澄野拓海「希望ヶ峰学園?」   作:たくみきんぱつ

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一話とか二話とかの改行を直しました。


エンドレスアイランド 伍

 オレは中央の島にある2の数字が上に掛けられている橋の前にいた。巨大な図体を持つ機械のケモノを下から見上げる。そのケモノは四足歩行で爪のように刃がついており、長方形の形をしたミサイルを撃ち出す箱のような物を背負っていて、しっぽには角ばったモーニングスターがあった。このケモノが、他のみんなに刃を向けるとするなら誰も太刀打ちは普通出来ないだろう。

 オレはかつて戦った巨大な存在を思い返す。それと比べればまだ戦える方だと思った。比較対象はあの百日間で戦った部隊長だ。

 大きさも部隊長が変身したのよりも少し小さいくらいか? ……こいつは自然物じゃなくてどう見ても人工物だよな。だったらこいつをバラせば、船の部品にできるんじゃないか?

 

 「なぁ澄野、言っただろ? あんな小さい刀じゃさすがにこれに対抗するのは無理だって…。」

  

 日向がオレにそう諫めるように言う。他のみんなも大した期待はしていないようで、どうしようもない諦めの感情が強いようだった。

 

 「なぁ左右田、これは質問なんだが、あれを解体したら船の部品にできるか?」

 「……は? お前何言いだしてんだ?」

 「いいから、仮の話でいいんだ。答えてくれ。」

 「…外側からじゃ何とも言えねぇけど、できるかできないかで言ったらできる方だとは思うぜ。所感だけどな。」

 「そうか…。モノミ、あれは自然物じゃないから好きにしようと文句はないよな?」

 「そうでちゅね。あれはあのモノクマの用意したものでちゅから、改造されて原型がなくなろうとも悪役のみたいに爆散しても何も文句はありまちぇん。」

 

 モノミは文句を言わないのか。モノクマもむしろオレにこれが倒されるのを想定してるような口ぶりだったな。本当に橋を渡らせたくないなら橋を崩した方がいいだろうし…誘われてるのか? 

 

 「いや、待て待て待て。やっぱおかしいだろ! なんであんなんを改造するだとか解体するだとかの発想が出てくるんだよ! 飛躍しすぎだろ!」

 「そうだよ! そんなのできっこないじゃん! 澄野、あんたちょっとは現実ってもんをみなさいよ!」

 「オレは真剣だよ、ふざけてなんてない。十神はどう思う? もしあれに対抗する手段があったとして、あれを船の部品にすることができるとしたら。オレはいつあれがこっちに向かってくるかもわからないんだし、手段があるなら放っておくことはできればしたくない。」

 「え? お前あれとバトる気なのか? だったらオレも加勢すんぜ。」

 「終里、それはやめとけ。澄野もじゃ。あれはわしでも敵わん機械獣じゃ、お前さんはもちろん澄野でも敵わんぞ。」

 「澄野おにぃってそっち側だったんだね。ま、バカっぽそうな片鱗は見えてたしバカはバカと仲良くするもんだよね。」

 「…本当にそんな手段があるのならの話だろう。力をみせてみろとは言ったが、それに命の危険があるなら無茶はさせん。この俺がリーダーである限り、誰も死なせはしないのだからな。」

 

 十神はそうはっきりと言った。命の勘定などというあの戦場になかった人間の持つ正しい倫理観というものがここにはあるのだ。その常識を真っ向から否定していると言っても過言でない力を目撃したのなら、ここにいる彼らはどのような反応を示すのか。少なくとも、心穏やかなものではないだろう。

 まぁ、そうなるよな。オレもあの力をあまり使いたくはない。けど……。

 

 「澄野くん…大丈夫でちゅよ! 澄野くんがその力を使わずともあちしがあのモノケモノをぶっ倒ちまちゅから!」

 「モノミ!? 何をする気だ!?」

 

 突然モノミがその小さい体から木の棒を取り出し、それを掲げた。その瞬間、眩い光がオレ達を包み込んだ。目を開けていられない。

 

 

 

 その光が過ぎてから、オレは視界を取り戻す。

 

 「…どこ、なんだ? ……ここは?」

  

 周りを海で囲まれた、先ほどまでいた島よりもはるかに小さい孤島。あたりを一瞥するだけでその全体が確認できるほどだった。ヤシの木や花がある程度でそれ以外は何もない島。

 他のみんなはおらず、この島にいるのはオレとモノミだけだった。

 

 「ほえ!? なっなんで、澄野くんまでここに!?」

 「…お前が連れて来たんじゃないのか?」

 『ボクですよー。』

 

 モノクマの声が島に響き渡る。その声が聞こえた方向は頭上だった。目を向けたそこには、モノクマが映ったホログラムのようなものがひとりでに浮かんでいた。

 瞬間移動でもさせられたのか? そんなのどうやって…いや、みんなは無事なのか!?

 

 『あ、これ中継されてるんで早く戦ってくれます? 別にそいつどうなってもボクはもう気にしてないからね。RTAとかやって記録更新狙ってもいいんだよ。』

 「中継…?」

 

 そう疑問に思ったとたん、ホログラムの画面が切り替わる。その画面には日向達の姿があった。

 

 『澄野! 無事か!』

 「十神…みんなは中央の島にいるのか?」

 『そうだ。そうやらお前とモノミだけその奇妙な島に飛ばされたらしい。その方法は今は考えるな、後でいい。今は脱出することだけを考えろ。おいモノミ! お前はその島から脱出する方法を知っているのか?』

 「ほわわわ。知ってるも何もここはあちしがモノケモノをぶっ倒すための島で…。ってあれー! 島の制御が乗っ取られてるー!?」

 『モノミちゃんはバカだねぇ、本当に彼が親なのか疑っちゃうよ。何回目だと思ってるの? そんなしょうもない島の制御なんて奪われて当然じゃん。てか、早くモノケモノ倒してさっさと本筋を進めなよ。お前の頑張りなんて無駄に難しくて、プレゼントをコンプするためにやるくらいの価値しかないんだからさ。』

 

 何回目? いったい何の話をしてるんだ? 

 このヌイグルミ共の会話にはいつもそんな疑問だけを持たされていた。

 そのふざけた態度を取るモノクマに苦言というものを呈す者がいた。それは意外にもいつも眠そうにしている少女、七海だった。

 

 『ねぇ、モノクマ。さすがにこれは雑すぎるよ。進行役にやる気がないのに、どうしてあなたはこんなことを続けるの?』

 『あれれ? あの千秋ちゃんからそんなことを言われる日が来るなんて…。うれしいのやら、そのくらい時間が経ってしまったことが悲しいやら。

 そんな千秋ちゃんにイイこと教えてあげるよ。人間ってね、権力と富と名声と才能と愛と生に執着せすにはいられないどうしようもない残念な生物なんだよ。知らなかったでしょ? 人間って奥が深いんですよ。煮たらコクとうま味がたまらないんです。まぁボクはクマなのでそんな話は関係ないけどね。

 あのですね、ボクももうこんなことには飽き飽きしてるんですよ。でもだからってオマエラのイチャコラを観たいわけじゃないすわ。モノミに権限を握られ続けるのも癪だしね。』

 『…名前で呼ぶの、やめてくれないかな。』

 『ええ!? 長年連れ添った仲なのに!? あのときのコロシアイも、そのときのコロシアイも、どのときのコロシアイも、全部楽しかったでしょ? なのに、思い出は儚いものなんですね。フラれちゃったのかな、ボク。

 ……まぁボクが興味あったのってあの時の七海さんであって、今いる千秋ちゃんじゃないし。じゃ別に気にしなくてもいっか!』

 『やめろ! モノクマ! いい加減にしろ! お前が何をしようと、こんなことに意味なんてないないだろ! 澄野を返せよ!』

 

 日向がモノクマに向かってそう吠えるように叫んだ。しかし、モノクマの態度は変わらず、むしろ逆にうんざりしたような静かな怒りを日向に返した。  

 

 『ボクも意味ないと思ってるよ? ツマラナイって思ってるよ? うん、あのね。オマエだけはそれを言うんじゃないよ。というか、文句は澄野クンに全部言いなよ。元はといえば彼が迂闊な行動をしたからすべてが始まったんだからね? 戦場にいたとは思えないバカさだよ。バカを超えて残念に全身突っ込んじゃってるよ。無自覚って何よりも恐ろしいものだよね。千秋ちゃんもそう思わない?』

 『だからやめろって言ってるだろ! 七海にそんなふざけたことばっかり…。』

 『日向くん、私は大丈夫だから。』

 

 日向……。…オレのせいだって? オレが何をしたっていうんだよ。というか、戦場にいたって…なんで江ノ島がそのことを知ってるんだよ…。……まさか、苗木達から何かして聞き出したのか?

 知恵の輪から抜け出せないように、オレの中にモノクマの発言の内容がグルグルと立ち往生する。だが、そんな間はいつまでも続くことはなかった。

 

 「危ないでちゅ! 澄野くん!」

 

 オレはその警告から瞬時にホログラムから目を離す。目の前にはピンク色の変な形をした子供の落書きが具現化したような変な生物が迫ってきた。オレは後ろに下がってそいつの飛びつきを回避した。

 

 「なんだ? こいつ…。」

 

 後ずさると海に触れたようで水の音がした。それと同時に何かにぶつかった。

 

 「え?」

 

 オレは前を警戒しながら、後ろを向いて手を何もないはずの海の上に伸ばした。

 壁だ。そこにはバリアのような、この島から対象を外と断絶するかのような見えない壁が存在した。

 

 「…は!?」

 

 何度触れても、何度叩いてもびくともしない。

 なっなんだ!? この壁は? 逃げられないってことか!?

 

 「すっ澄野くん、これを渡ちておきまちゅね。先生ががんばりまちゅけど、いざという時はこれで自分の身を守るんでちゅよ。いいでちゅね。」

 「モノミ?」

 

 モノミから我駆力刀が渡される。

 次の瞬間、モノミは木の棒を先ほどの変な生き物に振りかざし、湧き上がる虹色の円帯が出現すると、その生き物はそれに包み込まれた。その生き物から血が噴き出す。ファンシーな見た目とは裏腹の残酷的な光景を目の当たりにしたと思えば、瞬きをしたとたんにその生き物は金の延べ棒に様変わりした。…意味が分からなかった。

 ……? いま、何が起こってるんだ? あいつらは…世界死の奴……いや、見た目が違うし。モノミはなんだ? …木の棒で攻撃したのか?

 

 オレは立ち尽くして動けなかった。

 ピンクと白のツートーンカラーをしたウサギのヌイグルミがピンクだったり、青だったり、黄色だったりする子供の落書きのような変な生物を蹂躙していく。モノミが円を描くように動けばそこにはなぜだか竜巻が発生し、主にその攻撃で敵を吹き飛ばし敵の血をあたりに散らしていた。

 その血も気がつけば塵のように消えていた。変な生物の遺体はなく、すべて金の延べ棒に、たまに牛乳だったりビスケットだったり、その生物たちは奇怪に変換されていた。

 まるでゲームだった。アクションゲームでなぜ主人公がこんな力を使えるか、そんなことを一切気にせずに敵を一網打尽にしてステージを進んでいくような。深くは考えてはいけない、現実ではない現実がそこにはあった。

 モノケモノだけならまだすごい科学技術があるのだと、納得できなくはない。だが、眼前の景色はどうだろうか? あの百日間の初日のようで、理解が到底できる気がしない。きっとそれは、この光景をホログラム越しに見ている日向達もそうだろう。

 

 時間が経った。そう長くはなく、短くはない蹂躙に一つの区切りがついたのだと肌で感じた。何かが迫ってくる。そう、確信した矢先、あれが現れた。

 モノケモノだ。

 

 「澄野くん、もう少しで終わりまちゅからね。あのモノケモノが倒せれば、みんなの元に帰れまちゅよ。それに新しい島にも行けるようになって、さらにみんなとらーぶらーぶできると思いまちゅ。」

 

 モノミが子供に教えるように、安心させるように、オレにそう語りかけてくる。

 オレは正直にいって怖かった。対抗できない、抵抗できない、そういったものから感じる恐怖ではない。モノミという得体のしれないヌイグルミに畏怖というものを感じていた。

 異血の力が使えるのなら大丈夫だとは、思う。だが、だからといって目を背けたい気持ちがなくなるわけではない。でも逃げることは、見えない壁が存在する限りできなかった。

 

 モノケモノが暴れ出す。目の前のヌイグルミを攻撃するのかと思ったが、ケモノの行動はそうではなかった。

 

 「…は!?」

 

 モノケモノがオレに向かって突進してきた。オレはそれを横に走って必死に避ける。今のオレは学生鎧を装着している訳じゃない。攻撃が当たれば最悪命が簡単に散るだろう。

 モノケモノは直進し見えない壁にぶつかったがそんなことは気にも留めないようで、すぐに振り向き狙いをオレに定めてくる。

 こっこいつ! モノミじゃなくて、オレを集中狙いするのか!?

 

 「澄野くんに手を出すんじゃありましぇーん!」

 

 モノミが木の棒を乱暴に振るい、モノケモノに攻撃をした。ダメージは確実に与えているだろうが、さっきの小さな奴らと違って吹き飛ばされたりすることはない。たった一回の攻撃ではこの戦闘は終わりそうにない。

 

 そこからモノケモノはモノミには目もくれずに、オレに対してだけ攻撃を続けた。オレはその攻撃を紙一重に避けながら、モノケモノにできた隙をモノミが攻撃するというのが一つのパターンが出来上がっていた。でもいつまでこれを続けられるかわからない。

 異血の力が使えば、モノケモノは倒せる…。でも、それは……。

 オレはホログラムが浮かんでいる真下に移動し、そこから聞こえる声に耳を傾ける。

 

 『澄野さんをどうにかして助けられないのですか!?』

 『おいモノクマ! 澄野を解放しろ!』

 『死んじゃうっすよ! 本当に拓海ちゃんが死んじゃうっす!』

 『お前ら、落ち着くんだ! …おいモノクマ、お前は俺達にコロシアイをさせたいんじゃなかったのか?』

 『十神クン、そんなこと言っても彼は解放しないよ。ていうか、前にも言ったよね。お前らのコロシアイなんてどうだっていいんだよ。そんなこと長々言えるほどボクは気が長くはないんで。飽きっぽいのがボクなんだ。まぁでもオマエラのそう慌てふためく様はそこそこ愉快ではあるけどね。』

 

 みんな、オレを助けようとしてる…。

 ………………。

 …迷うのは、やめだ。

 

 オレは我駆力刀の刃をむき出しにする。深呼吸をして、息を整える。

 モノケモノがすぐそこまで迫っていた。誰かがオレの名前を叫んでいる。

 

 刹那、オレは心臓を刺した。

 

 あの百日間では当たり前になっていたことではあったが、この世界でこの行為をすることはなんだかよりとてもとても重い行為であるかのように感じた。きっと違いは命の重さだった。

 

 赤い血が自ら重力に逆らって躍動し、少年を包み込む。蛹のような膜の中で少年は痛みとあふれ出る自身の力の変遷に絶叫する。その叫びは外には漏れず、力の具現を完了させる。血を辺りに飛び散らせながら、少年は姿を現した。

 少年は黒い制服に身を包み、立派な得物を携えて機械のケモノと相対した。

 




変身シーンはキリがいいと思います。だから前と似た感じでもきっと許されます。

読みたいやつ

  • Eルート(今やってるやつ)
  • Kルート Eルートが終わったらするやつ
  • パラダイス編(苗木視点)
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