ワザマエ!~シノビが行く、魔法科の流儀~   作:集風輝星

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海戦から入学まで何があったのかは今後回想とかで書いて行こうかなと思いました



入学編
『忍者』 高校に入学せん


「納得できません!何故お兄様が補欠なのですか?入試の成績は、お兄様がトップだったじゃありませんか!本来ならばわたしではなく、お兄様が…!」

 

おおー、やってるやってる。原作、なんならアニメで見たまんまだ。

2095年4月3日。本日は国立魔法大学付属第一高校、通称一高。スケールがデカくなりすぎて学生感が薄れる、達也が三年生になるまでの間は原作のメインの舞台となる学校だ。

 

そして今目の前で繰り広げられるのは、ブラコンの妹が兄が正しく評価されないことにブーブー不満を漏らしている場面である。

ん?達也がやけに瞬きをしている。これは以前教えた『忍び語り』に近い圧縮言語だ。本来なら声も聞こえる(ように感じる)のだが、『忍者』ではない達也では伝えたいことを身振り手振り等で伝えられるようになるぐらいしか修得できなかった。

――閑話休題――

 

んで、何々…?「た・す・け・て・く・れ」か。達也からのSOSを正しく受け取った俺は、「絶対に嫌だ」という意味を込めて満面の笑みを返しておく。深雪に悟られない程一瞬だが、物凄い形相で睨まれた。おーコワイ。

 

「深雪、ここではぺーバーテストより魔法実技が優先されるんだ。補欠とは言えよく一高に受かったものだと…」

 

「そんな覇気のない事でどうしますか!」

 

あ、落ち着かせようとして更にヒートアップしてら。

 

「大河からも何か言ってください!」

 

「え?なんでや」

 

なんかこっちに水向けられた…深雪の顔がこっちを向いていて、自分の顔が見られることが無いのを良い事に、達也が「協力するしかないな」としたり顔でこちらを見てきている。深雪の顔今すぐそっち向けたろか?(怒)

いやまあ…こっちに振られたならこっちで収めるか。

 

「…魔法力の定義は、魔法式を構築する速さ、魔法式の規模のキャパシティ、魔法の干渉力の三つの項目で定義されてる。一部の魔法以外これらがダメダメな達也は、実技優先の一高ならこれぐらいが妥当なんだよ」

 

「な!お兄様を侮辱するのはいくら大河でも許しませんよ!」

 

「事実を言っただけで侮辱扱いされましても…」

 

さすおに状態の深雪は本当にじゃじゃ馬だ。それこそ抑えられるのは達也ただ一人な程。あの海戦の後、司波家の家政夫…というより、実質深夜の執事的な立場となってからもう三年が経つ。経っても尚、俺では暴走した深雪を止められない。

 

「あー…あ、そうだ。深雪、もう時間ヤバいんじゃね?」

 

「え…あっ、もうこんな時間!」

 

「遅れると大変だ、行っておいで、深雪」

 

「…む、二人して時間を理由に話をなあなあにしようとしていますね」

 

「「はて」」

 

「もう!二人ともいつも私をからかって!このお話の続きはまた後でさせていただきますからね!」

 

「俺はからかってるつもりはないんだが…」

 

「ほんとだぜ、なんて酷い兄貴なんだ、あんなに可愛い妹をいじめて…」

 

「ちゃっかり俺を敵にして逃げようとするな」

 

チ、バレたか。まあ誤魔化せたんだし良いだろ?と目線を達也に投げる。その目線を受けた達也は、はあ…とため息一つ。その後顔をあげて、「見ていてくださいね~!」と手を振る深雪を見送る。深雪の姿が見えなくなった辺りで、俺たちは再び顔を見合わせた。

 

「…さて、どうやって時間を潰すか」

 

「そうだな、魔法が使えないお前が、どうやって裏口入学したのかを聞こうじゃないか」

 

「裏口入学確定マ?」

 

などと言いながら歩を進めていると、おそらく上級生であろう生徒たちの声が聞こえて来た。

 

「ね、あの子たち「雑草(ウィード)」じゃない?」

 

「こんなに早くから?補欠なのに張り切っちゃって…」

 

「…おほ~、差別たまんね~^」

 

「俺はそんな趣味を持つお前を軽蔑するがな」

 

「冗談ですやん。Mじゃないから俺」

 

雑草(ウィード)。それは、俺たち二科生を指して使われる蔑称。花冠(ブルーム)と呼ばれる一科生には、制服に八枚花弁のエンブレムがあり、二科生にはそれが無い。優劣を明確に見分けられるその有無は、生徒間での差別意識を生み出すのに非常に効果的であった。

ただの制服の発注ミスが、今日この日まで修正されない程には。

 

「いやしかし差別とかくだらない…と言いたいところだけど、魔法を重点的に学ぶ学校で、魔法が下手って言うのは確かにバカにされても仕方ないことかもしれないな」

 

「珍しいな。普段のお前なら、あまりのくだらなさに欠伸をしているところだぞ」

 

「まあ…ね」

 

この「魔法科高校の劣等生」という作品を読んでから十数年が経っているんだ。そのスタートラインに今自分が立っているという高揚感やらなんならで、ちょっとテンションがおかしくなってしまっているのかもしれない。

こうした雑談をしながらベンチで時間を潰していると、一人の女生徒から声を掛けられた。

 

「新入生ですね?開場の時間ですよ」

 

「…教えていただき、ありがとうございます」

 

「どもども~」

 

達也、露骨に腕に巻かれているCADを見て反応を示してるな…まあ、相手は気づいていないみたいだけど。

 

「いえいえ。私は当校の生徒会長を務めています、七草真由美です。「ななくさ」と書いて、「さえぐさ」と読みます。よろしくね」

 

「俺…いえ、自分は司波達也です」

 

「篠川大河で~す」

 

「司波達也君に、篠川大河君…そう、貴方達が…」

 

「…俺たちが、なんですか?」

 

あっれ~?丘people?ここって本来達也だけが話題になってるはずなんだけど…

 

「入学試験、7教科平均、100点満点中96点。特に圧巻だったのは魔法理論と魔法工学。合格者の平均点が70点に満たないのに、両教科とも小論文を含めて文句なしの満点。前代未聞の高得点だって、先生方が噂してたのよ」

 

「いや~、鼻が高いです」

 

「喜んでるところ悪いが、多分お前じゃないぞ」

 

「あ、あはは…これは司波君の話よ。誰がっていうのが抜けてたわね」

 

「まあはい…そっすよね…」

 

分かってたよ!そんなに成績高い覚えねえよ!特に魔法理論とか魔法工学とか、魔法使えないから一切分からないよ!逆の意味で圧巻の点数だった自信あるよ!

 

「篠川君の方は…今年度、いえ一高始まって以来、最低成績で入学した生徒だって話ね。順位だとそれこそ200位って感じ」

 

「う~ん泣きそ」

 

「慰めはしない。存分に泣け、一人でな」

 

「冷たくない?もう心は泣いているよ?」

 

ホンマ冷たい男でっせ達也はんは…などと考えていると、笑いを抑えきれないという様子の真由美が目に入った。俺らの事をコンビ芸人か何かだと思ったのかな?(適当)

 

「うふふふ…ご、ごめなんさい。二人はとっても仲が良いんですね」

 

「まあ、長い付き合いになるので」

 

「そう、あれは今から36万…いや、1万4000年前だったか。俺にとってはつい昨日の出来事ですが、先輩にとっては多分、明日の出来事ですよ」

 

「そうだったのか。じゃあ俺にとっても明日の出来事でいいか?お前と縁を結んだという過去の汚点を回避できそうだ」

 

「酷い!」

 

先輩のご所望通り(?)漫才をしてみたところ、またも肩を震わせて笑いを堪えている。やっぱり俺たちのことコンビ芸人だと思ってないかこの人?

 

「…もう時間ですね。それでは俺たちはここで」

 

「…ww。あ、はい。ではまた」

 

もうすぐ時間だし、真由美は笑ってばっかりで話にならなそうだと判断したのか、達也が話を切り上げる。真由美も笑いながらそれを了承したため、俺たちはそのまま講堂へと向かうのであった。

 


 

講堂に入ると、すでに席の半分ほどが埋まっていた。

ここで面白いのが、その座り方だ。一科生が前に、二科生が後方に座っている。そのような指定は無いにも拘わらずだ。不文律、空気感。色々言い表す言葉はあるだろうが、やはりここは差別意識が最も現れている。

差別される二科生の方が差別意識が大きい、という達也の心の独白を見透かしたり(そもそも原作がそうだからなのだが)しながら席を探すと、後ろの端の席が空いていた。これ幸いとばかりに俺たちはその席に座る。あれ、そういえばこの後…

 

「あの、お隣は空いていますか?」

 

「うおデッッッッッッッッ……ミグラスソースが掛かったハンバーグが食べたいな」

 

「誤魔化せてないぞ大河」

 

達也が最端、その隣に俺が座っているため、彼女…柴田美月は、俺に空席か否かを聞いてきた。だがその際に顔を覗き込むようにしてきたせいで、その立派な二つのメロンがたゆんと揺れたのを見て、俺は思わず驚愕してしまった。SUGOKU DEKAI

 

「え、ええっと…」

 

「ん、空いてるよ。どうぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

そう言って美月と、その後ろに居た赤髪の女生徒が隣の空席に並んで座る。あれ、これもしかして俺のせいで語呂合わせのくだりなくなる!?いや、そんな重要じゃね~よそこ(自問自答)

 

「あの…私、柴田美月と言います。よろしくお願いします」

 

「司波達也です。こちらこそよろしく」

 

「篠川大河で~す。よろしくね」

 

席に座って少しすると美月が自己紹介をしてきた。このころの達也の敬語混じりでの話し方面白いよななどと思っていると、赤髪の女生徒が身を乗り出してきた。

 

「アタシは千葉エリカ。よろしくね司波君、篠川君」

 

「よろしく!」

 

「…」

 

案の定語呂合わせのくだりが無くなってますやん。と思っていたら、美月が俺の事を興味深そうに見てきていた。それを目ざとく見つけたエリカが美月をからかう。

 

「何々~?もしかして篠川君に一目惚れ?」

 

「えっ!?いやいや、そういうのじゃなくて!」

 

「そういうのじゃない…!?」

 

「ああ、違くて…!」

 

あからさまに残念がって見せると、ただでさえ慌てて訂正していた美月が更に慌ててしまう。ここでエリカとお互いがからかい側の人間であると察すると共に、一度美月を落ち着かせる。

 

「それで?一体何がどうしたんだい?」

 

「いえ、その…篠川君の『オーラ』が、とっても薄いというか…ほとんど見えないというか…」

 

「ふむ…?」

 

『霊子放射光過敏症』の症状で俺のオーラが見えてるわけなんだろうが…希薄、かあ。厳密には魔法師ではないからプシオンの量が少ないとか、『忍者』だから希薄だとか、理由は定かではない。

そうこう話している内に、入学式開始のアナウンスが入った。

そしてあっという間に新入生答辞の時間だ。

 

「ほらほら達也さん。妹の晴れ舞台でっせ」

 

「え、新入生総代の司波さんって、司波君の妹なの?双子?」

 

「おいおい、見比べてみなよ深雪と達也を。双子だったらこいつの顔はもっと整ってるぜ?」

 

「顔面偏差値が大きく違う人間が隣り合うと、実際はそこまでなのに、片方がより整った顔立ちだと錯覚するという話があるな。大河、お前の顔をぐちゃぐちゃに歪めさせてくれ」

 

「はは、勘弁してくれ」

 

軽口を叩き合っている内に深雪が壇上に上がる。その演説内容は、原作通りの際どいフレーズがたくさん含まれていた。どれだけ兄貴を評価してほしいんだよ、俺の立場的にはあんまり目立ってほしくないんだけど。

 


 

式も終わり、IDカードを受け取る。ものの見事に1-Eだ、運命的な物を感じる。

 

「二人はホームルーム覗いていくの?」

 

「いや、深雪と待ち合わせてるんだ。なあ達也」

 

「ああ。多分そろそろ…」

 

「お兄様、大河。お待たせしました」

 

「待ってな~いよ☆」

 

「深雪はお前にはやらんぞ鷹の爪」

 

「俺は馬の骨ですらないとおっしゃる?」

 

コイツは出会った当初からずっと俺に冷たく当たってくる。なんなんだよコイツはYO!

などと思いつつ、ふと深雪の後方をみてびっくりした。服部副会長がすっごい形相でこちらを睨んでいる。まだ二科生を差別してる時期の服部副会長だからか、普通に嫌な先輩って感じがする。

 

「生徒会の方達のお話はもういいのか?」

 

「大丈夫ですよ。今日はご挨拶させていただいただけですから」

 

「会長!?」

 

「深雪さん、詳しいお話は、また日を改めて。それから、司波君に篠川君もまたね」

 

「…?」

 

「会長程の美人さんに誘われるなら何時でもバッチコーイって感じですわ」

 

「あら、お上手ね」

 

あれ、服部副会長の視線が強くなったぞ?おっかしいな~(煽り)

 

「それじゃあ、そろそろ帰ろうか」

 

「はい、お兄様」

 

「じゃ~ね、二人とも」

 

そう言って、俺たち三人は帰路についたのだった…

 


 

「「ただいま戻りました」」

 

家に帰ると共に、ただいまを言う二人。その二人を迎える人物が一人。

 

「お帰りなさい。…改めて、入学おめでとう。深雪、達也」

 

その人物とはそう、司波深夜である。原作では本来この時期に死亡しているのだが、俺が執事みたいにここに住み込みで働くようになり、俺が料理を作るようになってからというもの、その体調は改善傾向になっていた。

 

「貴方も、入学おめでとう。大河さん」

 

「どーもどーも」

 

本来、俺の主人は四葉というよりは仕えている深夜だ。だが四葉側から依頼されて仕えているという事もあってか、俺は結構舐めた口調でも咎められたりはしない(四葉の使用人連中は葉山さん以外苦虫を嚙み潰したような表情をするが)。

とりあえず、お礼だけを言ってそそくさとキッチンへ向かう。深夜の体調は俺が調理で作成する『兵糧丸』としての食事の影響で改善している。

一応俺のやってる作り方をメイドとして復帰した穂波さんなどに教えたのだが、美味しいけど『兵糧丸』の効果を得られなかった。こうなると、俺が無意識に『仙食(せんじき)』という忍法を使用しながら作っているという疑惑が…

 

とかなんとか考えながらリビングルームの方に目を向ける。そこには、達也を交えて会話をする深雪、深夜の姿があった。以前俺が仲を取り持ったことで、達也と深夜の親子事情は原作よりは改善していた。

ともかく、その光景はまさしく家族と呼べる物だった。俺はこの光景を守り抜いて行こう、そう思える景色なのであった。

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