その先にあったのは、旧門司税関だ。入口は板と太い南京錠で封鎖されている。その上、港の税関だけあり、建物の後ろには、海が広がっている。距離を考慮すると、もう曲がりきれる速度ではなかった。
「このままじゃ激突しちまうぞ!どうするつもりだ!」
浩太は、歪に唇の端を曲げる。
「このまま突っ込むんだよ!捕まってろよ真一!」
訳もわからず、真一が荷台のロープに身体を巻き付けると同時に、ブレーキがかけられ、その直後に強烈な爆音が背中を叩いた。突き飛ばされるような強い衝撃が走る。ロープが無ければ、荷台から投げだされていたかもしれない。そう、安堵したのも束の間、トラックに迫っていたミサイルが旧門司税関の看板に衝突し、その強すぎる鳴動と光に、三人は一斉に意識を失った。
※※※ ※※※
高さは65メートル、どこか異国の建物を彷彿させる巨大な白い建物だった。中央の塔を中心に、見事なまでに左右対称で造られている。中の造りまで対象という徹底ぶりだ。
その建物の入口を、スーツを着た男が急ぎ足で通過した。
内部に敷かれた赤い絨毯を踏み、長い奥行きがある廊下を進んだ。いくつも並んだ木製の扉を横目に、中央付近で止まると、周囲に人気がないかを確認し、目の前にある扉を控えめにノックする。
奥から、低い声が聞こえてから、男は扉を開いた。部屋は、閑散としている。本棚が両脇に設置され、それらに挟まれるように来客用の机、更に奥に様々な書類がファイリングされたまま、無造作に放置された執務用であろう立派な机があった。
そこに、オールバックに固めた髪型と、隙なく黒のスーツに身を包んだ男が神妙な顔つきで座っていた。オールバックの男が、両肘を机に付いたまま、ゆっくりとした口調で言った。
「......なんだ?なにか報告があるのか?野田」
威圧的な鋭い目付きだが、野田と呼ばれた男に、さほど気にする様子はない。
よほど見られたくなかったのか、上着を捲り、腹に隠していたA4用紙ほどの書類を取り出し、オールバックの男に差し出した。
「先程、目標を破壊したと一報が入りました」
「......関門トンネルは?」
「ご安心を、昨夜の内から出入りは不可能です。九州の自衛隊だけでは不安がありましたので、山口側から少量の爆薬を使用して封鎖をしています。これで、九州地方へは入れません」
ふん、と鼻を鳴らし、男は渡された書類をぞんざいに投げた。机上に緩やかに落下する。
「爆発音で苦情はなかったのか?」
「はい、遠隔操作で作動させましたし、ニュースで九州地方の現状を国民は理解しています。あらゆる機関は、全て停止させていますので、問題はありません」
そうか、と呟き、オールバックの男はようやく張り詰めた空気を解き、長く息を吐いて背凭れを軋ませた。
もうすぐこの章が終ります
長くなったなw