スーパーロボット大戦 無限戦争 マリ・ヴァセレート包囲網 作:ダス・ライヒ
「そろそろ、あの女を我が理想郷より放り出さねばな」
戦争だらけのこの世界の裏の支配者であるヴィンデル・マウザーは、自身の拠点にて、豪華な椅子にふんぞりかえりながら、未だ世界に居るマリ・ヴァセレートを追放しようと考えていた。
こちらから見れば対して状況を動かせず、ちっぽけな存在であり、仕掛けなければ何もしてこないマリであるが、ヴィンデルにとって行く先々で現れ、彼を苛立たせる行動を取っている。
「殺すのではなく?」
「あの女は忌々しいことに不老不死だ。何度殺そうが、不死鳥の如く復活する。追放以外、どうかの女をこの世界から取り除く? 宇宙に放り出したところで、いつの日か復活するぞ?」
付近に待機している
ヴィンデルは生か死かと言う戦いの快楽を無くしてしまう不死に、何の興味を抱いていないようだ。永遠に戦い続けたいと言う欲求があるからか、不老には大いに興味を示しているが。
「ならば、その不老不死。この私に頂戴させてもらいたい」
「あ、あの御仁は…!」
「カンゼンダーか。貴様、それほどまでに不老不死になりたいと言うか?」
そんなヴィンデルが鎮座している間に、ある男が入ってきた。
これにサンシューム族が警戒する中、ヴィンデルは敵意を向けながら、まるで自分が上とも言える態度を取る男に、何故に不老不死になりたいのかと問う。
「無論だ。私は完全無欠のパーフェクトな存在。この老いるばかりの肉体では、完璧とは呼べない。現に私には、無数の子供が居るが、どれもこれも不完全で見るに堪えん者ばかりだ」
その問いに対し、完璧主義が服を着て歩いているようばフォルコメンハイト・カンゼンダーなる男は、自身を完全無欠な存在であると宣い、以下に自分が不老不死で無ければならぬ理由を語り始める。
不老不死ではない自身は一度も失敗せず、成功ばかりし続ける完全無欠さを子に受け継がせるため、多数の女性に自身の子を産ませて育てさせているが、その誰もが自分基準の能力を受け継いでいない者が多かった。
カンゼンダーは己の才能を受け継がない子供たちに期待するのを止め、自身が子を必要としない不老不死になれば良いと言う決断に至ったと語る。
「不老不死とは、永久に死ぬことも無ければ変わることなく、途絶えることのない苦しみに晒され続ける地獄。即ち終わらぬ牢獄だ。何故になりたがるのだ?」
そう自身が不老不死とならねばと必要性を解くカンゼンダーに対し、不老不死は終わりのない牢獄であるとヴィンデルは告げるが、己を完全無欠の存在と自称し、全てを見下している男は聞き入れなかった。
「フッ、争うと言う野蛮な事でしか己の意思を示せぬ者に、この完全無欠な私の考えは理解できんか。私は世界の支配者となるべくして生まれた存在。故に私は、永久支配者の資格である不老不死を手に入れ、神のような支配者とならねばならんのだ。これは私の運命である」
「ぬっ…! 貴様…!」
この世界の支配者であるはずのヴィンデルに対し、カンゼンダーの態度は上からの物であった。
ヴィンデルを戦いでしか意思を示せぬ野蛮な存在と見なし、自分の考えを理解できないと見下したうえで、カンゼンダーは自分が世界の支配者として生まれた存在であると宣い始めた。そればかりか、永遠の支配者の資格である不老不死を手に入れ、自分は神の如き支配者となる運命なのだと強調する。
これにヴィンデルは、激しい嫌悪の表情を浮かべて睨み付けたが、相手のカンゼンダーは意に返さず、完全無欠なる自分を嫉んでいる物と受け取る。
「その目、この私を嫉んでいると受け止めよう。では、不老不死は私が頂く。安心しろ、このお前の遊び場から、傍迷惑な十五歳の少女を追い出してやる。否、不老不死を奪って始末してやる」
そう言ってカンゼンダーは、必ずマリをこの世界から追放、不老不死を奪って始末することを約束してからヴィンデルの間を退出した。
一連の行動で、この世界の支配者を怒らせたことも知らず、マリ・ヴァセレートはを脱出する手段を求め、とある惑星を訪れていた。
その惑星の名はファウン。
発見されて数十年以上は経ち、開拓が済んで人が地球以上に住めるような環境が整っていたが、戦争だらけの世界の宿命か、ファウンもまた戦いの渦中にあった。
かつては中央政府、即ち地球連邦政府に従う植民地政府があったようだが、何者かの陰謀なのか、首相を決めるスーパーコンピューターがその人物に細工され、選挙権も無ければ社会経験も無く、人生の半分を家の中で過ごしていた四十代の男性が選ばれた。
この四十代の男性は、いわゆるネット右翼、あるいはネット保守と言われる人であり、極右思想に傾向していた。
ファウンの民主主義が彼を首相に選ぶはずが無いのだが、民衆はスーパーコンピューターの何かの革新と見て、静観を決めた。
世間知らずでネットで偏った情報ばかり見ている男が権力を手に入れればどうなるか、コンピューターをハッキングして細工を施した者の思惑通りに動くことは明白であった。
自身を選ばれた人物だと勘違いした男は、暗躍する者の思惑通りに暴走を始める。暗躍者の策略で人間不信となった男は、操り人形にしようとする者たちを排除し、暗躍者に言われるがまま、自分に付き従う人工知能を備えた美少女型アンドロイドのみで閣僚を固めた独裁政権を発足させ、独裁者となった。
案の定、独裁者となった後は、自身に逆らう者たちは容赦なく殺し尽くし、自分から見れば資源の無駄である弱者を虐殺。当の自分は権力に溺れて強欲の限りを尽くし、ファウンを荒廃させていた。
当然、民衆が黙っているはずがなく、各地で反乱が発生。見向きもされない引きこもりから独裁者となった男は身勝手で他人の事を理解できず、この反乱を軍事力で制圧を試みたが、怒りに燃える民衆を止めるには至らず、惑星全土規模の内戦へと突入する。
事態を重く見た地球連邦は早期解決のために軍を派遣しようとしていたが、自由惑星同盟との総力戦に突入してしまったのか、戦力に余力が無く、ファウンを放棄した。
これにより、連邦政府に見捨てられたファウンの内戦は激化する。当初は独裁者側が有利であったが、暗躍者は真面な支援を行わなかったせいか、徐々に数で勝る民衆側が勢いを増し、遂には逆転する。
敗北を悟った独裁者は、ファウン全土の制圧用に建造していた巨大戦艦で逃げようとするが、民衆側の勢いは凄まじく、どれほどの火力を以てしても止められず、独裁者は怒れる民衆に集団リンチされ、挙句の果てに殺されてしまい、その死体を戦艦の艦首に晒された。
独裁者は暗躍者に助けを求めていたが、既に用済みなのか、助けに応じなかった。
数々の蛮行を働き、ファウンを荒廃させた独裁者であったが、彼もまた傀儡に過ぎず、被害者であった。
巨悪である独裁者が居なくなったファウンが平和になるどころか、より一層に混迷を深めるばかりであった。
今度は誰がファウンを治めるのかと独裁者を倒した反乱軍が争いを起こして分裂し、再び内戦が勃発する。
政治思想の違いで起きた内戦であったが、この内戦の裏で糸を引いていたのは、あの独裁者を生んだ暗躍者であった。彼らもまた、暗躍者の操り人形に過ぎなかった。
そこへ統治と言う名目で戦果を拡大させる巨大勢力である連邦と同盟も介入し、軍を投入。ファウンの支配権を巡って戦闘を繰り広げ、尚も継続中である。
「ここも戦争…飽きないのかしら?」
遠くで行われているファウンで行われている戦闘を見て、マリは戦争に飽きないのかと疑問を抱く。局地的な戦闘であるが、軍人でも専門家でもないマリからすれば、戦争に見えてしまう。
「ヒヒッ! こんなところに何の用ですかなぁ? お嬢さぁん!」
そんな彼女の背後より、不審な男たちが現れた。
その男たちはファウンの善良な市民か軍の脱走兵なのか、何かしらの武器を持っていた。統一された服装をしていないことから、無法者の集団と見える。
「顔を確認しろ! 上玉なら、このファウンから出られるぞ!」
「鉄屑拾いより、人攫いの方がよっぽど稼げるぜ!」
無法者の集団は、マリを攫って人身売買組織に売りつけ、この地獄の窯と化したファウンから別の惑星に移住する資金を得るつもりであった。
こんな無法者の集団でも、自分が探しているルリ・カポディストリアスの情報を知っているかもしれないので、マリは彼らに彼女の写真を見せて尋ねる。
「この娘、どこ?」
ルリの写真を見せて居場所を問うマリであったが、写真を見た男たちは嘲笑い始める。
「ぶっ、ハハハッ! アニメのキャラかそれ!?」
「妹か友達を尋ねるかと思ったら、何所のアニメのキャラと尋ねるとは! 頭がおかしいぜぇ!」
「実在すると思ってんのか!? 現実と夢の区別はついてっか!? まぁ、上玉だから良いとして、捕まえるか!」
このファウンでもルリの容姿を人の物とは思えなかったらしく、アニメのキャラクターだと思ってマリを嗤い始める。
そんなマリを現実と夢の区別もつかない頭のおかしい女と認定した無法者たちは、彼女を捕まえようと網や袋を被せようとして来る。これにマリは写真を仕舞ってから、魔法の力でどこからともなく取り出し、素早く抜いたバスタードソードで網や袋を切り裂いた。
「なっ!? ど、何所から剣なんて出しやがった!?」
「い、意味の分からねぇことを! こいつが見えてねぇのか!?」
「銃は剣より強しだ! 動けば、風穴開けっぞ!!」
いきなり剣を出したマリに驚く無法者等であるが、銃があることを思い出してそれを向けて脅しを掛ける。が、マリは相手が安全装置を外すよりも早く動き、殺すことなく打撃部分である鍔や柄で殴って次々と無力化していく。
「は、
余りの速さに銃を持った無法者は驚き、そのままマリの剣で銃を切り裂かれてしまった。
「また聞くけど、この娘、どこ?」
「んな美少女、漫画かアニメでしか見た事ねぇよ! それにこのファウンには、漫画やアニメとゲームはもうねぇぞ! 引きこもりのアホ独裁者の所為で全部消えたからな!」
無法者たちを目にも止まらぬ速さで制圧したマリは、剣先を向けながら空いている左手でルリの写真を見せながら居場所を問うも、無法者は漫画やアニメでしか見たことが無いと答える。そればかりか、未だにマリの事を自分好みの美少女キャラを探しに来た頭のおかしい女だと思い込んでおり、ファウンにはもう漫画やアニメ、そればかりかゲームはファウンの独裁者の所為で全部消えたと告げた。
「実在するのに…!」
自分を頭のおかしい女だと思っている無法者の返答に、怒りを覚えたマリは剣を振るった。が、殺害はしておらず、斬るどころか頭に平の部分を叩き込み、一撃で昏倒させただけだ。
「あんた等は知ってる?」
「し、知らない! 俺たちはただ、この地獄のようなファウンから抜け出したいだけだ…!」
他の無法者等にルリの事を問うも、誰も彼女の事は知らず、ただ戦争だらけのファウンから抜け出したいとだけ答える。
「難民申請すれば? 受け入れてくれるところがあるかもよ」
この返答に、マリは難民申請すれば、何処かの惑星かスペースコロニーが受け入れてくれると告げたが、無法者等は何処もファウンの難民は受け入れないと答え、その理由を語り始める。
「やったさ! だが、どの惑星もファウンの難民はお断りなんだ! 酷いデマまで流れて、スペースコロニーすら受け入れてくれねぇ!」
「ファウンの難民を乗せた宇宙船が、問答無用で沈められた! 検閲と言う理由でな!」
「別の星の親戚を頼っても、その親戚がファウンの出と言う理由で、リンチされた挙句に虐殺された! 惑星政府や警察は加害者を捕まえるどころか、表彰する始末だ!」
「だからこうして、非合法な手段で稼ぐしかねぇんだ!」
「こんな地獄に居たくねぇのに! 外からやって来た連邦や同盟は、俺たちの事を助けもしねぇ!」
「何もかも全部、あのクソッタレの引きこもりの所為だ! なんでスーパーコンピューターは、あんな生きる価値もねぇクズ野郎を首相なんかに選んだんだ…!」
かつては善良な市民だった彼らが、何所にも難民として受け入れられず、無法者に身を落とした理由にマリは少しばかり同情したが、助ける手段が無かった。
「ごめん…私、あんた達を助けられない…」
「んなもん、端から期待してねぇよ。それにこのファウンに来る奴は決まって、屑鉄漁りか人攫いのどっちかだ」
助ける手段が無いことを謝罪するマリであるが、余り謝意が籠っていなかった。これに無法者等は最初から助けを期待していないと答え、ファウンに来る余所者は、決まって戦争の残骸漁りか人攫いのどちらかと口にする。
「だが、あんたは人探しのために来たと見えるが。襲った謝罪として、俺たちの雇い主の居場所を教えよう」
「い、良いのか!? 俺たち殺されるぞ!」
「馬鹿が! 人攫いなんかを商売にする奴隷商人なんぞ、信用できるか! その嬢ちゃんの事、奴隷商人なら知ってるはずだ。拷問なりして、聞きだしてこい」
襲撃した謝罪なのか、ルリを知っているとされる奴隷商人の居場所を教えた。
仲間の一人が雇い主の居場所を教えて良いのかと言うが、雇い主である奴隷商人はファウン出身ではないどころか、連邦や同盟と同じこの惑星で好き放題する余所者であるので、忠誠を誓う義理は無かった。
「そう。言う通りにしてくるわ」
最後に拷問なりして聞き出せと言われたことを鵜呑みにしてか、マリは彼らの前から去って行った。
『目標フェニックスをファウンにて発見。現在、奴隷商人と交戦中』
「ファウン? あぁ、私が破壊に成功した星か」
マリがファウンに訪れていたことは、直ぐにカンゼンダー、フォルコメンハイト・カンゼンダーに知らされた。
情報をもとに、潜伏先と言うか、行く先を予想し、その想定範囲にある各惑星や衛星の衛星軌道上に偵察機を一機ずつ派遣していた。しらみ潰しであったが、物量に物を言わせた捜索が功を奏してか、早期にマリを発見することに成功したのだ。
彼女が発見されたのがファウンだと聞いたカンゼンダーは、自分が無政府状態に追いやった惑星であると思い出す。
即ち、ファウンに独裁政権を誕生させ、内戦を勃発させた挙句に無政府状態にした暗躍者の正体は、このフォルコメンハイト・カンゼンダーであった。
成功や完璧主義に固執する男にしては、ファウンを完全に失敗するかのような政治を行い、滅茶苦茶するのは筋が通らない。が、逆に考えれば、全て彼の思い通りに事が進んだので、完璧に成功したとも言える。
ファウンを失敗どころか、完璧な無政府状態にするために、カンゼンダーの歪んだ完全主義の標的にされたのだ。
「そんなところに居るとは、この完璧なまでに可愛い美少女の為か? ネットや何処の情報にもないと言う事は、この世界に居ないと言う事なのにな」
ファウンにマリが訪れた理由を完璧に当てたカンゼンダーは、ルリの目立ち過ぎるその容姿に関する情報が無いことで、この世界に居ないと分かっていた。
彼もネットに上げられた彼女の写真を見て、直ぐに自身のコネや情報網、ありとあらゆる組織の情報を盗み見て居場所を探そうとしたが、この戦争だらけの世界に居ないことを確認した。
「大方、この世界からの脱出を図ろうとしている様だな。だが、その不老不死。逃すわけにはいかん。この完全なるフォルコメンハイト・カンゼンダーに、不老不死を献上してもらおうか」
居ないと分かっていれば、無政府状態で前線惑星となっているファウンに来ないと思うカンゼンダーは、この世界からの脱出手段を求めて来たと推測する。
不老不死を手に入れるべく、カンゼンダーはヴィンデル・マウザーより与えられた権限を使い、連邦や同盟の軍上層部にマリを捕えるための部隊の派遣を要請した。
「連邦軍と同盟軍の上層部に伝達だ。連邦軍からはガイア・セイバーズか直ぐに動かせる部隊をファウンに派遣。同盟軍からは全領域軍の再編された十指の他、連邦と同じ直ぐに動かせる部隊を。拒否すれば、私が完全なる制裁を下すと脅しておけ」
受話器を耳に当てながら双方の軍上層部と連絡を取れる人物に対し、カンゼンダーは断るようなら自分が制裁を下すと脅すように告げてから受話器を置いた。
フォルコメンハイト・カンゼンダー
長身で完全に出来上がった身体つきをしている男。頭脳明晰で何でもかんでもできるチート。
完全無欠に見える男であるが、異常なまでに歪んだ完璧主義者であり、自分の思い通りにならなければ、喚いて暴れだす幼稚過ぎてしょうもない奴。その所為なのか、自分が世界の頂点と思い込み、周りを下に見ている。
一度も失敗したことが無いと自称しているが、何度も失敗しており、それを人の所為にして無かったことにする。おまけに一度も間違っていないとまで自称する。指摘すれば、逆らったと逆ギレする始末。
そればかりか他者の気持ちも考えず、一方的に自分の考えを押し付ける自分本意過ぎる究極の自己中心的な奴。
このようにクズの中のクズであり、親としても立派なクズ。と言うか、親に絶対になるべきではない男。
物凄く歪んだ外道であるが、ヴィンデル・マウザーの世界出身者ではない。
そんでもって、キラ・ヤマトと同じく人工子宮によって生み出されたスーパーコーディネイター。ではなくパーフェクトコーディネイター。
完璧主義者の大物貴族によって生み出されたようだが、カンゼンダーは実力主義者であり、血統の貴族を嫌っている。