澄野拓海「希望ヶ峰学園?」 作:たくみきんぱつ
エンドレスアイランド 壱
「日向……創…?」
「とりあえず、立ち上がれよ。その…説明は色々してやるから。」
オレは日向と名乗った奴の手を取って立ち上がる。
オレが眠っていたらしい部屋の中は小綺麗でベットに机と椅子があり、シャワールームも見える。
「ここは…いったい?」
「コテージの中…って言っても伝わらないよな。……一旦さ、お前も自己紹介してくれよ。」
「……オレは澄野拓海だ。」
「澄野拓海…一応確認なんだが、澄野も希望ヶ峰の新入生なんだよな?」
希望ヶ峰の新入生?
その質問は、いつぞやどころかつい昨日聞かれたばかりのものと同じだった。
待て、待ってくれ。流石に昨日の今日で、冗談だろ?
そう思いながら昨夜までのことを思い出す。
昨日は確か、苗木達と会ったあと色々あって希望ヶ峰学園から脱出して、その後未来機関に保護されて……。
その後、その後は確か、宗方京介とかいう偉い人と話して疲れたから寝ようとして、誰かに起こされて…。
「…………十神?」
「は? いっ今お前、なんて言ったんだ? 十神って言ったのか?」
「え、ああ。」
「知り合いなのか? 十神と。」
「いや、ちょちょっと待ってくれ。今、色々整理してて。」
あの後何があったんだ? 十神に起こされて、でも十神はいなかったんだよな?
……月を見た。その先は……。
「うぅぅ」
頭が変な感じがする。記憶がグルグルと駆け回ってシェイクされてるみたいだ。気持ち悪い。
……気持ち悪い?
その考えを持った瞬間、途端に全身が寒くなった。何か、これはいけないと反射的に悟っているみたいだった。
「おい! 本当に大丈夫か? 顔色が悪いぞ? ほら、ベットに戻れよ。今、看病とかに詳しい奴呼んできてやるからさ。」
日向に手を引かれて、ベットまで戻って寝かせられる。
オレは強引にベットから出ようとするが日向に止められる。
「いや、大丈夫だから…。それよりも…十神はどこにいるんだ?」
「その顔で大丈夫な訳ないだろ…。いいから素直に寝てろって。
……十神は今、パーティーの主催をしてる。会いたいなら、交代の時、頼んで連れてきてやるからちょっと待ってくれ。」
「交代? パーティーって何だ?」
「親睦会…みたいなものだと思う。それで全員が集まるって話なんだが、誰かがお前のことを見ておくべきだって十神が言い出してな。一時間ごとに順番で変わりながらお前の様子を見てることになったんだ。」
「全員って何人だ? 何でオレやキミはここにいるんだ?」
「……わかったよ。驚かないで聞くなって話も無理だろうけど、落ち着いて聞いてくれよ。いいか、俺達はな……。」
そう言って日向は現在のことを語り始めた。
ここはジャバウォック島という、オレ達十七人の高校生以外いない無人島で、気付いたらここにいた。オレは何故かずっと机に突っ伏して寝ていたらしいが。
ウサミとかいうふざけた喋るヌイグルミがいて、そうこうしていたら、次にモノクマという別の喋るヌイグルミが出てきたという話のところで、オレはそこで日向に待ったをかけた。
「モノクマ…だって!?」
「そうですよー。ボクですよー。」
「うわぁ!?」
いつもの間に部屋の中にモノクマが侵入していた。
そいつの態度はあの体育館の時と随分と違っていて、なんというかやる気なしといった感じだ。今だって床に寝そべりながら明らかにダルいダルいダルいという態度を前面に押し出している。
「…モノクマ、お前は何しに来たんだ?」
「いやー今回は澄野クンが大分寝坊助さんみたいだからね。一応何かないかと思って様子を見に来ただけだよ。そんな何かするなんてもう散々やったからさ。」
「もうやった? パーティー中のみんなに何かしたのか!?」
「はいしました。何年前にやったか忘れたけどね。」
日向とモノクマ平然と会話する。
人間と喋るヌイグルミが会話する光景なんて当たり前のはずがない。それでも目の前でまた同じことが起こっているのはなぜなんだろか?
「…………江ノ島盾子。」
「澄野クンってペンネームで活動してる人に向かって本名言っちゃうタイプ? 嫌われるよーそんなことしてちゃ。
いいかい? そういうことしてたら話のネタにされて薄い本の中であんなことやこんなことを……。」
「黙れ。」
「…澄野?」
「こんなやつは無視してそのパーティー会場に行こう。案内を頼んでもいいか?」
「あ、ああ。わかった。」
オレと日向はモノクマを無視してコテージの扉を開く。
辺りは真っ暗でふと上を見上げれば煌めく点が夜空を彩っていた。
その景色に浸っている訳にもいかず、オレは日向の後ろを追いながら足早にパーティー会場へ歩を進めた。
「澄野くん?」
「澄野さん!起きたんでちゅね! 良かったー。こんなことを初めてでちょっと焦っちゃいまちたよ。」
パーティー会場は綺麗な外装をしたホテルの前ではなく、その隣にあった古い木製の建物だった。
その前の階段に座った女の子とモノクマと似たような見た目をしているピンクと白に分かれたカラーリングのヌイグルミに話しかけられた。
「何だ? お前、モノクマの仲間か?」
「ちっ違いまちゅー。あんな奴の味方はこの島にはいましぇーん!」
「あー七海、自己紹介出来るか?」
「やるよー。七海千秋でーす。超高校級のゲーマーでーす。オールジャンルいけまーす。」
パーカーを着た気怠げな様子の女の子がそう名乗る。
超高校級のゲーマー…日向に聞いた通り、オレを除いた全員が希望ヶ峰学園の生徒ってことなんだろうな。
新入生って言ってたけど記憶がイジられてる可能性もあるし、当てにならない。
でも見た目の感じ、年が近いのは確かのはず…。だったら苗木達の後輩か、先輩なんじゃないか? いや、だったらなんで十神がいるんだ?
「ああ、よろしく。オレは……。ちょっと待ってくれ、何でオレの名前を知ってたんだ? まだ名乗ってないだろ?」
「ほわわ!? それは、えーと、えーとでちゅね。」
「それはね。モノミがさっきこっそり教えてくれたんだよ。寝たままの男の子は誰って聞いたらね。」
「そうなのか、でもとりあえず名乗っとくよ、オレは澄野拓海だ。で、モノミっていったか? 日向、こいつはなんなんだ?」
「あちしには聞いてくれないんでちゅね…。」
「俺達にもよくわからないんだ。こいつが俺達をこの島に連れてきたんだろうけど……。モノクマといがみ合ってる関係っぽくもあるけど、演技かもしれないし。というかモノクマが変っていうか、ずっとやる気がないっていうか、そんな感じでさ。とりあえず俺達の味方ではないとは思ってる。」
「そうなのか。……そういえば、七海はパーティーに参加しないのか?」
「私達はここでモノクマがパーティーに入ってこないように見張りをしてるんだよ。」
見張り…さっきみたくいきなり現れたらどうしようもない気がするけど。
「ねぇ澄野くん。一つ忠告をしてもいいかな?」
「忠告?」
「うん。あのね、危険なことがあったらその場を動かない方がいいよ。」
「危険なことって、例えば地震とかか? 言われなくてもすぐにその場は動かないよ。」
「なら大丈夫だよ。パーティー、楽しんでね。」
七海にそう見送られ、オレと日向は旧館に入った。
旧館のホールまで行ってオレは目的の人物と対面するはずだった。
ホールの中には超高校級の才能を持つのであろう高校生達がいて、ホールに入った瞬間彼らの視線がオレに向けられた。
だが、オレはそんなことに気を留められなかった。
「……太った?」
「…………貴様。」
それが声に出ていたことにオレは慌てた。
「いや、違うんだ! 悪気があったわけじゃなくて…。っていうかどうしたんだよ!? その体格は!?」
「起きたんですねぇ。よかったですぅ。具合はどうですか? 気分は悪くありませんか?」
「えー!! 白夜ちゃんって元々痩せてたんすかー!? マジのマジっすか!? ていうか、ずっと寝てた男の子っすね! おはようっす!! 夜だけど!」
「黙れ。おいお前、ちょっと話がある。廊下で話すぞ。日向、お前はパーティーに戻れ。」
「ちょっと待てよ。まだこいつは自己紹介もしてないじゃないか。」
「そんなもの、話が終わった後だ。」
そう言うと、その、体格が大きく変わった十神は強引にオレを引っ張りホールの扉を強く閉じた。
オレは十神の圧…物理的なものにも押され、壁際に追い込まれた。
オレの顔のすぐ隣に十神の手が強くドンッ! という音と共に置かれる。
なんなんだよこの状況!?
「単刀直入に聞くぞ。お前は十神白夜を知ってるのか?」
「しっ、知ってるも何もお前のことだろ!? あの希望ヶ峰学園でのことを覚えてないのか!?」
「……知らないな。お前、名を名乗れ。」
「…澄野拓海だよ。」
やっぱりか、オレ達はまた記憶を消されて、江ノ島のいいように扱われようとしてるんだ。希望ヶ峰学園の次は、こんな無人島でかよ…。いったいどのくらいの時間が経っているんだ?
「十神、いいか。よく聞いてくれ。オレ達は、江ノ島盾子に、モノクマに記憶をイジられてるんだ。お前は前に同じように記憶を消されて、希望ヶ峰学園でコロシアイをさせられそうになったんだ。」
「…記憶を消されたことについては、既にモノクマが公言している。その様子からして、お前にとっては真実なんだろう。だが、奴はそれをモノミのせいだと言っていたな。モノクマを裏で操っている奴が、江ノ島盾子なのか?」
「そうだ。
…モノミはあいつの仲間ってことか。なんでわざわざ記憶喪失のことを教えているんだ?」
「知らん。また、裏切り者もいると言っていたな。それに奴は何故か俺達にコロシアイをさせようとしている。お前の言うことが真実ならこの状況はそれと同じになるな。
……お前の知っていることを全て聞かせろ。ただ今じゃなくていい。明日にまで情報をまとめておけ。」
「いや、みんなここにいるんだろ。だったら今話す。パーティーなんてやってる場合じゃないだろ。」
「やめろ。とにかく今日はまだ駄目だ。お前もパーティーに参加しろ。それと、何故自分だけその記憶があるのかも考えろ。」
「なっ、そっそれは……。」
言われてみればそうだ。なんでオレにだけこの記憶が残っているんだ? モノクマがミスった…? いや違うな、それならもっとモノクマは焦るはず。だったらわざとなのか? オレに何かさせようとしている? でも情報を共有しない訳にもいかないし…。
そんな悩むオレをよそ目に十神がパーティー会場であるホールに戻ろうと、その扉に手をかけ、開いた時だった。
突然、バンッという音と共に光る世界が全て黒く変わった。
てっ、停電!?
それがわかった瞬間、誰かの野太い足音が直ぐ側で響く。
真っ暗の空間であるせいで、だんだんと足元がおぼつかなくなっていく。なんとか近くの壁に触れたことで足を踏ん張る。
「ック。とっ十神、無事か!?」
そう声を上げるが返事は返ってこない。
さっきの足音は十神なのか? どうする? オレもホールの中に入ったほうがいいのか…。 扉は壁を伝っていけばわかるか?
ふと、七海の忠告を思い出す。
『危険なことがあったらその場を動かない方がいいよ。』
…そうだな。コケたら危ないし。ブレーカーをどうこうしようにもオレに場所はわからないし。今は動かないほうがいいよな。
そうしていると、この廊下の中で一際目立つ光が灯った。
そこへすぐに顔を向けるとそこには白い料理人のような格好をした小柄な少年がその灯、火の着いた何かの装置を片手に持って現れた。
なんだアレ? 停電だから火を着けて灯りにしようっていうのはわかるけど…。東京団地では見たことないな。
……アレがあればブレーカーをどうにかできるんじゃないか?
オレは壁に手を付けたそいつに近づいて声をかける。
「おい! ちょっといいか?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「落ち着けよ! 驚かせて悪かったからさ。」
「あっぁぁぁぁばばばばばばば……。」
どうしたんだこいつ…。明らかに様子がおかしい。暗いのがそんなに苦手なのか?
「あああ、あいつを、あいつを止めないと……。」
「あいつ? 誰のことだ?」
「殺されちゃうよ!? あいつは本気なんだよぉ!?」
「こっ殺される!?」
コロシアイを本気にしている奴がいるっていうのか!?
「誰だ!? 誰が誰を殺そうとしてるんだ!?」
「ちっ違うんだ! ぼくじゃないんだ!! ぼくはみんなを守るために…。お母ちゃんに会いたくて…。」
「は? お前何言ってるんだ?」
こいつ、錯乱して話にならないぞ。
でも、この焦り用は嘘には思えないし…。本当に誰かを殺そうとしている奴がいるならすぐ止めないと!
「ちょっと借りるぞ!」
オレは錯乱するそいつから火が灯る装置を奪って、ホールの方へ走った。
扉を力強く開け放つ。
「みんなそこを動くな!」
オレは大声を出してホールにいるみんなに向かって言った。
オレは灯りを掲げながらホールの中心に向かっていく。
「全員いるか確認するんだ! お互いの顔を見てくれ!」
そう呼びかければみんな自分の周りを確認する。小さい明かりだが、この空間ではそれがホールの中心に持っていけば近くの顔を見渡すぐらいはできた。
「ガスコンロの火を明かりにすんかのか。機転の効く奴だなぁ。」
「ほう、この暗黒空間を照らす一筋の光…。だが、それは我々を焼き焦がす業火となろう! 不定のない晩餐の置かれし卓上に置くがいい!」
「こういう空間ってなんとなーく怪談話とかしたくならないっすか?」
「あれれ? ゲロ豚がいなくない?」
「あれ? 本当だ。罪木ちゃん! いるなら返事してー!」
「わわ私はここですぅ」
その会話が終わった直後、また停電時に起きた時と同じ音がして暗かった空間に光が戻った。
そしてそれが、罪木と呼ばれた少女の全貌が明らかになった。
「うわぁぁ!?」
オレは驚きを隠せずに大声を上げた。驚きだけじゃない、そこには羞恥とか、恥ずかしさが満遍に含まれた叫びだった。手に持ってたものを落とさなかったのは奇跡だったかもしれない。
彼女は、とんでもない体勢になっていた。
「ふええぇぇ。みっ見ないでくださいぃぃ!」
「見てない! 見てない! オレは何も見てない!」
オレはそう叫びながら顔を必死にそらす。目を固く強く閉じながら手に持っている先程カセットコンロと呼ばれた装置を両手でガッチリと掴みながら、体ごと彼女から背を向ける。
後ろからおっさんのやじのような、彼女のあられもない姿をからかう声が聞こえる。その一切、オレの頭の中には入ってこなかった
その時だった。本筋の事態を大きく進行させる声が挙がったのは。
「おい、日向! 縄を持ってこい! こいつを縛りあげるぞ!」
「俺!? いやそもそもお前ら! 何やってるんだ!?」
そこにはゴーグルらしきものを装着した十神が緑のパーカーを着た長身の少年を上から覆いかぶさるように取り押さえていた。
まさか…こいつが!?
「十神! まさか…そいつがコロシアイをしようとしたのか!?」
「事情聴取はこれからだ。おい何をしている? 日向、さっさと倉庫から縄を持ってこい。弐大はこいつを取り押さえろ。」
「ちょっと待っとくれ。いったいどういうことなんじゃ? なんでお前さんは狛枝を押さえつけとるんじゃ?」
「さっきそこの赤寝坊助が言った通りなんじゃない?」
「え!? 狛枝さんが…? そっそんなはずないじゃないですか!?」
「いや…、ソニアさん! アレを見てください!」
黄色いつなぎを着た彼が指をさしたところを見ると、そこには持ち手の部分が緑に汚れた刃がむき出しになっているサバイバルナイフがあった。
「なっナイフ!?」
こいつ…、停電を利用してその隙に誰かを刺そうとしたのか!?
「十神クン…。そんなに力を籠めなくてもいいんだよ? もうボクは抵抗する気なんてないからさ。」
「貴様は俺がいいと言うまで黙っていろ。」
「…わかった倉庫だな。ちょっと待っててくれ!」
そう言って日向がホールから出ていく。弐大と呼ばれた大柄な大人? は狛枝と呼ばれている彼を十神の指示通りに取り押さえた。
ここにいるのって高校生だけじゃなかったのか?
「狛枝、お前さんは本当に人を…。」
「あっあのうぅ! ごめんなさぁい! そろそろ助けてくれませんかぁ!」
あられもない姿が継続されたままの少女がそう叫ぶ。
オレはその姿を視界に映す訳にもいかず、背を向けたまま手に持っている装置を机の上に置いた。そこで一つ問題が起こった。
あれ? この火って消すんだ?
「オメー、ガスコンロなんて眺めて何してやがんだ?」
褐色肌の女の子に話しかけられる。
「あー、火をどう消せばいいかわからなくて…。」
「そんなもん、ここを捻るだけじゃねーか?」
そう彼女がガスコンロのつまみの部分を捻ると火は途端に消えた。
よく見ればここに切るって書いてあるな…。
「ありがとう。助かったよ。」
「これくらいバカでもわかるぐらい簡単だぜ? 礼なんていらねーよ。」
「そっそうか。」
昔の時代って火に寛容だったんだな…。やっぱり東京団地とは常識が違うな。
「オメー消し方がわかんねぇのに火をつけたのかよ。オメーってバカなのか?」
「いや、火をつけたのはオレじゃないんだ。さっき廊下にいた奴から借りて…。」
そうだ! あいつはどうなったんだ? まさか、今でも廊下で立ち尽くしてんじゃないのか?
そう思って廊下に出ようとしてホールの出入り口に向かおうとしたが、その扉が開いて彼らが入ってきた。
「おい! 誰かこいつのことも見ておいてくれないか!」
ついさっき出て行ったはずの日向が先程廊下で会った料理服を着た彼を連れてきた。そいつは随分と焦燥しきった様子だった。
あいつは無事…だったのか?
「花村? オメーどうかしたのか? なんでそんな疲れた顔してんだよ?」
「あ! そういえば辺古山おねぇって無事なのかなぁ?」
「確かに! 私、見てくるよ! 男子はちゃんと狛枝をちゃんとみといてよね!」
「オレがそいつをみとくよ。日向は倉庫に行ってくれ。」
「澄野…。ああ、頼むよ。」
…………。
こいつは、なんで狛枝とかいうやつがやろうとしたことを知ってたんだ? こいつはどうして、誰かが誰かを殺そうとしていることを知っていたんだ?
「花村っていったか? お前にも聞かなきゃならないことがある。落ち着いてからでいいから…話せるか?」
「君はさっきの…。ずっと寝ていた…。」
花村は体を震わせ、ずっと何かに怯えているようだった。オレはそばにあった椅子にそいつを座らせる。
「…大丈夫だ。お前の言っていた殺人をしようとした奴はそこで取り押さえられてる。危ないことはもうない。だから、な?」
「……こっ狛枝くん!?」
花村は椅子から急に立ち上がり、十神と弐大と狛枝とかいうやつがいる方に駆け寄っていく。
「十神くん! 狛枝くんを捕まえたんだね! 誰も死んじゃいないんだよね!」
「お前は……。…………。
おい澄野、お前はこいつを見ておけ。暴れたら取り押さえろ。いいな?」
「あ、ああ。わかったよ。」
「まっ待ってよ! 違うんだよ! 狛枝くんがすべて企んだことなんだ! ぼくは…。」
「お前も黙っておけ。事情聴取はお前も一緒に行ってやる。
おい! 誰でもいい、七海と九頭竜をここに連れてこい。他の奴らは外に出るな!」
「それなら唯吹が呼んでくるっすよ! 超特急パーティー前っす!」
十神がみんなを仕切っていくと、自分のことを唯吹と呼んだパンク風な恰好をした女の子がホールを飛び出していった。
そういえば、あの体育館からみんなで出た時も霧切と一緒にみんなを先導したんだったか。やっぱり御曹司と呼ばれるだけあって、人の上に立つっていうのは得意なんだろうな。
……あの時の十神はなんだったんだ? 夜にオレを呼び出して何を話すつもりだったんだろう…。聞いてもわからないよな…、記憶がなくなってるんだし。
そうして、時間が過ぎていく。オレは花村のことを見張りながら事が進むのを待った。
少ししたら、さっき辺古山を呼びに行くと言った女の子とその辺古山なんだろう女の子、唯吹という子が連れてきた七海と小柄な男子がホールに入ってきた。そこから日向も走ったのだろう息を切らした様子でホールに戻ってきた。
「縄、取って来たぞ。これでいいか?」
「いったい何があったのだ? 狛枝はなんで押さえつけられている?」
「こいつが殺人を計画したからだ。」
「殺人!?」
「へっ、おっぱじめるのがまさかお前みたいな優男だとはな。随分と化けの皮を被ってようだが、うまくはいかなかったみてぇだな。」
「…………。」
七海だけはずっと無言のままだった。その表情はどこか穏やかで、事が穏便に進むのを見守っているような感じだ。
「なるほど、そういうことなら縛るのは私がしよう。」
「わざわざ立候補するのなら任せるが、経験でもあるのか?」
「まぁそんなところだ。」
そういいながら辺古山は手際よく狛枝を縛ってく。両手両足を完全に縛られ身動きが取れなくなった狛枝はホールの中心の床に転がされて、誰かが目を離しても誰かの目には入っている、そんな状況に置かれた。
これでこいつは動けない。コロシアイは起きないはず…だよな?
そこから十神による、狛枝ともう一人に対しての事情聴取が始まった。
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