スーパーロボット大戦 無限戦争 マリ・ヴァセレート包囲網   作:ダス・ライヒ

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第23話

「ブハハハッ! いい引き立てブリだァ! 馬鹿な兵隊共ォ! これで俺のガオゾンダーMk-Ⅱが輝くってもんだぜェ!!」

 

 数多の連合軍のエースがパーメットスコア8を発動したマリのガンダムエアリアル改修型に敗れ、他の将兵らが恐怖して敗走する。

 その後、偽ウルトラマンセブンとなって暴走状態のラクサスが挑むが、無様にも敗北した。

 それを見越して敢えてガオゾンダーMk-Ⅱを出撃させなかったタニス博士は、自分の有能さがアピールできると大いに喜び、脅威に果敢に挑んだ彼らの死を嘲笑していた。

 

「おい! 早くガオゾンダーMk-Ⅱを出撃させろ! あのガンダムは大軍と耄碌ジジイと戦って疲弊している! ぶっ潰すのが今だぜェ!!」

 

 当然、アギダやその護衛のマス・ライダーたちからは白い目で見られているが、タニスはその視線に全く気付かず、意気揚々とガオゾンダーMk-Ⅱの出撃を命じる。

 

『ゾンダー…!』

 

 部下の研究員たちも冷めた視線で見ているが、指示には応じたらしく、ゾンダー人間と化したウォルマを搭載したガオゾンダーMk-Ⅱの封印を解き、出撃させる。

 

「フフフ、これで俺のキャリアも安泰だ…! カンゼンダー様、ガオゾンダーMk-Ⅱ、ただいま出撃しました! 消耗戦をしなかった臆病で無能な軍人どもや耄碌の老害ジジイとは違い、私目のガオゾンダーはあのGUND(ガンド)のガンダムを確実に破壊できます!」

 

 ガオゾンダーMk-Ⅱの出撃で、勝利を確信したタニスは興奮しながら作戦司令部に居るカンゼンダーに出撃のことを報告する。

 その際、必死で戦った連合軍のパイロットたちを咎め、ラクサスを耄碌の老害ジジイと罵っていた。

 この報告でタニスの事を完璧なまでに利用しようと完全に知り尽くしているカンゼンダーは、自分の有能さを知らしめるために敢えて出撃させなかったと看破し、冷たい反応を見せる。

 

『ふん、どうせ自分のガオゾンダーMk-Ⅱとやらの凄さを見せるため、準備が出来ていながら敢えて出撃させなかったのだろう?』

 

「ひょっ…!? い、いや…手間取ったと言うか…その…」

 

『図星か。まぁ良い、私も漆黒の戦闘鬼(ファイティングオーガ)に落胆していたところだ。もう少し持つと思って呼び寄せたのだが、期待外れだった。お前のガオゾンダーも、負ければ分かるな?』

 

 見抜かれていたことにタニスが慌てた反応を見せていると、カンゼンダーは図星と分かった。だが、彼も連合軍に期待していなかったらしく、ルーク・アルフィスを期待外れだと侮辱し、自分の期待を裏切ればどうなるかと釘を刺した。

 

「ご、ご安心を! このガオゾンダーMk-Ⅱは、ガオガイガーやガオファイガーを上回る性能ですので! あんな戦闘用に改修しただけのエアリアルなど!」

 

『まぁ、お前のガオゾンダーMk-Ⅱが負けても、私自身が行けば良い話だ。私の手を煩わせるなよ?』

 

「も、もちろんです! 直ぐにあんなガンダムはぶっ潰して、必ずや不老不死の女を貴方の御前に差し出します!」

 

 私の手を煩わせるな。

 その言葉でタニスは自分が必要されている物だと判断し、焦りを見せながらマリをカンゼンダーの前に差し出すと約束する。これに作戦司令部に居る彼は何の反応もせず、無線機を切った。

 

 

 

 周囲に転がる連邦や同盟の連合軍の兵器の残骸と目前にあるかつてはラクサスだった血痕に、ガンダムエアリアル改修型はただ佇んでいた。

 

「はぁ、はぁ…!」

 

 パーメットスコア8の影響で発生したデータストームに苦しむマリは、その痛みから逃れようとヘルメットを外し、乱暴に投げ捨てて拳銃を取り、それを自分の側頭部に押し付け、引き金を引く。

 銃声が鳴り響き、コクピット内にマリの血が辺りに飛び散る。マリは不老不死なので数秒もしない内に生き返るが、自殺してもデータストームの影響は残っていた。

 

「だからこのガンダムには乗りたくないの…!」

 

 自殺する際に使用した拳銃の安全装置を掛けてホルスターに戻した後、マリはデータストームの影響があるからエアリアルには乗りたくないと呟いた。

 GUNDを使うガンダムは、阿頼耶識システムと同じく自身に特別な手術を施すか代替わりをしてくれる物があればこそ、安全に乗れるのだが、この最初から改修型として建造されたエアリアルにはそれが無かった。この世界で乗れるとすれば、不老不死のマリくらいか、代替わりをする人間を乗せるかである。

 

「周囲に敵影無し…これで、こんな世界から…!」

 

 圧倒的な力を見せ付け、連合軍の戦意を崩すことに成功したマリは、レーダーを見て周囲に敵が居ないことを確認し、安堵しきっていた。

 これでようやくこの世界から脱出できるかと思っていた彼女であったが、次なる脅威というか、今の状態では絶対に対処できない物、即ちガオゾンダーMk-Ⅱの襲来であった。

 

『ゾンダー…!』

 

「っ!? ガオガイガー…!?」

 

 レーダーに反応した敵影に、マリは直ぐにエアリアルにそちらの方向に向ける。モニターの映像越しに見えるガオゾンダーMk-Ⅱに、マリは思わずヘルガーンで遭遇したガオガイガーを思い出した。

 姿形は似ているが、全高も9メートルは大きく、ガオガイガーには無い武装が施されている。それは、背中に装備されたミサイル発射口と両手の指先にある機関砲だ。ゾンダー人間となって素体となっているウォルマは、うめき声を上げながらそれらの火器をマリのエアリアルに向けて放った。

 

「違う! ガオガイガーは機関銃やミサイルなんて使わない!」

 

 雨あられの如き放たれる機銃やミサイルに、相手がガオガイガーで無いことに逸早く気付いた。

 ガオガイガーは対ゾンダリアン用と人命救助を元に開発された合体型スーパーロボットだ。戦闘特化型だが、機銃やミサイルなどの兵器を搭載していない後継機であるガオファイガー。原点返りした純地球製のガオガイゴー。最初にして究極、大量破壊兵器であるジェネシックガオガイガーですら、生物の殺傷を目的とした兵器を搭載していなかった。

 元バイオネットの科学者にして、カンゼンダーに仕える科学者であるタニス博士が開発した疑似ゾンダーロボであり、獅子王凱や心を持つ超AIの勇者ロボたち、GGGの開発者とその面々、ガオガイガーの伝説を知る者達からすれば、このガオゾンダーMk-Ⅱの存在は彼らに対する侮辱そのものである。

 

『ゾンダー…!』

 

「駄目…! 今の状態じゃ勝てない!」

 

 そのガオゾンダーMk-Ⅱの一斉攻撃に、マリのエアリアルは防戦一方であった。

 連合軍の大群と偽ウルトラマンセブンのラクサス相手に、全力全開であるパーメットスコア8を発動して戦闘を行ったことで、多大な負荷を受けたエアリアルはパワーダウンを起こしていた。マリもデータストームの影響で疲弊しており、戦闘を継続できる状態では無かった。

 そんな状態で邪悪な疑似ゾンダーロボの襲撃を受ければ、例えマリとで容易に打破できる物ではない。

 

「ビームが!?」

 

 そればかりか、ガオゾンダーMk-Ⅱにはエアリアルのどの攻撃も通じなかった。ビームライフルどころかバルカン砲も通じず、ガンビットによるオールレンジ攻撃すら効かない。まさに絶体絶命だ。

 

『ゾンダー…!』

 

 敵わぬと知って逃げようとするマリのエアリアルに、ガオゾンダーMk-Ⅱは執拗に火器を撃ちながら追撃する。逃げる敵機を捕らえると言うか破壊すべく、右腕をブロウクンマグナムならぬロケットパンチを行い、パワーダウンして速度が落ちているエアリアルに命中させた。

 

「嘘っ…!?」

 

 マジンガーZ以上の強力なロケットパンチを諸に受け、エアリアルの全身の装甲にヒビが入り始める。そんなエアリアルに更なるガオゾンダーMk-Ⅱの追撃が入る。ガオゾンダーであったEI-15には無かったドリルニーが両膝に備わっており、左膝のドリルを回転させながら既に大破状態のエアリアルに叩き込んだ。

 

「こんなところで…!」

 

 ガオゾンダーMk-Ⅱの左膝のドリルがエアリアルの装甲を抉っていく中、マリは己の敗北を知り、思わず懐に左手を入れ込み、GGGポケベルを押してしまった。無意識に他者への助けを求めてしまったのだろう。

 なぜ押してしまったのかと疑問に耽る間もなく、抉りながらコクピットにまで迫るドリルに思わず身体を守ろうと顔を覆ったが、何か指令が来たのか、ドリルの回転は止まった。

 

「止まった…?」

 

 ドリルが止まったことにマリが驚く中、そのドリルが引き抜かれ、無力化されたエアリアルはガオゾンダーMk-Ⅱに掴まれ、地上へと降ろされる。

 地上へ降りたと同時に動かないエアリアルの空いた穴から飛び出して逃げようとしたマリであるが、待ち伏せしていたマス・ライダーの集団が持つライフルから麻酔弾を撃ち込まれ、眠らされてしまった。

 変身ベルトを付けて白い魔女に変身するか、時間を止めれば良かったのだが、パーメットスコア8の影響でかなり疲弊しており、忘れると言う彼女らしからぬミスを犯してしまった。

 それさえ忘れていなければ突破できたはずだが、タニス博士がそれを予想しており、マリを捕らえるマス・ライダー等に徹底的に対抗装備を施しており、マジックキャンセラーと呼ばれる意味通りの装置をスパルタンシリーズであるゾルダートスパルタンに背負わせて随伴させていた。

 一個中隊規模のマス・ライダーと一個大隊の上記の装備を持ったスパルタンシリーズも居るので、例え時間を止める魔法を使ったとしても突破は出来ず、捕まっていたことだろう。

 

「女を捕らえたか!?」

 

「はっ。言われた通り、麻酔弾を使用しました」

 

「でかした! これでカンゼンダー様に吉報を報告できる。これで俺のキャリアも安泰だ」

 

 アギダと共に現れたタニスが、マリを捕らえたかと問えば、彼女を抱きかかえているマス・ライダーは言われたとおりに麻酔弾を使用としたと返答する。

 マリを捕らえることに成功したタニスは、彼女を捕らえたマス・ライダーらに労いの言葉を掛け、自分のキャリアが安泰になったと安堵した。

 

 

 

「ほぅ、これが不老不死の女、マリ・ヴァセレートか。確か、神聖百合帝国と言う亡国の元皇帝だったとか?」

 

「えぇ、情報ではその通りになっております。不老不死になった経緯は、これから奪うのですから、言う必要ありませんな」

 

 麻酔弾の効果が切れて目を覚ましたマリは、目前のカンゼンダーとタニスの姿を見て驚き、逃げようとしたが、強過ぎる麻酔の所為か身体が自由に動かない。そればかりか腹這いにされた挙句、四肢を地面に杭で刺して拘束しており、徹底的に動けないようにされ、口まで糸で縫い合わされて開けないようにされている。

 並の人間なら数十分か数時間後に死んでいる拘束であるが、マリは不老不死なので死ぬことは無い。だが、痛みは継続し、彼女を苦しめていた。

 

「起きたぞ。何か言いたげだが?」

 

「いや、塞いで結構。マジックキャンセラーまで使って徹底してますが、声で人を操ったと言う情報もありますので」

 

「ほぅ。お前にしては、中々の徹底ぶりだ。完璧には程遠いが、誉めてやろう」

 

 雑談を交わす二人は、マリが起きたことに気付き、こちらを睨み付けていることで何か言いたげにしているとカンゼンダーはタニスに告げる。これにタニスは口を空けていれば、何らかの魔法か術を使うかもしれないと言って、念のために縫い合わせたと答えると、カンゼンダーは完璧には程遠いと言いながらもその対策を褒めた。

 首も固定されて視界が限定されているので、彼らが何をしているかマリには分からない。彼女の周りでは、不老不死をカンゼンダーに移す儀式を行うための魔法陣が描かれている。

 

「どうして、お前のような不完全極まりない女が不老不死を手に入れられた? 不老不死に相応しいのは、人類が完全な存在として生み出したこのフォルコメンハイト・カンゼンダーだ」

 

 魔法陣が描かれている間、カンゼンダーは自分から見れば不完全極まりないマリが不老不死なことが相当気に入らなかったらしく、不老不死となるべきは、人類が完全な存在として生み出した自分こそが相応しいと宣う。

 この主張に口を縫い合わされて何も言い返せないマリは呆気に取られる中、カンゼンダーは見下しながら彼女の頭頂部に右手の指を強く突き付け、自分こそが不老不死に相応しいと言う正当性を宣い続ける。

 

「貴様の経歴を調べた。腹立たしいほど感情的で不完全極まりない! 数百年も生きておいて未だ完璧になるどころか、完全にすら至っていない! 無駄なことに時間と労力、資金に資源を費やし過ぎだ! お前はどうして完全に至ろうと考えない!? 私の遺伝子を受け継ぎながら、その能力を引き継がない出来損ない共のようだッ!!」

 

 自分からすれば、マリは長い時間を生きているにも関わらず、完璧と完全を目指そうとしない不埒で我慢ならない女であった。それに怒るカンゼンダーは、マリを自分の遺伝子を受け継がなかった子供たちに例えて罵倒する。

 

「だが、それも終わりだ。私が不老不死を得れば、お前は直ぐに寿命が尽きて醜く干からびるか、四肢やあらゆる場所に突き刺した杭による出血多量で死に至る」

 

 もう不老不死は手に入れたも同然なので、カンゼンダーは機嫌を取り直し、不老不死を奪えば干からびて死ぬか、突き刺した杭の所為で出血多量で死ぬと浮かべながら告げる。

 

「カンゼンダー様! このポケベルを!」

 

「ポケベル? ふむ」

 

 そんなカンゼンダーに、タニスがマリから取り上げたGGGポケベルを見せる。Gストーンもあったが、Gクリスタルで出来た純正品なのか、自分の懐へと仕舞いこんでいた。

 ポケベルはこの世界において、既に過去の遺物で博物館くらいでしか見られない代物であったが、GGGの物だというタニスにカンゼンダーは興味を示し、それを手に取って起動状態のポケベルを調べる。

 

「GGGとやらが、大量虐殺者を助けに来るとは思えんな」

 

「そうでしょうな! 大量虐殺者など助けに行けば、看板に傷が付いてしまう!」

 

「そういうことだ。奴らは助けに来ない。特にお前のような犯罪者はな」

 

 マリの経歴を調べていたのか、GGGは助けにこないとカンゼンダーはタニスに告げる。これにタニスもマリの経歴を調べたのか、大量虐殺者を助けにでも行けば、防衛組織という看板に傷が付くと言って同調する。GGGは決して助けに来ないとマリに告げた。

 その言葉にマリは言い返せず、思わず顔を伏せてしまった。つまり、カンゼンダーたちが言っていることを認めているのだ。

 そう、カンゼンダーの言っている経歴は事実なのだ。数百年も生きるマリは、ありとあらゆる犯罪や虐殺などを行っていた。それが、マリがGGGに助けられる価値は無いと自身を卑下する理由であった。

 

「エヴォリュダーの力も欲しかったが、後で手に入れれば良い。さて、そろそろ完成の時間だ」

 

 自分の言っていることをマリが認めたのを反応で分かったカンゼンダーは、GGGポケベルをわざわざ彼女の目の前に落とし、それを踏み潰してから儀式の準備を確認する。

 GGGが来た際、獅子王外からエヴォリュダーの力も奪おうと画策していたようだが、不老不死が手に入るためか、後で奪えば良いと言って、気にもしなかった。

 

 

 

「も、もう駄目だ…!」

 

 このマリが捕らえられる様子を物陰に隠れて見ている人物が居た。

 その人物の名はケンジロー・カブト。マリがエアリアルを召喚し、連合軍と偽ウルトラマンセブンとなったラクサスを討ったことで、勝てると思い込んだようだが、ガオゾンダーMk-Ⅱに完膚なきまでに叩き潰され、完全に心が折れてしまった。

 一度は助けようかと思っていたが、多数のスパルタンシリーズやマス・ライダーの姿、それにガオゾンダーMk-Ⅱの存在に怖気付き、誰にも気付かれないように息を殺し、その場から逃れようとする。

 

「残った奴が一人いますが。確か、兜剣児郎だったとか…」

 

「放っておけ。そのような小物に構っている暇は無い」

 

 タニスはケンジローの存在に気付いており、どうするのかと問えば、カンゼンダーは完全にその存在を無視しており、儀式の準備を急がせる。これにタニスは従い、ただ魔導士や術者らが儀式の準備を行う姿を眺めていた。

 

「追ってこない…?」

 

 誰も自分を追ってこないことに安堵したケンジローは、立ち上がって遺跡の方へと目指す。

 どうやって異世界へ行くのか分からないが、調べれば分かることだろう。

 そう思って遺跡へと足を進めたが、何者かに呼び止められた。これにケンジローは思わず振り返り、護身用に持っていた拳銃をそちらへ向ける。

 

「待て」

 

「誰だ!?」

 

「俺はお前の敵じゃない。だが、選択次第では味方でもない」

 

「はぁ…?」

 

 銃口を向けた先に居たのは、全身をアーマーで覆った素顔が見えない鎧の戦士であった。腰にはピストルに背中にはライフルを背負っていたが、左肩には似つかわしくない緑の小柄で愛らしいエイリアン、年ごろからして赤ん坊が乗っていた。

 思わず驚くケンジローに向けて敵ではないと告げる戦士であるが、選択次第では味方でも無いと告げ、彼を更に困惑させる。

 

「兜剣児郎。いや、ケンジロー・カブト。彼女を助けたいのか?」

 

「は、はぁ…!? それに助ける? そ、そんなの無理に決まっている…! 俺なんかが…」

 

 こちらが名乗っていないのに、自分の名を口にする赤子連れの戦士は、ケンジローにマリを助けたいのかと問うた。これにさらに混乱するケンジローであるが、今の自分では無理だと言い返した。

 だが、戦士はケンジローが未だ身に着けているブレスレッドを指差し、助ける、即ち進めばブレスレッドが力を授けてくれると告げる。

 

「いや、それは可能だ。お前が進むと決めれば、お前が右腕に身に着けているブレスレッドが、その力を授けてくれる」

 

「進めばこのお守りが力を授けてくれる…?」

 

「そうだ。とある少女が言っていた。逃げれば一つ、進めば二つ。俺から言わせれば、退けば一つに進まば二つだ。この言葉は少女が母親から教わった物だ。結果的に祝福でもあり、呪いでもあったが、彼女はそれを信じ続けて進んだ」

 

 マリがお守りとして押し付けて来たブレスレッドが、力を授けてくれることに疑念を抱くケンジローに対し戦士は確実であると答え、とある少女の言葉を引用する。

 逃げれば一つ、進めば二つ。

 少女が母親から教わったその言葉は、戦士から見れば祝福であり、呪いであったが、それでも信じ続けたと語る。

 

「その言葉に従い、少女は暴走する母親を救うことが出来た。親が子を助け、子が親を助ける。俺たちと同じ我らの道だ」

 

 戦士はその言葉で少女は暴走する母親を救えたと語り、自分の肩に乗っている赤子を見ながら自分らと同じ我らの道と話す。ケンジローが呆気に取られる中、戦士は視線を彼に向けてどうしたいのかと問う。

 

「ケンジロー・カブト、お前はどうしたい? 逃げるのか、進むのか?」

 

 この戦士の問いに、ケンジローは銃を降ろして悩んだ。

 こんな自分でも、あのマリを追い込んだ怪物たちと戦えるのかと。

 秩序の女神であるポーラなら、人員を送り込み、力を授けてケンジローを無理にでも戦わせようとしたが、戦士は彼の意思を尊重してか、選択肢を与えていた。

 

「迷っている様だな。逃げればそれなりの生活ができるだろう。だが、後悔が一生付いて回る。お前はそういう男だ。進めば力が手に入り、奴らと戦える。例え敵に討たれても、後悔は残らない」

 

 ケンジローが迷っていることに気付いてか、逃げればそれなりの生活は出来るが、後悔は一生付いて回ると説き、進めば力が手に入り、例え敵に討たれても、後悔は残らないと口にする。

 戦士は一目彼を見て、マリを見捨てた自分が後悔するような人間であると見抜いていた。それに進めば力が手に入ると聞けば、折れた心が戻っていることも気付いた。少しズルい手を使い、戦士はケンジローが戦うように嗾けたのだ。

 

「…分かったよ。俺は進む。これ以上、逃げるのは性に合わないからな!」

 

「進むか。お前なら、進むと思っていた。そのブレスレッドに進んだと思いを込めろ。そうすれば、ブレスレッドがお前に力をくれる」

 

 この戦士の言葉でケンジローは進む、即ちマリを捕らえたカンゼンダーたちと戦うことを決意した。

 そのケンジローが思うような選択をしたことに、戦士は敬意を表してブレスレッドに願いを込めれば、力を授けてくれると告げる。

 

「こうか…?」

 

「そうだ。お前は前に進んだ。これで二つ手に入れたことになる」

 

 ケンジローがブレスレッドを付けた右腕を前にしながら問えば、戦士は進んだことで二つを手に入れたと答えた。

 

「な、なんだこれは…!? 鎧…?」

 

 その直後、アンダーギアと呼ばれる防着がケンジローの頭部を除く全身を覆った。これに驚くケンジローであるが、戦士は力をまだ覆っていないと告げる。

 

「その形態では、まだ本当の力じゃない。だが、既に答えはお前の心の中にあるはずだ」

 

「あぁ、分かる…! そうだ…!」

 

 答えは既に心の中にある。

 この戦士の言葉で、ケンジローは彼に聞かなくとも、更なる力を手に入れる言葉を知っていた。

 

「武装! 烈火ァァァッ!!」

 

 ケンジローが自身の心の中に思い付いたその言葉を叫べば、複数の巻物が彼の全身を覆い隠すように開かれ、籠手に手甲、袴や脛当などを付けていく。銅や袖が装着されれば、左腰に小太刀、背中には大太刀と使わないであろう大盾、右腰にはビームガンらしき小筒が装着される。

 最後に兜が現れれば、ケンジローはそれを被り、かつて甲冑を身に纏って戦場を駆けた遥か昔の先祖の如く鎧武者となった。この甲冑の事を鎧擬亜(よろいぎあ)と呼ぶ。

 

「ケンジロー、お前はサムライトルーパーとなった。既に烈火は居て今も戦っているが、この世界での烈火はお前だ」

 

 既に炎の使者である烈火は居り、今も戦っているが、この世界においてはケンジローしかいないので、戦士は認めることにした。

 烈火の名を持つケンジローの鎧擬亜であるが、仁の心を持つ烈火のリョウこと真田遼(さなだ・りょう)が身に纏う物とは似ているが、カラーリングと武装面からして地球連邦軍が一年戦争で使っていたモビルスーツ「RGM-79 ジム」のようである。

 

「これで俺も…!」

 

「へっ、激アツじゃねぇか…!」

 

「子供じゃないか!」

 

「本来、サムライトルーパーは少年が纏う物だ。だが、お前と同じ烈火の名を持つサムライトルーパーは、五十歳になっても鎧擬亜を身に纏っている。問題は無い」

 

 鎧擬亜を纏い、サムライトルーパーである烈火のケンジローとなったケンジローは、カンゼンダーたちとの戦いに赴こうとしたが、突如となく少年が出て来た。

 少年の姿を見たケンジローが驚いた声を上げる中、戦士は鎧擬亜は本来少年が身に纏う物だと説明するが、烈火のリョウを初めとするサムライトルーパーたちが五十歳になっても身に纏い、戦っているので問題は無いと付け加える。

 

「仁の誓い、炎の使者! 武装ッ! 灼熱ゥゥゥッ!!」

 

 防着を纏った少年が叫び、鎧擬亜を身に纏えば、新世代のサムライトルーパー、仁の心を受け継ぐ「灼熱のガイ」となる。

 

「さて、もう一人が待ちくたびれている頃だろう。仕掛けるぞ」

 

「名付けて、クソ女救出作戦だ!」

 

 役者が揃ったのか、戦士は監視している仲間の一人が待ちくたびれていると言い出し、カンゼンダーたちに攻撃を仕掛けるべく移動を開始した。これに灼熱のガイは少年らしく活発に変な作戦名を叫び、赤子を連れた戦士の後へ続いていく。

 

「変な作戦名だが、負ける気がしない…! 行くか!」

 

 その二人の後を追うように、烈火のケンジローも続いた。




残念だけど、また戦闘シーンは次回なんだな。

サプライズゲスト

マンダロリアン/ディン・ジャリン
我らの道を提唱するマンダロリアンの懐古厨たちの集まりである「チルドレン・オブ・ザ・ウォッチ」に所属する赤子連れの賞金稼ぎ。
普通に脱いでいる他のマンダロリアンたちとは違い、決して人前でヘルメットは取らない。
その所為か、他のマンダロリアンの分派たちからはカルトやら野蛮人呼ばわりされている。
この作品では何事も無く普通にグローグーと共に現れ、スレッタの言葉引用してケンジローをサムライトルーパー「烈火のケンジロー」に覚醒させた。

グローグー
ヨーダと同じ種族の五十歳の赤ちゃん。強いフォースを扱う。マンダロリアンのマスコット。
ディン・ジャリンと普通に現れたが、左肩に乗っておにぎりを食べているだけ。

(がい)/灼熱のガイ
新世代のサムライトルーパー、仁の心を受け継ぐ「灼熱のガイ」の少年。
元々妖邪であり、深夜アニメになった所為で鬼畜外道虐待親父である妖邪帝王・羅真我(らまが)の息子で、その所為で配下に全く慕われていない白い人型の怪物であったが、五十歳の身体を嫌がった親父が次の依代となるように人間の少年にされた。
育った環境の所為かとんでもねぇクソガキであったが、教育と導き、仲間たちの交流を得て、仁の誓いに相応しい人物として成長する。
それでも、味覚とネーミングセンスはおかしいまま。
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