浜岡の言葉に、田辺は声を殺して涙を流した。犯罪と正義感の狭間で揺れ動いた青年が、そんな田辺と重なって見える。不意に、リビングの扉が開き、浜岡が振り返ると、神妙な顔つきで斎藤が入ってくる所だった。疲れたような吐息を一つつくと、蛇口を捻り水を一杯飲んでコップを置いた。
「彼女は、落ち着きましたか?」
浜岡の問い掛けに、斎藤が首を振る。
「いや、どうかな。なにせ、一言も話してくれていない。判断はつかなかった」
斎藤の視線が漂い、田辺に定まると、今度は浜岡が肩をすくねた。当事者二人がこの有り様では、鳩首のしようがない。
「田辺、気持ちは分かるが、いつまでも落ち込んでいないで先に進まないか?こうしている間にも、事態は深刻になっていくのだろう?」
水が入ったコップを項垂れる田辺に手渡し、斎藤は対面に座った。
田辺が話したのは、九州地方感染事件の背後に、野田と戸部、日本におけるトップクラスの有識者両名がいるであろうということ、及び、主犯は、恐らく野田だろう、との見解だ。理由としては、やはり、野田良子の存在が挙げられる。
あの日、野田良子を殺害した東は、死体が発見されるまで身を隠していた。今の世の中、ニュースを見る機会なんていくらでもある。潜伏先を特定し、東を寸での所まで追い詰めた田辺は、遺体発見の一報を受け、現場に向かい、ひどく乱されてしまう。
だが、田辺は東がどこに向かうか分かっていた。東の潜伏していた廃ビルの中には、五冊のスクラップ帳が落ちており、中には新聞や、週刊紙の切り抜きが多数納められていた。汚れが付着していたのもあったので、ゴミとして出されていたものを拾っていたのだろう。日付は、全て一年以内のものだった。
情報を仕入れるのに、新聞以上に適したものはない。一万字ほどの簡単な短編小説くらいならば、関連記事の切り抜きを半年溜めれば、特に苦もなく書ききれるほどに溢れている。少なくとも、田辺はそう思っており、それほど密な情報の多くが、九州地方へと、明らかに傾倒していた。中でも佐賀県の記事には、赤印をつけるなどもしていた。
東の性格と犯罪歴を鑑みて、これほど解りやすい誘導はない。田辺は、絶対に逃がさない、と憤懣に震える手で、葬式の最中に地方の記者と連絡をとり、九州を抜ける新幹線の玄関口、福岡県の小倉で東を捕らえる事に成功した。しかし、それこそが悲劇の始まりだったのだ。
良子を理不尽に奪われた野田は、その日の内に行動を開始した。前々から疑惑を持たれていた九重を完全に隔離する。奪った研究成果は、未完成ながら細胞の活性化のみを促す役割をもつものだった。そこに、なにかしらの改造を加えて、傘下の企業に所属する成績優秀者数名へ薬品を投与、飛行機に搭乗させる。そこから先は、報道された通りの結末だ。
つまり、これは、東一人に向けられた有り余る憎悪の結果が招いた悲劇なのではないか。田辺が三人に話した内容は概ねこのような内容だった。
「小説が好きなら読め!」と友達から艦隊コレクションの本を渡された。うーーん、積み本が重なっていくwいや、お薦めらしいから、ありがたいけれども!借りたからには先に読まなきゃ(使命感w)
まだ、ラスト・チャイルドってのも途中なのに……しかも未だに上巻未読なのに……さて、どうするか……w