショックを受けるほどの出来事が、より近い君に傷を作らないはずがない。グラスちゃんは確かに強い子だ。だけど強いということは、不安や恐怖を持たないという意味じゃない。

 その痛みに、耐えるだけ。

 それは確かにグラスちゃんらしさで、グラスちゃんはそうありたいのだとしても。

 今日は、癒やされるべきだ。

 どんなに強くありたいとしても、そうするのが己だと定義するとしても。

 それは、苦しむ理由にはならないのだから。

 抱えきれない苦しみまでも、無理に抱える必要はないのだから。

 

「……ありがとうございます、セイちゃん」

「ううん。私は今から、多分すごくひどいことをいうから。心配しているから、とはいえ」

「はい。なんでしょうか」

「もし、スズカさんが二度と走れないとしたら。グラスちゃんは、どうするの」

 

 他者を励まし、他者がそれを乗り越えたとして。励ました当人は、いつものように痛みを乗り越えられると信じていたとして。本当に君は、耐えられるのか。万一が起こってしまった時に、君はまだ強いままなのか。

 そのことこそが一番の気がかりで、これ以上ないくらい残酷な問いかけ。何もなければ一番なのに、どうしても私が思ってしまう不安。そしておそらくグラスちゃんも考えてしまう、もしも。最悪の事態は、避けられるなら一番だ。だけどもし起きたのならば、乗り越えなければいけないから。それでも私たちは、走らなければいけないから。

 杞憂とは、誰も言い切れない。

 だからこそ、君も私も友達に寄り添っているんじゃないか。

 

「レース中の故障は、ただでさえ命に関わること。もう一度元のように走れるかは、わからない」

「そう。グラスちゃんは脚を怪我したことがあるから、多分そういう不安は人より強く感じるはず。でも、誰にも言ってない」

 

「そう、ですね。言えば、それは不安を煽ることになります。スペちゃんやエルに、そんな言葉はかけられません」

 だから、抱え込もうとする。それは臆病な私のやり方とは違う、優しさ故の行動ではある。だけど一人で奥に閉じ込めてしまうという点で、君と私は少しだけ似通っているから。だから少しなら、私にも理解できる。君がわからないなら、私が代わりにわかってやれる。手を、伸ばせる。私だから、寄り添える。

 

「なら、今言ってみない? 声に出した方が、何事もすっきりするよ」

 

 不安な思考、破滅への忌避感。恐れや悲観はない方がいいことで、考えなくて済むならそれに越したことはない。けれど、人の考えは理屈じゃないから。どうしたって、考えない方がいいことが浮かんでしまう時はあるから。

 だけどそういう時に必要なのは、きっとそのまま吐き出すこと。こう思うのははひょっとしたら、元の私らしい考え方じゃないのかもしれないけど。

 でも紛れもなく、今の私らしい考えではある。だからこれは、私から君への言葉なんだよ。

 

「セイちゃん、本当に変わりましたね」

「やっぱり、そうなのかなあ。でもそのおかげで君から弱音を引き出せるなら、私は嬉しいよ」

「……今日は、私の負けですね」

 

 おお、まさかグラスちゃんに口で勝てるとは。なんて、それもあるいは変化や成長かもしれない。私たちは、まだまだこれから先へ進む。未成熟な発展途上なのに、ここで未来が絶たれるなんてあってはならない。

 そう、だからきっと、私たちが不安を抱えてしまうのは。

 私たちが恐れ、心を何度も迷わせるのは。

 

「なら、聞かせて。グラスちゃんの気持ち」

 

 私たちが、まだ子供だから。

 私たちは、これから成長できるから。

 だからこそ、未知に怯えるのだ。いずれ、それすら超えゆくために。

 また一つ、大人になろう。辛い経験も、子供のうちに超えておくんだ。

 

 

 

 

 

 

「あの時、大ケヤキを超えた時、スズカ先輩の走り方がおかしくなったのがわかって。私は目を覆いそうになって、それはダメだと思って。……だからずっと立ち止まるしか、できなくて」

「うん」

「エルはそれでも走り切ったんです。スペちゃんは観客席から飛び出したんです。二人とも、私より絶対に辛かったのに、私よりもやるべきことをやっていて。それになにより、そんな二人と自分を比べてしまったのが、一瞬でもそう考えてしまったのが情けなくて」

「……うん」

「自分の骨折の時は、まだそれを糧にしようと思えました。自分が辛いだけなら、みんなの声も助けに聞こえました。私だって、その壁を越えようと一層決意を固められました。……でも、わからなかったんです。わからなくて、わから、なくって……っ。これはスズカ先輩のことです。それはだって、私には祈ることしかできない。頑張りましょう、なんて軽々しく言えない。だったらどうすればいいのか、私には……っ」

「うん。辛かったね、グラスちゃん」

「それで、それでっ──」

 

 そうして小一時間、グラスちゃんの弱音を聞いた。普段のグラスちゃんからは想像もできないくらい、とりとめがなくてぐずぐずの言葉だった。グラスちゃんはぽつぽつと雨のように、だけどとめどなく滝のようにただそういった弱音を話してくれた。

 そしてそれを全部聞いて、私はただ。

 

「ありがとう、話してくれて」

 

 ただ純粋に、そう思った。アドバイスの類は示せなかったけど、私に示せるのはそういったつながりの再確認だから。弱さを知っても君を嫌いにはならないという、当たり前のことだから。そうやって信じていると、寄り添っていると示すのが、きっと友達としてできる唯一無二のことだから。

 告げて、少しの沈黙があった。もしかしたら少し、電話の先では涙が流れていたのかもしれない。音はなかったけど、スマホから顔を離していたのかもしれない。

 けれどそのことを隠していたとしても、私はそこには踏み込まない。どちらにせよ、グラスちゃんのことはわかるから。そうして何も言わずに察することも、多分これも思いやりの一つ。今は言葉を紡ぐより、君から流れ出したものをすべてを受け止めることが大事なんだ。

 

「……ありがとうございます、セイちゃん」

「さっきも言ったけど、こちらこそ。……スズカさんと走りたいのは、実は私もだからさ」

「……スズカ先輩、また走れますよね」

「そりゃもちろん。みんなまたスズカさんが走れるって、信じてるから。もちろん、不安なのが悪いわけじゃないけどね」

 

 不安は信頼と相反する感情だけど、どちらも誰かを想うが故。だからその気持ちそのものを、罪になんかしてほしくない。私が言いたいのはそういうことだったと、思う。

 

 君の弱音を受け入れられて、他の誰にも言えなかった火影のような想いを赦せるのは、私だけしかいないのだから。

 

「明日、スズカ先輩のお見舞いに行きます。<リギル>の元チームメイトとして、憧れの存在ですから。……セイちゃんのおかげで、少し素直な気持ちでお見舞いに行けそうです」

「どういたしまして、だね」

「それに、セイちゃん」

 

 と、そこで少しグラスちゃんの語気が変わる。いつもの、グラスちゃんに。

 

「お見舞いに行って、スズカ先輩が元気に出迎えてくれたら。私の不安が取り払われたら、次は」

「次は、その先だね」

「ええ。今年の有マ記念、勝つのは私です」

 

 ──それは、一見唐突な宣戦布告。けれど、ここにあるのは当然の帰結。私たちが互いを支える理由は、近しい他者を心配するだけじゃない。その理由の一つには、私たちにとって悔いのない戦いをすることも含まれている。他人を慮るだけじゃない、私欲だらけの傲慢な願い。

 私と、全力で向き合ってほしい。

 だって私たちは、友達だけど、ライバルだから。これもやっぱり、当たり前のこと。そして言うまでもないほどの当たり前の事実だから、私たちは誰もが未来へ踏み出せる。

 どんな痛みも、越えてゆける。

 

「負けないよ」

「こちらこそ」

 

 見上げればそこに広がっている星空は、一見静謐を湛えていたけれど。その煌めきは紅炎の如く鮮やかにごうごうと、世界中の誰もの心を躍らせる。

 だから私たちの戦いがそんな絢爛の下で始まることは、きっと最高の一つであって。私たちからそれだけの感情を、最高だってまた前を向ける気持ちを引き出してくれた星空も、多分。

 闇と光の混じり合うこの静かな星空は、私の好きな青空と同じくらい、キレイなのだろう。

 星の海が広がる空。静寂だけが、満ちていった。

 

 

 

 

 

 

 グラスちゃんとの電話が終わって、すっかり暗くなった夜道を今度こそ帰っている時だった。ぷるるるる、と、今度は私の方に、電話がかかってきた。いや、私に電話? こんな時間に? 電話をかけてきた相手に見当がつかず、誰だろうか、そう思いながら着信画面を確認する。

 ……正直、やられたなあと思った。全く予想していないのに、言われてみれば納得しかない。

 

「夜分遅くにどうも、お嬢様」

「こんばんは、スカイさん」

 

 ずばり、電話口に出たのはキングヘイロー。今日はトレーナーさんをからかうダシに使ったばかりで、それどころじゃなくなってからは君のことは頭から離れてたかもしれない。いや、そんなわけはないはずなんだけどね。他の同期の話は散々したのだから、キングの話もしなくちゃ不公平だったな、などと思った。

 

「それで、ご用件は何でしょうか? 察するに秋の天皇賞のあれを受けて気が気じゃなくて、スペちゃんからエルからグラスちゃんまで連絡して、グラスちゃんには通話中で連絡がつかなかったから、一つ飛ばして私のことも心配しにきたとか」

「いやに具体的だけど、当たってるのが悔しいわね」

 

 ほら、やっぱり。ちゃんとこの子の行動を手に取るように把握できているあたり私は彼女のことを忘れてなかったな、というのは置いておいて、ここら辺、本当に心配というだけで全員に連絡できてしまうのは流石キング、という感じだ。それは私にはできないことだけど、そういう君がいるから。

 君が君らしく私とは違うことをしてくれるなら、私の心に残った最後のつっかえも下りる。

 よかった。私たちは、支え合えていた。

 

「うん、でもありがとう。私の話を聞いてくれるのはキングだったか、って感じ。まあでも、そういう人がいるってだけで十分かも」

「なによそれ。一流の私に悩みを話す権利をあげようと思ったのだけど?」

「絶対スペちゃんとかにそんな態度取らなかったでしょ。私だけひどーい」

「おばか。まあでも、本当に心配なさそうね」

 

 それはその通り。キングが他の子に連絡をしていたと知れただけで、私はほっとした。実のところエルやスペちゃんには、声をかける勇気はなかったから。

 私には誰か一人に絞ってその子にできるだけ寄り添うのが合っていて、その相手が今回はグラスちゃんだった。他の二人にまで気を回せるほど、私は器用じゃない。

 だけど他の人の悩みに対して向き合うことが不慣れなグラスちゃんには、私だからよかったはず。私にできるのはそれくらいで、そしてそれで満ち足りる。だってみんなに声をかけるような優しさは、ちゃんと他の友達が持っているのだから。そしてキングは私の思った通り、そうしてくれていた。そのことに、ほっとした。平たくいえば、救われていた。

 それに、なにより。

 

「まあ、私には次の目標があるからね」

「それは多分、私の目標でもあるわね」

「その通り。次の有マ記念、グラスちゃんにもキングにも負けないから」

 

 なによりこうして、私が未来を見据えるには、そのためにはすべてのライバルを視界に捉える必要があるのだから。そして、この瞬間がその必要を満たしてくれる時間だ。

 だからやっぱり、キングとも話せてよかった。

 互いがちゃんと大丈夫だってわかるまでは、支え合わなきゃいけないんだから。

 

「グラスさんもあなたも、強敵ね。だけど、こちらこそ負けるつもりはない」

「上等だよ。……まあだから、トレーニングは頑張らなきゃね、お互い」

「そうね。そういう意味では、こんな夜に電話したのは邪魔だったかしら」

「ううん。すごく助かった、ありがと」

「……そう。おやすみなさい」

「おやすみ」

 

 ぴっ。それでやっぱり、会話は終わった。思えば今日は夜になってから、三人もの人間と会話をした。トレーナーさんと、グラスちゃんと、ついでにキング。それだけの人と話さないと、落ち着けない日だった。そんな今日の会話の中心は、弱音や不安ばかりだった。今日あったことは、決していいことではなかった。それでもそんな苦難を糧に、前に進むことはできるのだ。時にはそんな苦しみを分かち合うことが、これからを行くにはとても大切なのだと。そしてきっとスズカさんもそうやって、この先に未来があるはずだと。

 そんな果てのない世界の見え方も、私が信じること。今ならきっと、怖くないこと。

 だから今日も不安に飲み込まれず、私たちは踏み出してゆく。

 私だけじゃなくて、私たちが。

 もう、大丈夫。

 ……そこでタイミングを見計らったかのように、LANEの通知が来た。スマホを開いていなかったら多分気づかなかったから、これも少しだけキングのおかげ。私は普段滅多に開かない同期五人のグループ会話に、スペちゃんが投げかけた一つのメッセージ。

 

「スズカさんが、目を覚ましました!」

 

 それは、誰もが信じていたけれど。

 それでも、誰もが「よかった」と、その言の葉を見て思っただろう。

 それだけで、十分だった。

 それこそが、最後の一つのピースだったから。

 それが、この大きな出来事の結末。

 それも、私たちが前に進む理由だった。




杞憂とデクレタム よろしくお願いします
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