澄野拓海「希望ヶ峰学園?」 作:たくみきんぱつ
秩序的に敷き詰められた天井。自然とはかけ離れていて、すべてが人工的に形どられた街並み。いつもと何も変わらない平和で平凡で平穏な日常。
その普通の要素が集まった集合体の中に、外の世界を夢にみている幼馴染の女の子とオレはいた。
今日は何の予定もないままに休日を自堕落に過ごそうとして、オレは据え置き型のゲーム機の電源に手を伸ばす。
「たっくん、今日はこれやろうよ。」
「お前なぁ、自分が得意な対戦ゲーム選ぶなよ。」
「えー? うーん。じゃあ、これは?」
「協力型のアクションゲーか。そういうえば、それはまだ途中だったな。じゃあそれにするか。」
オレは、オレのことを未だに『たっくん』と呼ぶ女の子と一緒に、学校のない休日を過ごしている。
彼女はどのゲームのプレイ時間はオレよりも短いはずなのに、オレよりもゲームが得意だった。対戦式のパズルゲームでもルールを理解したとたんに勝率が五分になるくらいだ。オレは悔しい思いはしたくないので、一緒にするなら対戦よりも協力型の方が好みだった。
オレはそのゲームカセットをを女の子から受け取り、ゲーム機本体にセットする。
「かわいいよね。丸っこくて、ピンクくて。」
「見た目に騙されるなよ。こいつは洗脳された友達でも容赦なくボコボコにするからな。」
「宇宙だって救っちゃうもんね。」
くすくすと彼女は笑う。彼女はこのゲームの世界観が気に入っていた。星を巡って広大な宇宙だって旅をするからだ。オレ達の常識じゃ絶対あり得ないし興味もないような、まさに夢の世界がブルーライトを発するディスプレイの先には広がっていた。
彼女は星が好きだった。星だけじゃない、外の世界すべてに関心を持っていた。それはこの閉塞された世界だったからだろうか? この世界でなければ、彼女はこんなに関心を持つことはあったのだろうか?
「こんな風にいつか星を巡ってみたいなぁ。」
「またそんなこと言って…。まぁでも、本当にこんな景色があるなら綺麗ではあるだろうな。」
「絶対にそうだよ! 綺麗だったから、昔の人も星座を作ったり、物語を紡いだりしたんだよ。あーあ、わたしもいつか本物が見れたらいいのになぁ。」
「…………星は、星空は…。」
綺麗だよ。
そう、根拠もないはずなのに言いそうになった。
彼女を励ましたかったのか? いや、違う。彼女に伝えたかったのだ。本当の空を、地球から見える星空の景色を。
オレは見たことがある。本物で、本当で、本気の、地球から見える星空の景色。広がり続ける広大な、キラキラと輝いてやまない星々。
そしてその中心にひときわ目立つ大きな星があったんだ。月を、オレはあの夜に確かに見たんだ。
「たっくん? もう、大丈夫だよ。なんならわたしの方がゲームうまいし、後ろから追っかけてもいいんだよ?」
彼女は得意げにそう言った。
オレの口はオレの意識と関係なく、埋められた記憶をなぞるように動いていく。
「言ったな? そういうことなら、オレが先に攻略してやるからな。」
ゲームのコントローラーを操作してステージを進行していく。
彼女もオレも楽しそうだった。
その何の変哲もない、普通に満ちた光景はどんどんと白い霧に覆われていく。泡沫のように消えて、暗闇に覆われて、そしてまた白い光が照りだす。
「…ッ」
オレは幸せな思い出から追い出された。
「なんだったんだ? …あれは。」
今日見た夢を思い出す。
カルアとオレがゲーム機で遊んでいた。だが、それだけの内容ではない。
「星…月を、あのとき見たんだ。十神に起こされたあの時…。」
昨日の十神の正体を知った時に、具合が悪くなった時と同じイメージを抱いたのだ。一度は偶然でも、二度目ともなればそうはいかない。
オレは必死に記憶を思い出そうとするが、簡単にはいかない。求めていないときには出てくるのに、求めているときには出てこないもどかしさに落ち着かない。
モノクマが、いやモノミが消した記憶。きっとそれなんだろうな。いったいなんだ? オレに希望ヶ峰での記憶があるってことは、モノクマの正体はどうでもいいってことだ。あの直後、オレが簡易テントに戻って寝静まって、そこから十神に起こされて後、何があったっていうんだ?
「……クソッ。」
考えても答えは出ない。そのための意図的な記憶喪失なのだから当たり前だ。
記憶喪失以前に、十神にあの日のことを聞いても、そもそも別人なんだから知る由もないしな。
……別人? …別人か。いや、そんなことは…。
一度そう疑問に思ってしまったらなら、解決せずにはいられない。重要なことであるからなおさらだ。
オレは簡単な身支度をした。
オレはコテージから出てレストランではなく、旧館の方に向かった。朝食会に遅れても構わない、昨日で今日の朝の分は既に食べている。それはあいつも同じだろうと思ってあいつの分の朝食は用意しない。
旧館に行く道中のプールサイドで誰かに話しかけられる。相手は七海千秋だった。
「あれ、澄野くん? レストランには行かないの?」
「七海か、悪いんだけど朝食会は遅れるって伝えといてくれないか?」
七海は表情に乏しいまま、確かに驚いたような顔をした気がする。
…そんなに変なことか?
「…いいけど、どうしたの? 狛枝くんに何か用があるの?」
「まぁそんな感じだ。あいつは超高校級の才能を持つ人間に詳しいんだろ? ちょっと聞きたいことがあってさ。あ、十神にも聞きたいことができたんだ。それも伝えといてくれないか。」
「んー。…わかったよ、遅れることと十神くんに伝言だね。おつかいクエスト、任されました。じゃあ澄野くんも頑張ってね。」
「あ、ああ。頑張るよ。」
頑張る…あいつと会話するのは大変ではあるけど、みんなもそんな認識か。まぁ会話が疲れるってよりは、得体がしれないというか、どう接したら正解かがわからないんだろう。オレもそんな感じだし。
旧館の中に入り、ホールの扉を開いた。
そこには毛布に包まれて、目を覚ましたばかりの狛枝がいた。
「…ああ、おはよう、澄野クン。今日は随分と早いんだね。」
「朝食はないからな。昨日食べたし…。いや、その話じゃなくて。
ちょっとお前に聞きたいことがあるんだ。狛枝って、超高校級の才能を持った人間について詳しいんだよな?」
「…まぁ、そこらの道行く人たちよりは詳しい自信はあるよ。それこそ、超高校級の超高校級マニアを名乗りたいほどにはね。」
「じゃあ聞きたいんだが、その超高校級と呼ばれる程の、十神くらいの変装や偽装ができる人物って歴代の中にいるのか?」
「十神クンの…超高校級の詐欺師ほどの? ちょっと待ってね、思い出してみるから。」
もしかしたらあの時の十神は、本物の十神じゃなくて、十神に扮した別の誰かなのかもしれない。
なんというか、一度そうなんじゃ何かと考えると次々に疑わしくなってくる。本物とは数時間しか行動を共にしてないし、思い出せる限りの数日前の一瞬の記憶をどこまであてにできるかはわからない。だが、本物はあそこまで無表情ではないような気がする。
「十神クン程の完璧な偽装かは本人に会ってみないとわからないけど、いるにはいると思うよ。超高校級の舞台役者だったり、超高校級のコスプレイヤーだったり、専門でなくてもそれができる範疇にある才能を持った卒業生はいるはずだよ。」
「そうか…。」
あの十神が仮に偽物だとしたら、オレは多分あのとき襲われたんだよな。オレを…超能力を扱える人間を攫おうとしたのか? 第一、未来機関の基地内だぞ。そんなリスクを冒してまでオレを襲ったっていうのか?
「ねぇ、一体何のためにこんなことをわざわざ質問したの? 答えてあげたんだし、それくらいは教えてほしいな。」
「それは、ちょっと、まだ確証の持ててないことでさ。また何かわかったら、そのときに教えるよ。」
「ふーん。ま、モノミにはぐらかされることに比べたら幾分もマシな返答かな。わかったよ、そのときになったら教えてね。」
薄々感づいてはいたけど、こいつはなんか、一言多いタイプか。気にはしないけど、してたらキリがない。
「そういえばさ、キミがいるときは縛られてなくてもいいんだよね。だったら解いてほしいんだけど、いいかな?」
「……。」
「そう警戒しないでよ。さすがのボクも刀を携帯してる相手に、何か仕掛けようだなんて思わないからさ。」
「だったら、ヘタなことはしないでくれよ。」
オレは時計を見て、まだ時間があることを確信する。オレは慎重な手つきで狛枝の縄を解いていった。
さすがに、丸腰の人間相手に負ける気はしない。でもそれは、異血を使っているときの話だ。いくら我駆力刀を持っていようと、それを奪われたり、蹴とばされたりしたら、どうにもならないかもしれない。だが、そんなことが起ころうものなら、オレはもうこいつを完全に信用できなくなる。それはきっと狛枝だってわかってるはずだ。
「…清々しいものだね。こう、数日ぶりの自由っていうのはさ。」
「外にはまだ出さないからな。それも、全員が納得したらだ。」
「わかってるよ。むしろ、ボクなんかに超高校級のみんなの時間を散らしてしまうことは、これ以上になく自覚してるつもりだからね。」
狛枝は手足を伸ばしたりして、緩い体操を始めるようだった。オレは近場の椅子に座って、狛枝の姿を視界に納めながら考える。
もし、あのとき襲われたとするのなら、そこからこの島に連れてこられた? …なんか違う気がする。そうだったら、明らかにモノミのオレに対する接し方が妙だ。
モノミはなんだ? なんであんなにも知ったような口を利く? オレをあの謎の孤島で守った? モノクマとは本当に敵対してるっていうのか?
…あの約束は、なんだ? 思い返してみると、オレは独りじゃないって…。この時代でって意味なのか? 未来から来たことを知ってるって言うのか? あの気持ちの悪さはよくわからないが、そういうことなら辻褄はあわなくはない…か?
「澄野クン、今日はみんな次の島の探索をするんだよね? もしよかったらでいいんだけど、本とかあったら持ってきてほしいな。ここ数日、暇でしょうがないからさ。」
「…断る。そもそもページめくれないだろ。」
「うーん。まぁそこはなんとかするつもりだったけど…。断られちゃったならしょうがないか。
あ、そうそう。これもよかったらでいいんだけど、拘束する場所をコテージに変えてもらえるように十神クンに言ってもらえないかな?」
「なんでだよ? ここって寒いのか?」
「それもあるんだけどね。ほら、もうここに数日もいるでしょ? さすがに運動してないとはいえ、シャワーを浴びてないからさ。さすがに匂い始めると思ってね。」
狛枝の主張を聞くと納得はした。でも狛枝の体臭は薄いのか、言われるまで気づかなかった。
西園寺もそうだったが何日もシャワーを浴びてない、つまり不衛生でもあるということだ。運動不足の不健康を鑑みる十神なら、それには許可を出しそうだと思った。
「それくらいなら、頼まれてもいいけど…。」
「ありがとう。こればっかりは生きる上でどうにもならない問題だからさ、助かるよ。」
「…自分から死ぬような行動をする割には、そういうことは気にするんだな?」
言った後に、言ったことに気づいた。無意識にそんなことを狛枝に投げていた。悪意があったわけじゃない。ただ純粋にそう思っただけだ。だが、吐いたつばは戻らない。
狛枝は別になにも気にしないようで、何も変わらないように言葉を返した。
「もちろんだよ、別に死にたい訳じゃないしね。勘違いはやめてよ。
…ボクはただ、絶対的希望の踏み台になれるのなら死んでも構わないってだけだから。」
その思考を、なんでもないように話すのは納得できない。これに納得したくない、これを理解したくない、これをどうしたらいいのかわからない。
ただ、オレはオレの零した言葉に責任を持つために会話をつなげる。
「…そうか。オレは勘違いを…してたかも。その、無神経なことを言ってごめん。今のはオレが悪い。」
「別にいいよ、理解されないのはいつものことだし。ボクはそのままを伝えてるんだけど、なかなか簡単じゃなくってさ。」
「いや、その、そういうことじゃなくて…。
それより、もういいだろ? 十神にはちゃんと伝えとくからさ。オレはそろそろ行くよ。」
「そう? わかったよ。じゃあね澄野クン。新しい島のこと、後で聞かせてね。」
「……わかったよ。」
オレは狛枝に縄で拘束して、旧館から出た。
レストランに行くと、オレ以外のみんな揃っていた。
「澄野か、遅刻は予め七海から伝えられてはいたが、できる限り出席は欠かさないでくれよ。他のみんなもだ。」
「豚足ちゃんって丸くなったよねー。丸いのは元々だけど。」
「やっぱサギ丸とかもいいんじゃないっすか?」
「猫じゃねーんだぞ! 大喜利大会はもう勘弁してくれよ。てか、人の名前で大喜利してんじゃーよ! オレはもうツッコミ疲れたからな!」
「ちょっと、アタシ達だって真剣に考えてんだから! …何割か真面目じゃないのはわかるけど。」
「ね、ネーミングセンスがなくてごめんなさぁい!」
「洒落てる感じに料理から取ったりしてみたらどうかな?」
「覚えにきーしダメじゃね? つーかそれじゃ食いたくなるじゃねーかよ!」
「共食いはいけませんよ、終里さん! その場合はちゃんと法律にのっとらねばいけません!」
「それは法律よりは倫理の問題なのではないか?」
「それもまた、自然の大きな流れだ。だが、自身の制御するは己の精神との闘争あるのみだろうよ。」
十神の名前の話か? オレはいなかったからよく流れを知らないんだよな。
オレは日向に話しかけて昨日のことを聞いてみる。
「ああ、そうか。昨日、澄野はいなかったもんな。えっと、簡単に説明すると、結局十神の名前に関していい案が出なかったんだ。それで、俺達の知ってる十神は、十神だけだし、今のところはそのままでもいいんじゃないかってなったんだ。」
「まぁそうか。いきなり別人ですってなって、別の名前呼び始めるのもなんか変な話だしな。この島から出られるくらいに決まれば御の字なんじゃないか?」
「だと、いいな。十神には少し悪いけど。」
「別に構わん。そもそも、そうすぐに自分が自分になれるとも思っていない。急いてはことを仕損じるというやつだ。
それはそうと、澄野は俺に聞きたいことがあるんだろう? 言ってみてくれ。」
「ああ、そうだった。十神は、自分と同じ才能を持ってたり、自分と同じくらい誰かを偽ることに長けた奴と会ったことってあるか?」
「自分と同じ才能、俺と同じくらい他者に偽れる奴だと?」
十神は少し険しい顔になって何かを思い出そうとしてくれてるみたいだった。
…悪いこと聞いたかな? でも、そのくらいじゃないと考えられなしな。
「……いや、ない。心当たり以前に、そんな奴はこの世界で俺一人だけだと思う。この才能は俺特有のものであると言ってもいい。それを他者も持つようなこともあれば、それはきっと俺の才能など取るに足らないと言えるほどの才能の持ち主だろう。」
「役者とかはどうだ? それでも厳しいか?」
「無理だろうな。そもそも、それは志向が違う。演劇は嘘が前提の嘘であって、俺のは相手が真実だと思う前提の嘘だからな。」
「…そうか。」
「澄野はなんでそんなこと聞くんだよ?」
話してもいいことか? まだ確証はないけど…。でも記憶はこの島にいる時点であてにはできないしな。ダメでもともとだ。
「実はな…オレが最後に覚えてる記憶は、気絶か何かさせられたことなんだ。最後に十神の顔を見たんだけど、もしかしたらあれは本物の十神じゃなかったのかもって思って。」
「そこから島に連れてこられたってことか?」
「いや、それはわからない。そこから何か月か経ってここに来ているのかもしれないし。」
「澄野、少し聞いてもいいかい?」
「なんだ?」
十神が神妙な面持ちで、オレに質問する。
「本物の十神白夜は、どんな人間なんだ?」
「えっと、それは…。」
答えを間違えちゃいけない、十神にとって重要なことだとわかる。でも、わざわざベールで覆って気を使う答えではダメだろう。ここは素直な印象を答えることにした。
「なんていうか、プライドが高そうな感じだったな。でも逃げるときはみんなを先導してたり、人の上に立つのが役割なんだなって感じがしたよ。きっと非常時とか、上司とかで頼りになるタイプの人間だと思う。」
「そうか…そうなのか。いや、ありがとう。これはほとんど俺の興味だったから、少しでも知れてよかった。」
「…そうか。でも、なんていうかさ。多分キミの方が優しいと思うよ。」
「それは、どういう意味なんだ?」
「えっと、例えるとさ、本物の方は組織のトップって感じなんだけど、キミは現場のリーダーって感じがするっていうか。そんな風に思えるよ。」
「外からはそう感じるか…。いや、当たり前の話だな。ボクと十神白夜は別人なんだからな。」
そう言う十神の表情は少しやわらかいような気がした。
喜んでるのか? この答えでいいならよかった。
「澄野くん。」
七海に話しかけられる。
そうだ、七海に礼がまだだったな。
「七海、十神に伝えといてくれてありがとう。」
「これくらいなら全然大丈夫。それよりさ、ちょっと聞きたいんだけど、澄野くんって…覚えてるの? その先の記憶は? 他には何かない?」
「え? いや、これ以上はどうだろう…。思い出せないような気がするけど。」
七海がいつもと様子を変えて食い気味に聞いてくる。
どっ、どうしたんだ? 気になるのはわかるけど…。その先の記憶……そういえばダニとか、海のこととか変に引っ掛かることはあるにはあるけど、それって記憶に関係あるのか? いや、海はともかく、どうしたらダニが記憶に残るんだよ。
「いやー今回の澄野クンって結構変わってるね? これはもしかしたら、もしかしたらなんでしょうかね? ま、大きく期待して絶望するのも一興ですよ、千秋ちゃん!」
「うわぁ!?」
「でっ出おったぞ!」
「テメー、何しに来やがった!」
モノクマが唐突に現れる。現れたそいつに弐大や九頭竜、他の体育会系の人間が前に出て最大限警戒をした。
七海は臆することはないのか、敵意を込めてそのモノクマに視点を合わせるようにしゃがみながらモノクマに話しかけた。
「モノクマ、何しに来たの。」
「いやね、オマエラに夜時間になったらジャバウォック公園に集まってねって伝えに来たんだよ。今回は結構気合いを入れたから、変わらないオマエラにわざわざこうやって言いに来てやったってわけ。」
「…まさか、それって。」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ、プレゼントは開けてからのお楽しみが相場でしょ? 焦ったら何も得られないものなのです。
あ、全員っていうのはもちろんあの自分殺しスイッチでお馴染みのナエギマコトダクンも連れてきてね。連れてこないと全員オシオキして次に行くんで。そこんとこわかっとけよ。」
「は? …苗木?」
なんで苗木の名前が出てくるんだよ? こいつ、苗木達に何かしたっていうのか!?
「あ、ゴメンゴメン。名前がなぜか似てるせいで間違えちゃったよ、コマエダナギトだったね、狛枝クンと彼の名前を間違えるなんて絶望的だねぇ。絶望的に蛇足な間違いだよ。わざとだけどね。飽きたから帰るっすわ、じゃ。」
そう言うとモノクマは瞬間移動したように、さっそうと姿を消した。
なんだったんだ…あいつ。っていうか、夜時間にジャバウォック公園で何をするつもりなんだ?
「みんな落ち着け、モノクマのことは次の島に行った後に考えればいい。今は頭の片隅に置いておけ、いいな?」
十神がそう、みんなに呼び掛ける。モノクマが何という言おうと、今日やることは変わらないらしかった。
「ですが、十神さん。今のモノクマさんの言っていたことは…。」
「おそらく、新しい動機だろうな。だが、その話は前に昨日もしたが、そのことについては全員が納得するまで話し合う。奴にヘタに逆らうと、澄野のようにどこかの孤島に飛ばされる危険があるから、夜時間にジャバウォック公園に行かねばならないのは確定してしまったがな。」
「な、なぁ、狛枝はどうするんだ? モノクマはあいつも連れて来いって言ってけど。」
「連れていくしかないだろう、見張りはつける。役はその時に決めるから、全員、島を回ったら夜時間前に一旦またレストランに戻るようにしてくれ。」
十神がソニアさんと日向の質問に答えて、みんなが散らないよう指示を出す。
そうしてみんな個々の不安を抱えながらも次の島に向っていった。
オレは十神を呼び止め、伝えそびれていたことを話す。
「狛枝を置いておく場所の変更か、そういうことなら構わない。監禁よりも軟禁の方がこの際いいだろうしな。」
「それならよかった。ていうか、その場合鍵ってどうするんだ?」
「はい、狛枝クンの部屋の鍵。」
「は!?」
モノクマがまた急に現れた。
こっこいつ、飽きたとか言ってたくせに…何がしたいんだよ!?
「あのね、面倒くさいんです。だからこれで管理するといいよ。というか今回は狛枝クンに暴れられるチャートは組んでないんで。堅実なんすよボク。」
「その鍵はもらっておくがモノクマ、ひとつお前に聞きたいことがある。いつも思っていたが、その『今回』という言い方はなんだ?」
「そのまんまの意味だよ。いずれわかるしここで情報公開してもいいんだけど、それは後悔しそうなんでしません。それはオマエラが世界という海に航海するために必要なものになるだろうからね、だから出し渋りマース。
とりあえず、狛枝クンのことはオマエラがちゃんと見とけよ。ただでさえ狛枝クンがキモチワルくなることはわかってんだから、これ以上はいらないんだよ。」
ブツクサ文句を言いながらモノクマは去って行った。
あいつは、狛枝が嫌いなのか? それとも自分とは関係ない所でコロシアイを起こされるのが嫌なのか?
「とりあえず、この鍵は俺が持っておく。澄野には後で渡すことになるかもしれないがな。」
「わかったよ。」
こうして、狛枝の拘束場所がコテージの部屋に暫定的に変更になった。
オレはみんなの後を追うように、次の島に向った。
読みたいやつ
-
Eルート(今やってるやつ)
-
Kルート Eルートが終わったらするやつ
-
パラダイス編(苗木視点)