澄野拓海「希望ヶ峰学園?」   作:たくみきんぱつ

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2月8日


三章
心臓躍動停止物語 壱


 オレは2の形をした看板が掛けられた橋を渡り、次の島に着いた。

 右手の方から回っていくと、最初にdinerのと英語で書かれた飲食のチェーン店らしきものが見える。中に入るとミュージックボックスや、一般的な飲食店の内装をしていることがわかる。上を見るとここにも監視カメラとモニターがあった。

 そして、ダイナーの中には弐大とハンバーガーを頬張っている終里がいた。

 

 「おう、澄野。お前さんも来たか。」

 「はえの、はえはえははらへれってはんはへどよ。」

 「ごめん。食ってから喋ってくれるか?」

 

 そう言えば、終里はすごい勢いでハンバーガーを食べほした。そして、彼女は何もないように話し出す。

 ……すごいな。…昨日の夕食の場に誘うべきだったかも。

 

 「なぁ澄野、昨日から思ってたんだけどよ。澄野ってつえー奴なんだよな。良かったらでいいから、一回だけ戦ってみてくんねぇか?」

 「…誰と?」

 「オレと。」

 

 ……? 何の話なんだ…これ?

 

 「ダメじゃダメじゃ、今のお前さんでは澄野には到底かなわん。澄野の前にこのワシの一人超えられんとな。」

 「いいじゃねーかよ。モノは試しだろ? つーか、やってみねぇとわからねぇじゃねーか。」

 「バカモンが、澄野のあの戦闘術は確かな実戦で積まれたものじゃ。その経験の差は、同じ経験でないと埋められん。戦場帰りの澄野とお前さん、結果は目に見えとるじゃろうて。」

 「ま、待ってくれ。いったい何の話をしてるんだ?」

 「何って、オレと澄野がバトる話だろ? まぁあの心臓ぶっさすのは痛そうだから、別に無理強いはしねぇけどな。」

 「え? ああ、うん。ありがとう?」

 

 バトる…戦う? なんでそんなこと…。

 

 「二人は戦闘民族なんす。」

 「澪田!? いつ間に背後に…。」

 「ふっふっふ、忍者の血を別に引かない軽音部には朝飯前のことっすね。」

 「それは普通の人じゃないのか? というか、戦闘民族ってどういうことなんだ?」

 「赤音ちゃんは修行を積んでいる最中なんすよ。猫丸ちゃんという大きな壁を超えるために…。」

 「えっと、なんで仲間同士で戦おうとするんだ?」

 「それはですね。内に眠る闘志が戦いたいと熱烈に叫ぶとき、その情動を押さえられずに退屈な状況にobjectionしてしまうからっす。困った戦闘民族っすよ。」

 

 発音がいい…いや、そこじゃなくて。つまるところ、戦いたいから戦ってるってことか? …オレにはわかりそうにない心理だな。

 

 「あ、ちなみにここには凶器になりそうなものはなかったすっよ。」

 「凶器?」

 「白夜ちゃんがあからさまなものは回収しておけって言ってたからっすね。他にもそれぞれ脱出手段に使えそうなものは調べるのが今回のmissionっすよ。」

 

 発音がいい…いや、そこじゃなくって。きっと、オレが遅刻したせいで聞きそびれたことだな。そうだよな、まだ島は四つもあるんだし、待つのも手段って話だしな。待つ以外ができるのなら、それに越したことはないはずだ。

 

 「そうか、ありがとう。多分、遅刻したせいで聞きそびれてたことだ。オレはこの島を一回りしてくるからもう行くよ。」

 「おう、オレが強くなるまで首でも洗って待っとけよ! 澄野!」

 「お、おう。」

 

 これはいつか戦わなくちゃならなくなるやつか? この場の誰もが当然みたいな感じ…ツッコミがいないってやつか、これが。

 

 オレはダイナーを出て、近くにあるトンネルを抜けた先にある場所へ向かった。

 そこにはパラソルにビーチチェアがあって、その近くに豪華そうな家があった。家の中に入ると、中は外見と同じように豪華な内装で、清潔感にあふれていた。

 そして、ここには左右田がいた。

 

 「よう、左右田。ここには何かあったか? 脱出に使えそうなものとか、危険なものとか。」

 「お、澄野か。いや、ここにはそういうのはなさそうだぜ。しいていうなら、そこのクローゼットに入ってるサーフボードくらいか? まぁ泳いで脱出なんて非現実すぎるけどよ。…オメーに言うセリフじゃなかったわ。」

 「ははは…。それより、そのサーフボードってどんなものなんだ?」

 「どんなものって想像通りのもんだよ。サーフィンとかで使うやつ、なんとなくわかるだろ? クローゼットを見てみろよ。」

 

 左右田に促されて、クローゼットの中を見る。そこには雫のような形をした大きな板や、その板をしまうのであろうジッパーのついた入れ物があった。

 サーフィンが想像つかないんだよな。こんな板で何するんだろう…多分海でやるスポーツとかだよな? 日本って島国らしいし、海でやるスポーツくらいあるか。

 にしても海か…探索の時に何回か見たくらいで、全然縁がないな。海で遊ぶっていうのも、そんな余裕なかったし。

 

 「澄野もさ、今度このプライベートビーチで海水浴しようぜ。」

 「海水浴って、そんなことやってる場合じゃないんじゃないか?」

 「オメーもそう堅いこと言うなって、せっかくの南国の海だぜ? こんな状況だからこそ、ちょっとでも楽しまねぇと損だろ。」

 

 あのモノクマとかモノミとか色々気にすることはあるだろ…。まぁ煮詰めすぎてもいけないっていうのもわかるけどさ。

 

 「あ、そうそう。これは大したことじゃねーんだが、さっきモノミがこのビーチハウスでの着替えは禁止っつってたな。」

 「え? ここって更衣室とか、そのためにあるんじゃないのか。意外だな。」

 「だろ? あのヌイグルミ…覗きが行われてたら破廉恥だとかなんだとか言いやがって。オレ達は純粋に海を楽しもうとしてるだけなのになぁ。澄野もそう思うだろ?」

 「いやまだ楽しむとは…。というか、覗きって…」

 

 女子の水着とかか? そんなこと、バレたらトンでもないことになりそうだな。ただでさえ人数が少ないのに…。

 

 なぜか、あの時の雫原の水着姿が思い起こされた。別に興奮したりなんてしない。むしろ、どうにもならない悲しい気持ちでいっぱいになる。

 本当にあの百日間を戻れていれば…雫原のことも、きっと変えられたんだろうな。

 

 「…澄野はよ、誰の水着が見たいんだ?」

 「……は? …は!?」

 「恥ずかしがんなって! オレはもちろんソニアさん一筋だからよ。」

 「聞いてねぇよそんなこと! ていうか、その海水浴って女子も誘うのか?」

 「当たり前だろ、野郎の水着なんて誰か見たいんだよ!?」

 

 ここで着替えられなくて正解じゃないのか? ま、まぁ女子の水着が見たいっていうのは、別に、ありがちな話だけどさ。

 

 「で? 澄野は誰の水着が見たいんだよ? 罪木とかか?」

 「なんで具体的な名前が出てくるんだよ!? 別に誰のも見たいと思ってない、水着は水着だろ!?」

 「だって二人は初日から一緒に…って、澄野は寝てたから知らねぇのか。」

 「なっ何の話だよ?」

 「いやさぁ、罪木の奴はオメーのことを病人だなんだってずっと付きっきりで看病してたんだよ。まぁできることはないし、ベットの隣で待機してただけらしいだけどな。」

 「そう…だったのか。」

 

 …それはちゃんとお礼を言わなくちゃいけないやつじゃないのか? いや、言おう。

 

 「それは知らなかった、ありがとう。罪木に会ったら御礼言っとくよ。オレは島を回るから、じゃあまたな。」

 「お、またなー。」

 

 オレはビーチハウスを出てダイナーのあるところまで引き返し、道に出て次の施設まで向かった。

 次の施設の外観は無機質で科学的な印象を受ける。看板にはドラックストアと書いてあった。中に入ると、薬という薬が立ち並んでいて、その光景は圧巻であった。

 そしてここには、罪木がいた。

 罪木…すぐに会えたな。さっそく礼を言おう。

 

 「罪木!」

 「あ、澄野さん。こんにちは。」

 「罪木、その、ありがとうな。オレが眠っている間、みててくれたんだろ? 少し遅いけど礼を言わせてくれ。」

 「え!? いやぁ、そんなそんな、全然ですよぉ。でっでも無事に目覚めてくれましたしよかったです。」

 「なにか手伝えることはないか? せっかくだし御礼でもさせてくれ。」

 「おぉお礼だなんて、それならこの島を解放したことでもう十分ですよぉ。お薬も沢山ありますし、これだけあれば大抵の病気は大丈夫だと思いますしねぇ。」

 「そうか、ならいいけど。」

 

 オレは改めて薬棚を見てみる。サプリとかもあるらしいことはわかるが、いかんせん英語や別の言語でラベルが張られている物も多く、何に使うのか見当もつきそうになかった。

 

 「罪木はこれらがわかるのか…すごいな。」

 「いえいえ、そんなことは…。今は十神さんに言われて、全部のお薬の製造月日や使用期限を調べているんです。」

 「何かわかったのか?」

 「いえ、それが全然。製造月日はすべて伏せられているようで、使用期限に関してはモノミさんがさっきやって来て教えてもらうと、この島に来てからの日数分は使えるらしいんです。」

 「それじゃ、今がいつかはわかりそうにないな。」

 「ごっごめんなさぁい。」

 「な、謝らなくていい。これも全部、モノミとかモノクマが悪いんだから、キミが気にする必要はないよ。」

 「そっそうですよねぇ。」

 「そうだよ。それに、わからないことがわかったってことは、逆に言えば何が何でもあいつらは今がいつなのか知られたくないってことだ。それがわかっただけ、大きな進歩だとオレは思うよ。」

 「そっそうですね。やったことでわかることって少なからずありますもんね。

 …大丈夫ですよ、私はここでお薬の確認をしてますから。あ、後、体調が悪くなったらすぐ言ってくださいね。良くなるようお注射だってしますから!」

 「え?」

 

 注射…? 嫌な言葉ではあるな。なんというか、心臓を刺すのとは別のベクトルに嫌だな。子供のころの思い出がそれを助長させてる気がする。

 

 「あ、えっと、オレはもう行くよ。ええっと、その、注射しないように健康でいるよ。」

 「はい…。でっでももしもの時はお注射頑張りますからね。遠慮せずに言ってください!」

 

 オレはなぜか罪木の怪しい気配から逃げるようにドラックストアを出て、次の施設に向かった。

 

 次の施設は他と比べると大分大き二階建てで、中に入ると本が一様に並んでいた。どうやらここは図書館のようで、専門書なども多く、外国語の本も多いようだった。なぜかモノクマの銅像が建てられていることには無視をする。

 本棚の前には、山のように本を積み上げる十神やソニアさん、他には田中、花村、九頭龍、辺古山がいた。

 

 「澄野か、ちょうどいい。キミの功績をもっと褒めよう、この島はアタリだ。」

 「十神…それってどういう意味だ?」

 「ここの図書館はかなり貴重な資料も蔵書されているようだ。これだけの文献がそろっていれば、船で脱出するとなった場合でもかなり役立つだろう。ここで助けを待つ場合でもな。」

 「この星が誇るかの大洋神を越え、我らが封印されし絶島をもなんなくと通りすがる旅者を、俺様の眷属にしてやろうということだ!」

 「田中にはこのジャバウォック島を通るかもしれない渡り鳥について調べてもらっている。望み薄ではあるが、やらないよりはマシだろう。」

 「ぼくは船で脱出するときの保存食について調べてるよ。船旅で一番大事なのはやっぱり、定期的な補充の利かない食料だろうからね。」

 

 渡り鳥か…考えもしなかったな。保存食も缶パンくらいしかよくわからないし、任せるしかない。…順調そうでなによりだな。

 

 三人の上機嫌な声を聞いてそう思った。それとは別に、辺古山と九頭龍は二人で何か調べているようだった。

 

 「二人は何を調べているんだ?」

 「澄野か。私達は十神に言われて、この辺りの海図についてまとめている。私達が船で脱出しようと、助けを呼ぼうと、必ず必要になる知識だろう。」

 「航路っつーのはいつの時代もそう変わらねぇ。知らない間にいくら経ってようとモノクマにだってそこは干渉しきれねぇ範囲のはずだからな。」

 「えっと、この辺りを通る船の場所を把握しようってことか?」

 「そうだ。そうすれば少なからず、脱出に近づくだろう。」

 

 海図と航路か…こういうのは本当にわからないんだよな。そもそも船に乗ったことがないし、釣りだってしたこともない。オレが調べるとなると、まず用語から知ることになるだろうな。

 

 十神と同じように、付近に本を積み上げては戻す作業をしているソニアさんに話しかける。

 

 「ソニアは何をしてるんだ?」

 「澄野さん、今は十神さんと同じで本の出版日時を調べているのです。ですが、どうやらすべての本が第一版だったり、わたくし達の知る年代よりも先の本はないようなのです。」

 「それってオレの記憶にある年代の物もか?」

 「そうですね。今のところは確認できていません。」

 「そうなのか…。」

 「でもきっと澄野さんが知っている先の事柄もあるはずです。例えば、澄野さんは連続殺人鬼のジェノサイダー翔がご存じですか?」

 「ジェ、ジェノサイダー翔!?」

 「知っているのですか!」

 

 ソニアさんはなぜか目をらんらんと輝かせながら問いかけてくる。

 突然、この世界で知る数少ない名前が飛び込んできた。しかも、かなり動揺する方の名前だった。

 なんで王女様から連続殺人鬼の名前が出てくるっていうんだ!?

 

 「知っているのですか! 知っているのですね! 澄野さんの知る、少し先の未来ではジェノサイダー翔は一体どうなっているのですか? よければお聞かせください!」

 「いや、えっと、それは…だな。」

 

 人の秘密って勝手に語っていいものか? 本人…もう一人の本人は嫌そうだったけど。でもそもそも、全世界に中継されてたのなら今更か?

 

 「その、ジェノサイダー翔とは会ったことはないんだけど。一度、助けてもらったんだ。」

 「え!? どっどういうことですか? 雑誌で一方的に知っているわけではないと!?」

 

 あ、そういう意味だったか。…いや、そういう意味しかないな。まぁ、別に隠せることでもないしいいか。

 

 「誰とは言わないけど…、希望ヶ峰の78期生にそのジェノサイダー翔がいたんだ。希望ヶ峰学園から脱出するときに時間を稼いでくれたんだ。」

 「…な、なんと、そんな殺人鬼らしからぬストーリーが出来上がっているとは驚愕です。まさか、あのジェノサイダー翔がわたくし達の後輩だとは…。」

 

 驚いてるのは確かなようだけど、それが良いものに変化するか悪いものに変化するかはわからない。

 言っても大丈夫だったよな? 

 

 「澄野さん! この島を出たら、是非紹介してください! この機会を逃す手はありません!」

 「えっと、…わかったよ。多分ここを脱出すればきっと会えると思うし。」

 「そうと決まれば、早急にこの島を脱出せねばなりませんね。気合を入れます! 力戦奮闘なのです!」

 「……そうだな!」

 

 殺人鬼の話を聞いて奮起するソニアさんのことはよくわからないが、やる気が出たのならそれでもいいかと思った。

 

 「澄野、ちょっといいか?」

 

 十神が島のパンフレットらしきものを片手に話しかけてくる。

 

 「キミの意見が聞きたい。未来機関というのは、このジャバウォック島を新しく作れるほどの余裕はあるのか?」

 「えっと、それはどういう意味だ?」

 「この島は本物のジャバウォック島に似せて作られた別の島なのかもしれないと思ってな。つまり、言ってしまえば人工島だ。ジャバウォック島でない別の島の方があり得るだろうだろうが、一応な。」

 「人工島…いや、未来機関は絶望と戦うだけでも手一杯のはずだ。こんな島を創る余裕なんてないと思う。」

 「そうか…。いや、そうだろうとは思っていた。一応の確認だ。そもそも、未来機関がこの島を用意したのかもわかっていないしな。」

 

 人工島か…オレ達を閉じ込めてコロシアイをさせるためにそこまでするか? 希望ヶ峰学園もシェルター化計画を乗っ取ったから、それに合わせたことのはずだし。さすがにそんなことはないはずだ。

 

 

 

 

 と、そんな時だった

 

 「みんな、いる? ちょっと集まってほしいんだけどいいかな? 遺跡の方に来てほしいんだ。みんなに見せたいものがあるから。」

 

 七海が図書館にやって来てみんなに呼び掛ける。

 見せたいもの? ていうか、遺跡ってまだ行ってないところだな。

 

 「あのいかにも意味深な遺跡か。わかった、みんな一回作業を中断してくれ。遺跡を見に行こう。」

 「別に全員じゃなくたっていいだろ。テメーらがいけば十分だと思うぜ。」

 「いや、これは全員の方がいいかな。九頭竜くんにも来てほしいよ。じゃあ、わたしは他のみんなを呼びに行くから。」

 「おい七海! まだ行くとは…。」

 

 七海は九頭竜の呼び止めには応じず、そのまま他のみんなを呼びに行ったようだった。

 

 「あの女…図太いのか? それとも能天気なだけなのか?」

 「超高校級のゲーマー呼ばれる程なのだから、少なくとも精神力は強靭なのではないか?」

 「九頭龍、これはリーダー命令だ。全員で見に行くぞ。」

 「…チッ、わかったよ。」

 

 本当になんとなくだが、九頭龍に対するその態度はどこか手慣れたもののように感じた。

 確かに…前も思ったけど、極道に強く出れるってすごいな。経験でもあるのか?

 

 オレ達はその遺跡とやらがある場所に向かった。

 遺跡は他の施設とは違い、どこか古代的でありながらもどこかSFチックな特徴的な鉄の壁を有していた。ツタや砂埃が被っていてわかりにくくはあるが、確かに形状に対してどことなく既視感が募る。

 これ形って…まさか。

 

 しばらくすると他のみんなも集まって、狛枝以外の全員がこの遺跡の前に集まった。

 

 「やたらデカい建物じゃなのぉ…。」

 「すっかり風化してしまっているようですし、本物の遺跡のようですね。」

 「なんか学校みたいにも見えない?」

 「それで? 七海は一体何を見つけたというんだ?」

 「多分、この島の秘密か何か…だと思う。とりあえず、この砂埃とかツタをどかしてみようか。」

 

 何人かで遺跡の鉄の壁に張り付ている埃やツタを取り払う。

 そうすると、遺跡の外側の部分が明らかになった。オレにはこの鉄の壁、扉となった姿に見覚えがあった。そしてそれは、七海が指した先の文字にもだった。

 扉は、希望ヶ峰学園にあった出入り口のものと酷似していて、鉄の文字は『未来』と特徴的なデザインを踏まえて壁に掘られたていた。その字は未来機関の掲げていた文字と同じものだった。

 

 「未来! それに、希望ヶ峰学園の出入り口?」

 「澄野、知っているのか?」

 「ああ、この文字のデザインは確かに未来機関のものだ。この扉は、希望ヶ峰学園の出入り口にあったものと似ていると思う。」

 「…なぜここに、そんなものがあるんだ?」

 「それは、わからないけど…。」

 

 未来機関の文字がどうしてここにあるんだ? 希望ヶ峰学園の出入り口に寄せてこの扉を作ってあるのも謎だ。

 

 「希望ヶ峰学園の…出入り口?」

 「ここって未来機関の島だったってことっすか?」

 「え? じゃ、じゃオレらをここに連れて来たのって未来機関なのかよ!?」

 「落ち着け、その判断は一旦この扉を調べてからにしよう。」

 「ねぇ澄野、その扉の横にある液晶パネルって何か心当たりあったりしないの?」

 「それが鍵なんじゃねーのか? パスワードとかを入力するタイプのやつだろ。」

 

 小泉と九頭竜が言う部分を見てみると、そこには液晶パネルようなものが扉に張り付けられていた。オレはそのパネルを確認すると同時に、隣に下げられている重火器らしきものにも目が引かれた。

 …これって、丸子の学生兵器に似てる感じの重火器じゃないのか? 

 

 「いや、知らないよ。こんなパネルはなかったと思う。この重火器だって、こんなもの取り付けられて…いや、似たものはあったかもな。でもこんなに直近ではなかった、天井から取り付けられてたはずだ。」

 「…新しいな。」

 「十神、何か気づくことがあったのか?」

 

 辺古山が十神に問いかける。

 

 「…澄野、希望ヶ峰学園にも取り付けられていたという銃は、モノクマが仕組んだものなのだな?」

 「それは、そうだと思うよ。…希望ヶ峰学園がもともと用意してたものなら、話は変わってくるけど。」

 「さすがの希望ヶ峰も学園を名乗ってるんだから、生徒を危険に晒すようなことはしないでしょー。まぁ生徒に超高校級の絶望が紛れ込んでたのに気づかない無能集団だけど、そこまで野蛮じゃないんじゃない?」

 「無能は置いておいて、学園なんだからそんな銃なんてあるわけないだろ。」

 

 西園寺と日向に常識的なことを言われた。学園、その言葉に信用が置けなくなったのはいつの話だっただろうか?

 …最終防衛学園は名前だけだったな。当たり前のことだけど、普通の学園に銃なんてあるわけないよな。

 

 「話を続けるが、この銃だけこの風化した遺跡にしては目新しい。綺麗すぎると思わないか?」

 「本当だ。ここだけコーティングされたチョコレートみたいだね。」

 「じゃあこの銃は後から付けられたものってことですかねぇ?」

 「それがモノクマの仕業という訳か。ここにはモノクマにとって都合の悪いものがあるのやもしれんのぉ。」

 「もしかしたらここってシェルターなんじゃない? ほら、前に澄野が言ってた希望ヶ峰学園がシェルター化したってやつ。」

 「だが、扉をわざわざ希望ヶ峰学園に寄せたというのか? その謎が解明できなければ、その話は机上の空論にすぎん。」

 「澄野、もう一つ確認だ。この扉の外観は外側から見たものに似ているのか? それとも内から見たものに似ているのか?」

 「そんなの外からに決まってんじゃねーか。オレらがこうして見てるのは外からなんだからよ。」

 

 …いや、これはおかしいな。十神の言う通りだ。なんでこの扉は外観じゃなくて、内装に寄せてあるんだ?

 

 「いや、左右田、それは違う。この扉は内から見たもののはずだ。どうして…外観の方に寄せてないんだろうな?」

 「どうしてって…そんなのたまたまじゃねーの? 設計を間違えたとか。」

 「いや、安易に結論は出さない方がいい。答えは情報が増えればおのずと出るだろうからな。」

 「扉っつーことは開ける方法もあるわけだろ? このパネルはどうするよ?」

 「それは触れない方がいい…と思うよ。」

 

 九頭龍の発言に七海がストップをかける。それはそうだろう、こんな隣に銃があからさまに付いたものなんて触らないのが一番だ。

 

 「オレも、今は触れない方がいいと思う。」

 「銃に怖気付いてんじゃねーぞ。ようは正しいパスワードがあれば開くって仕組みなんだろ? だったら話は簡単じゃねーか。そのパスワードを知ってるやつに聞けばいいだけの話だ。」

 「知っている人とは、一体どなたのことを指しているのですか?」

 「裏切り者だ。」

 

 九頭龍がその言葉を吐く。いい思い出は一つもない。この世界でも、あの百日間でも、その存在はいつだってオレ達と敵対した存在だったからだ。

 裏切り者…いずれは、本来は今すぐにでも見つけ出して拘束でもしたほうがいいよな。…拘束されてるあいつが裏切り者? いや、あんなあからさまな気はなんとなくしないんだよな。

 

 「この扉には未来機関の文字があるっつーことは、ここは未来機関の用意した施設のはずだ。裏切り者が未来機関の人間だったなら、パスワードくらいわかるはずだ。

 仮にオレ達をここに閉じ込めた連中がその未来機関っていう奴らなら、希望ヶ峰学園のシェルター化みたく、その計画をモノクマに乗っ取られたのかしれねぇしな?」

 「あ、確かに! この島が自体がシェルターって可能性もあるのかも。」

 「やっぱり聞けば聞くほどマヌケな連中だよね。あーあ、選ぶ学校間違えたかなー?」

 「だったらモノクマとは敵対してるはずだろ? この状況で、だんまりしてる理由はねぇはずだ。いんなら名乗り出ろよ。オレ達の味方だっつーんならな。」

 

 九頭龍の発言は、裏切り者の立ち位置を探ると同時に裏切り者の印象を大きく揺らがせるものだった。この発言に応じるのなら、いまさらではあるが味方といえるのかもしれないし。応じないのなら、そもそも裏切り者なんていないか、敵かの二択になるだろう。

 しかし、九頭竜の発言に応じる者は現れない。懐疑的な空気がオレ達の中に漂う。

 

 「ま、そう簡単にいかねぇわな。」

 「九頭龍、そういう試すような真似は極力避けろ。裏切り者の存在は定かではない。そもそも、裏切り者は裏切り者の自覚はないのかもしれないし、裏切り者だと打ち明けられない事情もあるのかもしれない。

 味方か、敵か、その判断がつかない内は裏切り者のことを話していてもしょうがないだろう。」

 「随分と裏切り者の肩を持つじゃねーか? 詐欺師だから同族意識でも感じてんのかよ?」

 「違う、そうではない。俺は今のところは未来機関を敵でも味方でもない、どちらかといえば味方だろうという、そういう曖昧な認識でいる。どっちにも振れるようにな。」

 「敵にしろ味方にしろ、モノクマは総じて敵のはずだぜ。そこまでしてオレらと協力したくねぇ理由でもあんのかよ?」

 「…水かけ論だな。これ以上はその裏切り者の存在が確かでないと、論じても意味がない。

 そもそも、その情報源はあのモノクマだ。澄野の話もあるが、モノクマ自身が語り出している。あまり、あてにはならない。ここはその不確定なことよりも、確かな事柄で物事を進めた方が賢明だろう。」

 「…裏切り者は、おいておくのか?」

 

 気づけばそんなことを口に出していた。いや、出さずにはいられなかった。

 もしこれからも裏切り者が本当に紛れていて、敵だったら…。蒼月みたいな最悪の存在だったら…手遅れになる。

 

 「オレは機会があるなら、裏切り者ははっきりさせておくべきだと思う。」

 「機会があればの話だろう? 現状はコロシアイは起きていない、未来機関がこちらと対立している確証もない。であるのなら、今、気にすべきはこの島からの脱出までの道のりだと思うが。」

 「オレは裏切り者には希望ヶ峰学園での一件以前から、いい思い出なんてないんだよ。誰かがいなくなった後じゃ、遅いんだ。」

 「…肝に銘じておこう。

 全員、元の作業に戻ってくれ。夕暮れには、レストランに全員で集合だ。」

 

 十神がそう言うと、みんなはそれぞれのいた場所に戻って行ったり、先に最初の島に戻ったりするようだった。

 




参考までアンケしてみます。
ちなみに、苗木視点はほぼおまけ的存在

読みたいやつ

  • Eルート(今やってるやつ)
  • Kルート Eルートが終わったらするやつ
  • パラダイス編(苗木視点)
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