ワザマエ!~シノビが行く、魔法科の流儀~   作:集風輝星

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『忍者』 恐れられる一族に勧誘されん

俺が提供した情報で黒羽家がゲリラたちを事前に掃討していたからか、原作では達也が動き始めた時には既に町まで上陸できていたはずの大亜連合の兵士たちは、今しがたようやく陸に上がることができていた。

残念ながら防衛にあたった軍人たちはそこら中に死体となって倒れているが、彼らが時間を稼いでくれたおかげで民間人に被害が出る前に俺が間に合ったと考えるべきだろう。

 

更に、交戦したことにより大亜連合側の兵力も低下しているのか、上陸第一陣の人数は約30人程度であった。これであれば楽に全滅が取れる。

ということで、俺は潜伏していた草むらから飛び出し、すぐさま大きく跳躍する。

 

「『時雨』!」

 

『時雨』。銃器や大砲を扱う技術、弾道学などの『砲術』を用いた、弾丸の乱れ撃ちだ。乱れ撃ちと言えど、放った俺は『忍者』だ。当然魔法師ですらない兵士相手なんぞ百発百中である。これによって10人の頭を正確に撃ち抜く。

俺の着用しているパワードスーツには、シノビガミ世界に存在する『忍規』という法律に違反するレベルの隠密性を有する『桜火』というサブマシンガンが標準装備されている。音が一切出ない為、発砲音では俺に気づくことはできない。しかし、跳びあがった方向に目を向けていた連中には気づかれてしまう。

 

「クソッ!撃てっ、撃て…!?」

 

襲撃に気づいた敵兵士が空中の俺に向って反撃をしようとするが、そいつらの頭はありえない方向から飛んできた弾丸によって撃ち抜かれる。その方向とは、先ほど撃たれた仲間達が居る方向だ。

 

『魔弾』。弾丸をまるで兵隊かのように操ることができる忍法であり、減速が少なく、充分に人間の頭蓋を撃ち抜ける速度を保持していた5発ほどを操り、敵兵士に命中させる。

その悲鳴と、俺が着地したことでようやく敵を認識した残りの兵士たち。だが、それはもはや手遅れであった。

 

「ボン!」

 

某爆弾の悪魔のようにつぶやいた後、指を弾く。すると、彼らの周囲が唐突に爆発した。

大気中に配置でき、触れると爆発するという性質をもつ「火種」と呼ばれる火薬。これを操作する忍法、『鬼灯』。

敵との位置関係的に、こちらが風上であったためにこの忍法の効果を素早く生かすことができた。

 

轟音を放つほどの爆発により、その一帯はしばらく煙に満ちていたが、やがてそれが晴れると無惨に体が四散し、跡形もなく吹き飛んだ者、まだ息はあるが体中から血を吹き出し、もう長くはないだろうという者まで様々であったが、この爆発でこの一団は撃破できた。

わずか5秒にも満たない戦闘は、兵士たちが弾丸を一発も撃つことができず完封されるという結末を迎えた。

 


 

少し時間が経ち、俺のキル数が千に届くかと言ったところで、遠方に敵方の援軍の艦隊が見えた。そしてその進行方向の陸地に、アーマースーツを着用した人物が三人。間違いなく達也、風間、真田だろう。

ということは、見えるあの艦隊こそ世界で初めて『マテリアル・バースト』を喰らう哀れな者たちなのだろう。とりあえずあの三人に合流しよう…と考えて、足が止まる。

 

「…桜井穂波」

 

そう、原作では穂波が達也達へ飛んでくる攻撃を防いだために、魔法演算領域のオーバーヒートで死んでしまう。

だが彼女はそれを命じられる以外の生き方ができない「ガーディアン」ではなく、自分の意志を持つ一人の「人間」として役目を果たせることに喜びながら死んで行ったのだ。

 

ここで俺が介入してしまえば、穂波の死に場所を奪ってしまう――やろうと思えば、達也の見せ場すら奪えるが――ことに、迷いが生じたのだ。

彼女の死は彼女以外は望んだものではないのだが、ほかならぬ本人が望んでいるときているのだから、邪魔するのは気が引けるというものだ…と、ここまで考えて俺の脳裏には一つの光景が浮かんだ。

それは数日前、深雪と穂波と一緒に司波家別荘の庭で遊んでいた時の物だ。その時…深雪はとても楽しそうだった。あの笑顔が陰るというのは…原作では結構あるが、なるだけ控えたいと思えた。

なぜなら、「()()」だから。

 

「友達が悲しむことは、避けるべきだよな!」

 

俺はそう言いつつ、三人の傍に現れる。

 

「…!大河か」

 

「何か手伝おうか?」

 

「必要ない。お二人にも言ったことだが、お前もここを離れるんだ」

 

「お前が何をする気かは知らないが、避難を促すってことは相当デカいことしようとしてるんじゃないか?そしてそれをするには隙が大きい、違うか?」

 

「…」

 

「沈黙は肯定とさせてもらう。そんでもって、俺には奴らの注目を集める方法がある」

 

「…はあ。分かった、協力を受ける」

 

「そう来なくっちゃ」

 

俺が引き下がらないことを察した達也。諦めて俺に方法を尋ねる。

 

「…そうだな。言葉での説明は難しい、だからこれだけは言っておく『迷わずやれ』」

 

「何を言って…大河!?」

 

達也の返事を聞くことなく、俺は艦隊に向って走り出す。当然途中で陸がなくなり海になるが、俺はそのまま陸地が続いてるかのように走る。『走法』を修めていればこれぐらいお茶の子さいさいだ。

更に、海を走り出した時点で俺に似た、いや俺とまったく同じ姿形をした存在が、俺を中心に左右に展開する形で現れる。…正確には、これらは残像なのだが。

忍法『影分身』。超高速で動き、それによる残像でまるで複数いるかのように見せかける忍法だ。事実敵軍も混乱しているようで、当初俺と達也達に向けて半々ぐらいで向けられていた砲門が、大体8:2ぐらいの割合に変化した。

届くかどうかも疑わしい距離からの狙撃という無謀な行為を試みている達也より、猛スピードで接近する俺の方を警戒したようだ。

 

砲撃やミサイルが俺に向って飛来する。だが俺の残像を狙っているものはもちろん、俺本体を狙っているものも一切命中しない。そもそも光速にすら至れる『忍者』だ、通常の人間が目視できるレベルの速度しかない攻撃など容易く回避できる。

…ふと背後の目をやると、俺に向ってきているものよりも遥かに少ない物量のミサイル等が、達也達の前で防がれているのが見える。前には、先ほどまでいなかった、アーマースーツを纏った女性が居た。桜井穂波だ。

だが、あの量では真田に十文字家と同等と称された強度を持つ障壁魔法を、魔法演算領域が擦り切れるまで酷使することはないだろう。衰弱はあるだろうが、死までは至らないだろうと、『第六感』がそう伝えてきた。それと同時に、達也の準備が整ったことも『第六感』が教えてくれた。

 

俺は即座に反転し、陸地の方まで引き返す。引き返すついでに『飛燕』で攻撃をしておく。

忍法『飛燕』。高速移動中に急反転することで生じるソニックブームを利用して攻撃する忍法だ。これでささやかな妨害をした…瞬間、背後で強烈な熱を感じた。『マテリアル・バースト』が発動されたのだ。

巻き込まれない位置まで来た俺は思わず振り返る。これが数年後、あの『灼熱のハロウィン』を引き起こしたと恐れられる魔法となるのだと、見入ってしまった。

 

「…うおっ、やっべ!」

 

ぼーっとしていたため、その余波となる津波に反応が遅れてしまったのだが。

ともかく俺は無事に達也達の元へと戻ることができたのだった。

 


 

かくして、後に沖縄海戦と呼ばれる戦闘はここに終結した。穂波は結局倒れたようだが、確かに魔法力に低下の傾向が見られるものの、命を落とす程ではなかったようだ。兄が無事に帰ってきたことに、深雪は非常に喜んでいた。

彼女の危機を救ったのは俺だが、原作通り深雪はブラコンを発症したようでなによりだ。…別に悔しいとかはない()

 

「…篠川大河さん」

 

「司波さん…?何か御用ですか?」

 

「あなたと話をしたいという人がいます」

 

すると、深夜から通信機器を渡される(一応保護者なしの未成年であるため、保護者役を深夜が買って出てくれた形で一緒に行動している)。

嫌な予感を感じながら通話に応じる。すると、通話の相手は女性であった。

 

『はじめまして、篠川大河さん。私はそこにいる司波深夜の姉、四葉真夜です』

 

「…四葉とは、あの四葉ですか?」

 

『うふふ、変に演技をしなくてもいいのよ?貢さんに接触しているのだから、姉が四葉の関係者であることは知っていたんでしょう?』

 

「…これは驚いた」

 

まさか、黒羽貢に接触した女がイコールで俺に結びついているとは予想だにしなかった。あの場で見抜けていたのは達也だけだったはずだが…

 

『ご心配なさらないで、あなたの変装は完璧でしたわ。貢さんは未だに正体を知りませんから』

 

「では、どうして俺だと?」

 

『貴方と仲が悪い方々が、貴方についての愚痴を溢していたので。こればっかりは貴方の事を教えてくれた姉に感謝ですわね』

 

「仲が悪い…と言うと、比叡山の連中ですか?」

 

『その通りです。凄いですね、実質()()()()()()()()()()()だなんて』

 

そう、俺は比叡山に命を狙われている。どうやら俺の扱う『忍法』が、自分たちから盗まれた物だと勘違いしているようだ。何人かは俺のそれが属人的な物だと察している者もいるが、一度始めた手前、個人に降伏し謝罪をするという行為は彼らのプライドが許さないのだろう。ということで、俺と比叡山は現在冷戦状態になっている。

しかしまあよく辿り着いたものだ…。おそらく『フリズスキャルヴ』を使用して俺について調べた結果、比叡山の連中が上に報告している文書などを読んだのだろう。

黒羽貢に接触した人物の正体は分からないが、比叡山に敵視される個人の『忍者』が同じ場所に居るという状況から正体を推察したということか。

 

「代わっていただいてもいいんですよ?」

 

『構いませんが…その場合困りますね、国内の勢力が一つ消えてしまいますわ』

 

「それはそれは…」

 

その気になれば比叡山なんて消せる、という意味合いにもとれる発言に乾いた笑いを返しながら、俺は質問をする。

 

「それで、本題は何ですか?わざわざ「ゲリラの情報を渡してくれてありがとう」の謝辞を伝えるために掛けてきた訳じゃないでしょう?それとも「よくも良いように使ってくれたな」の宣戦布告ですか?」

 

『いえ、どちらも違いますわ』

 

挑発とも受け取られかねない口調で聞いてみても、真夜は愉快そうな声色を崩さずに言葉をつづけた。

 

『篠川大河さん、()()()()()になりませんか?』

 

俺は、真夜のその言葉に意外性を感じざるを得なかった。

 

「それは、どういう意味ですか?」

 

『私たち四葉は、貴方を雇いたいのですよ』

 

「これまた、どうして?」

 

『貴方、()()()()()()()()でしょう?』

 

「まあ、おそらく」

 

俺はほぼ即答の形で返答する。事実、俺は達也を殺せる。

そもそも、達也は最強無敵のイメージが強い。事実、魔法科の世界では最強だろう。だが、無敵ではない。『再成』が万能ならば、わざわざフリードスーツなどの追加装備を用意する必要はない。攻撃を受けても『再成』すればいいのだから。

これに関しては達也本人が言及している。「即死でなければ『再成』」できると。つまるところ、即死させればいいのだ。この世界の最強の武器である魔法は、その発動を感知される。通常兵器でもその火力をもってすれば殺せるかもしれないが、達也の魔法の前に捻じ伏せられる。

ならば、それに『忍法』で対抗すれば?反応するより速い速度で斬りつけたら?…結局、俺と達也の勝負は、どっちが不意打ちを決めれるかによる。

俺は魔法を使えない関係上、エイドス・スキンが無いため達也の魔法による干渉を防ぐ手立てがない。つまり『分解』を撃たれたら即死だ。だが、達也は俺の高速機動に思考を追いつかせる手段がないため、反応する前に俺が一太刀浴びせれば即死する。

 

しかし、なるほど。

 

「…達也に対しての抑止力として俺を抱えておきたいということですね?」

 

『ええ。今回の件で穂波さんが魔法を使えなくなってしまいました。つまり「ガーディアン」としての務めを果たせないという事。そこで貴方には、姉の「ガーディアン」になってもらいます』

 

「司波さんの「ガーディアン」という名目で、達也を監視しろと?」

 

『無論、姉の護衛も怠らないのが求められますが』

 

「ふむ…」

 

正直、悪くない提案だ。深夜のガーディアンという事は、達也達と同居、もしくは近くに住むことになるだろう。そうなれば原作イベントにも関わりやすくなる。少し考え込んで、俺は返答する。

 

()()()()()()

 

『…理由を伺っても?』

 

「俺は()()を倒すことが一番重要なので」

 

『…妖魔』

 

妖魔。魔法科においてはパラサイトがここに分類されるとされている。…俺が存在することに対する世界の歪みかは分からないが、この世界には原作では登場しなかった妖魔、どちらかと言えばシノビガミ世界側の妖魔が出現する。それは世界のどこかに地獄門が存在するという事なのだが…

比叡山をはじめとした古式魔法師たちはこういった魔の物に対抗するための術をある程度有しているのだが、それでも原作の幹比古のように封印がせいぜいであった。それを見かねた俺が代わりに討伐していたところ、比叡山に目をつけられたという経緯が存在する。

閑話休題

 

ともかく、俺が居なければ妖魔を確実に討伐することができない。そのため、行動が制限されるだろう「ガーディアン」になるわけにはいかないのだ。

 

『…ならなければ、貴方の家族を害すると言ってもですか?』

 

「できるとでも?家の周辺は魔界化させてますよ。無駄に手勢を減らす真似は控えた方がいいかと」

 

『…面白い方』

 

四葉家当主の脅しにすら屈しない個人。初めての経験だろうその存在との交流を、真夜は非常に楽しんでいた。

 

『では、あくまでお手伝い…家政夫としてはどうです?もちろん、妖魔の方を優先していただいて構いませんわ』

 

「…見えないですね」

 

『何がです?』

 

「そこまでして俺を引き込もうとする理由がですよ」

 

『…そうですね。では、本音をお話しましょうか』

 

本音…という事は、達也の監視自体は副次目的だったのか。

 

『貴方の手作りのお菓子を食べてから、姉の体調が良いそうです』

 

「…ああ、なるほど。そう言う事ですか」

 

『察していただけましたか?』

 

「つまり、《《司波さんを治せ》という事ですね?」

 

返答は帰ってこなかった。だが、この場合の沈黙は肯定と同義だ。

四葉は当主の娘が攫われた報復に一国に喧嘩を売り、あまつさえ勝利してしまうような、血族に対し異常なほどの愛を見せる一族だ。姉妹仲は険悪なはずだが…嫌いだが、死んでほしくは無いという事か

…悩んだ。この理由は一般的な感性を有する俺に刺さる。姉を助けられるのは貴方だけだから、どうか手を貸して。こういわれては、情が湧いてしまうというものだ。

 

「…分かりました。受けましょう、そのご依頼」

 

『あら、どうして?』

 

「家族に死んでほしくない気持ちは、理解できますから」

 

『…そうですか。では、また後日対面で詳細を詰めましょう』

 

「ええ。そうしましょう」

 

『うふふ…末永い付き合いになることを祈りますわ、篠川大河さん』

 

…その言葉を最後に、通話は切れた。俺はこれからの未来を憂いて、『星見』をしようとして…やめた。未来を知るのはあまり面白くない、原作から逸脱しているのならなおさらだ。

なるようになる、俺は楽観的思考で残りの沖縄での時間を過ごしたのだった。




本文に登場した『忍規』は、詳細は不明ですが例に挙げられる禁則事項として
・一般人を巻き込む交戦
・武装も含めた完全透明化
・時間停止
・一級以上の儀式忍法の使用
などがあります

これらの忍規は国内の忍者を縛り付ける法律である一方、忍法の行使の確認が非常に難しいため、大体の忍者が守っていないものになります
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