澄野拓海「希望ヶ峰学園?」   作:たくみきんぱつ

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七話のアンケート再設置しました 
後から読んでる人も投票できるように…カムクラの方選ぶ方も結構いるのうれしいです。
このルート書き終わったらそっちも多分書きます。エタラなければ。


エンドレスアイランド 肆

 パーティーは終わって各自それぞれのコテージに戻り、やがて朝になる。オレは朝食会でみんなに話す内容を考えていた。

 とりあえず話すことは江ノ島盾子が企てた希望ヶ峰学園でのコロシアイと、そこから脱出して未来機関と呼ばれるところに保護されたこと、外の世界は人類史上最大最悪の絶望的事件によって滅びかけていること、ぐらいか……。みんな混乱するだろうな…十神がなんとかまとめてくれればいいけど。

 そんな一抹の不安を覚えながらもオレはホテルのほうへ歩いてく。ホテルの中に入る前にふと、ホテル前でオレは立ち止まった。

 

 「ホテル…ミライ?」

 

 昨日は真夜中で暗かったのもあってあまり気にしなかったが、改めてホテルの外観に注目した。

 ミライ…未来機関? いやそんなことないか。モノクマがこのコロシアイの為にこの島用意したのだとしたら、敵対してる未来機関に繋がりがあるみたいな名前はおかしいけど。でもモノクマは、江ノ島盾子はふざけた奴だし、あんまり真面目になんて考えるだけ無駄だろうな。

 

 「澄野か、立ち止まってどうしたんだ?」

 

 日向に話しかけられる。明るい空間で改めて日向の顔を見た。…どこかで見覚えがあるんだよな。なんでなんだろう。オレと日向は昨日で初対面のはずなのに…。

 

 「ああ、あそこに書かれてるミライっていうの見ててさ。」

 「あれな、変だよな。ジャバウォック島で南の島だってのに日本語なの。」

 「南の島…ここって太平洋なんだよな、地球で一番大きい海っていう。」

 「うん? らしいけどな。というか太平洋が一番大きい海なのって当り前じゃないか?」

 「え? ああうん。…そうだよな。いや、何でもない。」

 

 太平洋…一番大きい海? なんでわかったんだろう? なんとなくここが太平洋だって受け入れてたけど、オレってそんなに地球のことについて詳しかったっけ? ……誰かに聞いたのかな。昔にカルアに教えてもらってたとか…。……別に気にすることでもないか。

 

 オレと日向はホテルの中に入っていく。しばらくするとレストランで全員がそろって朝食をみんなで食べ始める。昨日は夜遅くまで遊んでいたからか眠そうな顔をしている者も少なくなかった。

 

 「あれ? 九頭龍もいるんだ。昨日のパーティー、やっぱり楽しかった?」

 「ちげーよそんなんじゃねぇ。昨日十神と澄野が言ってたろ、まだ話してない記憶がどうだとか、心当たりがあるだとかな。そいつを聞きに来たんだ、朝食会に参加すんのはそのついでだ。つーか花村の料理にはなんもないんだろうな? 狛枝のヤローがイかれてたっつー話なのは分かってるけどよ。」

 「大丈夫! ぼくの料理にはみんなにおいしく味わって貰うための仕込みしかしてないよ。」

 「安心しろ、昨日のパーティーでもそうだったが何も怪しいものは入っていない。それに何か仕込んであるなら腹の壊す者もいただろうがそんなことはなかっただろう? だからお前も食え。でなければ生き残れんぞ。」

 「その脂肪で言われたらそうりゃあそうだろうがよ…。」

 「そういえば狛枝の奴にも朝食って、持って行った方がいいのか?」

 

 日向が狛枝の話題を出す。狛枝の名前を聞いて数人が苦い顔をする。当事者だった花村はかなりわかりやすかった。

 そういえばあいつ昨日の夜も何も食べてないからって日向に皿を置いてくよう言ってたっけ。緊張して何も食えないくらいなら最初からしなきゃいいのに…。

 

 「悪いんだけど…ぼくはパスしてもいいかな。もう少しの間は狛枝くんには会いたくなくてさ…。」

 「大丈夫だぜ花村。今あいつに顔を合わせたい奴なんていねーぜ。オレもそうだしよぉ。」

 「ん? じゃあオレはそうでもねーぞ。いかねーけど。」

 「オメーは飯食いたいだけだろうが!」

 「一応聞いておくが、狛枝に朝食を持っていきたい奴はいるか?」

 

 その十神の呼びかけに答える奴は誰もいなかった。みんながみんな、微妙な顔を浮かべている。オレもそうだけどあんな奴とどうかかわればいいのかなんて、この場の誰もわかりっこない。普通はあんな狂った人間と関わる機会なんてそうそうにやって来ないものでもあるし、やって来たとしても狛枝はその中でも理解できない方だろう。

 

 「まぁそうだろうな。」

 「ジャンケンすか。ジャンケン大会っすねこれは。」

 「待ってよ、誰か行くにしても女子一人とかだったらなんか危ないでしょ。せめて男子の一人も行きなさいよ。」

 「オレは行かねーからな。話を聞きに来ただけだし、あいつの世話はオメーらがみとけよ。」

 「なにその言い方。九頭龍、あんたもうすこし男らしくなれない訳?」

 「唯吹はグーを出すっすよ。心理戦の開幕…、ゲームが変わるっすね。」

 「オメーはみんなでジャンケンしたいだけだな!?」

 「まぁお前ら落ち着け。こういうのは全員で順番にするか、誰かが固定でやるかだろう。どちらでも構わないが…、後者の方がよさそうだな。」

 

 誰かがまとめてくれると話が早いな。あの百日間じゃまとめ役といえる奴はいたにはいたけど、すぐにいなくなっちゃたしな…。

 

 「それなら澄野くんにお願いしたいでしゅ!」

 「うわぁ!」

 

 後方からいきなり現れたモノミに思わず声をあげてしまった。

 いきなり出てくるのは勘弁してほしい。ホラーゲームでもやってるわけじゃないってのに…。

 

 「モノミか、いきなり現れておいて澄野を指定するとはどういうことだ?」

 「それはでちゅね、十神くん。澄野くんはミナサンの希望のカケラを昨日で一個づつ集めたんでちゅけどね。まだ狛枝くんのカケラは集まってないんでちゅよ。」

 「希望のカケラ?」

 「電子生徒手帳にあったやつだよ。澄野は確認してないのか?」

 「その電子生徒手帳ってやつを持ってないだけど…。」

 「これでちゅね。あちしが預かっておいたんでちゅよ。澄野くんの電子生徒手帳にはちょっと違う機能があって調整にいつも時間が掛かっちゃうんでちゅよね…。申し訳ないでちゅ。」

 

 モノミにその電子生徒手帳を手渡される。電子生徒手帳を確認すると、みんなの情報が書いてある機能があった。そこを見ると確かに狛枝だけその希望のカケラとやらがないのがわかる。

 こんなのどうやって判定なんかしてるんだよ…。

 

 「モノミ、澄野の手帳にはあるみんなとは違う機能って何だ?」

 「えっと、それはでちゅね…。」

 

 日向がモノミに質問する。オレもそれが気になって電子生徒手帳の機能を確認していく。その中に目が留まるものがあった。

 

 「ふしぎメーター? これのことか?」

 「はい! それでちゅ! それの機能は使ってみればわかるんでちゅけど、澄野くんにはそのメーターを超えないようにしてほしいんでちゅ。これは本当のお願いでちゅ。もしメーターを超えちゃったら大変な事になっちゃいまちゅからね…。」

 「これって何で上がるメーターなんだよ?」

 「それは澄野くんの力を測るメーカーのようなものでちゅ。澄野くんの力は本当にすごいものなんでちゅけど、もし力を使いすぎちゃったら逆に世界の方が耐えられないんでちゅ…。それを防ぐためのものだと思ってほしいでちゅ。」

 「世界? お前、何言ってるんだ?」

 

 力って多分異血のことだよな。それを測るメーター? なんで世界が耐えられないとかいうんだ? モノミの言ってるとこって毎回意味がわからないな。

 十神が話が終わるタイミングを見計らって本来の話を再開させる。

 

 「よし澄野、お前が狛枝に朝食を持っていけ。これはリーダー命令だ。」

 「ちょちょっと待てよ、なんでそう簡単に決まるんだよ。こいつのいう希望のカケラなんて気にしなくてもいいだろ。オレも嫌なんだけど。」

 「頑張ってねー、澄野おにぃ。嫌だったらやらなくもいいけどさ。あんなやつ野たれ死んでも構わないしね。」

 「道化にも生あり。生あるところには生きる糧、贄が必要なのだ。嘆かわしいことだが、これも自然の摂理ならば逆らうことなどできん。ならばせめて、それを享受するに無駄などあってはならない。否定などもってのほかなのだ!」

 「狛枝さんの体調が悪そうだったら私に言ってくださいね。病人のお世話なら慣れてますから…。」

 「ジャンケンはしない感じっすか。フッフッフ、命拾いしたっすね…。」

 「オメーはジャンケンを何だと思ってるんだよ。」

 

 もう話は終わった雰囲気が流れている。日向の方に目を向けてみるが目を逸らされる。やられた、こんなのなにかしら理由の一つでもあれば押し付けられるのは当然だ。オレが逆の立場でもみんなと同じようにしてると思うし…。……次があればこっちに回らないようにしよう。

 

 「わかったよ、別に持っていくだけだしな。花村、皿を渡してくれ。」

 「頼んだよ、澄野くん…。」

 

 花村はなんていうか、災難だったな本当に。

 そう思いながらおいしそうな具材が挟まれたサンドイッチの載った皿を持ってホテルを出て旧館の方に足を運ぶ。

 

 

 

 キィと音を小さく立てる木製の床を歩きながら狛枝のいるホールまで進む。扉の前で少し躊躇しながらもゆっくりとその扉を開いた。

 

 「澄野クンか、足音がして誰かと思ったけどね…。ああ、今はおはようでいいのかな?」

 「……今は朝だからそれであってるよ。朝食を持って来たんだ。」

 

 一瞬受け答えするか悩んだが、そのカケラとやら貰えないとモノミに何を言われるかわからないから素直に返答することにした。縛られた狛枝の姿を見て、やはりといってもいいのか得体のしれない不気味な感じがする。簡単に払拭できないものというか、うまく言い表せないがそんな感じのものがある気がする。

 さっさと終わらせよう。……そういえばこいつ縛られたままだけど、どうやって食べる気なんだ?

 

 「狛枝、その、こんなことを聞くのは変かもしれないけど、どうやって食べる気なんだ?」

 「うーん。それは昨日から考えてたんだけどね。犬とか猫みたいにするしかないかなとは思ったんだけど、それじゃ汚いし行儀も悪いと思っててね。あんまりいい案は浮かんでないんだ。」

 「…そうか。」

 「それにしてもおいしそうなサンドイッチだね。花村クンが作ったのかな。超高校級の料理人の才能を持つ彼の料理を食べられるなんて、ボクはツイてるなぁ。持ってきてくれてありがとう、澄野クン。」

 

 ……こいつには世界がどう見えてるんだろうな。蒼月みたいに極端なくらい異常なことはないだろうけど、才能とかそれを持つ人間に対しては明らかに様子がおかしい。それに殺人をしようとした割にはあっけらかんとしているというか、楽観的過ぎる様子というか。みんなから嫌われても、危機的状況になっても焦ったりしない、なんだって平気みたいな感じだ。多分そういうのを不気味だと感じてるんだ。

 

 「ねぇ、一つ思いついたんだけどさ。澄野クンが食べさせてくれない?」

 「……は?」

 

 …? いきなり何言いだすんだ? 

 

 「いい案だと思うんだ。そうすれば汚さないで食べられると思うしね。どの味のやつでもいいから取ってよ。」

 「…………。」

 

 こいつ…マジに言ってるのか。人に物を頼む態度…いや、絵面とかそういうの気にしないのか? …気にする奴ならあんなに悠々と自分の犯行を語ったりなんてしないのか。

 

 「…澄野クン? どうしたの? 何か気になることでもあった?」

 

 ……やるしかないか。やりたくないけど、放置して餓死でもされたらそっちの方が嫌だ。

 オレは狛枝のことを後ろから掴んで立たせる。足も縛られているからほとんど引きづって机と椅子がある方に行く。

 

 「……食べさせてやるから、せめて椅子に座ってくれないか?」

 「ああ、そうだね。そっちの方が人間らしくていいかも。…ボクを気遣ってくれたのかな?」

 「違うそんなんじゃない。しゃがんで誰かに物を食べさせるっていうのが嫌なだけだ。」

 

 オレは狛枝を椅子に座らせて、オレもその対面に座る。サンドイッチを手に取って狛枝の口のあたりに突き出す。狛枝は口を開けてそれを頬張った。その瞬間に狛枝の口角が上がった。おいしいのだろう。実際、花村の料理は誇張なしで今まで生きてきた中で1,2を争うくらいにはおいしい。超高校級の肩書が伊達ではないと味覚が感じ取っている。

 …こいつもちゃんとご飯を食べて、おいしいと感じる普通の人間なんだよな。でも、殺人を犯そうとしたり、なんだったらその殺される対象が自分も含まれてるようなやつなんだ。

 

 「なぁ狛枝。オレにはお前の言う希望はよくわからないだけどさ、それって人の命を、自分の命さえも懸けられるようなことなのか?」

 「…そうだよ。ボクは希望のためになら死んだってかまわない。それが絶対的希望を生み出す糧になるなら喜んで命を捧げるよ。」

 「…………。」

 「そんなに深刻そうな顔しなくたっていいのに…。でもそれだけボクの話を真剣に聞いてくれてるってことなのかな。それはうれしいな。」

 「…その、オレは希望っていうものに興味なんてないけどさ。ひとつだけ言わせてほしいんだ。普通の人間は生き返ったりなんてできないんだ。死んだら、ずっとそのままなんだ…。だからさ、死にに行くような真似はやめてくれ。……オレは人の命が上に成り立つ希望なんて、そんなの希望じゃないと思う。たとえその命がお前のでもな。」

 

 それは、狛枝というよりも自分自身に言い聞かせるような言葉だった。やり直せるから、やり直そうとした。けど、そんなのはただの逃避だったのかもしれない。霧藤が…カルアが目の前で亡くなってしまったことへの…。本当に望む過去に戻れていても、彼女を救えていても、あのときを変えられたわけじゃない。死んだ人間は戻らない。

 当たり前の、極々普通の話なのにオレの常識は歪んでいる。その理由は明白で、歪んでいたからこそ正気だった。そうでなければきっと今を生きてはない。

 

 「澄野クンは…やさしいんだね。でもね、そうじゃないんだ。そうじゃないんだよ。ボクが希望のためにできることなんてそれくらいしかないんだよ。そうでもしないと、希望は生まれないはずなんだ。」

 「…はずってなんだよ。そんな曖昧なことで命を投げるようなことはするなよ。」

 「投げてなんてないよ、曖昧なことでもない。これは必要なことなんだ。信じるって気持ちが、前向きな精神が大切なんだ。それと、才能がね。超高校級のみんなにはそれがあるんだ。澄野クンにもわかるでしょ? 彼らの持つ希望がさ。」

 

 こいつの言ってることは理解できない。確かに苗木達や日向達にはすごい才能があるんだろう。だけど、たとえそうであっても実際には等身大の高校生だ。普通においしいご飯を食べて幸せを感じたり、線香花火をみんなでして盛り上がったり。こいつらの消された、苗木達の消された記憶にだってそういう高校生らしい事柄はあったはずだ。だってのに、それを希望で一括りにするのはやっぱり変だ。

 

 「わからないでもないけどさ、それでもその希望の前にみんな高校生だとオレは思うよ。…お前だってそうだろ?」

 「ああ、そうなんだ。キミはそう思うんだね。……そうなんだ。」

 

 ポイーン!

 

 「うわ!」

 「電子生徒手帳? 澄野クンって日向クンと似た反応するね。」

 

 電子生徒手帳が急に音を発する。電子生徒手帳を確認すると狛枝の希望のカケラの項目が一つ埋まっていた。

 急に音が鳴るのはびっくりするからやめてほしい。というかなんでわざわざ音が鳴る仕様なんだよ、なんとなく恥ずかしくないか?

 

 少しの間が経ち、狛枝が朝食を食べ終わった。オレは皿を取り上げて椅子から立つ。

 

 「じゃあオレは戻るから。」

 「うん。ああ、おいしかったって花村クンに伝えといてくれないかな?」

 「…それくらい自分で言えよ。」

 「そっか、それもそうだね。食べさせてくれてありがとう。じゃあまたね、澄野クン。」

 「……また、な」

 

 

 

 オレは旧館から出てみんなのいるレストランの方に戻った。

 ホテルの方に戻ると、なぜか西園寺がぐずって小泉がそれを慰めていたり、モノミと十神が何やら話し込んでいるようだった。

 何があったんだ…。

 

 「お、澄野戻ったんだな。随分遅かったな。…狛枝に何かされたか?」

 「澄野さん、狛枝さんの様子はいかがでしたかぁ?」

 「日向と罪木か、別に何もされてないし元気そうだったよ。ああ、花村には一応伝えとくけど、おいしかったって狛枝が言ってたぞ。」

 「へぇ、そっそうなんだ。それはよかったよ…。」

 「あの体制でどうやって食べたんだよあいつ。」

 「…オレが食べさせたんだよ。」

 「え? …そこまでしなくたっていいんじゃないか? こんなこと言うのもなんだけどさ。」

 「餓死でもされちゃ気分悪いだろ。別に大したことでもないし。それよりも、オレがいない間に何があったんだよ?」

 「西園寺の着付けがうまくいってなかったていう話だ。それでそれを小泉が手伝うって話になって…。」

 「モノミ、その提案はあまり受け入れられる話ではないな。監視付きでも、たとえ一時的であっても野放しにはできない。あいつはそれだけのことをしたんだ。最低でも一週間は待て。」

 「そうでちゅか。狛枝くんにもミナサンと仲良くしてほしいんでちゅけどね…。」

  

 十神とモノミの会話が聞こえてくる。どうやら狛枝について話しているようだった。

 あいつ、結局どうなるんだろうな。島の外の世界とかに出たら殺人未遂とかになるのか? そもそも司法が機能しているかどうか怪しいけど。

 

 「あ、澄野くん! 戻って来たんでちゅね。希望のカケラも集められたようでよかったでちゅ。みんなには先に渡してたんでちゅけど、澄野くんにもご褒美をあげまちゅね。」

 

 そう言われながらモノミにそのご褒美を手渡された。それはウサギらしマスコットのストラップだった。

 なんだこれ? ご褒美って…これが?

 

 「どういうつもりだよ。これは何だ?」

 「あちしの元々の姿のストラップでちゅ。モノクマが来る前はこんなにプリチーな見た目だったんでちゅよ。」

 「あ! それはいつぞやのゴミっすね! ゴミ箱にダンクシュートでOKっす!」

 「ゴミなのか!?」

 「…捨てるならポイ捨ては駄目でちゅよ。ルール違反でちゅからね…。」

 「否定しないのか…。」

 

 …これ実は爆弾ですとかないよな? 発信機があったりとか…それをつけるなら電子生徒手帳に既にあるか。

 捨てるのは後回しにして適当にポッケトにつっ込んでおく。モノミはゴミだと言われたことにかなりしょんぼりしている様子だった。

 

 「おい澄野、お前はみんなに話すことがあるだろう? ちょうど狛枝を除いた全員がいるんだ。いまここでその記憶の話をしろ。」

 「…わかったよ。みんな少し聞いてほしい。オレの残ってる記憶の話をするから。」

 

 十神に言われてオレはついこの間あった事柄を語りだす。二日前にオレは希望ヶ峰学園にいて、モノクマにコロシアイを強制させられそうなったこと。なんとかそこから脱出して、未来機関と呼ばれる組織に保護されたこと。希望ヶ峰学園の外の世界は人類史上最大最悪の絶望的事件のせいで今も世界が苦しめられていること。その犯人が江ノ島盾子であり、モノクマの正体であること。一つ一つ話すごとにみんなの顔色や表情は変わっていった。信じられないと言った風であったり、外にいる家族の心配が加速したりと、とにかく良い方面でないことは確かだった。

 

 「意味わかんねぇんだけど。全部作り話じゃねぇの? そんな世界が滅んでるなんてよぉ。」

 「本当なんだ。本当にその絶望…江ノ島盾子のせいで世界がとんでもないことになってるんだ。」

 「だから澄野さんは78期生のことを知っていらしたんですね。仮に本当のことだとすると、それはとんでもないことです。ですが少しそれだとおかしくありませんか? なぜモノクマさんは人の記憶を消すことができるのに澄野さんのその記憶をそのままにしたんでしょうか? 澄野さんが今のように情報を共有したら自分の正体を自ら明かしているようなものではありませんか?」

 「あのね、ソニアさん。ボクは面倒くさい性格だからなんどでもしか言わないよ? 記憶を消したのはボクじゃなくてモノミなんだからね。」

 「モノクマさんにそう言われても…。ってキャァ!」

 「でっ出おったわい!」

 

 モノクマがどこからともなく現れて会話に割り込んできた。

 こっこいつ、いったい何しに来たんだ? もうオレから話せることはできるだけ話したし、止めに来るなら遅すぎるだろ。

 

 「あ、ボクが今日言いに来たのは澄野クンの言うことはぜーんぶあってますよってことだけなんで! もうそれで定時なんでね! もう帰りますよボク!」

 「…すべて真実…だと?」

 「もうね。面倒臭いんですわ。別に大した真実でもないし、知ってるテキスト送るのなんて無駄だよね。っていうかこのボクが何やろうと変わらないし無駄なんですよ。本当にダルイ話だよね。こんなつまんない修学旅行続けるんなんて意味ないよ。同じ内容のアニメを八週連続で放送するなんて馬鹿だよねぇ。早く宿題を終わらせてほしいよまったく…。」

 「お前は何の話をしてるんだよ! 江ノ島盾子! モノクマでコロシアイを強制するなんてやめろ! また全世界にそれを放送でもする気なんだろ!」

 「…もしかしてあの監視カメラってそういう? 噓でしょ!?」

 「あのね、そんな二番煎じなことはボクはしてません。というかボクもオマエラのコロシアイなんてどうだっていいしね別に。動機は義務で渡してるだけなんでそこんとこよろしく。」

 「はぁ!? テメーふざけるのもいい加減にしろや! 最初からそういうふざけたちぐはぐな態度取りやがって!」

 「あ、そうそうモノミちゃんに残業で言っとくけどね。モノケモノを倒しに来るなら澄野クンと来なよ?」

 「ほえ!? なっなんであんたなんかにそんなこと言われなくちゃならないんでちゅか!」

 「だってさぁ。もう澄野クンの力を最大限使わせてクラッシュ狙った方がネコチャンあるの、お前もなんとくなく察してるんでしょ? まぁそれでもキツイと思うけどさ。それを想定してない彼らではないだろうしね。あと説明もメンドクサイでしょ? 理屈で説明できないことは物理的に見せつけてやる方が早いんだからさ。」

 

 モノクマはそれだけ残して言うと忽然と姿を消した。

 オレの異血の力を使わせてクラッシュ…? 彼ら? いったいなんの話をしてるんだ? クラッシュって何かの隠語なのか? なにがネコチャンあるだよ、ふざけやがって…。

 

 「クソッ。何なんだよ!? あいつ!?」

 「落ち着け澄野、あのモノクマを操っているのはその超高校級の絶望と呼ばれる存在、江ノ島盾子でいいんだな?」

 「ああ、間違いない。江ノ島は今も生きてるはずだし、コロシアイも失敗してしまったんだ。また同じことを企んでるんだと思う。」

 「でも二番煎じなことはしないってモノクマは言ってたよー?」

 「あんなやつのこと信じれねーって。」

 「コロシアイなんて本気にする必要はない。前のオレ達、78期生がやったみたいにあいつは無視してこの島から脱出すればいいんだ。そうすれば未来機関とも協力できるし、きっと助けてくれるはずだ。」

 「…その未来機関というのはどのくらいの大きさの組織なんだ?」

 

 十神にそう聞かれる。どのくらいの大きさって、多分かなり大きいよな? あの宗方って人は海外にいるみたいだったし、そこにも拠点があるってことだから…。

 

 「かなり大きい組織だと思う。海外にも基地があるみたいで、世界中で絶望と戦ってるらしかったからな。詳しくは知らないけど。」

 「そうか…。」

 「とっ十神さん? どうしたんですかぁ? もしその未来機関から助けが来ればみんな助かるじゃないんですか?」

 「…いや、その未来機関がオレ達をこの島に閉じ込めたんじゃないかと思ってな。深読みかもしれないが…。」

 「十神くん、その可能性はあると思うよ。モノクマもモノミも何度も仲間じゃないって言ってるし。もし本当だったら、モノクマはモノミの用意した状況を利用した……って考えられるんじゃないかな?」

 「つまり、七海はモノミがその未来機関の手先だといいたいのか? だがそれは変な話だろう。確かに未来機関は大きな組織なのかもしれないがこの島を用意し私達からわざわざ記憶を奪いここに閉じ込めたというのなら、それをした理由はなんだ? 理由もなしにこんな大掛かりなことはできたとしてもやる必要がないだろう。それならモノクマの仲間で私達を騙すために演技している方が納得がいくと私は思うぞ。」

 「…辺古山さん、それは……わかんないかな。でも、ここは重要なことだと思うよ。モノクマとモノミの関係はさ。」

 「つかさ、モノクマとかモノミとか結局は全部無視しちまって脱出すんのが一番いいんだろ? だったら話は早いじゃねーか。何とか船の部品を見つけてオレがそれで船を作ればいいんだろ?」

 「できるのか?」

 「あたりめーよ。超高校級のメカニックの肩書は伊達じゃねぇんだぜ。…まぁ肝心の部品がなきゃなんもできなんだけどな。」

 「部品って…島の木とかで代用できないのか?」

 「それは最初にしようとしたんだが、モノミ…ウサミだった頃にルール違反だって止められてな。電子生徒手帳に書いてあるだろ?」

 

 日向にそう教えてもらって、オレは電子生徒手帳にある修学旅行のしおりを確認する。確かに書いてあるな…豊かな自然と共存共生しましょう、か他のルールもどれも平和なものばかりだ。

 モノミとモノクマは違うのか? もしそうでも、あんなヌイグルミでオレ達に何かさせようとしてるのは確かなんだよな。…考えた奴の顔が見てみたくなってくるな。

 

 「役立たずの油臭い奴は黙ってなよ。」

 「臭いのはオメーも人のこと言えねぇだろうが! 西園寺テメー、船ができたら覚えとけよ…。」

 「あ、あのう、ミナサン? あちしはモノクマの仲間なんかじゃないんでちゅよ。それに未来機関は澄野くんの言うと通りのところなんでちゅ。だからそんな悪い組織じゃ…。」

 「モノミ、お前はその未来機関の手先なのか? 答えろ?」

 

 十神がモノミにそう質問する。モノミの態度は明らかにおどおどとしており、何かを隠そうとしているのが見え見えだった。

 

 「……すみましぇん。あちしにはなんにも言えないでちゅ。でもね、未来機関は敵じゃないんでちゅよ。これは本当のことでちゅ。」

 「…そうか。……澄野、お前の持つ記憶の話はそれで全部か?」

 「……ああ、そうだよ。」

 「嘘だな。」

 

 え? いや、嘘は言ってない。言ってないけど……。

 

 「どうやってその封鎖された希望ヶ峰学園から脱出したのか、その方法を意図的にボカしただろう。なぜそんなことをする必要がある? 正直に、ことを話せ。」

 「そっそれは……。」

 

 説明するなんて無理だ。鉄板をぶっ壊しましたって言っても、どうやって? となるだけだろうし。 …今は部分的にでも説明しよう。

 みんなの懐疑的な目がオレに突き刺さりながら、オレはおぼつかない口調で言葉を選びながら声を出す。

 

 「あの刀を使って無理やり窓に打ち付けられてる鉄板を破壊したんだ。それでみんなで脱出した。」

 「…それだけか? あの刀では到底そんなことはできないと思うがな。」

 「…悪い、これも説明できないことなんだ。」

 「ふん、そうか。ならまぁいい。……まだ、お前には聞きたいことがある。お前は裏切り者に心当たりはあるか?」

 「裏切り者ってモノクマが言ってたっていうやつか?」

 「そうだ。お前の話を聞く限り、その裏切り者というのは江ノ島盾子の姉、戦刃むくろだろう? だとしたらモノクマの言っていることと矛盾すると思ってな。モノクマはボクも知らない裏切り者と呼んでいた。内通者なら知っていて当然、だというのにそれを知らないというのはおかしい話だ。」

 「モノクマが嘘をついてるだけじゃないのか?」

 「そうかもしれないな。だが、そうではない本当のことを言っていることもあるかもしれない。嘘だからといってすべてが真実ではないとは限らないだろう。もしかしたら、裏切り者というのはモノクマが仕組んだものではなく、俺達をここに閉じ込めた方が仕組んだことかもしれない。」

 「でっでも、もし裏切り者が未来機関の人ならそれは味方ってことじゃありませんか? 未来機関は絶望と戦ってる組織ですもんね。」

 「ソニアよ、もし、俺様達を封じ込めた輩が未来機関ならばその図式は狂うことになるだろう。それに、仮にでも世界を蝕む邪悪な化身を打ち滅ぼさんとする組織に属するものなら、あの悪意と怠惰をまとったヌイグルミが現れた時点で名乗りの一つ上げているだろう。それすらできん臆病者に臆することなぞないわ!」

 「その、何言ってるんだかわからないけど、気を付けた方がいいとは思うぞ。裏切り者が味方でも、そうでなくても。戦刃むくろはすごい戦闘能力の持ち主で超高校級の軍人って言われるほどだったんだ。実際にここで彼女がここにいたとしたら誰も太刀打ちできないと思う。もし裏切り者が戦刃むくろみたいに戦うことに長けている存在だったら…。」

 「おい、澄野。そいつはそんなにつえー奴だったのか? オレでも、弐大のおっさんでも太刀打ちできねぇほどにか?」

 「無理だと思うぞ。…ライフル片手に撃ち抜いてきたからな。」

 「お前さんよく無事でいられたのぉ。案外、体が丈夫なたちなのか?」

 「まぁそんな感じだ。」

 

 みんな、与えられた情報のシャワーを受け止めながらそれぞれ何をどうすればいいのか考えていた。正直、船を作っても後ろから撃たれるんじゃあどうしようもない気がするけどな。仮にもしこの島を脱出できたとしてもどこへ向かえばいいんだろう…地球のことを全く知らないからそこは十神とかみんなを頼るしかないよな。

 

 「そういえばっすよ、白夜ちゃん。白夜ちゃんが言ってた白夜ちゃんが実は唯吹達の後輩かもしれないって話に心当たりがあるかもしれないんすよね? その話ってどうなったんすか?」

 「78期生の十神がなんでここにもいるのかって話だよな。お前が隠してた過去って、そのコロシアイ学園生活の話じゃないのか?」

 

 澪田の質問に日向も乗っかるようにして十神に疑問を投げかける。十神はそれに対して即決ということはなく、黙り込んで何かを考えているようだった。十神にしては長い間が経つと、十神は口を開いた。

 

 「……まだだ。まだ、話せない。」

 

 それは、質問の答えではなく。むしろ、昨日教えると言ったことへの先延ばしだった。

 

 「なんでだよ? お前のいう誰にも語れないような過去ってコロシアイ学園生活じゃないっていうのか?」

 「違うな。……話してやってもいい。むしろそうすべきだろう、十神白夜ならそうするだろうな。だが、俺はまだ信じられていないことがある。それを確定させてからだ。」

 「…信じられていないことがある? それって何だ?」

 

 日向が十神に質問を続ける。この島で、いや、この時代に来た時から信じられないことばかりだったが、オレは十神の答えを聞いたら納得するしかすべはなかった。

 

 「澄野、お前だ。お前の持つ力とやらに俺は納得してない。みせてみろ、ヌイグルミ共がやたらと誇張するその力とやらをな。」

 

 この世界で一番信じられないの存在はオレだろう。客観的に自分のことを観ずともそれに納得できる。コロシアイなんかよりも、絶望よりも、狛枝の語る希望よりも、一番にこの世界を破壊して常識を犯しているのはオレの持つ力だと思う。それは何ら誇張でもなく、物理的な話なのだから恐ろしい。

 

 「……わかったよ。その中央の島に案内してくれないか? モノクマに従うのは癪だけど、そのモノケモノにもしかしたら対抗できるかもしれないから。」

 「え? マジになんかある感じなのか? そこの田中と同じじゃねーの?」 

 「貴様…俺様を愚弄したか? 俺様の語ることは虚言やまやかしなどではないのだぞ。身をもってそれを知りたいと愚考するのならば…。」

 「あんた、まだそんなこと言って…。無理に決まってるでしょ。あんなのには敵いっこないって。」

 「そうだぞ、澄野。別にこの島全部を回らなくたって、どうにかなる。お前の話が本当なら、未来機関からの助けを待てばいいだけの話じゃないか。」

 

 小泉と日向に待ったをかけられる。モノケモノがどんなのかは想像はついてないけど、普通の人間だったらかなうはずないんだろう…普通の人間だったらな。

 

 「無理をしようって訳じゃないよ。とりあえず、そのモノケモノを見てから判断するってだけだから。あ、あと全員で来てくれないか? ……説明なんてオレにはできないし、みんなもできないと思うから。」

 「あのう、それなら狛枝くんも一緒に…。」

 「それは駄目だとさっき言ったばかりだろう。しつこいぞモノミ。」

 「何の話だ?」

 「狛枝くんは澄野くんのことを知りたがってるんでちゅ。でも、しかたがないでちゅよね。狛枝くんにも悪い所はありまちたから…」

 「あのキモ変態は置いていこうよ。あんなのいない方が空気も吸いやすいしね。あ、ゲロ豚ビッチも置いてく? 臭いし。」

 「だからお前は匂いのことを人に言ってんじゃねーよ。」

 「わわ、私はちゃんと昨日シャワー浴びましたから! あああとビッチでもありませーん!」

 

 そうして、オレ達は狛枝を除くみんなで中央の島に向かった。また、心臓を刺す羽目になるのかと思うとかなり気乗りはしないがそんなことは口には出せない。もしかしたらモノクマに対抗できるのは俺だけかもしれないんだ。そう思うと気を引き締めるしかなかった。

 




一万超えるとやっぱ長いですね。

澪田のボケと左右田のツッコミが好き。

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