澄野拓海「希望ヶ峰学園?」 作:たくみきんぱつ
オレから見た狛枝凪斗という人間はヤバいやつだ。そう言えばそこまでだが、あれだけわかりやすい分、蒼月よりはマシなのかもしれないとよくよく考えてみて思った。人類を滅ぼそうとしたような奴よりヤバい奴なんていないと言われればそうだ。そうそういてたまるか。
でも希望のためだなんて、そんなことで人を殺そうとするなんてめちゃくちゃだ。…狛枝にとってはそんなことじゃないのかもしれないけど。
狛枝は一週間の間、旧館で様子を見ながらモノミの監視付きでの謹慎することになった。実質的な軟禁だけど、十神の決定が後押ししたのか誰も反対するものはいなかった。狛枝と同じように花村も縛るべきという意見もあったが、花村は本人に大きく反省の色がみられるのと、主犯ではないし実行可能だっただけで実際には誰も犠牲者がいないのが幸いした。結果的に花村は三日間みんなが代わる代わる交代しながら監視することになった。と言っても一緒に行動するだけで特にこれといった制限が用いられることはなく、ホテルで行われた続きのパーティーで超高校級と呼ばれるほどの料理の腕を満遍なく振るっていた。
オレはそのパーティーでみんなに自己紹介をしてもらっていた。そこで一通りに名前と超高校級の才能はわかった。イアリングを探すとか言ってみんなよりも少し後にパーティーに戻った田中は何言ってるか意味わかんなかったけど。
七海はよく手伝えるな、狛枝もそうだったけどこれって大体わかるもんなのか?
「問おう! 貴様は誰のマスターだ?」
「……え?」
「…ペットを飼ったことがあるか聞いてるんだと思うぞ。」
「…すごいな。みんなわかるもんなんだな…。」
「いや、俺もわかんないよ。狛枝が前にそう翻訳してくれたんだ。」
「そう…なのか。えっと、ペットは飼ったことないけど、少しの間だけ面倒を見てた時ならあるな。幼馴染の女の子がかなり弱ってた捨て犬を連れて帰ってきちゃって、その流れで。」
「ほう、犬か。なかなかの眷属を従えていたらしいな。だが、一時の間だと? 貴様、その犬をそこからどうした? ことの次第によっては貴様はここで氷像とかすだろう。答えろ!」
「別に何もしてないよ。ちゃんと面倒見た後、引き取ってくれる人が見つかってそこでその子は暮らしてるはずだ。」
「ふふ、そうか。ならばいい。」
何を言ってるか正直これかもわかる気はしないけど、飼育委員ってことは動物に好かれるんだろうし、人は見かけどころか言動にもよらないんだな。…さっき見せてもらったハムスターはすごい可愛かったな…。
「ねぇ、辺古山さん、体調とか悪くない? 大丈夫?」
「む、別に異常はないが。七海からは顔色でも悪そうに見えたか?」
「いや、そんなことはないよ。何にもないなら大丈夫。」
「てか、九頭龍。アンタ、パーティーに参加する気になったのね。さすがにあの狛枝を見てたら気分の一つでも変わちゃった?」
「別に怖気付いた訳じゃねーよ。澄野に自己紹介するついでだ。まぁあの野郎が気色悪かったのは否定しねぇがな。」
「あんな奴を幸運として選ぶなんて、希望ヶ峰ってどうかしてるよねー。本当に抽選で選んだのか疑わしくなってくるよ。」
そういえば、希望ヶ峰に選ばれるようなやつらってほとんど有名人なんだよな? うまくやれば今がいつなのかわかるんじゃないか?
十神には明日にしておけって言われたけどこれくらいなら今聞いといてもいいか。
「みんな、ちょっといいか? 今から言う名前に心当たりがあったら言ってほしいんだけど。」
「急に何を始めるつもりだ。」
「十神か、お前の知識も貸してくれ。オレの知る希望ヶ峰の78期生の名前を言っていくからそれを知ってるかどうか答えてほしいんだ。」
「それをして何になる?」
「モノクマ、いやモノミはみんなの送った学園生活の記憶を消したんだろ? そこにはモノミにとって都合の悪い記憶があったはずだ。オレはみんなとは違って少し記憶が残ってるから、もしかしたらそこをすり合わせれば何かわかるんじゃないかと思ったんだ。」
「記憶が少し残ってるってどういうことだ? なんで澄野にだけ記憶があんだよ?」
左右田にそう聞かれる。多分記憶が残ってるっていうよりは消す記憶がそのぐらいしかなかっただけな気がするけどな。オレがこの時代に来たのは記憶だけなら今が二日目だ。何年分消されてるのかわからないけど体格だってあんまり変わってないし、それほど時間は経ってないないはず。さすがにあの百日間や東京団地での記憶はいじりようがない…よな?
「多分、希望ヶ峰の生徒じゃないからだと思う。モノミが消したい記憶は学園生活の中にあって、オレはそうじゃないからみんなが持つ記憶よりも少しだけ未来の記憶があるんだと思う。」
「お前さん視点じゃと記憶喪失はマジの話なのか?」
「…オレの記憶では十神とは知り合いだったんだ。でもその記憶が十神にはない。少なくともオレが十神に会うまでの記憶は消されてると思う。みんなが同じかどうかはわからないけど。」
「…お前の言いたいことはわかった。とりあえずその78期生のことを言ってみろ。」
十神にそう促されて、オレは記憶的には昨日会ったばかりだった彼らの名前を告げていく。
「苗木誠、舞薗さやか、桑田怜恩、霧切響子、十神白夜、山田一二三、大和紋土、腐川冬子、セレスティア・ルーデンベルク、朝比奈葵、大神さくら、葉隠康比呂、不二咲千尋、江ノ島盾子、戦刃むくろ。これが78期生の名前でみんなの後輩か、先輩だと思うんだけど。」
「ちょっと待てよ。なんで十神の名前が出てんだよおかしいだろ。」
「オレに聞かれても困るよ。オレの記憶だと本当に十神は78期生のはずなんだ。」
「……その件には心当たりがある。…明日話してやるから今はその名前に心当たりがないか考えろ。」
「はいはいはーい! 唯吹、さやかちゃんのことはマジ知ってるす。超歌うまアイドルでテレビでも特集見たっすよ!」
「舞薗さやかくらいのビッグネームなら誰でも知ってるでしょ。うーん、アタシが知ってるのは江ノ島盾子くらいかな。海外の写真集の雑誌で見たことあるよ。」
「ワシは桑田と朝比奈、大神の名前は聞いたことがあるのう。確か野球と水泳と格闘技の大会で優勝しとったはずじゃ。」
「不二咲千尋…はわかんないけど、不二咲の名前なら聞いたことあるよ。ゲーム関連じゃないけどプログラマーの名前で聞いたことある気がする…。」
「大和田っつたらあれだろ。暴走族の大亜紋土兄弟だろ? 業界でも名前は聞かねぇでもねぇな。」
「うーん。うーーん。うん、わかんねぇや。花村、おかわりくれよ!」
「ぼくも舞薗ちゃん以外あんまりわかんないかな。はい、終里さんおかわりだよ! 焦らなくてもいっぱいあるからね!」
「うまそー。あ、つかさこういうの詳しいのって狛枝ヤローじゃねーか? そいつに聞けばよくね?」
「確かに…狛枝ならこういうの詳しそうだけど…。」
「ちょっとちょっと、赤音ちゃんも日向も何言ってんのさ。確かに詳しいかもだけど、あんなやつに聞くことないって。」
「別に全員の名前が分かる必要はない。そいつらの年齢を照らし合わせればすぐに答えが出るだろう。」
「ではわかりやすく紙に書いてまとめましょう! わたくしが書記を務めますね。」
「そっソニアさんが書記なんてしなくていいんじゃないですか?」
「いえ、左右田さん。わたくしが言い出したのですからわたくしがやるのが筋というものです! やるからには全力なのです!」
ソニアさんが紙に78期生の名前とわかる年齢を書いていく。
「78期生は私たちよりもみな年下、ということは澄野の話が本当なら我々は78期生の先輩ということになるな。」
「年齢だけで考えるとそうなりますねぇ。じゃあ私たちは77期生ってことですかぁ?」
「おい澄野、お前の記憶では78期生はいくつだった?」
「えっと、正確にはわかんないけど……。」
あいつらは江ノ島盾子のせいで二年間の記憶がなくなったんだったよな。新入生で二年間の記憶がなくなったってことは……。
「あいつらは、三年生…だったはずだ。」
「は? いやいやいや、そりゃありえねぇだろ。希望ヶ峰で78期生が三年生になってるなら、その先輩のオレらは既に卒業してることになんじゃねーか。それはおかしいだろ。」
「でも、確かなんだ。」
「あのさぁ。澄野おにぃの言ってることが本当だったとしたら、おかしいのはそれだけじゃないよ。」
「…西園寺、何が言いたいんだ?」
「だってさ、その話が本当なら知らない間にわたし達にとっては三年間が少なくとも経ってることになっちゃうじゃん。そんなに時間が経ってるのにわたし達の誰も気づかないくらい体格も何も変わってないとかおかしくない? あ、そこの豚足ちゃんは別かもだけどさ。」
「……豚足ちゃん?」
「俺だ。」
……え? 十神? ……なんでちょっと誇らしげなんだ? 体格も違うけど、性格も違くないか?
「だからさ、モノクマが言ってることなんて嘘なんだよ。澄野おにぃの記憶もなんかの間違いなんじゃない?」
「そっそんなはずは…。」
「でもスポーツ系しかわしにはわからんかったが、澄野の出したメンツは確かに超高校級と呼ばれてもおかしくない選手じゃぞ。」
「そうっすよ! さやかちゃんは超高校級のアイドルで間違いないっすよ!」
「江ノ島盾子も…うん、超高校級って言われても違和感はないかな。」
「大亜紋土兄弟の弟の方が入学ってのはちょっと違和感あっけどな。するのなら兄貴の方だと思うが…。」
「…西園寺、いやお前ら全員に言っておいてやるが、別にモノクマの言うことが嘘でも構わん。だが、問題なのはそれが真実だった場合だ。だからあれこれ理由をつけてこれは嘘なんだ、と思考停止するのはやめろ。せめて、それが嘘と確定するまで考えろ。」
「つかさ、澄野はなんで78期生のことは知っといてオレらのことは知らねぇんだよ?」
「あーそれは色々あってあいつらと関わることがあったんだ。それは結構長くなるから明日話すよ。みんなのことを知らないのはその…。…オレ、希望ヶ峰にあんまり興味なくってさ。全然知らなくって、それだけなんだ。」
「へぇ……まぁ興味ねぇならそんなもんか。オレも機械のことはわかってもプログラムとかになると自信ねぇもん。」
……誤魔化せた。でも、希望ヶ峰学園であったことを話すとしたら、オレがどこからきたのかは誤魔化せても異血の話とかもしなくちゃいけないか? さすがにそのまま話したら荒滑稽すぎるしな。…もう先に異血の力を見せた方が話が早いような気がしてくるな。
「じゃあさ、考えるところを変えてみようよ。モノミはどうして記憶を消したのかってところをさ。」
「それってつまり、俺たちの学園生活の記憶があったらモノミが困ることってことだよな。」
七海と日向が新しいアプローチをかける。
「それは簡単じゃないか? 学園生活の記憶があったらコロシアイを起こせないからだろ? 数年を共にしたクラスメイトと初対面じゃやらせたいことの難易度が違うだろ。」
「コロシアイをさせたいのはモノクマでしょ? 記憶を消したのがモノミならモノクマとは目的が違う……と思うよ。」
「かわいくないヌイグルミ共は互いのパートナーではないのか?」
「そのパターンとそうじゃないパターン。両方考えればいいと思うよ、田中くん。仮にモノミがモノクマと仲間なら今、澄野クンが言った通りだと思うしね。」
モノミが消したい記憶……外であったことなら、人類史上最大最悪の絶望的事件あたりか? それで何かがあって……。何かって何だ?
「……情報がなさすぎるな。それ以上は推論の域を出ないだろう。澄野、お前の持つ記憶はそれだけじゃないんだろう。詳しいことは明日にしておけ、今はパーティーの時間だ。」
「パーティーって言ってももうだいぶ暗くなっちゃたけどね…。本当に朝までするの気なの?」
「ふむ。狛枝の一件には一応区切りはつけたが…。確かに面白みに欠けてきたのも事実だな。」
「…………! 唯吹ひらめいちゃったす。これは百パーセントのひらめきっすよ!」
「澪田、いったい何を思いついたというのだ?」
「砂浜っすよ! そこで花火をするんす。」
「線香花火か、まぁいいだろう、許可してやる。バケツの用意は欠かすなよ。」
「じゃあぼくは片手で持てるつまめるものをさっさと作るね!」
「線香花火…。」
漫画とかでしか見たことないけど…この時代だと普通にやってもいいことなんだな。
「みんなで花火を選び行くっすよー!」
「倉庫で明かりとかも取っていった方がいいかもね。暗いのはあの停電でもう十分だし。」
そうやってオレ達は澪田の提案に乗って、砂浜で花火を楽しむことになった。
線香花火は暗い世界をキラキラと小さい爆発を連鎖させながら灯していく。輝きはそう長くは続かずいずれ水の中に落ちてしまうけれど、目を引き付ける閃光は美しい。
「綺麗だな……。」
そういえばあの百日間でもやろうと思えばできたんだよな。……こんなに綺麗ならみんなでやっておけばよかったな。
「スパーク円陣っす!」
「やめろバカ! 振り回すんじゃねーよ!」
「テメーらガキかよ。…ほどほどにしとけや。」
「いや止めろよ! なに保護者ズラしてんだよ!」
「誰がテメーらの保護者なんだよ! もういっぺん言ってみろやボケが!」
「おいそこの三人! むやみに遠い所にいるんじゃない! この俺の目の届くところにいろ!」
「ひええぇごめんなさいぃぃ! バケツ倒して…、すぐ汲んでいますぅ!」
「あれー? カニたんがいなくなってるー?」
「儚き閃光よ…。その輝きをとくと、この俺様に見せるがいい!」
「…こういうのも悪くはない。」
「おっと、もう落ちてしもうたか。辺古山、次のやつを取ってくれんか。」
「花村! おかわり!」
「うれしいけど、終里さんは花火はしないのかい?」
「これが、青春! というものなのですね! すごく楽しいですわ!」
「七海はどうだ? 楽しんでるか?」
「こういう青春タイプのイベントってシュミレーションゲームでも結構満足度高くて好きなんだよね。」
「お、おう。楽しめてるなら何よりだ。」
「日向くんもだよ。ちゃんと楽しまなきゃ損だよ?」
「みんなー! 写真撮るからさ! ほら、笑って笑って!」
そうして楽しみながら、オレ達のパーティーは時間が経つにつれ終わっていった…。
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