狭間の雪   作:しろたく

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オーパス・シティ

 シティに帰着して、20BDが経過した。

 物資の取り回しには一定の目処が着いた。クロード・シティのムスタ司令長からの脅迫じみた要求はいったんマーサに伝えられたが、マーサが014での一件をつぶさにムスタに伝えると、状況は一変した。

 “アル”の存在もそうだが、110体ものクザーン人を従えた…と言う事実は余程インパクトがあったらしい。ムスタはアキヒロとナ・タークを治療が済み次第即座にオーパスに送り届けることを確約した。フィリスがムスタの振る舞いに散々悪態をついていたので、やりとりを通じてマーサは苦笑いを禁じ得なかった。

 最終的に、両者はプロトジウムの採掘強化について協議を取り交わした。トレードの再開が覚束ない今、プロトジウムは相変わらず最重要物資だ。自給自足体制を整えねば。

 幸い人足は確実に増えていた。110名のクザーン人は、アーダーンの号令の元、スポンジが水を吸うように様々なことを覚えていた。人類よりも遙かに身体能力が高く、知的レベルも当然に高い。こんな人々をハイブリッドに改造するとは…マーサは苦い思いで考えた。

 フォンビンとは、3BDに一度はハイパー通信で連絡を取り合っていた。クザーンを全面撤退に追い込んだ手際は見事だった。あれこれ話しているうちに、フォンビンが尋ねた。

 「そう言えば、そのアル?という存在から通信が入りました。明日、われわれに同時に話したいと。マスターと呼ばれる存在が現われるようですが」

 「そうですね、私も聞きました」

 通信を終えた後、マーサは少し考え込んだ。確かに、アルはまだ多くのことを語っていない気がする。

 

 医療技師フレッドから緊急着信が入った。

 「スーザンが覚醒を…」

 ウィリアムは文字通り全速力でメガICUに向かった。デンモビウム溶剤で満たされた容器の中で、スーザンが目を開けていた。視界はまだハッキリしないようだ。ウィリアムは大声で呼びかけた

 「スーザン!!」

 スーザンの首が、ほんのわずかにこちらを向いた。まだ殆ど体は動かないようだが、わずかに微笑みが増した気がする。フレッドが言う。

 「何が功を奏したのかは分かりませんが、脳波は完全に正常です。筋組織も大幅な劣化は見られないので、これから少しずつリハビリをしていけば、ここを出られる道筋が見えてくるかと…」

 ウィリアムは、殆ど聞いていなかった。その場に座り込み、声もなく泣き崩れていた。

 

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